小休止②:ジャスミン・サリヴァンのグラミー賞受賞スピーチ

本日も2022年Hip-Hopランキングをお休みして、小休止その2をお届けします。

今年のグラミー賞で、「最高のR&Bアルバム」カテゴリーでグラミー賞を受賞したのがジャスミン・サリヴァン(Jazmine Sullivan)でした。

R&Bアルバム『Heaux Tales』で「Best R&B Album」を受賞。

なお、おまけにジャスミンがコロナ禍中に米NPR局のTiny Desk (Home) Concertに登場した際の映像をこちらでどうぞ。

(文責:Jun Nishihara)

REMIXという概念はコイツが創始した=パフ・ダディことP.ディディがイマ旬のYung MiamiとAshantiを迎え2022年の名曲「Gotta Move On」のREMIXを発表

シティ・ガールズ(City Girls)の片割れであるヤング・マイアミ(Yung Miami)(下記MVの冒頭でエロい格好で踊る女(ちなみに「穿いてます」))と,R&B界の大御所である(2001年に日本でも明石家さんまちゃんが大好きと言っていたアルバム『Ashanti』でデビューしたその名のとおり)アシャンティ(Ashanti)を迎え,米ヒップホップ界の“ビッグ3”の一人であるパフ・ダディことP.ディディ(P. Diddy)が今年だいぶ流行った楽曲「Gotta Move On」のREMIXをリリースしました。(ちなみにのちなみに,City Girlsのヤング・マイアミは最近こちらのTV番組を放映開始して,アメリカの若者女子に大人気であります。)

それがこちらです。

Diddy feat. Bryson Tiller REMIX with Yung Miami & Ashanti – “Gotta Move On REMIX”

ちなみに下記のMVはニューヨーク市で撮影されました。こうして観ると,ニューヨークに住んでいるのもわるくないと思ってしまいます。ここにいられることに感謝。

(文責:Jun Nishihara)

Caresha Please:インタヴュー映像(City Girls, Megan Thee Stallion, そしてディディ)

現代ヒップホップに最も影響を与えている3名のMCのインタヴューを掲載いたします。

まず1人目はシティ・ガールズ(City Girls)から、ヤング・マイアミの相方であるJTです。ヤング・マイアミ(本名:カレーシャ)がインタヴュアーを務める新番組『Caresha Please』から、相方(JT)をインタヴューするというものです。

そして2人目、メィガン・ジー・スタリオン(Megan Thee Stallion)です。最近ニューアルバム『Traumazine』をリリース。当サイトでも何度も取り上げさせてもらったアーティストです。

そして3人目、ディディ(Diddy)AKA パフ・ダディ(Puff Daddy)です。最近、ブライソン・ティラー(Bryson Tiller)をfeat.した新曲「Gotta Move On」を発表しました。90年代~2000年代初頭にかけてのクラブ全盛時代へのオマージュ曲です。

(文責&キュレーティング:Jun Nishihara)

2022年イチオシのアルバム=Rod Waveの『Beautiful Mind』と、Rod WaveのNPR局でのTiny Desk (Home) Concertを。

標題のとおり、ロッド・ウェイヴ(Rod Wave)です。Hip-Hop界久しぶりの「歌モノ」でヒットをかっ飛ばすシンガー/ラッパー(いわば2022年のネリー(Nelly))ですが、新盤『Beautiful Mind』から3曲、掲載しておきます。その後、Tiny Desk (Home) Concertでのパフォーマンスを記載いたします。

1. Rod Wave – “Never Get Over Me”(これを書いている現時点、米YouTubeの音楽部門においてトレンディングでNo.2です。)

2. Rod Wave – “Forever”

3. Rod Wave – “Cold December”(サビで“No more cold Decembers”と裏声で歌うところが涙をそそられますが、もう他のHip-Hopアーティストとは確実に一線を画するシンガーであることは間違い無いです。)

米NPR局「Tiny Desk (Home) Concert」シリーズに登場した際の映像はこちらです。

(キュレーティング:Jun Nishihara)

BEYONCE新盤『ルネッサンス(Renaissance)』リリース!

ついに、出ました。
R&Bの常識を覆すようなサウンドが詰まったアルバム。

ちなみにこのアルバムは、細切れな楽曲毎や、トラック毎に聴くのではなく、一つの大きな作品としてアルバムを通して聴くべし芸術作品である。

と、断りを入れておきつつ、次の3曲を掲載します。

1. Alien Superstar

2. Cuff It

3. ENERGY

文責:Jun Nishihara

レイアナ・ジェイ(Rayana Jay)のニューアルバム『Last Call』はムードたっぷりのR&Bミュージック。

レイアナ・ジェイ(Rayana Jay)については、当サイトでも数回取り上げました

そのレイアナ・ジェイが本年1月28日にニューアルバム『Last Call』をリリースしましたので、同アルバムの収録楽曲を幾つか掲載しておきます。

Rayana Jay – “Intro”

Rayana Jay – “Last Call”

Rayana Jay – “Blame It”

なお、以下の動画については、2020年6月にこちらのページでも取り上げましたが、久しぶりに再掲しておきます。

(キュレーティング:Jun Nishihara)

ついにコーデー (Cordae)が米NPR局Tiny Desk (Home) Concertへ登場!!

デビュー当時にはハードコアのラップをやっていましたが,ここへ来てここまでジャジーな音楽を作るようになるとは,誰が想像したでしょうか。しかしコーデーにとって,以前から全く変わっていないのは,ラップスタイル。むしろ上達しているというか,時間が経てば経つほど味が良くなるワインのように,深みを増しているように感じます。今般(2022年1月14日)リリースしたアルバム『From A Bird’s Eye View』をひっさげて,Tiny Deskにやって参りました。

後半,「Sinister」のように伝統的なフローをかまして,その次に地元ゲットーにおけるギャング抗争で亡くなった仲間に捧げる生まれ故郷のフッド「Momma’s Hood」,そしてデスチャの「Say my name」ラインを起用する楽曲「Chronicles」,ちょっとここらへんで哀愁が感じられる程まで成長を感じられます。涙をそそります。

完成度は非常に高いです。

(文責:Jun Nishihara)

黒人若手女子アーティスト2名(米公共ラジオ局(NPR)主宰“Tiny Desk Concert”で取り上げられた黒人女子シンガー抜粋(その②))

本日ご紹介する2名のシンガー/ラッパーは,現代音楽界に於ける,とても特別なお二人です。

ひとりめは,当サイトでも以前取り上げました。
公式デビューアルバムを本年3月にリリースしたチカ(CHIKA)です。
(「第4位:大ブレイク寸前,漆黒の女子ラッパー=オラニカ又の名をCHIKA「トランプ大統領への手紙」(2019年Hip-Hop名曲名場面ベスト50)」)

ついに,チカも米公共ラジオ局(NPR)の「Tiny Desk Concert」に登場するようになりました。
以下の演奏と彼女の饒舌ぶり(間奏中の,おしゃべり達者!)をご堪能下さい。

前回,当サイトで彼女を取り上げた際には彼女が公式デビューアルバム『Industry Games』をリリースする前でしたので,彼女のフリースタイル映像をメインにご紹介いたしました。

最近はもう有名になってきておりますので,米国現代の若者文化(スローガンは“The Culture of Now”)を代表するウェブサイトUPROXXに於いて,“Rising Hip-Hop Star”(人気上昇中のヒップホップスター)として取り上げられたこともあり,その洗練されたミニセッション映像をお送りいたします。

チカのシングル曲「No Squares」も掲載しておきます。

ちなみにヒップホップを聴いている方なら誰でも知っている(べき)元Queen of Hip-Hopといえばローリン・ヒル(Lauryn Hill)ですが,彼女のメジャーヒットシングル曲「Doo Wop (That Thing)」のビートに乗っけたチカ(CHIKA)のフリースタイルがありますので,掲載しておきます。これは2017年の映像です。もう3年前!

もうひとつ,チカのフリースタイルを。これも3年前の映像です。キレッキレのフリースタイルです。韻を全くハズさない!脚韻だけでも注意して聴いてみてください。脚韻というのは各ラインの終わりのフレーズで踏む韻です。

続きまして,ふたりめはNoname(ノーネーム)です。本名ファティマ・ワーナー。当サイトでも以前,こちらで取り上げました

彼女の以下“Tiny Desk Concert”での模様は,大好きな動画の一つで,これを観て朝元気になって仕事に行くということもありました。

Nonameはシカゴ出身。シカゴはカニエ・ウェストやコモン,ルーペ・フィアスコなど,ソウルフルなラッパーを数々輩出してきた大都市です。そこにこの特別な星(スター)をわれわれファンに授けてくれるなんて,なんてありがたいことか。

Nonameのように,ラップが詩的な人,って最近はめずらしくなってきています。とくに20代のアーティストではそうです。とっても貴重なアーティストなのですよ,ノーネームは。

そんな特別な存在であるNonameのライヴが51分間堪能できる映像がありますので(YouTube, thank you!)掲載しておきます。

あまりにも有名なシングル曲「Diddy Bop」のサビでNonameは歌います。

Watching my happy block my whole neighborhood hit the diddy bop
(ハッピーな近所の隣人たちが,みんなでディディ・ボップのダンスを踊る)

この1行を聴いた時,聴いた人の頭の中では,「幸せそうな隣人たち」のイメージが浮かんだかと思いきや,その後瞬間的に,イメージは「ディディ・ボップを踊る黒人」に切り替わります。

「幸せそうな隣人たち」といういかにもゆったりした時間かと思いきや,次に飛び込んでくる映像は「ディディ・ボップ」ですからね。もう,たまんないです。

同曲から,もう少し歌詞を引用してみます。

Stop overreacting, it’s past my curfew I’m out after 6
Happily making my accident
Mama gon’ whoop on my ass again
Pray that I’m making my way before 8 and I might have to sneak in the back again

(対訳)
過剰に反応しないで,門限はとっくに過ぎてる,夕方6時を回ってる
嬉しさあまりにアクシデント起こす
ママにまたお尻ぺんぺんされるわよ
祈ってる,午後8時前までには帰宅できること,また家の裏口からこっそり入ろうかしら

なんて素朴な歌詞!
Rauryというノーネーム仲間のヴァースです。

まぁ,これがノーネーム(Noname)なのです。まったく飾らない,素朴な歌詞を曲にするのです。

そして冒頭のチカ(CHIKA)とは対照的で,ノーネームには脚韻はあまり関係ないのです。その分,ラップにキレ感は無いのですが,しかしながら,脚韻なんて踏まなくても,すでに詩的になっている。

もう一丁,歌詞,行ってみましょう。

B2K in the stereo, we juke in the back seat
Or juke in the basement, in love with my KSWISS’s
This feel like jumping in a pool and I’m knowing I can’t swim
Ooh, you about to get your ass beat
For stealing that twenty dollars like “baby, just ask me”

(対訳)
ステレオで流れるB2Kの歌,後部座席でバカ暴れするアタシたち
お気に入りのKSWISSのスニーカー履いて,家の地下でバカ暴れ
まるで気分は,プールに飛び込んで,アタシ,泳げないんだけどね
ウゥゥ,あんた,ママにお尻蹴飛ばされるわよ
20ドル札ドロボーしたでしょ「ベイビー,いつでも言って」って

良いですねえ。

歌詞中の「B2K」っていうのは2000年代前半に流行った黒人のボーイバンドです。↓これです。

gettyimages-2819389-2048x2048

2行目の「KSWISS」っていうのは,これも2000年代前半に流行ったスニーカーです。懐かしいですね。今でも売れていますよ。

で,そのKSWISSを履いて,家の地下で踊りまくるっていうイメージです。まず,KSWISSで1ポイント。それに加えて,アメリカの家はよく地下に部屋がありますよね。郊外の中流階級の家庭では地下の部屋にpool table(ビリヤード台)を置いて,ちょっとした遊びの場所にするっていう。で,もちろんアメリカの家は靴を履いたまま家の中に入りますから,KSWISSを履いて踊るという映像。そういったアメリカの素敵なイメージを思い浮かばせといて,その後に「you ’bout to get your ass beat」というフレーズを繰り出す。まったりした白人の日常かと思いきや,リスナーが安心した瞬間に上記のようなフレーズを繰り出して「アタシは黒人よ!」というアイデンティティの表出を成功させます。

その素敵なシングル曲「Diddy Bop」を掲載して,本日終わりにします。

(対訳,文責及びキュレーション:Jun Nishihara)

黒人音楽の月であり奴隷解放記念日であるJuneteenthに,ティアナ・テイラー (Teyana Taylor)新盤をリリース。

黒人音楽の月(Black Music Month)に相応しいアルバムリリースとはこのことです。

ティアナ・テイラー(Teyana Taylor)の新盤『The Album』が2020年6月19日(黒人奴隷解放記念日=Juneteenthの日)に解放=リリースされました。

Teyana-Taylor

実はティアナ・テイラーと当サイトの進むべき方向性は似ていると思っております。彼女は1990年生まれで,まだ29歳であるにもかかわらず,まさに90年代のR&Bミュージックで奏でられた「音と声」を現在のブラック・ミュージックに蘇らせているのが彼女であります。つまり,90年代の音楽がティアナ・テイラーを媒介とさせて生きている,ということです。「旧い音楽」というものが,こうしてティアナ・テイラーのようなアーティストが出現することにより,30年の周期で蘇っているのであれば嬉しいです。

勿論新しい体系の音楽も若者の黒人音楽も素晴らしいですが,同時に「聴き続けられるべき音楽」をこのように蘇らせてくれるのも素晴らしい。この両サイドをバランス良くとらえて楽曲に昇華させているのがティアナ・テイラーであり,それは同時に当サイトが目指すところでもあります。

ティアナ・テイラー(Teyana Taylor)の新盤『The Album』では,エリカ・バドゥ(Erykah Badu・・・出た!)やローリン・ヒル(Ms. Lauryn Hill)をフィーチャリング・ゲストとして迎えており,ティアナの芸への熱が感じられます。

楽曲4「Lowkey」でエリカの声が聞こえる瞬間,たしかに「おぉっ!」となりますね。ティアナとエリカのヴァースはこの楽曲では明確に区別されており,そこがエリカの偉大さに対するティアナの敬意のように感じられます。

楽曲5「Let’s Build」はしっとりとしたメロディーの楽曲です。ミーゴスのメンバーであるラッパーQuavoを迎えておりますが,これはQuavoがジョインした曲の中でも最もオトナっぽいしっとりとした曲の類に入るのではないでしょうか。

楽曲6「1800-One-Night」は,ティアナ自身がプロデューサーとして関わった楽曲です。つまり,「ワン・ナイト・スタンド(一夜だけの愛)」をテーマにした曲ですが,官能的な歌詞にしても,ティアナが制作したアンビアンス溢れるメロディーにしても,そういった夜があれば,まさにこの曲,使えます。そして次の楽曲7「Morning」(一晩明けた後の朝)へ移る移行(transition)は格別です。このあたり,楽曲5でしっとりとして,楽曲6でエロくして,楽曲7で朝を迎える,という風にグラデーションのように並べられているのはシングル曲では味わえないアルバムならではの聴き方でもあります。そして次・・・

楽曲8でミッシー・エリオット(Missy Elliott)を迎え,プロデューサーはティンバランド(Timbaland),簡単に踊れる曲ではないですが,メロディアスなビートにもかかわらず「静かに踊れる」曲になるでしょう。ここら辺はちゃんと90年代〜2000年代初期のR&Bを聴いて大きくなったティアナの生粋ぶりが発揮されていると思います。これは5分31秒の楽曲ですが,5分00秒に入った時点で,いきなりベース音とドラムマシンのサウンドが強くなり,曲が終わる寸前5分26秒でビートがダン・ダン・ダンとトラップ・ミュージックに変更しかけるのは,これは昔っからティンバランドが使っている手法で「次の曲への移行(transition)を予告することもあれば,新しい別の曲を披露しようとするがしないという寸止めのワザ(teasing)」でもあります。ティンバランドはこういうワザをたまに入れ込んでくるので,無意識的にもっと聴きたいという欲望が強くなります。この5分26秒のトラップ・ビートの箇所は,ヘッドフォンか何かで良く聴かないと聞こえないですので,御留意下さい。

楽曲10「Killa」及び楽曲11「Bad」は中南米の雰囲気が味わえる曲です。カリビアンもしくはジャマイカン。リアーナを彷彿とさせますが,声は全く違います。ティアナのドスの効いた奥深い声が響きます。このアルバムでは珍しい毛色になりますが,決して孤立していない(浮いていない)というところが,一貫性(consistency)を感じさせます。

楽曲16「Concrete」は名曲となる予感がします。コンクリートの街であるニューヨークはハーレム(Harlem)出身のティアナらしい題材です。同曲に,こういう歌詞があります。

Gaslightin’ my emotions
Somehow you got the notion
A woman’s better broken, but nigga, don’t provoke me
When I get reactive you tell me to chill
That’s that toxic shit that I don’t feel

溢れる感情にライターで火を点けて
あなたは気づいているフリをする
女は傷ついた状態が最高の状態なんて,ニガ,ふざけんな
あたしが激昂すると,あんたはチルしろ(おちつけ)なんて言う
そんな言葉にあたしは毒されないわ
 ー Teyana Taylor「Concrete」ヴァース2より。
(対訳:Jun Nishihara)

他にもほんとうに話題に溢れる楽曲満載の同アルバムですが,最後にもう1曲取り上げます。楽曲20「Friends」は解りますか?ミュージック・ソウルチャイルド(Musiq Soulchild)の名曲「Just Friends (Sunny)」を元ネタにサンプリングしているのです。2000年にリリースされた曲,ちょうど20年前!もうここら辺が私は,ティアナに共感・共鳴する大きな要素となっているんですよねぇ。

ちょっと聴き比べてみてください。まずはティアナから。

Teyana Taylor – “Friends”

そして元ネタ。

Musiq Soulchild – “Just Friends (Sunny)”

ティアナ・テイラーのこのアルバム,ひとまずは一通り,ご一聴してみてください。

(文責:Jun Nishihara)