ヒップホップ歌詞引用解説:2ライヴ・クルー「Me So Horny」の場合。

ヒップホップの風物詩といえば,「お尻」と「女性」ですね。とくに「お尻」をフリフリする「女性」が出ているミュージックビデオが新旧問わず,どこでも流れています。「お尻」と「女性」を前面に出しているミュージックビデオを思いつくかぎり以下10個挙げてみます。

1.ネリー      「Tip Drill」
2.リュダクリス   「Pussy Poppin’」
3.レイ・シュリマー 「Shake It fast」
4.ヤングM.A    「Petty Wap」
5.トリーナ     「Damn」
6.フレンチ・モンタナ「Pop That」
7.イギー・アゼリア 「Kream」
8.タイガ      「Taste」
9.イン・ヤン・ツインズ「Salt Shaker」
10.69ボーイズ  「Tootsee Roll」

さて,今回紹介しますのは,1989年にリリースされた2ライヴ・クルーの名盤『As Nasty As They Wanna Be』アルバムからシングル曲としてカットされた「Me So Horny」という曲です。当時このアルバムは卑猥すぎる,歌詞は過激すぎる,ということで,2ライヴ・クルーの出身地=フロリダ州の州政府が「わいせつ罪」で訴え,逮捕しました。裁判は1990年に行われ,2年後の1992年に上級審が下級審の判決を却下し,リリースから3年の時を経て,無事,2ライヴ・クルーの名は晴れて,アルバムは市場に出回ることになりました。このアルバムは音楽の歴史で,史上初「わいせつ罪」をふっかけられたアルバムとして,名を残す大切なアルバムです。

ジャケ写真は以下のとおりです。

MI0004358506

これは卑猥すぎるということで,「お尻」を隠したアルバムジャケも出回りました。
まさに「クリーン版」ということですが,それがこのジャケです。

As-Clean-As-They-Wanna-BenÇóCleannÇó-2-Live-Crew

「お尻」はうまく隠れていますが,余計に想像力が掻き立てられますね。

さて,この伝説のアルバムからシングルカットされた「Me So Horny」から,このヴァースを取り上げます。

Sitting at home with my dick on hard
So I got the black book for a freak to call
Picked up the telephone, then dialed the 7 digits
Said, “Yo, this Marquis, baby! Are you down with it?”
I arrived at her house, knocked on the door
Not having no idea of what the night had in store
I’m like a dog in heat, a freak without warning
I have an appetite for sex, cause me so horny

おうちでまったり,アソコは勃起
電話帳とってきて,エッチな女に電話した
受話器をあげて,カノジョの番号,ダイアルした
「もしもし,オレだオレ,マーキスだ,ベイビー,今夜エエか?」
カノジョの家着いて,玄関ノックした
期待はふくらみ,気分はウキウキ
まるで発情した狂犬,イカれた変態野郎
性欲止まんない,気分はムラムラ,たまんない
(訳:Jun Nishihara)

さて,マジメな話に戻しますと,2ライヴ・クルーはその後も名曲をずらずらと残しています。YouTubeやウィキペディアで検索してみると面白いかもしれません。

彼らがデビューしたのは1984年,「The Revelation」という曲をファーストシングルとしてリリースしました。創始メンバーの中には,世界で初めてのアジア系ラッパーと言われているフレッシュ・キッド・アイスもいました。残念ながら彼は昨年2017年7月に人間界を去りましたが,彼の遺した偉大なる遺産(レガシー)は後のマイアミ出身のラッパー達=Trick Daddy, DJ Khaled達に受け継がれていくこととなりました。

それを最もうまく表現しているのが,フロリダ出身で女性ラッパーのトリーナです。トリーナ自身もミュージックビデオでお尻をフリフリしておりますが,彼女こそが2ライヴ・クルーに認められたSlip-N-Slideレーベルの初女性アーティストです。Trina feat. Trick Daddy – “Pull Over”を検索してみてください。

話は少し逸れますが,女性ラッパーというと最近,特に増えてきました。そういう数多の女性ラッパーがいる中で,唯一昔っっっからヒップホップシーンを席巻し続け,いまだに現役というラッパーは,リル・キムではなく,トリーナですね。しかしながら,リル・キムがヒップホップの世界に与えた影響は計り知れないものですが,トリーナの「静か」な安定感については,そうそう右に出るものはいないと思います。

ニッキー・ミナージュ以降にデビューした女性ラッパーは除外して,それ以前にいた,リル・キム,ミッシー・エリオット,ローリン・ヒル,フォクシー・ブラウン,クイーン・ラティーファ,MCライト,イーヴ,レミー・マー,ダ・ブラット・・・といる中で,唯一今もアルバムやミックステープを出し続けているのはトリーナくらいだと思います。ウィキペディア情報では,トリーナは2010年以降はアルバムをリリースしていないことになっておりますが,2011年に『Diamonds Are Forever』,2012年に『Back 2 Business』,2014年に『Incredible』,2015年に『Trina EP』,2016年に『Dynasty 6』というEPを含むミックステープをリリースしています。そして今年2018年にはアルバム『The One』をリリースする予定です。

フロリダ州マイアミつながりで,2ライヴ・クルーからトリーナの話へと移行しましたが,「お尻」と「女性」というヒップホップ風物詩は,30年前の1988年でも,現代のミュージックビデオでも健在です。

こうして「今」のヒップホップに多大なる影響を与え続けているラッパー達=2ライヴ・クルーを是非,覚えておいてください,そしてご自身でもいろいろなところで探してみてください。LPレコード店等に行くと,掘り出し物のLP盤が見つかったりします。

(文責:Jun Nishihara)

Advertisements

ヒップホップ歌詞引用解説:“サウスのおもてなし” by Ludacrisの場合

2000年10月17日にリリースされた名作『Back for the First Time』は,アメリカ南部のジョージア州アトランタ出身=リュダクリス(Ludacris)のセカンド・アルバムです。

リュダクリスといえば,巨大なアフロにコミカルな表情して,南部(サウス)訛りの英語でラップする,当時の若者に大人気を博したラッパーです。

Screen-Shot-2013-12-06-at-11.33.06-AM

2000年代初期に,ゆっくりと「サウスのラップ」が若者の認知を集めてきました。当時,ニューヨークのラップは「カタすぎる」「マジメすぎる」「リリカルすぎる」っていうんで,リリック(歌詞)よりも,リズムや音,ビートに乗せた「ノリのいい」ラップをより重要視する「サウスのラップ」が若者のあいだで人気となりました。全米ハイスクールの白人までが,黒人のマネして,ラップするのが流行ったのは,こういう「ノリのいい」ラップがきっかけとなりました。「ニューヨークや東海岸のラップは古い。そんなのはオトナが聴くようなラップで,若者が聴くラップはサウスだ」と,小生が通ったアメリカのハイスクールのクラスメートは言っていました。こうして,サウスの時代が到来しました。ヒップホップがサウスに傾き始めたのが,2000年代初期でした。

その「サウス時代」のまさに先駆け(先頭)をいっていたのが,リュダクリスです。「サウスのラップ」がメインストリームとなることに当時最も貢献していたのがリュダクリスです。リュダクリスがきっかけで,サウスのラップが若者に認知され,人気となり,ついにメインストリームとなるに至りました。リュダクリスのおかげで,こうしてゆっくりとサウスのラップがグツグツと沸き出はじめていた頃,2002年後半にサウスのラッパーT.I.が出てきました。2002年にT.I.を知る者はまだ南部にいる黒人/若者だけで,ニューヨークやL.A.等の東西ヒップホップを聴いている人間は,ほぼ,まだT.I.を認知していませんでした。

同時にリル・ウェイン(Lil Wayne)というラッパーが当時,南部から出てきました。しかし,まだ白人はリル・ウェインを上手く理解できていなかったようです。白人に理解できなければ,まだ,メインストリームにはなり得なかった時代です。その点,リュダクリスのラップはわかりやすく,おもしろく,ギャグ豊富,下ネタ豊富,ノリがいい,ということで,白人にもウケが良かったのです。

ということで,白人のあいだでも「ノリのいいサウスのラップ」を馴染みなものにさせたのが,リュダクリスということでした。南部特有の訛りでラップするアーティストたちは,自分たちのことを「こぎたない南部ラッパー(dirty south rappers)」と,愛情を込めて呼んでいました。リュダクリスももちろんその1人でした。

そのリュダクリスのアルバム『Back for the First Time』から,ファレル・ウィリアムス率いるプロダクション軍団=The Neptunesプロデュースの2002年作品「Southern Hospitality(サウスのおもてなし)」の歌詞を引用します。

s-l1600

Dirty South mind blowing Dirty South bread
Catfish fried up, Dirty South fed
Sleep in a cot’-picking Dirty South bed
Dirty South gurrls give me Dirty South head
Hand-me-down flip-flops, hand-me-down socks
Hand-me-down drug dealers hand me down rocks
Hand me down a 50-pack Swisher Sweets box
And goodfella rich niggas hand me down stocks
Mouth full of platinum, mouth full of gold
40-Glock cal’ keep your mouth on hold
Lie through your teeth, you could find your mouth cold
And rip out your tongue cause of what your mouth told
Sweat for the lemonade, sweat for the tea
Sweat from the hot sauce, sweat from the D
And you can sweat from a burn in the 3rd degree
And if you sweat in your sleep, then you sweat from me

きったねえサウスで,エゲつない額のギャラ,ゲットして
ナマズのフライ料理,一丁アガり! おまえの口も,きたねえサウス慣れ
綿摘み,奴隷のサウスで,泥だらけのベッドに横たわり
サウスの田舎オンナが,ヤらしいフェラ,してくれる
おさがりのサンダル,おさがりのソックス
おさがりの麻薬取引,おさがりのコカイン
50本入りのシガーボックス,こっちへ寄こせ
リッチな連中,グッドフェラ・マフィア,おさがりの株儲け
歯ぐきにプラチナ,詰め物ゴールド
40口径のグロック銃で,おまえの口,ぽっかりあいて
嘘ばっか言ってっと,おまえの口,凍らせちゃう
嘘ばっか言ってっと,おまえのベロ,引き抜いちゃう
汗掻いたあとのレモネード,汗掻いたあとのアイスティー
汗だく,激辛ソース,汗だく,俺のアソコ
拷問ヤケドで冷や汗かいて
汗だくの夜,俺と,ひとばんじゅー
(訳:Jun Nishihara)

まさに南部(サウス)を上手くレペゼンしてくれている歌詞です。南部ゆかりの産物が,ぞくぞく出てきます。以下のとおりです。

◎「ナマズのフライ料理」は,南部ニューオーリンズで名物の料理です。「ナマズ専門店」もいくつかあります。「ニューオーリンズのナマズ料理店トップ5」は,以下で紹介されていますので,興味のある方はどうぞ。https://www.nola.com/dining/index.ssf/2017/04/top_5_fried_catfish_makers_in.html

◎「綿摘み」は,差別用語です。奴隷制度の時代,南部農園で奴隷は綿を摘まされていました。差別用語ですが,リュダクリスはここでおおっぴろげにラップして,それを笑い話にしています。

◎「歯ぐきにプラチナ」,これはラッパーが口の中に入れるグリルです。ダイヤモンドや金メッキのグリルをハメて,口を横に広げて,見せびらかし(show off)します。もともとはサウスで広がり,いまは古今東西関係なく,好きなラッパーは自分の口にグリルをハメます。(「南部ラップ学」の参考に,リル・フリップをググってみてください。)

◎「汗だく,激辛ソース」,これは黒人ソウルフードの大切な薬味です。既出のナマズ料理もソウルフードですが,激辛ソース(hot sauce)を料理にかけるのがソウルフードのミソのひとつです。

このようにサウスに関係する用語をふんだんに取り入れたラップを披露してくれるのがリュダクリスです。YouTube等で,同曲のミュージックビデオをご覧になられると感じると思いますが,ニューヨークのラップとは違って,ビートに乗せてラップをするスタイルは,南部特有です。その南部ラップを全米に広めるキッカケを作った大切なラッパーとして,リュダクリスを覚えておいてください。

当時リュダクリスを聴いていた若者たちは,いまは立派なオトナになり,マジメに仕事して働いています。同曲が流行ったのはもう18年前の話ですが,いまだにリュダクリスのラップは健全ですし,いま聴いても全く古さを感じさせないこの曲「Southern Hospitality」は名曲でございます。

(文責:Jun Nishihara)

ヒップホップ歌詞引用解説:キャムロン「Horse & Carriage」の場合

1998年7月21日リリースの名作『Confessions Of Fire』は,後のディップセットのボス=キャムロン(Cam’Ron)のデビュー作です。NYCはハーレム出身。ハーレムと言えば色んなラッパーの出身地です。ディディ(パフ・ダディ),メイス,ビッグL,ブラック・ロブ,Qーティップ,J.R.ライター(ナツい!),そしてまさに「今」をきらめくティアナ・テイラー(先週金曜日にカニエ・プロダクションのアルバムをリリースしたばっか!),そしてキャムロン率いるディップ・セット軍団です。

このようにハーレムは素晴らしき数々のラッパーを輩出してきたヒップホップ聖地です。

そのキャムロンのデビュー作でもあり,名作と呼ばれる『Confessions Of Fire』より,楽曲「Horse & Carriage」から,以下の歌詞を引用します。

https_images.genius.com3c9078c99248a02e298976d5d0e167be.600x600x1

Aye yo, I pull to the hotel with my shit on blast
Tell the valet “Motherfucker don’t hit my Jag”
Seen the bell boy, nigga he can kiss my ass
Just show me my room nigga, and get my bags
So the girl, that’s my hon, almost dropped his glass
I guess he was shocked when I touched her ass
It really wasn’t nothin’ she was peedy aight
“Does that say Harlem World?” yeah you readin’ it right
And we havin a party, be there tonight
Like Phil Collins have her in “The Heat Of The Night”
Cause Cam rocks the party (All Night Long)
‘Til when? (‘Til the early morn’)
It don’t stop (and uh) it don’t quit
(and uh) drop six (and uh) we pop Cris
Right now too tipsy to drive
But I got my horse and carriage right outside

エイヨゥ,自分の曲,爆音で鳴らして,カノジョと一緒にホテルへ行った
駐車係にカギ渡してこう言った,「俺のジャガー,ぶつけんじゃねえぜ」
フロントのベルボーイ,ちんたらしやがって
はよ部屋に連れてってくれ,俺のカバン持てよ
そいつ,俺のカノジョ見て,ジュースをこぼしやがった
カノジョのお尻さわってるとこ見て,そいつビビったんだろ
たいしたことねえよ,カノジョ,まぁまぁイケてんぜ
「そのジャケット,ハーレム・ワールドですか?」って,当たりめーだよ
今夜パーティーあっからよ,おまえも来いよ
フィル・コリンズのように,「今夜は燃えるぜ」
キャムのおかげでパーティー盛り上がり(ひとばんじゅー)
いつまで?(翌朝まで)
やめらんねー(それに)やめさせねー
(それに)高級車(それに)クリスタル・シャンパン
今は酔っ払って,ハンドル握れねえ
でも外によ,「馬と馬車」待たせてっからよ
(訳:Jun Nishihara)

キャムロンのこの歌詞の素晴らしいところは,ちゃんと物語が絵になって見えるところです。「女を連れてホテル行って,ベルボーイさそって,みんなでパーティー盛り上がって,朝まで酒飲んで,暴れてる。」といった内容。ちなみに高級車とシャンパンは,この時代からヒップホップの象徴として,「季語」のように使われています。ヒップホップ歌詞になくてはならない要素として,組み込まれています。

最近のアメリカの10代〜20代の若者は,キャムロンを聴いた人は少ないと思いますが,30〜40代でヒップホップが好きな人なら,必ずキャムロンやディップ・セットを聴いて育ってきています。ヒップホップにとって,とても大切な人物です。ヒップホップ史をちゃんと築いてきた重要人物の一人です。ぜひ,おぼえておいてください。

(文責:Jun Nishihara)