2月5日(日)はグラミー賞です!

2023年2月5日(日)はグラミー賞が開催されます。今年のグラミー賞はカリフォルニア州ロサンゼルスのCrypto.comアリーナから生中継。米国ではCBSネットワークにて放映されます。2023年はHip-Hop生誕50周年記念の年ということであり、今般のグラミー賞においてもそのHip-Hopの功績が称えられる機会が設けられるということです。

注目のパフォーマーは、我らがDJ Khaled、Rick Ross、Lil Wayne、そしてJAY-Z。楽曲は「GOD DID」です。

2023年グラミー賞開催まで、あと1日です。

(文責:Jun Nishihara)

第1位:DJ Khaledが「天の主」に対して感謝を述べた讃歌「GOD DID」(2022年Hip-Hop名曲名盤ベスト20!)

ついに2022年の第1位を発表する時がやってきました。

2022年の第1位に輝いたのは,DJキャレド(DJ Khaled)率いる錚々たる顔ぶれが集まって作り上げた楽曲「GOD DID」です。

楽曲「GOD DID」では,リック・ロス(Rick Ross),リル・ウェイン(Lil Wayne),ジョン・レジェンド(John Legend),フライデー(Fridayy)そしてジェイ・Z(JAY-Z)がフィーチャリングされています。

これは,ひと言で言うと,神への感謝を歌にしたものです。しかし,ご案内のとおりジェイ・Z(JAY-Z)はキリスト教徒ではありません。宗教は明かしていません。また,DJキャレドにしてもキリスト教徒ではなく,自分で公開しているとおり,DJキャレドはイスラム教徒です。つまり,神(GOD)と言いつつも,彼らが「GOD」というものは神のみならず,それは「天」であり,「アッラー」であり,「シヴァ神」であり,「天御中主神(アメノミナカヌシノカミ)」であるのです。我々人間を遠く高いところから見守ってくれているものに対する讃歌です。

まずはそれを理解していただいて,次に進みます。

DJキャレドが曲中で言う「they」とは「人間」のことです。それに対比させて「GOD」を持ってきています。そしてその後キャレドはこう言います。「GOD DID」であると。ここで過去形(DID)を使っています。現在形(DO, DOES)や未来形(WILL DO)ではありません。過去形,つまり,すでにGODがしてくれたことに対して感謝しているということです。何かをしてくださいというお願いをするのではなく,すでに与えられた(過去形)こと,すでにしてもらった(過去形)ことに対して,ありがとう,と言っているのです。

ここまでの大成功者であるこの4人が集結して,全員で,なんらかの高きエネルギー体に対して,感謝を述べているという構図です。

それから,もう一つ重要なのは,曲の冒頭でDJキャレド(DJ Khaled)が言う言葉です。DJキャレドはラップはしません。その代わり,重要な言葉を言います。歌うわけでもなく,ラップするわけでもないですが,ビートを制作し,曲をプロデュースさせ,そしてたまに曲でたいせつなことを「言い」ます。

こう言います。

While you hatin’ and being jealous
You could be over here embracing that love
More love, more blessings, more life

訳:
人を嫌ったり,他人に嫉妬している暇があるのなら
こっちへ来て,愛を受け入れようではないか
もっと愛して,もっと恵みを与えられ,もっと生きる

DJキャレドが誰かとビーフをやっているといったことを聞いたことがない。DJキャレドが誰かのことを陰で悪く言っていることを(これだけSNSが発達している時代に)ひと言も聞いたことがない。DJキャレドから出てくる言葉は愛しかない。

こんなラッパーというかラッパー関係者は今までいなかった。
あのディディでさえ,ウェッサイ(西側)と対決していた。
しかし,DJキャレドは人と対決するということさえしたことがなかった。
これはもう,ヒップホップ界で唯一,そんなことができるのはDJキャレド(DJ Khaled)しかいない。これまでヒップホップのエッセンスなどと呼ばれてきた「ラップ対決」が最も相応しくない人物がこのDJキャレドなのだ。

さて,この曲に3人の人物をDJキャレドは起用した。2010年以降,ヒップホップ界を牛耳った巨漢のマフィア・ラッパー=リック・ロス(Rick Ross)。彼はDJキャレドと同じくマイアミ出身。映画『スカーフェイス』のロケ地ともなったマイアミは本物のマフィアが麻薬を取引するということが起こることが多い場所である。リック・ロスが無名から有名にのしあがったその隣には,常にDJキャレドの存在があった。

もう一人は,ニューオーリンズ出身のリル・ウェイン(Lil Wayne)。90年代後半から深南部(Deep South)出身のラッパーとしてヒップホップ界に君臨。アルバム『The Carter III』は,リリース後1週間で,はい,1週間で,100万枚以上の売り上げを出すという,ヒップホップ史上最も売れたアルバムを出した張本人。しかも大ベテラン。1995年からラッパーとして活動をしており,もう27年経っている。1982年生まれなので,13歳からプロフェッショナルにラップをしていた計算になる。そのリル・ウェインが今さらではなく,今であるからこそ,神がしてくれた(過去形)ことに対して感謝を述べた讃歌(GOD DID)をこうして捧げた。

3人目はジェイ・Z(JAY-Z)。
ジェイ・Zはこう言います。

Sometimes I feel like Farrakhan talkin’ to Mike Wallace
I think y’all should keep quiet

訳:
時に思う,俺はマイク・ウォレスと議論するルイス・ファラカーンかと
あんたらに言われる筋合いは無い

「I think y’all should keep quiet(おまえら,黙っとけ)」というのは,1996年,米CBSネットワーク局の報道番組「60 Minutes」において,ルイス・ファラカーンがマイク・ウォレスに言い放ったフレーズです。

ジェイ・Zのヴァースは3分05秒から始まり,6分48秒で終わります。この3分43秒の間,ぶっ続けでジェイ・Zはラップをするわけですが,その間に言ったこと全てがルイス・ファラカーン(Louis Farrakhan)であるようだ,というのです。

ルイス・ファラカーンは上記インタヴューで,マイク・ウォレスに対して言います。ナイジェリア政府の批判をする前に,自国(アメリカ)の政府がどれだけ腐敗(corrupt)しているか分かっているか。ナイジェリアは(インタヴュー当時1996年)建国してわずか35年しか経っていない国であるのに対し,アメリカは独立して220年経っているにもかかわらず,いまだにこんなにも汚職のある国である,と。人のこと言う前に,自分を省みてみよ,と。

つまり,3分43秒でジェイ・Zがラップしていることというのは,ルイス・ファラカーンのインタヴューから26年経った今,2022年,アメリカを知る上で最も重要なことである薬(ドラッグ)の世界とそれを取り巻く法律(the laws)についてなのである。

ジェイ・Z(JAY-Z)という人間は,経済的な豊かさを手に入れることに成功した後は,法律を揺さぶる(つまり政府を動かす)ことにまで影響力を持ち始めたのである。ミーク・ミル(Meek Mill)を刑務所から出してやったことについてもそう。大麻(cannibis)をNY州で合法にしたというのもそう。ひと昔前までは非合法であったことを,政府を巻き込んで,政府の決断に対して影響力を持つということを,公にやる,という,世界最大のヘッジファンド,ブリッジウォーター・アソシエイツの創業者であるレイ・ダリオが著書『Principles(邦題:人生と仕事の原則)』で述べていた第一の原則である「徹底的に隠し立てをしない」をまさにやってのけているという,成功するための大原則をジェイ・Zは我々にラップをとおして教えてくれているというなんと贅沢なことであろうか!

そしてこういった歌詞のラップを聴く際に,我々に求められている態度は,「徹底的にオープンになる」ということである。ちなみにこの「徹底的にオープンになろう」というのは,前著『Principles』の3番目の大原則でもある。

ジェイ・Zはこう言います。

Odds wasn’t great, we’d even be alive
Gotta be crazy to y’all niggas, we surprised
Shit is too much how we grew up
Shit don’t even feel real to us

訳:
俺らが生き残る確率は,極めて低かった
どうしたことかと,おまえらもビビってる,俺らこそ驚いた
どんだけ苦労して,大きくなってきたか
あの頃のこと考えると,いまの人生が本物(リアル)だとは到底思えない

しかし・・・

HOV DID.
(ホヴァは生き残った。)

そしてそれを聴く私の態度として,この4人に生かしてもらっていることに,感謝。KHALED DID.

取り敢えず,2022年のベスト20はここで終了いたします。
ここまで読んでくださって,ありがとうございました。
いえ,たとえ読んでくださっていなくても,このページに来ていただいて,ありがとうございました。

ヒップホップの歴史は,この曲がそうであったように,常に新たに絶え間なく刻み続けられています。

2022年,あらゆる素晴らしい音楽が誕生しました。このページで紹介できるのはほんのわずかな数ですが,それでもこのページに来てくださっていて,感謝しています。

どうもありがとうございます。

2023年も,どうぞ,よろしくお願いいたします。

(文責:Jun Nishihara)

DJ Khaledのニューアルバム『GOD DID』リリース!

出ました!DJキャレド(DJ Khale)のニューアルバム=ゴッド・ディッド(GOD DID)。

合言葉は「They aint believe in us… GOD DID!」(誰も俺らを信じてくれなかったが・・・神は信じてくれた」

フィーチャリングアーティストは極めて豪華。JAY-Z, DRAKE, KANYE WEST, EMINEM, DR. DREなどなどです。

サンプルとして,3曲,挙げておきます。

DJ Khaled feat. Drake – “No Secret”

そして,ミュージックビデオでもないのに(オーディオ音源のみにもかかわらず)これを書いている現時点,YouTube上のトレンディング(音楽部門)で第2位の「GOD DID」です。

DJ Khaled feat. Rick Ross, Lil Wayne, JAY-Z, John Legend & Fridayy – “GOD DID”

そして3曲目,ラトー(Latto),シティ・ガールズ(City Girls)をfeat.した,こちら。

DJ Khaled feat. Latto & City Girls – “Bills Paid”

(文責:Jun Nishihara)

(通常このタイミングではUPしないですが、ジェイが出たので、こちらも出します。)PUSHA T 及び JAY-Z 及び Pharrell Williams による楽曲「Neck & Wrist」リリースされました。

PUSHA T
JAY-Z
Pharrell Williams

この3人がタッグを組んで、昨晩(米国東部時間夜中の0時に)「Neck & Wrist」をリリースしましたので、こちら掲載しておきます(するしかないでしょう)。

まぁ、これをwoofer付けた車体で、ベース音を爆音にしてかけたら、えらいことになるのはわかります。誰か試してみてください。

(文責:Jun Nishihara)

第5位:映画『Judas and the Black Messiah』から,ジェイ・Zのヴァース「What It Feels Like」より(2021年最高のHIP-HOPモーメントBEST 10)

ニプシー・ハッスル(Nipsey Hussle)が生前にレコーディングしていたヴァースを起用して,ジェイ・Z(JAY-Z)が本年リリースされた映画『Judas and the Black Messiah(邦題:ユダ&ブラック・メシア(裏切りの代償))』のインスパイアード・アルバム収録の楽曲に,ヴァースを提供しました。

2021年イチの“featured verse”として,ジェイ・Zのこのヴァースを第5位に認定いたします。

[Verse 2: JAY-Z]
Scorpion bricks, way before Aubrey’s double disc
.40 on my lap, clap, sound like 40 did the mix
Filtered bass, sift coke like a Michelin star chef
Chef kiss to my wrist, I go dummy with my left
IRS on my dick try to audit all my checks, too late
You know they hate when you become more than they expect
You let them crackers storm your Capitol, put they feet up on your desk
And yet you talkin’ tough to me, I lost all my little respect
I’m sellin’ weed in the open, bringin’ folks home from the feds
I know that payback’s gon’ be mean, I’m savin’ all my little bread
Pray for me, y’all, one day I’ma have to pay for these thoughts
Real niggas is extinct, it ain’t safe for me, my dawg
They killin’ niggas in they own hoods, that make sense to you at all?
You burnt your bridge to the other side, you know you can’t swim across
Y’all know niggas can’t swim, they fried Mike after he died
Y’all know niggas can’t win, you never land, all jokes aside
I arrived on the day Fred Hampton got mur—, hol’ up
Assassinated, just to clarify further
What y’all gave birth is the chairman mixed with Jeff Fort
Big stepper on that jet with my legs crossed (Uh, uh)
Black stones on my neck, y’all can’t kill Christ (Uh)
Black Messiah is what I feel like (Woo)
Shit ain’t gonna stop ’cause y’all spilled blood
We gon’ turn up even more since y’all kill cuz’

(対訳)
蠍(さそり)の煉瓦,ドレイクのダブルディスクよりも遥か前
腰に.40銃,まるで40制作のミックスの如く
フィルターを通したベース音,コカインを捌く腕はミシュラン・シェフ
手首にシェフのキス,サウスポーの腕が鳴る
稼いだカネを検査しようとする監査院,俺にはついてこれねぇ
想定以上のことを成し遂げると,必ず嫉妬するヤツがいる
白人群衆が国会議事堂を襲撃しても,あんたは机に足を乗っけてのけぞったまま
それでも偉そうな口きいてる,あんたにはリスペクトを失っちまった
公然とハッパを売り捌く,ムショから仲間を連れて帰る
半端ない稼ぎ,いざという時のため貯蓄もある
祈っていてくれ,こういうことを考えてばかりいると,いつかは仇となるだろう
リアルな連中は絶滅しかけてる,安心できねぇ世の中になっちまってる
生まれ育ったフッドで,仲間内で殺し合いをしてる,それ,おかしいだろう
向こう岸へ渡る橋を燃やしてる,泳げもしないのに
わかってるだろ,水泳できないって,あの世にいった後もマイケルは咎められ
「勝てもしないのに」,ネヴァーランドで,笑えもしない
俺が生まれた日は,フレッド・ハンプトンが殺され・・・否!
暗殺された日だ,正確を期したかった
そして生まれたのはジェフ・フォート(ギャングリーダー)の性分を兼ね備える優等生
足を組んで飛び乗るプライベートジェット(Uh, uh)
黒人の血がついた「黒いダイア」を首に飾る,他方,おまえらにイエスは殺せないだろう
俺の気分は「黒いメシア」
これからも終わらねぇんだろ,黒い血が流れる世の中
だからもっと騒いでやるよ,どうせおまえらに殺されんだから,’cuz

註釈:
・蠍(さそり)の煉瓦:ギャングによって,ロゴは異なるが,有名なのは蠍のロゴを煉瓦の形をしたコカインで売り捌いていたころから,コカインの塊を意味する。
・40とはドレイクの親友でもあるカナダ出身のビート・プロデューサー。ミックスを「ヒップホップ」と「コカイン捌き」の二重の意味に掛けている。
・最後の’cuzとはニプシー・ハッスルの“ブルー”の色でもわかるが,crips仲間を呼び合う際の語句であり,ニプシーへの追悼の意味を込めているといえる。

註釈では省いた箇所が他にもありますが,ジェイ・Zが得意とする「ダブル・アンタンドレ(double-entendre=二重の韻を踏んだ二重の意味の掛け)」が散りばめられているヴァースでした。

音源はこちらで視聴可能です。

(文責及び対訳:Jun Nishihara)

第1位に輝いた「Meek Mill feat. Rick Ross & JAY-Z – “What’s Free”」ヴァース3及びサビ部分対訳

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(写真は,ミーク・ミルがニッキー・ミナージュと付き合っていた頃のもの。左から,ジェイZ,ビヨンセ,ニッキー・ミナージュ,そしてミーク・ミル。)

Meek Mill feat. Rick Ross & JAY-Z – “What’s Free”(ヴァース3及びサビ部分対訳)

[Verse 3: JAY-Z]
In the land of the free, where the blacks enslaved
Three-fifths of a man, I believe’s the phrase
I’m 50% of D’USSÉ and it’s debt free (Yeah)
100% of Ace of Spades, worth half a B (Uh)
Roc Nation, half of that, that’s my piece
Hunnid percent of TIDAL to bust it up with my Gs, uh
Since most of my niggas won’t ever work together
You run a check up but they never give you leverage
No red hat, don’t Michael and Prince me and ‘Ye
They separate you when you got Michael and Prince’s DNA, uh
I ain’t one of these house niggas you bought
My house like a resort, my house bigger than yours
My spou- (Come on, man)
My route better, of course
We started without food in our mouth
They gave us pork and pig intestines
Shit you discarded that we ingested, we made the project a wave
You came back, reinvested and gentrified it
Took niggas’ sense of pride, now how that’s free?
And them people stole the soul and hit niggas with 360s, huh
I ain’t got a billion streams, got a billion dollars
Inflating numbers like we ‘posed to be happy about this
We was praisin’ Billboard, but we were young
Now I look at Billboard like, “Is you dumb?”
To this day, Grandma ‘fraid what I might say
They gon’ have to kill me, Grandmama, I’m not they slave
Ha-ha-ha-ha-ha, check out the bizarre (Ah)
Rappin’ style used by me, the H-O-V
Look at my hair free, carefree, niggas ain’t near free
Enjoy your chains, what’s your employer name with the hairpiece?
I survived the hood, can’t no Shaytan rob me
My accountant’s so good, I’m practically livin’ tax free
Factory, that’s me
Sold drugs, got away scot-free
That’s a CC, E-copy
Guilt free, still me
And expect me to not feel a way to this day
You would say y’all killed me
Sucker free, no shuckin’ me, I don’t jive turkey
Say “Happy Thanksgiving,” shit sound like a murder to me
Smoke free, all of y’all callin’ out toll free
Label rob you for millions yet you wanna put a hole in me
Sugar free, seasoned but I’m salt free
You lay a hand on Hov, my shooter shoot for free
I promise World War Three
Send a order through a hands free
Kill you in 24 hours or shorter, you can’t ignore the hand speed
On god, it’s off the head, this improv but it’s no comedy
Sign I fail? Hell nah
(Ha-ha-ha-ha-ha) Hahahahahahahahaha

(ヴァース3:ジェイZ)
自由という名の国で,黒人は奴隷と化してきた
「1人の人間の価値の5分の3」そう信じさせられてきた
そんなヤツがD’USSEの50%を保有し,債務ゼロ
アルマンドブリニャック(シャンパン)に至っては100%,ビヨンセの半分の価値に匹敵
ROC NATIONの半分は俺のモン
TIDALの全財産は仲間と分け合うためにある
だって黒人連中は協力し合うってことが少ねえからさ
チェックを切っても,レバレッジを与えることは無い
あの赤いキャップじゃねえけど,俺とカニエの関係を,MJとプリンスのように思わないでくれ
マイケルとプリンスのようなDNAを受け継いでると,人は俺らを仲違いさせようとする
俺は,あんたが雇った屋内奴隷じゃねえ
俺の家はまるでリゾート,あんたの家よりイカシてる
俺の嫁も・・・(言うまでもない)
俺のルートはあんたのよりもイカシてる
メシもロクに食えねえ幼少期を生きてきた
豚肉や豚の内臓食わされて
あんたがゴミに捨てるような食い物を俺らの胃は消化した,ソウルフードを文化に昇華した
そしてあんたがやって来てカネを投資し,NYを美化させちまった
そうやって黒人のプライドを奪ってった,それを自由の国と呼べるか
音楽業界の連中に至っては,黒人のソウルを奪い,360度のレコードディールを打ち付けた
ストリーミング再生回数は億万には行かないが,資産は億万を超える
数字を膨らませるだけが幸福だと勘違いしてる
若い頃は俺たちもビルボードを崇めていたが
今となってはビルボードつっても,大したことねえって反応
いまだに世の中のバアちゃんたちは,ジェイZが何言うかヒヤヒヤしてる
「バアちゃん,俺はヤツらに殺されるまで,もう奴隷にはならねえぜ」
ハッハッハッハッハッ,奇妙な野郎チェック
俺が創出するラップスタイル,ジェイことホヴァ
髪型をフリーに羽ばたかせ,屈託無い野郎,ここまでフリーな連中は珍しい
「チェーンを楽しめ」ヘアピース付けたあんたの主の名は何だ
フッドを生き抜いた,もはや悪魔にさえも俺を強盗に合わすことはできねえ
俺の会計士もやる事が上手い,実質無課税で生活してる
ファクトリー,俺の手柄
ドラッグ売り捌いた,それでも無罪でやってきた
ケース・クローズド,いいか,伝わってっか
無実,いまだにそう
だから思い上がってもおかしくねえだろう
おまえらによって失われたもの
カモは寄せつけず,騙しは利かず,ふざけたマネはさせない
「ハッピーサンクスギヴィング」なんて言葉は罵りにしか聞こえない
煙は立たせず,あんたらが電話かけるフリーダイヤル
レーベルに百万ドル強奪されて,それでも俺を銃殺したがってる
シュガーフリー,それでも味はある,ソルトフリー
ホヴァに手を出せば,俺の片腕が瞬く間に発砲
そうなれば第三世界大戦が勃発
ハンズフリーで命令下す
24時間もしくはそれ以内でおまえヤる,そのスピード無視できねえ
神の名に賭けて,即興のフリースタイル,コントじゃねえぜ
サインフェルドならぬ,俺がフェイル? ありえねえ。
(ハッハッハッハッハ)ハハハハハハハハハ

[Intro: Meek Mill]
You know what free is, nigga?

[Chorus: Meek Mill]
What’s free?
Free is when nobody else could tell us what to be
Free is when the TV ain’t controllin’ what we see
Told my niggas, “I need you”
Through all the fame, you know I stayed true
Pray my niggas stay free
Made a few mistakes but this ain’t where I wanna be
Before I’m judged by 12, put a 12 on my V
Told my niggas, “I need you”
Stay up, I know these times ain’t true
Real life, what’s free?

(イントロ:ミーク・ミル)
“フリー”って何かわかるか,おまえら

(サビ:ミーク・ミル)
フリーって何だ?
フリーとは,誰にも命令されないことだ
フリーとは,TVが俺らの思考を左右しないことだ
仲間に「おまえが必要だ」と言われれば
どんだけ名声欲しくても,俺は忠誠をつらぬいた
仲間が全員「フリー(自由)」でありますように
間違いも犯してきた,今はここにいるべきじゃない,と思った
12人の陪審員に裁かれる前に,V12のエンジンで車を乗り回した
仲間に言った「おまえらが必要だ」
ぶっ倒れんな,今は辛抱する時だ
リアルな生き様,フリーって何だ?

(文責:Jun Nishihara)

Guest Versesのコーナー:ジェイZ(ドレイク「Talk Up」より)

このコーナーでは,カニエ・ウェストもしくはジェイZが人の曲にヴァース(歌詞)を提供している曲を紹介します。

今日は6月29日にリリースされたドレイクのアルバム『Scorpion』より,収録楽曲「Talk Up feat. Jay-Z」を取り上げます。

Drake feat. Jay-Z – “Talk Up”

(Verse: Jay-Z)
Yo, get close enough to HOV, smell like a kilo still
First album 26, I ain’t need no deal
Already a hood legend, I ain’t need no shine
First Rollie flooded out, I ain’t see no time, woah
Stand-up niggas, we only duckin’ indictments
Dope boys, Off-White, lookin’ like soft white on ’em
Heh, you know what I’m sayin’?
We in the buildin’, we came for a billion, ain’t nobody playin’
Live every word that I’m rappin’
Say I lost 90 bricks and it happened
You probably wouldn’t believe everything that you seein’ right now if it wasn’t live action
I ain’t on the ‘Gram, they record who I am
God to these dope boys, how do you not be a HOV fan?
I’m what Meech shoulda been
I’m what Supreme didn’t become
If Alpo didn’t snitch, niggas’d be like Young
I got your President tweetin’, I won’t even meet with him
Y’all killed X and let Zimmerman live, shhh, s-streets is done

(ヴァース:ジェイZ)
ヨゥ,ホヴァ(=ジェイZ)に近寄れば,いまだにコカが匂う
26歳でデビューアルバム,当時レコード会社には雇われず
それでも腕時計(ロレックス)はダイアだらけで,針が見えねえ,ウォゥ
ピン芸人の野郎どもと,裁判沙汰を上手くかわしてきた
ドラッグディーラー,“オフ・ホワイト”,白い粉末が光ってた
なんのことかわかるだろう
俺らが一発売れば,億単位で稼ぎ,中途ハンパなことはしなかった
ラップで言ってきた一言一言,全部リアルに生きてきた
90キロのコカを失った話(*註1),それもマジ
こうしてナマで届けなきゃ,おまえら何にも信じねえからな
インスタはやってない,TVが俺を追いかけてるから
ドラッグディーラーにご加護あれ,ホヴァのファンたちに幸あれ
ビッグ・ミーチ(=ドラッグディーラー)も俺の様にはなれなかった
シュープリーム(=同上)も俺になれなかった
もしアルポ(=同上)が人のことチクらなければ,俺の様になれていただろう
おまえらの大統領がツイートしてる,あんな野郎に俺は合わねえ
おまえらX(=エックスエックスエックステンタシオン)は見殺しにして
ジョージ・ジマーマン(*註2)は救うのか?
もう「ストリート」は終わりだな

註1:ジェイZの名盤『The Blueprint』収録の楽曲「Never Change」より。
註2:黒人の若者(トレイヴォン・マーティン)を銃殺した容疑者。

(文責:Jun Nishihara)