第1位:カニエ・ウェスト (YE) のアトランタ及びシカゴでの計3回のリスニング・パーティー,日曜日のサンデー・サービス,ドレイクとのLIVEコンサート,Revolt TV番組「Drink Champs」への出演,Rolling Loud 2021でのフューチャーとの共演,そして,アルバム『DONDA』のリリース(2021年最高のHIP-HOPモーメントBEST 10)

表題のとおりです。
ひとつずつ,挙げていきます。

カニエ・ウェスト(Kanye West)のリスニング・コンサート第1回目 @ アトランタ(7月22日)

カニエ・ウェストのリスニング・コンサート第2回目 @ アトランタ(8月9日)

カニエ・ウェストのリスニング・パーティー第3回目 @ シカゴ(8月26日)

カニエ・ウェスト率いるサンデー・サービス(Sunday Service)(下記の映像は12月26日のもの)

カニエ・ウェスト(Kanye West)及びドレイク(Drake)との共演LIVEコンサート(12月9日)

カニエ・ウェストのREVOLT TV番組「Drink Champs」への出演(第1回目:11月5日)

カニエ・ウェストのREVOLT TV番組「Drink Champs」への出演(第2回目:11月11日)

Rolling Loud 2021でのフューチャー(Future)のステージにカニエ・ウェスト(Kanye West)登場(12月12日)

そしてアルバム『DONDA』リリース(8月29日)

2021年の第1位は,ようやくカニエ・ウェスト(Kanye West)に決まりです。このサイトを始めて,毎年,年末年始にランキングをやってきましたが,2018年:ミーク・ミル(Meek Mill),2019年:メーガン・ジー・スタリオン(Megan Thee Stallion),2020年:2年連続でメーガン・ジー・スタリオン(Megan Thee Stallion)でしたが,ようやくカニエが第1位を飾る年がやってきました。

なお,ドレイク(Drake)については,ランキングを開始してから毎年トップ10入りを果たしていましたが,今年ニューアルバム『Certified Lover Boy』をリリースしたにもかかわらず,初めてランクインから外れてしまいました。

2021年も当サイトに来てくださり,ありがとうございました。
本年2022年もどうぞよろしくお願いいたします。

(文責:Jun Nishihara)

第2位:久しぶりに本場NYのHIP-HOPを聴かせてくれた“The LOX vs. Dipset”のVerzuz対決(2021年最高のHIP-HOPモーメントBEST 10)

2021年最高のHIP-HOPモーメントとして,BEST10を第10位からカウントダウンして参りましたが,いよいよ第2位の発表となりました。

2021年最高のHIP-HOPモーメントはマチガイ無く,“The LOX vs. DipSet”のVerzuz対決でした。

いずれも甲乙をつけ難い対決なのですが,NYラップを好むあなた(かどうかは私は知りませんが)NYラップを好きな人であれば,The LOX(=Jadakiss, Styles P, Sheek Louch)もDipset(=Cam’ron, Juelz Santana, Jim Jones, Freekey Zekey)もいずれも聴き込んだことでしょう。

その2つのグループ対決なのですから,おもしろくならないわけがない。

その対決の模様は以下に掲載いたしますが,まずは,full setlistを以下のとおり記載します。

The Diplomats, “I’m Ready”
The LOX, “F-ck You”
The Diplomats, “Crunk Muzik”
N.O.R.E. feat. The LOX, “Banned From TV”
Cam’ron feat. Lil Wayne, “Suck It Or Not”
DMX feat. The LOX, “N-ggaz Done Started Something”
Juelz Santana feat. Cam’ron, “Dipset (Santana’s Town)”
Sheek Louch feat. Jadakiss, J-Hood, & Styles P, “Mighty D-Block (2 Guns Up)”
Cam’ron, “Get Em Girls”
Cam’ron feat. Daz Dillinger, “Live My Life”
Jadakiss, “Who Shot Ya (Freestyle)”
Cam’ron, “357”
Cam’ron feat. Memphis Bleek & Beanie Sigel, “The ROC”
JAY-Z feat. The LOX, Beanie Sigel, & Sauce Money, “Reservoir Dogs”
Jadakiss, “Blood Pressure”
Ma$e feat. The LOX, Black Rob, & DMX, “24 Hours to Live”
Jim Jones, “G’s Up”
Jim Jones, “Harlem”
Jim Jones, “Byrd Gang Money”
Purple City, “Purple City Byrd Gang”
The LOX, “Chest 2 Chest”
The Diplomats, “Bout It Bout It… Pt. 3”
The LOX, “Dope Money”
Cam’ron feat. JAY-Z & Juelz Santana, “Welcome to New York City”
Akon feat. Styles P, “Locked Up (Remix)”
Jim Jones feat. Cam’ron, Bezel, & The Game, “Certified Gangstas”
Jim Jones, “We Fly High”
Diddy feat. The LOX, “It’s All About the Benjamins”
The Diplomats, “Dipset Anthem”
The LOX, “Wild Out”
Cam’ron, “Killa Cam”
Sheek Louch, “Kiss Your Ass Goodbye (Remix)”
The Diplomats, “Salute”
Jim Jones feat. Juelz Santana & Waka Flocka Flame, “848”
Styles P, “Felony N-ggaz”
Cam’ron feat. Juelz Santana, “Oh Boy”
Cam’ron feat. Freeky Zekey, Toya, & Juelz Santana, “Hey Ma”
Ruff Ryders feat. The LOX, “Ryde or Die”
Mariah Carey feat. The LOX & Ma$e, “Honey (Bad Boy Remix)”
Jennifer Lopez feat. The LOX, “Jenny From the Block (Remix)”
Sheek Louch, “Good Love”
Jadakiss, “Knock Yourself Out”
Jim Jones, “Summer Wit’ Mami”
Styles P, “Good Times”
The Diplomats, “S.A.N.T.A.N.A.”
Juelz Santana feat. Cam’ron, “Murda Murda”
Jadakiss, “All For the Love”
DJ Clue feat. Styles P, Jadakiss, Eve, DMX, & Drag-On, “Ruff Ryders Anthem (Remix)”
DMX feat. Sheek Louch, “Get At Me Dog”
The Notorious B.I.G. feat. The LOX, “Last Day”
Cam’ron feat. Kanye West & Syleena Johnson, “Down & Out”
The LOX feat DMX & Lil’ Kim, “Money, Power, Respect”
Jadakiss, “By Your Side”
N.O.R.E. feat. Styles P, “Come Thru”
Jadakiss, “Put Ya Hands Up”
DMX feat. The LOX & JAY-Z, “Blackout”
Jadakiss feat. Styles P, “We Gonna Make It”
The Diplomats, “I Really Mean It”

このタイトルの並びを見るだけでも「なんとも贅沢な」と思われてしまうかもしれませんが,これが実際,あったのです。

その一部始終はこちらです。
NYラップが好きなあなたや私にとって,この動画は2022年を1年間生き続けるための生きる糧となります。

The LOXが登場する冒頭でDMXの犬の呻き声を響かせたのは,少しじーんときました。

(文責:Jun Nishihara)

第3位:L.A.のHIP-HOPラジオ局“L.A. Leakers”でのJ. Coleのフリースタイル(2021年最高のHIP-HOPモーメントBEST 10)

このJ. Coleのフリースタイル,全てにおいて,完璧であり,2021年最も素晴らしいフリースタイルとして私は認定いたします。途中からフローを変化(へんか)させるという変化(へんげ)についても注目。

(文責:Jun Nishihara)

第4位:2021年,あの世にいっちまったDMXへ捧げる俺からの個人的な哀悼。

個人的に高校生の頃初めて聴いて度肝を抜かれたDMXというラッパーがいました。初めて聴いたアルバムは『…And Then There Was X』でした。まず囁き声で「Ruff Rydersss」と聞こえ始め,その後,本物の猛犬が鳴いているのか,DMXの鳴き声なのか判別し難いほど,あらゆる犬の鳴き声が聞こえてくるという冒頭で開始するアルバムです。そして,吃(ども)り声のお経がはじまったのかと思わせるようなDMXのラップ及びフロー。こんなアルバムは聴いたことがないと,当時Limp Bizkitにのめり込んでいた私は思ったわけです。その頃から,地元の高校の近くにあったTower Recordsに通っては,お金があんまり無かったので,CDの視聴コーナーでDMXとジェイ・Zがどちらが強いか(当時,私はどっちが“強いか
”という打撃力でラッパーたちを比較していました)と聴き分けながら,遊んでいました。その頃から,ラップを「聴き分ける」というスキルを身につけたんだと思います。当時から英語は得意・好きでしたから,英語のラップもなんとなく解りました。当時はインターネットなんて無い時代でしたから,リリックは歌詞カード(をWAYというレンタル屋さんで借りては家に唯一あったFAX機で大量にコピーして,歌い込んで覚え込んでいました)が頼りでした。

ラッパーを打撃力で聴き分けるというのは,当時,DEF JAMレコーズの日本支部が独自に出していたラップ・カード(当時は1998年頃ですよ!)で「HPとMP(これは攻撃力と魔力に分けたドラクエの影響ですね)」に分けて,パワーを表示していたものに起因します。それに影響を受けて,いろんなラッパーを私なりに「HPとMP」に分けて聴いていた,というわけです。

ですから,DMX愛が始まったのは,かれこれ,もう23年前のことです。

その後,私はオハイオ州の高校に高校4年生(いわゆるアメリカでいうsenior class)として留学し,白人のクラスメートの家に行って,DMXやジェイ・Zやスヌープ・ドッグの音楽を聴いたのです。別のクラスメートに,ベトナム系のアメリカ人がいて(親はベトナムからの移民で,そのクラスメートはアメリカ生まれアメリカ育ちのベトナム人ですね),そいつの部屋にはシャワーもあり(自分の部屋にシャワーがあるアメリカ人の高校生の家にあこがれた!),ベッドルームにはロッカフェラ(Roc-a-fella)レコーズのロゴやアーティストのポスターだらけだったことに感動し,その瞬間私はDMXは負けた,これからはジェイ・Zの時代だ,と悟ったのです。

その時から,攻撃力(HP)だけではダメだ,魔力(MP)が必要だ,と思うようになったのです。攻撃力だけでは確実にDMXが優っていましたが,それ以上に,ジェイ・Zには魔力がありました。マジック・パワー(MP)ですね。ジェイ・Zの攻撃力以外のパワー(ヒップホップ界への影響力だとか,フローのかっこよさだとか,金儲けの巧さだとか,そういった魔力的なもの)がすげぇ,と素直に思ったのです。

そういう高校時代を過ごしたものですから,Ruff RydersやRoc-a-fellaまわりを中心にして,私のヒップホップ愛は増幅していったのでした。

そんな私も,オトナになり,仕事を始めるようになってからも,DMXはストレス発散をしてくれる音楽として,当時ほどでもないにせよ,時々聴いていました。正直なこというと,ジェイ・Zばかり聴くようになり,大学を卒業した後,まだMySpaceやミクシーが流行っていた頃(ブログという言葉が生まれた初期の頃=2005年頃ですね),ジェイ・Z愛についてはその時代に語り尽くしましたが,それくらいジェイ・Zに傾倒していたのでした。

オトナになってから,16年経った今,時代もだいぶ変わり,CDはもはや買わない時代となった今,ストリーミング・サービス等で,月額を支払って音楽を聴くような時代になり(サブスクなんていう言葉が当たり前に使われるようになった時代になり),DMXを今,ジェイ・ZのTIDALで聴いている(どっちが勝った?やっぱり魔力の勝ちか?)という人生を送っているのです。

そんな私の人生と重なるようにいたDMXがですよ,あの世にいっちまったんです,2021年。そりゃあ,家を飛び出したくなります。でも哀しいかな,私もオトナになってしまったのかな。スピーカーをbluetoothで繋いで,DMXの曲を爆音で流したくらいです。今この瞬間はNYにいますが,DMXの故郷であるヨンカーズ(Yonkers)に行くこともなく,なんて醒めた人間になったんだ私は,と思いましたよ。

あの時代に骨の髄まで感じていたDMX愛はどこにいっちまったんだ?!と。

いま,TIDALでDMXを爆音で流しながら,これを書いています。

ついついなつかしくなっちまって,DMXについて書いてしまいました。

それが,こちらこちらこちらです。

DMXよ,あんたが俺の心の奥底に残してくれた遺産は,最近は表現することがなかったけどよ,心の奥底にそのまんまあったことは確かだ。1998年以来,23年間,消えることなく。23年間消えなかったから,このまんまおそらくずっと消えることはないだろうな。新しいラッパーが生まれてきても,ケンドリック・ラマーや21 Savageなんていうラップがそこそこ上手いヤツらが出てきても,DMX,おまえは俺の心の奥底に生きたままだ。昔も今も。

(文責:Jun Nishihara)

第5位:映画『Judas and the Black Messiah』から,ジェイ・Zのヴァース「What It Feels Like」より(2021年最高のHIP-HOPモーメントBEST 10)

ニプシー・ハッスル(Nipsey Hussle)が生前にレコーディングしていたヴァースを起用して,ジェイ・Z(JAY-Z)が本年リリースされた映画『Judas and the Black Messiah(邦題:ユダ&ブラック・メシア(裏切りの代償))』のインスパイアード・アルバム収録の楽曲に,ヴァースを提供しました。

2021年イチの“featured verse”として,ジェイ・Zのこのヴァースを第5位に認定いたします。

[Verse 2: JAY-Z]
Scorpion bricks, way before Aubrey’s double disc
.40 on my lap, clap, sound like 40 did the mix
Filtered bass, sift coke like a Michelin star chef
Chef kiss to my wrist, I go dummy with my left
IRS on my dick try to audit all my checks, too late
You know they hate when you become more than they expect
You let them crackers storm your Capitol, put they feet up on your desk
And yet you talkin’ tough to me, I lost all my little respect
I’m sellin’ weed in the open, bringin’ folks home from the feds
I know that payback’s gon’ be mean, I’m savin’ all my little bread
Pray for me, y’all, one day I’ma have to pay for these thoughts
Real niggas is extinct, it ain’t safe for me, my dawg
They killin’ niggas in they own hoods, that make sense to you at all?
You burnt your bridge to the other side, you know you can’t swim across
Y’all know niggas can’t swim, they fried Mike after he died
Y’all know niggas can’t win, you never land, all jokes aside
I arrived on the day Fred Hampton got mur—, hol’ up
Assassinated, just to clarify further
What y’all gave birth is the chairman mixed with Jeff Fort
Big stepper on that jet with my legs crossed (Uh, uh)
Black stones on my neck, y’all can’t kill Christ (Uh)
Black Messiah is what I feel like (Woo)
Shit ain’t gonna stop ’cause y’all spilled blood
We gon’ turn up even more since y’all kill cuz’

(対訳)
蠍(さそり)の煉瓦,ドレイクのダブルディスクよりも遥か前
腰に.40銃,まるで40制作のミックスの如く
フィルターを通したベース音,コカインを捌く腕はミシュラン・シェフ
手首にシェフのキス,サウスポーの腕が鳴る
稼いだカネを検査しようとする監査院,俺にはついてこれねぇ
想定以上のことを成し遂げると,必ず嫉妬するヤツがいる
白人群衆が国会議事堂を襲撃しても,あんたは机に足を乗っけてのけぞったまま
それでも偉そうな口きいてる,あんたにはリスペクトを失っちまった
公然とハッパを売り捌く,ムショから仲間を連れて帰る
半端ない稼ぎ,いざという時のため貯蓄もある
祈っていてくれ,こういうことを考えてばかりいると,いつかは仇となるだろう
リアルな連中は絶滅しかけてる,安心できねぇ世の中になっちまってる
生まれ育ったフッドで,仲間内で殺し合いをしてる,それ,おかしいだろう
向こう岸へ渡る橋を燃やしてる,泳げもしないのに
わかってるだろ,水泳できないって,あの世にいった後もマイケルは咎められ
「勝てもしないのに」,ネヴァーランドで,笑えもしない
俺が生まれた日は,フレッド・ハンプトンが殺され・・・否!
暗殺された日だ,正確を期したかった
そして生まれたのはジェフ・フォート(ギャングリーダー)の性分を兼ね備える優等生
足を組んで飛び乗るプライベートジェット(Uh, uh)
黒人の血がついた「黒いダイア」を首に飾る,他方,おまえらにイエスは殺せないだろう
俺の気分は「黒いメシア」
これからも終わらねぇんだろ,黒い血が流れる世の中
だからもっと騒いでやるよ,どうせおまえらに殺されんだから,’cuz

註釈:
・蠍(さそり)の煉瓦:ギャングによって,ロゴは異なるが,有名なのは蠍のロゴを煉瓦の形をしたコカインで売り捌いていたころから,コカインの塊を意味する。
・40とはドレイクの親友でもあるカナダ出身のビート・プロデューサー。ミックスを「ヒップホップ」と「コカイン捌き」の二重の意味に掛けている。
・最後の’cuzとはニプシー・ハッスルの“ブルー”の色でもわかるが,crips仲間を呼び合う際の語句であり,ニプシーへの追悼の意味を込めているといえる。

註釈では省いた箇所が他にもありますが,ジェイ・Zが得意とする「ダブル・アンタンドレ(double-entendre=二重の韻を踏んだ二重の意味の掛け)」が散りばめられているヴァースでした。

音源はこちらで視聴可能です。

(文責及び対訳:Jun Nishihara)

第6位:今年もランキングに入りましたコーデー(Cordae)が単体で発表した数曲のクオリティの高さ(2021年最高のHIP-HOPモーメントBEST10)

2021年はコーデー(Cordae)にとって,多作(prolific)な年でした。

彼が2021年にリリースした作品の数々を掲載しておきます。

1. Cordae x Lil Wayne – “Sinister”

2. Cordae x Nas x Freddie Gibbs – “Life Is Like A Dice Game”

3. Cordae – “Super”

4. Cordae – “Taxes”(Netflixシリーズ“We The People”より)

5. Cordae x Common – “What’s Life”

6. Eminem feat. Jack Harlow & Cordae – “Killer (Remix)”

これら全て,シングル曲として,コーデー(Cordae)は2021年内にリリースしたわけです。さらに,加えて,『Just Until…』というEP盤もリリースしました。まさに大坂なおみ(Naomi Osaka)のボーイフレンドとして,アスリートのメンタリティを兼ね備えるアーティストであるといえるでしょう。

(文責:Jun Nishihara)

第7位:J. Coleのアルバム『The Off-Season』(2021年最高のHIP-HOPモーメント)

2021年も数々の素晴らしいアルバムが輩出されましたよ,わかってます。
その一部は以下のとおりです。この中から第7位を選んだわけです。
ではなぜこのアルバム『The Off-Season』が第7位に選ばれたのか,わかります?それは,アルバム冒頭に出るキャムロン(Cam’ron)のお蔭です。半分,冗談です。(半分は本気かい!)

理由は5つ(いや,6つ)です。

その1.楽曲3「my.life」のビートに激しいスピットをのっけるJ. Coleと,フィーチャリング・アーティストである21 Savageの登場。このビートは21 Savageの「a lot」を彷彿とされるものですが,サンプリングに起用しているのはStyles Pの「The Life」であるということ。ゆえにこのタイトル。

その2.楽曲5「punchin’.the.clock」のフロー。サビ部分無し。曲始めから終わりまでスピットし続けます。いわゆるフリースタイルの体(てい)で行うところが格好いい。

その3.楽曲9「Interlude」で歌うJ. Coleが聴けること。幕間(まくあい)と訳されるインタールードさながら,軽くやってのけるように見えさせて,歌モノあり,ラップあり,インタールードでさえ充実しているということ。

その4.楽曲11「close」では,まさにヒップホップの現代教科書とでもいえるほど,2010年代以降のラップ曲のお手本として使えるいわゆる最も綺麗に韻を踏んだラインの数々を聴かせてくれる。この曲をくりかえし,くりかえし練習する土台にはもってこいの1曲でしょう。

その5.アルバム全体をとおして39分間。こぎれいにまとまりのある小品集といえる。飽きさせない。「amari」やリル・ベイビー(Lil Baby)を迎えた「pride.is.the.devil」などで適度にオートチューンも入れ,所々に遊びも散りばめている。

その6.と,こうして5つを並べつつも,やはり最も優秀な曲が冒頭の楽曲「95.South」でしょう。ノースカロライナ出身であるにもかかわらず,「NYラップ」をここでやってのけている。ビート然り,フロー然り。しかしながら,同曲の末尾では,リル・ジョン(Lil Jon)の掛け声「If you scared to throw it up, get the fuck out the club!」が流れ出す。つまり,冒頭ではNYハーレムのキャムロン(Cam’ron)で始まり,末尾では深南部(サウス)のリル・ジョン(Lil Jon)で終わる。しかも曲名が「95.South」つまり南部へ繋がるインターステート(州間道路)であるInterstate 95であるということ。つまりこの曲は「NYからサウスへ“下りていく”曲」であること。親鸞の言っていた「山を下り,俗へ帰る」非僧非俗の思想がここで音楽に昇華されているということ。J. Coleは南部であるノースカロライナ生まれであり,学生時代にNYに引っ越しをする。長い間,一人暮らしをしていたのがNYであるということ。つまり,この曲は本人にとって「帰省」の曲でもあるということ。

このアルバム,始まりから終わりまで,とおして聴くべし。

<2021年にリリースされたHIP-HOPアルバムの一部>
・DJ Khaled – “Khaled Khaled”
・Wale – “Folarin II”
・Baby Keem – “The Melodic Blue”
・Pop Smoke – “Faith”
・J. Cole – “The Off-Season”
・Roddy Ricch – “Live Life Fast”
・Mach-Hommy – “Pray 4 Haiti”
・Conway – “La Maquina”
・Curren$y – “Collection Agency”
・Russ – “Chomp 2”
・Rick Ross – “Richer Than I Ever Been”
・Meek Mill – “Expensive Pain”

(文責:Jun Nishihara)

第8位:その名の通りマジックを生んだNasのアルバム『Magic』(2021年最高のHIP-HOPモーメントBEST 10)

Nasのフローがこれまで以上にキレッキレです,このアルバムに収録されている楽曲の数々において。(倒置法。)

1994年にデビューして,27年目ですよ,もう。27年間このフローを維持してきたのか!?と思うと,とんでもない寿命の長さでしょう。気が遠くなりそうです。

第8位で置いておくなんてもったいない,というか,とんでもなくディスリスペクトフルなと思ってもよいほど,もっと上位にもってくるべきだったのですが,他もありますので,2021年の Nasのマジックは8位になりました。

取り敢えず楽曲1〜楽曲3までとおしで聴いてみてください。もうこれに決まりでしょう。

それでは,キレッキレのNasのフローをまずは聴いてください。
1曲目「Speechless」です。

2曲目「Meet Joe Black」です。

少し飛んで,6曲目「Wu for the Children」です。これは名曲です。

この“Wu”って,スタテンのWu-Tang Clanのことだと思います?もしくはブルックリン出ポップ・スモーク(Pop Smoke)の“Woo”のことだと思います?このセンテンスは,オール・ダーティ・バスタード(Ol’ Dirty Bastard)が1998年のグラミー賞のステージで自身が所属するWu-Tang Clanのグループについて言った言葉なのです。しかも,別のアーティストが受賞した瞬間にステージに飛びのぼって。

その映像がこれです。
当時から23年経ちましたが,そのラインがNasの曲として甦りました。

(文責:Jun Nishihara)

第9位:さらば,Virgil Ablohよ。そしてカニエとファレルがノってるビデオ。(2021年最高のHIP-HOPモーメントBEST 10)

ハイエンドのストリート・ブランド「Off-White」の創設者であり,世界中の若者だけに限らず,大御所のファッション・デザイナーたちに認められ,ヒップホップ音楽に非常に近い存在で居続けてくれたファッション・デザイナーであるヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)が2021年11月28日にこの世を去りました。彼はファッション・デザイン以外の世界でも,建築家やDJとして活躍をしておりましたが,最も世に知られているのは,やはりファッション・デザイナーとしてでしょう。

その彼(Virgil Abloh)の葬儀に盟友であるカニエ・ウェスト(Kanye West)やドレイク(Drake)も勿論参列しました。そして彼が生前最後に手がけたルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)メンズコレクションのランウェイが12月2日,マイアミで開催され,カニエやファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)も出席し,ヴァージル最後のコレクションを見届けました。

同ランウェイに出席するカニエとファレルのこのような動画がSNSにアップされ,一躍話題となりました。

この映像をよく見ると,カニエが反応する部分とファレルが反応する部分が微妙に異なっていて,おもしろいなぁと思いながら何回も見ていました。

その曲が,こちらです。
Quarteto Em Cy – “Tudo Que Voce Podia Ser”

今やHIP-HOP界のみならず,音楽界全体的にといっていいほど,異才プロデューサーとして知られるカニエとファレルが二人揃って,ノってる(vibin’する)映像というのはレコーディングスタジオ以外では非常に珍しい瞬間です。その瞬間が少しでも垣間見れたというのは,有難いことであることから,これを2021年の第9位として自信を持ってここに掲載いたします。

(文責:Jun Nishihara)

第10位:Tyler, the Creatorの名盤『CALL ME IF YOU GET LOST』(2021年最高のHIP-HOPモーメントBEST 10)

2021年も残すところ,あと10分となりました。
今年も当サイトに来てくれて,ありがとうございました。

本日より,2021年最高のHIP-HOPモーメントと題して,トップ10を列挙していこうと思います。本日はまずは第10位です。

2021年も素晴らしいHIP-HOPアルバムが世にリリースされましたが,中でも際立って秀逸だったのがタイラー・ザ・クリエイター(Tyler, the Creator)のアルバム『CALL ME IF YOU GET LOST』です。これは2021年に出た素晴らしき名盤として,今後も聴き続けられることとなるでしょう。

このアルバムの素晴らしさは収録楽曲1曲目に始まります。DJ DRAMAがビートを回すことにより「ミックステープ感」を醸し出しつつ,それに拍車をかけるように2曲目に入ったと同時にビート・スウィッチ(チェンジ)を行う。DJ DRAMAはそのまんま続けて登場。ここでHIP-HOPヘッズ達のツカみは完璧にやり遂げた。

このようにこのアルバム,ツカみについては100%のデキ。そして3曲目「LEMONHEAD」,これについてはタイラーのゴキブリ曲(=Yonkers)の勢いそのままに,ビートを2倍速にして,スピット(文字通りスピット)をする,というもの。DJ DRAMAはそのまんま続けて登場。

そこへですよ,そこへ,4曲目「WUSYANAME」をぶち込んできました。アルバムの冒頭でDJ DRAMAが「Welcome to the disco!」とシャウトするように,90年代のR&Bのメロディーを使い,カリフォルニアのビーチで,サンセットを見ながら聴きたい曲ナンバー1として君臨してもおかしくない曲をここへ入れ込んできました。

その4曲目「WUSYANAME」をここで掲載しておきます。

2021年最高のHIP-HOPモーメント「第10位」はTyler, the Creatorのアルバム『CALL ME IF YOU GET LOST』です。

みなさん,2021年も当サイトに来てくれて,ありがとうございました。
良いお年をお迎えください。
明日は2021年最高のHIP-HOPモーメント「第9位」の発表です。

(文責:Jun Nishihara)