第7位:J. Coleのアルバム『The Off-Season』(2021年最高のHIP-HOPモーメント)

2021年も数々の素晴らしいアルバムが輩出されましたよ,わかってます。
その一部は以下のとおりです。この中から第7位を選んだわけです。
ではなぜこのアルバム『The Off-Season』が第7位に選ばれたのか,わかります?それは,アルバム冒頭に出るキャムロン(Cam’ron)のお蔭です。半分,冗談です。(半分は本気かい!)

理由は5つ(いや,6つ)です。

その1.楽曲3「my.life」のビートに激しいスピットをのっけるJ. Coleと,フィーチャリング・アーティストである21 Savageの登場。このビートは21 Savageの「a lot」を彷彿とされるものですが,サンプリングに起用しているのはStyles Pの「The Life」であるということ。ゆえにこのタイトル。

その2.楽曲5「punchin’.the.clock」のフロー。サビ部分無し。曲始めから終わりまでスピットし続けます。いわゆるフリースタイルの体(てい)で行うところが格好いい。

その3.楽曲9「Interlude」で歌うJ. Coleが聴けること。幕間(まくあい)と訳されるインタールードさながら,軽くやってのけるように見えさせて,歌モノあり,ラップあり,インタールードでさえ充実しているということ。

その4.楽曲11「close」では,まさにヒップホップの現代教科書とでもいえるほど,2010年代以降のラップ曲のお手本として使えるいわゆる最も綺麗に韻を踏んだラインの数々を聴かせてくれる。この曲をくりかえし,くりかえし練習する土台にはもってこいの1曲でしょう。

その5.アルバム全体をとおして39分間。こぎれいにまとまりのある小品集といえる。飽きさせない。「amari」やリル・ベイビー(Lil Baby)を迎えた「pride.is.the.devil」などで適度にオートチューンも入れ,所々に遊びも散りばめている。

その6.と,こうして5つを並べつつも,やはり最も優秀な曲が冒頭の楽曲「95.South」でしょう。ノースカロライナ出身であるにもかかわらず,「NYラップ」をここでやってのけている。ビート然り,フロー然り。しかしながら,同曲の末尾では,リル・ジョン(Lil Jon)の掛け声「If you scared to throw it up, get the fuck out the club!」が流れ出す。つまり,冒頭ではNYハーレムのキャムロン(Cam’ron)で始まり,末尾では深南部(サウス)のリル・ジョン(Lil Jon)で終わる。しかも曲名が「95.South」つまり南部へ繋がるインターステート(州間道路)であるInterstate 95であるということ。つまりこの曲は「NYからサウスへ“下りていく”曲」であること。親鸞の言っていた「山を下り,俗へ帰る」非僧非俗の思想がここで音楽に昇華されているということ。J. Coleは南部であるノースカロライナ生まれであり,学生時代にNYに引っ越しをする。長い間,一人暮らしをしていたのがNYであるということ。つまり,この曲は本人にとって「帰省」の曲でもあるということ。

このアルバム,始まりから終わりまで,とおして聴くべし。

<2021年にリリースされたHIP-HOPアルバムの一部>
・DJ Khaled – “Khaled Khaled”
・Wale – “Folarin II”
・Baby Keem – “The Melodic Blue”
・Pop Smoke – “Faith”
・J. Cole – “The Off-Season”
・Roddy Ricch – “Live Life Fast”
・Mach-Hommy – “Pray 4 Haiti”
・Conway – “La Maquina”
・Curren$y – “Collection Agency”
・Russ – “Chomp 2”
・Rick Ross – “Richer Than I Ever Been”
・Meek Mill – “Expensive Pain”

(文責:Jun Nishihara)