第3位:米BETテレビ局で放送された番組『ラフ・ライダーズ・クロニクル』(2020年Hip-Hop名曲名場面ベスト30)

これは2020年7月頃から米国ブラック・エンターテインメント・TV(BET)で放送された番組です。公式HPについてはこちらからどうぞ。

これは当時(90年代〜2000年代前半にかけて),米国イチのHIP-HOPストリートレーベルであったラフ・ライダーズ(Ruff Ryders)に関する歴史(chronicles)を紐解いた番組です。

同時期にジェイ・Z(JAY-Z)はデイム・ダッシュ(Dame Dash)やカリーム・ビッグズ・バーク(Kareem “Biggs” Burk)と組んでロッカフェラ・レコーズ(Roc-A-Fella Records)を立ち上げていた頃で,西側では既にスヌープ・ドッグ(Snoop Dogg)やドクター・ドレー(Dr. Dre)らがデス・ロウ・レコーズ(Death Row Records)で活躍していた頃でした。

つまり,これらのレーベルは「ヒップホップの黄金期」と呼ばれる時代を生きたヒップホップ・アーティストたちの「居場所」を作ってくれたレーベルだったのです。その中でも「極めてストリート」と呼ばれたラフ・ライダーズ(Ruff Ryders)についてその初期の頃,つまり黎明期(創立される少し前)からさかのぼって,その歴史を紐解いております。

Ruff Rydersの歴史を紐解くことにより,ヒップホップの歴史そのもののかなりダークで“なつかしい”部分がうまい具合にえぐり出されています。

もちろんインターネット・ラッパーなんて皆無の時代です。
最近は若手ラッパーが登場しては,いつの間にかどこかへ消えていく「インスタント・ラーメン」のような消費のされ方をしている時代ですが(ネットさえ使えれば,誰にでもチャンスは回ってくるという良い面と,消費のされ方があまりにも儚すぎるという悲しい面の両方を合わせ持ちますね)とは,一味違った「濃さ」(当時はそんなのを“ゴテゴテのヒップホップ”と呼んでいたりしました)を味わうことができる番組です。

ハナシの始まりは,今でこそアリシア・キーズ歌姫と結婚したことで有名になったスウィズ・ビーツ(Swizz Beatz)ですが,当時はずっと裏方の人間だったこのスウィズ・ビーツという男の伯父と伯母の話からスタートします。

伯父は,ワー・ディーン(Waah Dean)とディー・ディーン(Dee Dean),そして伯母はシヴォン・ディーン(Chivon Dean)です。この3人がラフ・ライダーズの黎明期のキーを握る人物。たま〜に,スウィズがTVに登場する際に,その側に一緒に映っていたりします。あの物静かそうなキャラです。

それから,ラフ・ライダーズ・レーベルのファースト・レディーであるイヴ(EVE)は今でこそ米・女優としてあらゆる映画やドラマで活躍中ですが,大元は,ここラフ・ライダーズ出身の女子ラッパーでした。つまり,ニッキー・ミナージュやカーディ・Bの大ダイダイ先輩なのですよ。

それからブロンクスをぶいぶい言わせたザ・ロックス(The LOX)を知っていますか?ヤツらも登場します。

ここで1曲,聴いてみましょう。「Ruff Ryders Anthem」その名のとおり「アンセム」です。

Ruff Rydersの代名詞とも言われるこの曲は,私が2002年NYのスタテン・アイランド(Staten Island)にいたころ,道端で黒人の若者らが(iPhoneの無い時代),通り過ぎるクルマでガンガン鳴り響くこの曲のビートに合わせて,大声でラップしてたのを覚えています。それから18年,19年経ちましたが(信じられん!),いまだにこの曲ほどのヒップホップ・クラシックと呼べる曲は最近生まれたのかどうか不明。

ビートとともにくりかえし繰り出す「What!」は獰猛犬が吠えているように聞こえます。「STOP!」とくれば「DROP!」と返す。その後は「SHUT EM DOWN, OPEN UP SHOP!」。

それから,こちらもどうぞ。2000年4月にリリースされたアルバム『Ryde Or Die Vol.II』より楽曲「Ryde Or Die Boyz」です。

スタイルズ・P(もラフ・ライダーズ出身)が大好きなそこのあなた,次の2曲,こちらもどうぞ。懐メロです。

1. Styles P – “Good Times (I Get High)”
2. Styles P – “Holiday”

東海岸,なかでもNYのゴテゴテのヒップホップが大好きだった連中にとっちゃたまらん曲の数々を,Ruff Rydersは生み出してくれました。その感謝とともに第3位という称号をお送りします。

(文責:Jun Nishihara)

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