アメリカの自由さを想起させる,上半身裸でクルマを乗り回すTrey Songz,勿論MVの中で。

本年8月にリリースされたトレイ・ソングス(Trey Songz)の新曲「Circles」のミュージックビデオを観て,思うわけです。アメリカの夏には良く上半身裸でオープンカーを乗り回していた連中がいたなぁ,と。

これは晴れた真夏の日なんかに,アメリカの郊外ではよく上半身裸でクルマを乗り回しているヤツがいたのを憶えております。そんなことしていいんだ,と,こちらまで自由さが伝わってきて,すがすがしい解放感を感じたことがあったというのを,このミュージックビデオを観て,思い出しました。

それが1点。

しかしながら他方,同ミュージックビデオの後半で,白人警察に黒人が運転している車が停車の指示を受ける,という一瞬恐怖を感じさせる場面もあります。最近はスマホで写真をすぐに撮れるので,それを撮られた警官もいい気はしないでしょう。スマホで写真を撮ることによって,余計に警官の気分を逆撫ですることもあると思います。

当時私がアメリカで感じた解放感とは真逆の生きづらさ。

解放感と生きづらさという正反対の要素が混在しているヴィジュアルであります。

Trey Songz – “Circles”

(文責:Jun Nishihara)

変わらないスタイルを貫くThe LOXに,旧友DMXを迎える。

2020年7月及び8月の期間に,米BET(ブラック・エンターテインメントTV)で特集された伝説の吠える男=DMXを迎えて,ラフ・ライダーズ(Ruff Ryders)レーベルを支えてきたThe LOX(=Jadakiss + Styles P + Sheek Louch)が2020年8月にアルバム『Living Off Xperience』をリリースした。同時期に収録楽曲「Bout Shit」のミュージックビデオもリリースした。

以下MVをご覧になるとお分かりになるとおり,The LOXのラップスタイルもファッションスタイルも,90年代から全く変わっていない。全く変わらず20年以上,そこそこ現役でやってきたっつうのは,奇跡と言える。非常に息が長いMC連中であると言える。

ほな,その,「Bout Shit」という曲を,マジにならず軽く聴いてみてください。

The LOX feat. DMX – “Bout Shit”

上記の「Bout Shit」は冒頭で説明したとおり,2020年8月リリースの楽曲ですが,以下に同グループ=The LOXが1998年1月にリリースしたシングル曲「Money, Power, Respect」を掲載しておきます。ビデオの画質は違えど,1998年にLOX連中がやってたスタイルと変わっていないことが分かるでしょう。

ちなみに・・・最近はコロナ禍ですので,クラブには行けないですが,いまだにNYCのクラブでこの曲鳴れば,あっという間に皆一体になれるっつうthrowback(ナツメロ)の曲があるので,それも乗っけときます。

クラブの底が抜けるほど,爆音でこの曲鳴らして,若かりし2000年代前半の頃のように,バカ暴れしたいっすね。

(キュレーティング:Jun Nishihara)

5年の時を経てヴィジュアルをリリースしたBryson Tiller。

2020年9月25日付でYouTube上にて,2015年にリリースされたアルバム『TRAPSOUL』から収録楽曲「Right My Wrongs」のヴィジュアルを,5年の時を経て,リリースしました。

『TRAPSOUL』はリリースされた当時2015年にヘヴィロテで聴いておりましたが,5年経った今聴いても,全く色褪せていない,ということが窺えます。

さらに,あれからもう5年経ったのか,ということ。そして,本曲を聴くと5年前のいろいろなことが思い出されるということ。

当時ヴィジュアルを出さずに,5年後の今,これをリリースするというのは,現代のあらゆるものがインスタントに消費される世の中で,めずらしいことです。

新曲がリリースされては消費され,ヴィジュアルも同時にリリースされ,しばらくの間,YouTube等の動画サイト等で「再生回数」を稼ぎ上げもてはやされて,しばらく経った後,一部を除いて,繰り返し「再生」されることがなくなり,ネットの計り知れないほどのデータの渦の中に消え去っていく。

そういう現代の世の中で,5年の時を経て,あたかも新曲のようにヴィジュアルを発表することにより,ネット上のデータの渦と,人々の記憶の渦の中から,この曲を取り出させ,ブライソン・ティラー(Bryson Tiller)を聴いていた頃を聴覚という五感をとおして懐かしく想起させる,というのは,新しく旧い体験であります。

ブライソン・ティラーの『TRAPSOUL』を当時聴いていた人も,聴いていなかった人も,新しく旧い曲「Right My Wrongs」を聴いてみてください。

Bryson Tiller – “Right My Wrongs”

(文責:Jun Nishihara)

HIP-HOP歌詞引用その2:Kanye West「Father Stretch My Hands, Pt.2」

カニエ・ウェストの2016年2月リリースのアルバム『The Life of Pablo』収録楽曲「Father Stretch My Hands, Pt.2」より,以下の歌詞を取り上げます。

Up in the mornin’, miss you bad
Sorry I ain’t call you back, same problem my father had
All this time, all he had, all he had
And what he dreamed, all his cash
Market crashed, hurt him bad
People get divorced for that
Dropped some stacks, pops is good
Mama passed in Hollywood
If you ask, lost my soul
Drivin’ fast, lost control
Off the road, jaw was broke
‘Member we all was broke
‘Member I’m comin’ back
I’ll be takin’ all the stacks, oh

(対訳)
朝起きて,めちゃ恋しい
ごめん,電話返さず,親父に似た性格
老舗,それが親父の全て,全て
親父の夢,でも市場が暴落し,水の泡
親父は無一文,泣いていた
それが理由で離婚するヤツもいた
実家にカネを入れた,親父は立ち直った
ハリウッドで,おふくろはあの世へ
その時の気持ち,魂を奪われた気分
アクセル踏んで,コントロール失って
クルマをぶつけて,アゴの骨粉砕
覚えてっか,一文無しだった頃
覚えてって,成り上がってやるって言っただろ
ありたっけのカネ儲けてさ,オゥ

コンマごとにリズムを切って,テンポ良くラップしていくこの歌詞は,音読するに値するヴァースです。密かにそういった意味で名曲です。以下音源を聴きつつ,リズム感のある詞を音読してみてください。

(対訳及び文責:Jun Nishihara)

HIP-HOP歌詞引用その1:No Maliceの「Use This Gospel」より

カニエ・ウェストが2019年10月25日にリリースしたアルバム『Jesus Is King」に収録されている楽曲「Use This Gospel」より,ラッパーNo Maliceのヴァースを以下に引用いたします。

From the concrete grew a rose
They give you Wraith talk, I give you faith talk
Blindfolded on this road, watch me faith walk
Just hold on to your brother when his faith lost

(対訳)
コンクリから咲いた薔薇
他のヤツらが高級車を語る時,俺は信仰心を語る
両眼が見えずとも,俺にはある信じる心が正しい方角に導いてくれる
何も信じられなくなりそうになった時は,おまえのブラザーがついている

ここで伝えたかったのは最後の1文です。「おまえのブラザー」とはつまり自身(=No Malice)のことです。双子の兄弟であるプッシャT(Pusha T)に語りかけている歌詞にも解釈が可能です。

本ヴァースをスピットしているNo Maliceはもともと,双子の兄弟であるPusha TとともにClipseというラップユニットを組んでおりました。そんな中,No Maliceは2011年AIDSに感染した疑いへの恐れから,Clipseを脱退し,信条心の強いクリスチャン教徒に改心します。

そのNo MaliceがブラザーのPusha Tに語りかける一文です。

音源を以下に掲載しておきます。

(対訳及び文責:Jun Nishihara)

Hip-Hopの一つの回帰場所:2002年リリースの楽曲。

シカゴ出身のカニエ・ウェストによるプロダクション,ブルックリン出身のJAY-Zによるリード,フィラデルフィア出身のビーニー・シーゲルによるフィーチャリング,そして場所は深南部(Deep South)に飛んで,ヒューストン出身のスカーフェイス。ヒップホップ史なかなか多種性(diversity)に富んだラップ曲。こんな素晴らしい曲が2002年にリリースされていた,ことを憶えておいてほしいです。

電話の保留音(以下)が当時のNYイチカッケーラップになるとは誰も思っていなかった。

ベートーヴェン「エリーゼのために」をフリップしたNASの「I Can」である。

Mos Defの「Brown Sugar」。2002年が蘇ってきますか?

続いては,ブルックリンからマンハッタンダウンタウンの映像を細切れに集めたコラージュをミュージックビデオに昇華させたタリブ・クウェリの名曲「Get By」。“get by”とは「ありあわせのものでなんとかやっていく」という意味で,ゼータクなんてできねぇよ的なサヴァイヴァル・ミュージック。「just to get by」ってタリブがリピートしますよね?それ「なんとかやっていくだけで」っていう意味です。

そして,密かにHip-Hop史上原点回帰の楽曲「What We Do」。一つには,ワルやらなきゃ生きてけねえ時代を映し出した音楽。まさに「正しさ」とは逆のことをやって生きていた2002年。他方で,ハスリングという,ヒップホップ界で当時流行った金儲けのやり方も表現している。2002年という時代が俺らの心の中で永遠にすたれることのないように,この曲にそれらを閉じ込めてくれた,偉大なる曲。この曲を聴けば,2002年当時の精神(ワルやってた,その代わり勢いはめちゃめちゃあった生き様)に即,戻してくれる。

雰囲気は一変して,パーリーピーポー感のある映像を一つ。これも2002年。なつかしいですね。

次はブロンクスから。Fat Joe(ファット・ジョー)の登場。これも2002年。かなりなつかしいですね。

Fat Joeと同じく同郷ブロンクス出身のジェニファー・ロペス(Jennifer Lopez)がLL Cool Jとコラボレーションした曲。これも2002年リリース。流行りましたねえ。

ヒップホップ・ダンスに生涯を捧げているミッシー・エリオット(Missy Elliott)の「Gossip Folks」。これも2002年リリース。

続いて同じくミッシーから。「Work It」。これは当時,50セントのREMIXバージョンも世に出ました。

50セントといえば,当時ガチ流行った「In Da Club」以外に,なかなか素晴らしい曲を出しています。その一つが「21 Questions」。これは「In Da Club」の裏で流れていた曲。2002年を思い出しますね。

続きまして,ファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)プロダクションのSnoop Dogg「Beautiful」。これも2002年リリース。当時私もNYに住んでいましたが,Hot97のヒップホップラジオで流れまくり。ハヤりました。ファレルは年取らないですね。いまも同じルックス。

まだまだ行けそうですが,今日はここら辺で。これくらい2002年リリース楽曲の数々を聴くと,いつでも即原点回帰が可能となります。人生に迷った時には,原点回帰することが重要。上記を聴いて,回帰してください。

最後に,2002年リリースのアルバム『The Blueprint 2: The Gift & The Curse』に収録された「All Around The World」の素人ドラムバージョンをお届けして終わりにします。

今日も当サイトにお越しいただき,ありがとうございます。過去のページも見ていってください。

(キュレーティング:Jun Nishihara)

コロナ禍「以前」のNYラップ。

コロナ禍「以前」のNYラップを載せておきます。コロナ禍前はこういう感じだったというフィーリングを憶えておくために。

まずはNYベテラン・ラッパー。ファボラス(Fabolous)の2019年11月リリースのミュージックビデオから。

続きまして,ハーレム・ラップの極み,ディップセット(ディッップセッ!!)の凄さを世に知らしめたゴテゴテのNYラップ,キャムロン(Cam’ron)。

上記キャムロン(aka キラ・キャム)の「Losing Weight 3」には勿論のこと,バージョン1とバージョン2がございまして,バージョン1に至っては2000年9月リリース。ちょうど20年前の今月ですね。ちゃんとその伝統を引き継いでいる。興味ある方はネットを探してみてください。ビートのサンプリングはTeddy Pendergrassの「Don’t Leave Me Out Along the Road」です。以下掲載しておきます。

ファボラス及びジェイダキスのタッグはNY以外の何物でもない。その贅沢なソウルフル・コラボレーションを以下でどうぞ。FabolousとJadakissがこう言ってます。「ほら,おまえも椅子持ってこい(Then, pull up a chair)」ってね。そこで一緒にsoul foodを頰張ろうじゃないか,と。

次は,クイーンズブリッジのプロジェクト・ビルディングで1973年9月に産声を挙げ,1994年,HIP-HOP史で最も重要なアルバム『Illmatic』を世に送り出したラッパー,NAS(ナズ)の登場。これもコロナ前。コロナになろうとならまいと,コロナ前から,生きることに伴う「生の苦闘」がNASの生声には漂っていた。

次はブルックリンのMARCY PROJECTS野郎,JAY-Z。又の名をホヴァ。ここでは多くを語らない。

コロナ禍以前にも関わらず,NYラップはどうしてここまでも哀しみを帯びた音楽であろうのだろう。全然パーリーピーポー感が感じられない。哀愁漂う楽曲の多さ。

週末HIP-HOP曲:YBN Cordae feat. Roddy Ricch – “Gifted”

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大坂なおみ選手の彼氏でも知られるYBNコーデー(Cordae)の新曲を以下のとおり掲載しておきます。今をときめくロディ・リッチ(Roddy Ricch)を迎えてのコーデー新曲です。曲名は「Gifted」,日本語では「天賦の才を授けられた」と訳されますが,giftedのニュアンスとして授けられているものは必ずしも「才能」とは限らず,日本で言う「縁」という場合もありますし「恩恵」という場合もあります。そういった「恵み」を見えないものから授けられたという語義がこの言葉に含まれているようです。

YBN Cordae feat. Roddy Ricch – “Gifted”

(キュレーティング:Jun Nishihara)