黒人若手女子アーティスト2名(米公共ラジオ局(NPR)主宰“Tiny Desk Concert”で取り上げられた黒人女子シンガー抜粋(その②))

本日ご紹介する2名のシンガー/ラッパーは,現代音楽界に於ける,とても特別なお二人です。

ひとりめは,当サイトでも以前取り上げました。
公式デビューアルバムを本年3月にリリースしたチカ(CHIKA)です。
(「第4位:大ブレイク寸前,漆黒の女子ラッパー=オラニカ又の名をCHIKA「トランプ大統領への手紙」(2019年Hip-Hop名曲名場面ベスト50)」)

ついに,チカも米公共ラジオ局(NPR)の「Tiny Desk Concert」に登場するようになりました。
以下の演奏と彼女の饒舌ぶり(間奏中の,おしゃべり達者!)をご堪能下さい。

前回,当サイトで彼女を取り上げた際には彼女が公式デビューアルバム『Industry Games』をリリースする前でしたので,彼女のフリースタイル映像をメインにご紹介いたしました。

最近はもう有名になってきておりますので,米国現代の若者文化(スローガンは“The Culture of Now”)を代表するウェブサイトUPROXXに於いて,“Rising Hip-Hop Star”(人気上昇中のヒップホップスター)として取り上げられたこともあり,その洗練されたミニセッション映像をお送りいたします。

チカのシングル曲「No Squares」も掲載しておきます。

ちなみにヒップホップを聴いている方なら誰でも知っている(べき)元Queen of Hip-Hopといえばローリン・ヒル(Lauryn Hill)ですが,彼女のメジャーヒットシングル曲「Doo Wop (That Thing)」のビートに乗っけたチカ(CHIKA)のフリースタイルがありますので,掲載しておきます。これは2017年の映像です。もう3年前!

もうひとつ,チカのフリースタイルを。これも3年前の映像です。キレッキレのフリースタイルです。韻を全くハズさない!脚韻だけでも注意して聴いてみてください。脚韻というのは各ラインの終わりのフレーズで踏む韻です。

続きまして,ふたりめはNoname(ノーネーム)です。本名ファティマ・ワーナー。当サイトでも以前,こちらで取り上げました

彼女の以下“Tiny Desk Concert”での模様は,大好きな動画の一つで,これを観て朝元気になって仕事に行くということもありました。

Nonameはシカゴ出身。シカゴはカニエ・ウェストやコモン,ルーペ・フィアスコなど,ソウルフルなラッパーを数々輩出してきた大都市です。そこにこの特別な星(スター)をわれわれファンに授けてくれるなんて,なんてありがたいことか。

Nonameのように,ラップが詩的な人,って最近はめずらしくなってきています。とくに20代のアーティストではそうです。とっても貴重なアーティストなのですよ,ノーネームは。

そんな特別な存在であるNonameのライヴが51分間堪能できる映像がありますので(YouTube, thank you!)掲載しておきます。

あまりにも有名なシングル曲「Diddy Bop」のサビでNonameは歌います。

Watching my happy block my whole neighborhood hit the diddy bop
(ハッピーな近所の隣人たちが,みんなでディディ・ボップのダンスを踊る)

この1行を聴いた時,聴いた人の頭の中では,「幸せそうな隣人たち」のイメージが浮かんだかと思いきや,その後瞬間的に,イメージは「ディディ・ボップを踊る黒人」に切り替わります。

「幸せそうな隣人たち」といういかにもゆったりした時間かと思いきや,次に飛び込んでくる映像は「ディディ・ボップ」ですからね。もう,たまんないです。

同曲から,もう少し歌詞を引用してみます。

Stop overreacting, it’s past my curfew I’m out after 6
Happily making my accident
Mama gon’ whoop on my ass again
Pray that I’m making my way before 8 and I might have to sneak in the back again

(対訳)
過剰に反応しないで,門限はとっくに過ぎてる,夕方6時を回ってる
嬉しさあまりにアクシデント起こす
ママにまたお尻ぺんぺんされるわよ
祈ってる,午後8時前までには帰宅できること,また家の裏口からこっそり入ろうかしら

なんて素朴な歌詞!
Rauryというノーネーム仲間のヴァースです。

まぁ,これがノーネーム(Noname)なのです。まったく飾らない,素朴な歌詞を曲にするのです。

そして冒頭のチカ(CHIKA)とは対照的で,ノーネームには脚韻はあまり関係ないのです。その分,ラップにキレ感は無いのですが,しかしながら,脚韻なんて踏まなくても,すでに詩的になっている。

もう一丁,歌詞,行ってみましょう。

B2K in the stereo, we juke in the back seat
Or juke in the basement, in love with my KSWISS’s
This feel like jumping in a pool and I’m knowing I can’t swim
Ooh, you about to get your ass beat
For stealing that twenty dollars like “baby, just ask me”

(対訳)
ステレオで流れるB2Kの歌,後部座席でバカ暴れするアタシたち
お気に入りのKSWISSのスニーカー履いて,家の地下でバカ暴れ
まるで気分は,プールに飛び込んで,アタシ,泳げないんだけどね
ウゥゥ,あんた,ママにお尻蹴飛ばされるわよ
20ドル札ドロボーしたでしょ「ベイビー,いつでも言って」って

良いですねえ。

歌詞中の「B2K」っていうのは2000年代前半に流行った黒人のボーイバンドです。↓これです。

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2行目の「KSWISS」っていうのは,これも2000年代前半に流行ったスニーカーです。懐かしいですね。今でも売れていますよ。

で,そのKSWISSを履いて,家の地下で踊りまくるっていうイメージです。まず,KSWISSで1ポイント。それに加えて,アメリカの家はよく地下に部屋がありますよね。郊外の中流階級の家庭では地下の部屋にpool table(ビリヤード台)を置いて,ちょっとした遊びの場所にするっていう。で,もちろんアメリカの家は靴を履いたまま家の中に入りますから,KSWISSを履いて踊るという映像。そういったアメリカの素敵なイメージを思い浮かばせといて,その後に「you ’bout to get your ass beat」というフレーズを繰り出す。まったりした白人の日常かと思いきや,リスナーが安心した瞬間に上記のようなフレーズを繰り出して「アタシは黒人よ!」というアイデンティティの表出を成功させます。

その素敵なシングル曲「Diddy Bop」を掲載して,本日終わりにします。

(対訳,文責及びキュレーション:Jun Nishihara)

黒人音楽の月であり奴隷解放記念日であるJuneteenthに,ティアナ・テイラー (Teyana Taylor)新盤をリリース。

黒人音楽の月(Black Music Month)に相応しいアルバムリリースとはこのことです。

ティアナ・テイラー(Teyana Taylor)の新盤『The Album』が2020年6月19日(黒人奴隷解放記念日=Juneteenthの日)に解放=リリースされました。

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実はティアナ・テイラーと当サイトの進むべき方向性は似ていると思っております。彼女は1990年生まれで,まだ29歳であるにもかかわらず,まさに90年代のR&Bミュージックで奏でられた「音と声」を現在のブラック・ミュージックに蘇らせているのが彼女であります。つまり,90年代の音楽がティアナ・テイラーを媒介とさせて生きている,ということです。「旧い音楽」というものが,こうしてティアナ・テイラーのようなアーティストが出現することにより,30年の周期で蘇っているのであれば嬉しいです。

勿論新しい体系の音楽も若者の黒人音楽も素晴らしいですが,同時に「聴き続けられるべき音楽」をこのように蘇らせてくれるのも素晴らしい。この両サイドをバランス良くとらえて楽曲に昇華させているのがティアナ・テイラーであり,それは同時に当サイトが目指すところでもあります。

ティアナ・テイラー(Teyana Taylor)の新盤『The Album』では,エリカ・バドゥ(Erykah Badu・・・出た!)やローリン・ヒル(Ms. Lauryn Hill)をフィーチャリング・ゲストとして迎えており,ティアナの芸への熱が感じられます。

楽曲4「Lowkey」でエリカの声が聞こえる瞬間,たしかに「おぉっ!」となりますね。ティアナとエリカのヴァースはこの楽曲では明確に区別されており,そこがエリカの偉大さに対するティアナの敬意のように感じられます。

楽曲5「Let’s Build」はしっとりとしたメロディーの楽曲です。ミーゴスのメンバーであるラッパーQuavoを迎えておりますが,これはQuavoがジョインした曲の中でも最もオトナっぽいしっとりとした曲の類に入るのではないでしょうか。

楽曲6「1800-One-Night」は,ティアナ自身がプロデューサーとして関わった楽曲です。つまり,「ワン・ナイト・スタンド(一夜だけの愛)」をテーマにした曲ですが,官能的な歌詞にしても,ティアナが制作したアンビアンス溢れるメロディーにしても,そういった夜があれば,まさにこの曲,使えます。そして次の楽曲7「Morning」(一晩明けた後の朝)へ移る移行(transition)は格別です。このあたり,楽曲5でしっとりとして,楽曲6でエロくして,楽曲7で朝を迎える,という風にグラデーションのように並べられているのはシングル曲では味わえないアルバムならではの聴き方でもあります。そして次・・・

楽曲8でミッシー・エリオット(Missy Elliott)を迎え,プロデューサーはティンバランド(Timbaland),簡単に踊れる曲ではないですが,メロディアスなビートにもかかわらず「静かに踊れる」曲になるでしょう。ここら辺はちゃんと90年代〜2000年代初期のR&Bを聴いて大きくなったティアナの生粋ぶりが発揮されていると思います。これは5分31秒の楽曲ですが,5分00秒に入った時点で,いきなりベース音とドラムマシンのサウンドが強くなり,曲が終わる寸前5分26秒でビートがダン・ダン・ダンとトラップ・ミュージックに変更しかけるのは,これは昔っからティンバランドが使っている手法で「次の曲への移行(transition)を予告することもあれば,新しい別の曲を披露しようとするがしないという寸止めのワザ(teasing)」でもあります。ティンバランドはこういうワザをたまに入れ込んでくるので,無意識的にもっと聴きたいという欲望が強くなります。この5分26秒のトラップ・ビートの箇所は,ヘッドフォンか何かで良く聴かないと聞こえないですので,御留意下さい。

楽曲10「Killa」及び楽曲11「Bad」は中南米の雰囲気が味わえる曲です。カリビアンもしくはジャマイカン。リアーナを彷彿とさせますが,声は全く違います。ティアナのドスの効いた奥深い声が響きます。このアルバムでは珍しい毛色になりますが,決して孤立していない(浮いていない)というところが,一貫性(consistency)を感じさせます。

楽曲16「Concrete」は名曲となる予感がします。コンクリートの街であるニューヨークはハーレム(Harlem)出身のティアナらしい題材です。同曲に,こういう歌詞があります。

Gaslightin’ my emotions
Somehow you got the notion
A woman’s better broken, but nigga, don’t provoke me
When I get reactive you tell me to chill
That’s that toxic shit that I don’t feel

溢れる感情にライターで火を点けて
あなたは気づいているフリをする
女は傷ついた状態が最高の状態なんて,ニガ,ふざけんな
あたしが激昂すると,あんたはチルしろ(おちつけ)なんて言う
そんな言葉にあたしは毒されないわ
 ー Teyana Taylor「Concrete」ヴァース2より。
(対訳:Jun Nishihara)

他にもほんとうに話題に溢れる楽曲満載の同アルバムですが,最後にもう1曲取り上げます。楽曲20「Friends」は解りますか?ミュージック・ソウルチャイルド(Musiq Soulchild)の名曲「Just Friends (Sunny)」を元ネタにサンプリングしているのです。2000年にリリースされた曲,ちょうど20年前!もうここら辺が私は,ティアナに共感・共鳴する大きな要素となっているんですよねぇ。

ちょっと聴き比べてみてください。まずはティアナから。

Teyana Taylor – “Friends”

そして元ネタ。

Musiq Soulchild – “Just Friends (Sunny)”

ティアナ・テイラーのこのアルバム,ひとまずは一通り,ご一聴してみてください。

(文責:Jun Nishihara)

現代の若者黒人文化をリードする人物(続編:レイアナ・ジェイ)

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以前,当サイトで「現代の若者黒人文化をリードする人物」として,レイアナ・ジェイを2回に分けて,取り上げました。 1回目はこちらで。 そして,2回目はこちらです。

今回で,彼女を取り上げるのは3回目になりますが,幾つかのライヴ映像等を本日はこのページにまとめて掲載しておきます。彼女の歌声を聴きたくなったら,ここへ戻ってきてください。

① Rayana Jay Presents: Love Me Like Sessions – “Know Names”

② Rayana Jay – “Sunkissed” (@ Sofar NYC)

③ For The Record: Rayana Jay performs “Sleepy Brown” and “Nothing To Talk About”(彼女の初期EPから楽曲「Sleep Brown」と「Nothing To Talk About」の生演奏です。)

④ Rayana Jay at Paramount 2018 Recap

⑤ 2017 Women to Watch: Rayana Jay(2017年注目の「若手女子」としてレイアナ・ジェイが取り上げられました。1993年生まれですので,まだ24歳の頃です。)

⑥ Rayana Jay – “Love Me Like” Trailer

⑦ Rayana Jay – “One More Time”

⑧ Rayana Jay – “Way Back”

⑨ Rayana Jay – “Sleepy Brown”(スリーピー・ブラウンっていうのは昔(いや,今も)米国南部(サウス)のヒップホップ発祥地であるジョージア州アトランタ市で生きた伝説であるアウトキャスト(OutKast)らと共に活躍したラッパーの名前ですね。彼へのオマージュである曲です。特に“What’s cooler than cool?! ICE COLD!”(クールよりクールなことってナニ?!「アイス・コールド!」)っていう超有名なアウトキャストの1行(ワンライン・シャウト)がサンプリング起用されています。)

⑩ Rayana Jay – “it’s you”(2020年5月にリリースされた彼女の新曲です。)

(文責及びキュレーション:Jun Nishihara)

ビヨンセを招いての「Savage REMIX」/ミーガン・ジー・スタリオン自身が振り付けを踊る動画UP!(そして愛犬のフォー)

先週,全米の女子たちを席巻したビヨンセ(Beyonce)を招いてのミーガン・ジー・スタリオン(Megan Thee Stallion)の楽曲「Savage Remix(サヴェッジ・リミックス)」を紹介しました。ダンサーに限らず,むしろ一般人による動画のUPが全米中で話題になりました。

そしてついに,ミーガン自身もその振り付け(choreography)を踊って,自身にインスタグラム(@theestallion)にUPされました。後ろの二人はお友達です。愛犬のフォー(@frenchie4oe)はここには登場していないですね。

ちなみに愛犬フォー(Foe Thee Frenchie(フォー・ジー・フレンチー))はコチラです。

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Señor 4oe 🐾🐶

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Who not that sleepy?🐶🐾

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以上,フォーのブロマイドページでした。

(文責&キュレーション:Jun Nishihara)

ビヨンセを招いてREMIX登場。ミーガン・ジー・スタリオンのアイマ・サヴェッジ!

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(種馬=スタリオン,ミツバチ群=クイーン・ビー。スタリオン(Stallion)とは「種付け馬のようにがっしりとした体格で性的に魅力のある女」という意味の米スラング用語。ミツバチは,ビヨンセの愛称=Queen Beeより。)

出ました。サヴェッジのリミックスヴァージョン。

今年の夏もアツくさせてくれそうです。ホット・ガール・メグことミーガン・ジー・スタリオン。

ホット・ガール・サマー(Hot Girl Summer)は2019年でした。今年2020年は,サヴェッジ・ガール・サマー(Savage Girl Summer)となる勢いです。

まずは,そのオリジナル・ヴァージョンで素人がダンス披露をするコンピレーション動画をご覧下さい。その後,ビヨンセを招いてのREMIXヴァージョンです。

オリジナル(Megan Thee Stallion – “Savage”)

以下はジャスティン・ビーバーも参戦。

続いて,2020年4月29日にリリースされたBeyonce(ビヨンセ)を招いてのリミックス:Megan Thee Stallion feat. Beyonce – “Savage Remix”です。YouTube上のミーガンの公式ページでアップされ,すぐにトレンディング急上昇第1位,再生回数は3日で1000万回超え,全米のサヴェージ女子がリミックスを掛けてダンス動画を続々UPするという記録。

以下は,#SavageRemixChallengeより。

以下はきちんと歌詞の意味を捉えてのダンスでなかなかの好印象。
https://www.instagram.com/p/B_trHmgJrws/

(キュレーション:Jun Nishihara)

現代の若者黒人文化をリードする人物(その①:レイアナ・ジェイ)

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(上記写真は,2019年4月4日にYouTubeにて生ストリーミングされた番組より。右から2人目がレイアナ・ジェイ。)

新人の女性若手アーティスト=レイアナ・ジェイは,今年でまだ25歳。昨年11月に当サイトでも取り上げました(→こちらです)

これまで3枚のEPを発表し,ついに今年3月22日に初の公式アルバム『Love Me Like』をリリースしました。

いまだにウィキペディアでは取り上げられておりませんが,上記アルバム『Love Me Like』はレイアナにとって人生初の全米ビルボードでチャートインし,冒頭の生ストリーミングでは女友達から「charting queen(チャートの女王)」と呼ばれるようにまでなりました(もちろん誇張していますし,大げさですけれど)。人生初にリリースしたアルバムが,全米ビルボードチャートのR&B部門第25位を達成。メジャーデビューは果たしていないどころか,インディーズのレーベル=EMPIRE RECORDSとの契約であるにもかかわらず,25位というのはアングラでのデビュー作にしてはなかなか良いポジションでしょう。

昨年レイアナ・ジェイについて書いた際に言及いたしましたが,レイアナは,つい最近まで,音楽だけでは食べていけず,アルバイトと兼業をしておりました。それがいつしか,やがて,アルバイトを辞めてもなんとか食べていけるようになり,音楽に専念するためニューヨークへも引っ越しをするようになり,EMPIREレーベルと契約を交わし,ニューヨークのスタジオでレコーディングをし,公式アルバムをリリースして,ついに全米ビルボードにチャートインする,というのをここ3,4年で果たしております。なかなか素敵な声の持ち主である彼女は,(ジャジーなのにジャジーすぎない)現在ヒップホップ界に蔓延る「ウケ」狙いのアーティストが多い中,そんなものたちとは全くかけ離れた,真の音楽的才能(歌手としての堅実な才能)の持ち主であるといえるでしょう。

本年3月にリリースされた『Love Me Like』より,以下の楽曲「Know Names」をご紹介いたします。

「現代の若者黒人文化(young black culture)をリードする人物」にレイアナ・ジェイを選んだ理由は,彼女はカーディBやニッキー・ミナージュのような派手さはまったくないですが,堅実な音楽性という意味では,最近ヒップホップ界に蔓延る「単なるハヤり」や「ウケ」を遥かに凌駕するものを彼女に感じたからです。冒頭の生ライヴストリームでは,レイアナは,1970年代に活躍したテディ・ペンダーグラス(Teddy Pendergrass)という黒人男性歌手についても言及しています。現代の新しいものばかりで固めるのではなく,「古きをたずねる」ということをちゃんとしています。そういった面を持ち合わせている若手アーティストはこれからも必ず伸びていくことでしょう。

昨年も書きましたが,彼女の名前=Rayana Jayの読み方は「レイアナ・ジェイ」です。英語でこれを発音すると,「レイナ」のように「ア」にアクセントを置きます。つまり「ア」を強く発音するのですが,レイアナ自身が経験した,以下のエピソードを紹介いたします。

あなたはスタバ(正式名:Starbucks)で働いていたとします。そこへ,とある黒人女性のお客さんがやってきて,抹茶ラテのトールを注文しました。スタバでは,カップにお客様の名前を書くことになっていますので,あなたは,その女性に尋ねます。「How may I call you?(あなたのお名前は?)」,すると女性はこう答えました「You can call me ‘Rayana(レイナ)’.」と。

さて,それを聞いたあなたは,彼女の名前を英語で,カップにどう書きますか?忘れてはいけないのは,ここはスタバです。まわりはお客様でにぎわっておりますので,けっして静かな場所とは言えません。静かなところで,耳をすまして,「レイアナ」と聞いたわけではなく,まわりで抹茶ラテを作るシェーカーがガガガガガガガーーーー!と鳴って,がちゃがちゃしているところでそのお客さんが「レイアナ」と発音するのを聞いて,あなたはカップにその名前を英語で書かなきゃいけないのです。さて,英語でなんと書きますか?

これは実際に起こったシチュエーションです。レイアナ・ジェイがアトランタ(ジョージア州アトランタ)にあるTrap Museumを観に旅行した際,寄ったスタバで出てきた抹茶ラテのカップにはこう書かれておりました。

「Rihanna(リーナ)」と。

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なお,女性ファッション雑誌(Nylon Mag)で取り上げられた企画「60秒でわかるレイアナ・ジェイ」を掲載しておきます。

最後に,レイアナ・ジェイの最新アルバム『Love Me Like』から楽曲「Know Names」をセッションした映像を掲載しておきます.

(文責:Jun Nishihara)

若手アーティストの街角:Rayana Jay – “Sunkissed”

それは昨年のことであった。最近お気に入りの若手アーティスト,Nonameという女性ラッパー/シンガーのデビューアルバム『Telefone』を視聴者が好きな金額を出し合って購入できるサイト=bandcampで購入しようとしていた時であった。もちろん『Telefone』は購入した。そのあと,もっと黒人女性のヴォーカルが聴きたかったので,引き続きbandcampでいろいろとさぐってみた。

するといいのを見つけてしまった。Rayana Jayという新人歌手である。R&Bでもない,ジャズでもない。でも声はまさに私が求めていたものであった。Apple Musicで無料で聴ける時代に,お金を出して買って聴きたくなる声であった。

それから彼女のアルバム『Sorry About Last Night』と『Morning After』を何度聴いたことか。

彼女の声は色っぽくて,ちょっぴりエロいけれど,ぜんぜん下品じゃない。ジャズでもないけれど,ジャジーに聞こえる。メロディーは洗練されている。でも上品すぎない。だって,歌詞に「nigga」とか言ってるんだし。でもやっぱり,ぜんぜん下品に聞こえない。黒人女性が「nigga」という時,なぜかエロく聞こえる。呼びかけの「nigga」じゃなくて,文法的にちゃんとしたセンテンスの中に含む「nigga」である。
たとえば・・・

You are my Rhythm and Blues, the one who invented the cool
The one’s who dented the rules
And showed the world what my niggas could do, ay!
– Rayana Jay “Sunkissed”

私にとって,あなたの存在は“リズム&ブルース”/元祖クールな連中
ルールなんてぶち破ってくれる
世界中に見せつけてやりな,黒人野郎たちが秘めてるスゴイところを,エィ!
– Rayana Jayのシングル曲「Sunkissed」より

黒人女性が同胞の男たちを「niggas」と呼ぶとき,その根底には「共通理解/暗黙の了解」が流れている。「わたしはあなたのことをniggaと呼ぶけど,わかってるわよね」ということである。

また,歌詞中の「dent」の使い方がドキドキする。普通「rules」に付ける動詞は「break」である。それなのに,先の「invented」と韻を踏ませるために過去形の「broke」ではなく「dented」を使っているのだけれども,「niggas」という言葉を使っているような若者の女が「dented」なんていう,よく考え出された知的な語彙を使っているところが,もうたまらなくエロく感じてしまう。

さて,彼女の素顔をこの映像で見てみてほしい。まだ23歳。

そして,先ほど取り上げた歌詞が含まれている楽曲「Sunkissed」をライヴで歌っているRayana Jayは以下のとおりである。

ときにRayana Jayの読み方は「レイアナ・ジェイ」である。まだ彼女の情報は現時点(2018年11月28日時点)では英語版ウィキペディアにも載っていないし,日本盤のCDも出ていないので,彼女の名前の公式な日本語表記はどこにも無いが,読み方は「レイアナ・ジェイ」でございます。(ウィキペディアにも載っていない頃からRayana Jayの音楽をどっぷり聴いているんだけれど,これから近い将来にはRayanaもウィキペディアに掲載されるようになって,そのうちメジャーデビューを果たしたりするんだと思う。もちろんメジャーデビューして,もっともっと金儲けしてもらいたいのだけれど,そうなると,なんか遠くへいってしまったように感じたりするのだろうか。アーティストっていうのは,そんなものよね。なんちゃって。)

Rayanaの生まれはカリフォルニア州リッチモンド市。10歳の頃に教会のクワイヤーで歌い始めて,2012年の夏に初めてプロの歌手として働き始める。出だしはまったく稼げないので,アルバイトと兼業していた。Rayanaとツイッター上で何度かメッセージを交わしたことがあるが,今年になってアルバイトを辞めるだけのお金が稼げるようになり,今年2018年の夏に晴れてニューヨークへ引っ越し,シンガーソングライターとして全面的に働けるようになったという。

これからの活躍に期待大です。

最後に彼女の言葉で締めくくります。

“My friend once said that the church is like the hood Juilliard…like everything starts here.”
(あたしの友達がかつて言ってた。地元の教会って,ゲットーのジュリアード大学みたいなもんよ,ってね。何もかもそこから始まったわ。)

(文責:Jun Nishihara)