第15位:現代の米HIP-HOP界に革命を引き起こし始めていた中で亡くなったポップ・スモーク(Pop Smoke)の名作『Shoot for the Stars, Aim for the Moon』(2020年Hip-Hop名曲名場面ベスト30)

ポップ・スモーク(Pop Smoke)はデビューすることなく,2020年2月19日に亡くなった伝説のラッパーです。この人物は現代の米HIP-HOP界に全く新しいジャンルをもたらすことで,革命を引き起こそうとしていたラッパーです。

ポップ・スモークなんて,またそこら中にいるようなインターネットで有名になった若手ラッパーじゃないの,とお思いのそこのあなた。ポップ・スモークはちょっと変わっています。

ひとつにはヒップホップ・シーンに「ブルックリン・ドリル(ドリル・ラップ)」という新しいジャンルの風を吹かせようとしていたアーティストであるということ。

ふたつには,それを公式デビューする前からアンダーグラウンドで始めており,既に彼を知るファンの間では,「ドリル・ラップ」の神的な存在として崇められていた,ということ。

まぁ,次の曲を聴いてみてください。他のラップ曲とはちょっと違ったラップの仕方(フロー)を感じると思います。そしてガチガチとしたベースの効いたヘヴィーなビートがさらにそのフローの重さを増幅させています。これが「ドリル」というスタイルと云われています。

ここでまた,ドレイクの2017年リリースのミックステープならぬアルバム『More Life』を参照することになるですが,この『More Life』のアルバムではUKのヒップホップシーンで活躍する数々のUKラッパーがフィーチャリングされています。UKのヒップホップシーンはドリルにかなりの影響を与えたといわれます。(今までも当サイトで様々な場面で『More Life』を参照してきましたが,それだけこれは偉大なるアルバムなのです。)

たとえば次の曲を聴いてみましょう。この楽曲(『More Life』収録)が,上記Pop Smokeの曲に与えている影響を聞き取れますでしょうか。

この特殊な「ドリル」というスタイルを全米に爆発的に広めるきっかけを作ってきたポップ・スモーク(Pop Smoke)の業績・遺蹟(legacy)は偉大なるものです。

ポップ・スモークはドリルのスタイルを失わず,こんなメロディアスな楽曲も制作しています。

いやぁー,この元ネタ,わかります?
2001年8月にリリースされた,ジニュワイン(Ginuwine)の「Differences」です。
聴いてるとあらゆる思い出がよみがえってきて涙が出てきますので,ここら辺でやめときます。

(文責(もちろんあたしです):Jun Nishihara)