Guest Versesのコーナー:カニエ・ウェスト(ゴーストフェイス・キラーの「Back Like That (Remix)」より)

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このコーナーでは,カニエ・ウェストが人の曲にヴァース(歌詞)を提供している曲を紹介します。
本日ご紹介する楽曲は,Ghostface Killah feat. Ne-Yo & Kanye West で「Back Like That (Remix)」です。

[Verse: Kanye West]
I’m high powered, put Eva Mendes to sleep
Yo pardon, that bitch been on my mind all week
But back to you, MAC gloss chick, you’re way fit
How you have everything in this world and waste it
Prince told me it’ll be okay
I’m so sick like Ne-Yo say
I’m laid back, like neo-soul
I holla back at this Creole ho
She from the N.O., but she never told me “N-O” so
We at the spot to chill, where the food get grilled
She ordered the Kobe beef like Shaquille O’Neal
Second I walked in, the whole room got still
I don’t know how to put this, but I’m kind of a big deal
And she conceited, she got a reason
She got her hair did, she got her weave in
And I’mma sweat that out by the evening
You, I don’t sweat that now, I got a new

(ヴァース:カニエ・ウェスト)
精力アゲアゲ,俺とヤり過ぎで,エヴァ・メンデスもクタクタ
失礼しやした,今週ずっとカノジョが頭から離れない
でもキミのリップグロスがタマんない,ボディラインもピチピチだし
世のどんな男でもキミなら手にできるのに,この俺を放っておくのかい
プリンスに言われた,「気にすんな」って
ニーヨが言ってた,「心の病い(ソー・シック)さ」って
いい気分でくつろいで,雰囲気はネオ・ソウル
俺が声かけたい女の子の血は,クレオール
ニューオーリンズ出身,一度も断ったことがない
お決まりのスポットで,グリルで肉焼いて,一緒にチルして
神戸牛をオーダー,まるでシャキール,コービーじゃないぜ
俺のお出まし,部屋中のみんな一瞬フリーズ
言わせてくれるか,俺ってね,ちょっぴりセレブなの
カノジョはちょっぴり自惚れてる,でもあのボディじゃ無理もない
髪型キメて,ウェーヴ風にして
でも今晩はキミと汗だくで髪はクチャクチャ
キミにはもう冷や汗かかない,みっけ,新しい女の子

カニエ・ウェストの才能は,ビートプロデュースにとどまることなく,ちゃんとライム・スキルにも生かされています。

たとえば,冒頭の4行です。このラインでは,常日頃からヒップホップと接している人にはたまらないカラクリが隠されています。もともと,これはヒップホップ史に残る最高のリリシストの1人=レイクウォンがリリースしたヒップホップの歴史的名曲「Ice Cream」の歌詞からです。同曲でfeat.されているゴーストフェイス・キラーのヴァースをもじって,カニエ・ウェストがラップしています。これはカニエからゴーストフェイスに送る,最高のリスペクトです。

おおもとの歌詞はこうでした。

原曲のヴァースです。
I’m high-powered put Adina Howard to sleep
Yo pardon, that bitch been on my mind all week
Back to you Maybeline Queen let’s make a team
You can have anything in this world except C.R.E.A.M

精力アゲアゲ,俺とヤり過ぎで,アディーナ・ハワードもクタクタ
失礼しやした,今週ずっとカノジョが頭から離れない
でもキミはコスメの女王,俺と一緒にチームを組もうぜ
世のどんなものでもあげちゃうよ,C.R.E.A.M(Cash Rules Everything Around Me)以外はね

こちらが現代によみがえる,カニエ・ウェスト版です。
I’m high powered, put Eva Mendes to sleep
Yo pardon, that bitch been on my mind all week
But back to you, MAC gloss chick, you’re way fit
How you have everything in this world and waste it

精力アゲアゲ,俺とヤり過ぎで,エヴァ・メンデスもクタクタ
失礼しやした,今週ずっとカノジョが頭から離れない
でもキミのリップグロスがタマんない,ボディラインもピチピチだし
世のどんな男でもキミなら手にできるのに,この俺を放っておくのかい

こういう風に「元ネタの曲から一部の歌詞をもじる」というのは,実際ヒップホップを常日頃から聴き込んでいる人でないと,気づかないものです。現代の曲に,さりげなく(subtle)昔の曲をほのめかしている,というのは,常に明示的(clear cut)で,なんでも堂々と(in your face)はっきり見せるアメリカでは珍しいことです。カニエ・ウェストはシカゴ市の芸術大学を卒業していますが,和にも通ずる日本的なこの「さりげなさ(subtlety)」というのを曲中にちりばめている,というのは,アメリカの芸術もだんだんと変わってきたことを示しています。いままではアメリカでは白人が大多数(majority)を占めていましたが,現在はそれが逆転し始めている州も出てきております。これまで通例と思われてきた「白人のアメリカ」というイメージや,「明示的で,大きくて,わかりやすく,堂々としたものが一番良い」と当然のように思われてきたアメリカが変わりつつあります。そうした中で,カニエ・ウェストに共感するアメリカ人が増えてきたのも確かです。トランプ大統領がここまで不人気なのもうなずけます。もしもこれが1990年代であれば,トランプ大統領の支持率もここまでは低くはなかったはずです。また,カニエ・ウェストもここまで受け入られてなかったでしょう。

ますます多様・多彩化(diversify)する現代のアメリカで,多民族・多人種が「共感しあえる同じ土壌」(empathic common ground)を見つけるというのはとても大切なことであるはずです。その「共感しあえる同じ土壌」のひとつがカニエ・ウェストの音楽であっても良いと思うのです。

(文責:Jun Nishihara)

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