ヒップホップ歌詞引用解説:キャムロン「Horse & Carriage」の場合

1998年7月21日リリースの名作『Confessions Of Fire』は,後のディップセットのボス=キャムロン(Cam’Ron)のデビュー作です。NYCはハーレム出身。ハーレムと言えば色んなラッパーの出身地です。ディディ(パフ・ダディ),メイス,ビッグL,ブラック・ロブ,Qーティップ,J.R.ライター(ナツい!),そしてまさに「今」をきらめくティアナ・テイラー(先週金曜日にカニエ・プロダクションのアルバムをリリースしたばっか!),そしてキャムロン率いるディップ・セット軍団です。

このようにハーレムは素晴らしき数々のラッパーを輩出してきたヒップホップ聖地です。

そのキャムロンのデビュー作でもあり,名作と呼ばれる『Confessions Of Fire』より,楽曲「Horse & Carriage」から,以下の歌詞を引用します。

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Aye yo, I pull to the hotel with my shit on blast
Tell the valet “Motherfucker don’t hit my Jag”
Seen the bell boy, nigga he can kiss my ass
Just show me my room nigga, and get my bags
So the girl, that’s my hon, almost dropped his glass
I guess he was shocked when I touched her ass
It really wasn’t nothin’ she was peedy aight
“Does that say Harlem World?” yeah you readin’ it right
And we havin a party, be there tonight
Like Phil Collins have her in “The Heat Of The Night”
Cause Cam rocks the party (All Night Long)
‘Til when? (‘Til the early morn’)
It don’t stop (and uh) it don’t quit
(and uh) drop six (and uh) we pop Cris
Right now too tipsy to drive
But I got my horse and carriage right outside

エイヨゥ,自分の曲,爆音で鳴らして,カノジョと一緒にホテルへ行った
駐車係にカギ渡してこう言った,「俺のジャガー,ぶつけんじゃねえぜ」
フロントのベルボーイ,ちんたらしやがって
はよ部屋に連れてってくれ,俺のカバン持てよ
そいつ,俺のカノジョ見て,ジュースをこぼしやがった
カノジョのお尻さわってるとこ見て,そいつビビったんだろ
たいしたことねえよ,カノジョ,まぁまぁイケてんぜ
「そのジャケット,ハーレム・ワールドですか?」って,当たりめーだよ
今夜パーティーあっからよ,おまえも来いよ
フィル・コリンズのように,「今夜は燃えるぜ」
キャムのおかげでパーティー盛り上がり(ひとばんじゅー)
いつまで?(翌朝まで)
やめらんねー(それに)やめさせねー
(それに)高級車(それに)クリスタル・シャンパン
今は酔っ払って,ハンドル握れねえ
でも外によ,「馬と馬車」待たせてっからよ
(訳:Jun Nishihara)

キャムロンのこの歌詞の素晴らしいところは,ちゃんと物語が絵になって見えるところです。「女を連れてホテル行って,ベルボーイさそって,みんなでパーティー盛り上がって,朝まで酒飲んで,暴れてる。」といった内容。ちなみに高級車とシャンパンは,この時代からヒップホップの象徴として,「季語」のように使われています。ヒップホップ歌詞になくてはならない要素として,組み込まれています。

最近のアメリカの10代〜20代の若者は,キャムロンを聴いた人は少ないと思いますが,30〜40代でヒップホップが好きな人なら,必ずキャムロンやディップ・セットを聴いて育ってきています。ヒップホップにとって,とても大切な人物です。ヒップホップ史をちゃんと築いてきた重要人物の一人です。ぜひ,おぼえておいてください。

(文責:Jun Nishihara)