カニエ・ウェストのビート・プロダクション・クレジット楽曲(その②)

前回のお約束どおり,1曲目はあの人,キーシャ・コール(Keyshia Cole)の登場です。この曲でキーシャは公式デビューを果たし,日本のブラック・ミュージック好きの女子にも人気を博し始めるようになります。

この頃に,いよいよ「カニエの音」というものが確立し出します。2005年リリースの楽曲ですが,カニエの初期の頃の「音」を総まとめにしたようなビート,ソウルネタも含まれ,後のカニエの音を代表することとなるローランド社の808ビートマシンのベース音も聞こえます。

2曲目は,キーシャ・コールとも仲良しであった,当時刑務所に囚われの身であったシャイン(Shyne)(当時,こいつの声に関しては,ビギー・スモールズの生まれ変われの化身とも呼ばれた)の登場です。

聴いてもらえれば解りますが,シャインのこの曲はドラムマシンのハイハットをふんだんに使用しております。カニエ・ウェストがハイハットをここまでヘヴィに使用するのは当時のティンバランド(Timbaland)の影響をかなり受けていたことが解ります。実際,2007年にシングル曲「Stronger」をリリースした頃,カニエはあるインタヴューでティンバランドを一人の師と呼んでいます。

3曲目は,チャイニーズ・ラッパーとして2000年,Friday Freestyle on BETで黒人ラッパーを次から次へと負かしていったジン(Jin)の登場です。

4曲目は,3曲目のJin – “I Got A Love”の冒頭ビートの始まり方にそっくりな曲です。嵐の舌を持つラッパー=トゥイスタ(Twista)はカニエと同じ同郷シカゴ出身。“Overnight Celebrity”です。

5曲目は,カニエ・ウェストにしか作れない!という楽曲を紹介して本日終わりにします。スラム・ヴィレッジ(Slum Village)の「Selfish」です。ここら辺で,ソウルネタはソウルネタで同じにしても,ジャスト・ブレイズがソウルネタを回す音とはやっぱり違うなぁというのが解ってきます。ジャスト・ブレイズにしか出せない「ジャスト・ブレイズの味」というのがもちろんあって,そして当曲は「カニエの味」そのものが出ている。これ,もう16年前,2004年です。

(文責&キュレーション:Jun Nishihara)

ドレイクに影響を与え,そして影響を受けた,UKの黒人音楽シーン(その②)

UKの黒人音楽シーンに出現した若手シンガー女子2名=エラ・メイ(Ella Mai)とマハリア(Mahalia)が並んで映ると,まさに姉妹のように映る,そんな映像が流れるのが2019年9月にリリースされたミュージックビデオ「What You Did」です。二人ともUK出身。エラ・メイはジャマイカ人の母親と,アイルランド出身の父親の混血。マハリアは,英国ミッドランド東部に位置するレスターシャーの生まれ。同じくジャマイカ人の母親と,アイルランド出身の父親の混血。やっぱり二人とも,姉妹?!

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「What You Did」のミュージックビデオはこちらです。

Mahalia feat. Ella Mai – “What You Did”

キャムロン(Cam’ron)好きの私は,すぐにこの曲が好きになりました。
(キャムロンについては,コチラを読んでみてください。)

なぜこれがキャムロン好きにはタマらん曲なのか,と言えば,マハリアのこの楽曲「What You Did」のビートは,まさに以下のキャムロンの2002年4月リリースのシングル曲をサンプリングしているからです。

Cam’ron – “Oh Boy”(2002年4月リリース)ディップ・ディップ・セッセッ!!

なお,知ってました?この「オゥ・ボーイ・ビート」は以下の曲でマライア・キャリー(Mariah Carey)もサンプリングします。

Mariah Carey feat. Cam’Ron – “Boy (I Need You)”

さて,話を戻しますと,エラ・メイはシングル曲「Boo’d Up」で2018年に全世界を席巻し,売り上げは米国のみで500万枚セールス,カナダや英国での売り上げを合わせますと,合計600万枚以上。2018年のビルボードチャートを総ナメする勢いにまで発展しました。

他方,マハリアはその間,UKの音楽シーン,とりわけアンダーグラウンド・シーンでグツグツと人気を温存してきており,2019年9月にアルバム『Love and Compromise』をリリースし,同アルバムは英国R&Bアルバムランキングに於いて第3位を記録しました。

この生粋のUK生まれの二人は,冒頭のシングル曲「What You Did」でコラボレーションしたわけですけれども,楽曲に起用されている元ネタ・ビート「Oh Boy」を世に出した張本人であるキャムロン自身を迎えたというREMIXヴァージョンも今年リリースされました。2002年に出たキャムロンのビートをサンプリングとして使い,そして18年後の2020年に,キャムロン自身をREMIXに迎えた!という大胆な手法で,以下REMIXをリリースしたものです。

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ちなみに,マハリアが上記写真でまとっている緑色の毛皮は,2002年にキャムロンがピンクの毛皮をまとって撮った以下の写真をオマージュとしております。これは2002年当時,キャムロンがヒップホップ界随一のピンク色好きということで有名で,クルマもピンク,ダボダボのシャツもピンク,毛皮もピンクという出立(いでたち)で,ヒップホップ界では当時このピンク色を「Cam’ron Pink(キャムロン・ピンク)」と呼ぶようにまでなり,当時かなり話題になりました。ゴテゴテのヒップホップ野郎でもピンク色のシャツを着てもいいんだ,と,NYの若者はそのカラーを真似するようになり,ついにヒップホップ・ファッション界にまで影響を及ぼすこととなりました。

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さて,そのキャムロン張本人を迎えてリリースしたREMIXヴァージョンがこちらです。

Mahalia feat. Cam’ron & Ella Mai – “What You Did (REMIX)”

(文責:Jun Nishihara)

元ネタの曲を知る(12):ドレイク ⇄ JAY-Z ⇄ ボビー・グレン

どうも,西原潤です。

1年半以上前ですが,2018年9月にこういう見出しを1件UPしました。

ジェイZのヒップホップ界歴史に残る名盤『The Blueprint』に収録されている「Song Cry」の元ネタを探ったものでした。

この曲が世にリリースされて,かれこれ18年以上が過ぎておりますが,その18年以上が経過した今,ヒップホップ界でベテランの域に入り始めているドレイクが,この名曲を引っ提げお手本にして,「When To Say When」という曲を今年2月にリリースしました。そして,2020年5月1日にリリースした公式ミックステープに同曲「When To Say When」を収録しました。

私の尊敬するHip-Hop JournalistにElliott Wilsonという方がいます。Elliott(YN)は80年代から米ヒップホップ雑誌(『ego trip』『The Source』『XXL』『RESPECT.』)の編集者(後に編集長)として名を上げてきた人物です。最近はTIDALで放送されている動画付きのラッパー・インタヴュー集「Rap Radar Podcast」を立ち上げております。すでに現時点で,90話まで進んでおりますので,約90名のラッパーをインタヴューしてきた計算になります。このインタヴュー集は,TIDALを月額購買していれば,視聴可能です。

昨年2019年12月25日に公開されたElliott Wilson & B.Dotとドレイク(Drake)のインタヴューは,ドレイクのトロントの自宅で行われました。インタヴューが“あの”ドレイクの自宅で行われた,というのは,どれだけElliottがヒップホップ界でリスペクトされているか,ということを物語っています。このインタヴューはTIDALを月額払って観てみる価値はありますので,お金に少し余裕のある方は,月額スタートしてみると良いですよ。

さて,そのドレイクが「When To Say When」を今年2月にリリースした際に,ミュージックビデオも同日公開されました。そのミュージックビデオは,ドレイクがジェイZの生まれ育ったブルックリンのMarcy Projectsに赴き,そこで撮影しているという感動的なものです。なぜ感動的か,というのは幾つか理由はあるのですが,1つは,タイミングです。2001年8月に亡くなったAaliyahをドレイク自身,当時好きで聴いていました。当時2001年にドレイクはラッパーとしてまだ世に出ていませんでしたが,同じ世代の人間として私も,Aaliyahを当時ヘヴィロテで聴いておりました。当時ヘヴィーローテーションで流していた大好きなアルバムの歌手が亡くなった,と。それを知ったのは,当時インターネットなんて僕はやってなかったですから,誰かアメリカに住んでいた友達から聞いたんだと思います。新聞でも見たのかな?もうアメリカと黒人音楽にどっぷり浸かっていた2001年でしたので,当時の様々な思い出が,「Song Cry」を聴くと甦ってくるのです。そういう最中のことでしたから,Aaliyahが亡くなった翌月にリリースされた『The Blueprint』収録楽曲の最も感動的である曲をサンプリング(という言葉が安っぽく聞こえてしまうので使いたくない)否,サンプリングではなく「お手本として起用させていただいた」曲をドレイクがリリースしたというのは,そして同日にリリースされたミュージックビデオを拝見した時には,あの当時を思い出して,いろいろな感情が溢れ出してきたため,涙が出てしまったのでした。

ここにその「When To Say When」と「Song Cry」と,そしてBobby Glennの「Sounds Like A Love Song」を掲載しておきます。

Drake – “When To Say When”

JAY-Z – “Song Cry”
(ミュージックビデオの冒頭で2002年という文字が出てきますが,この曲を収録したアルバムが出たのは2001年です。当時はミュージックビデオ(当時の言葉でPV)は時間をかけて製作されていましたから,曲が世に出て1年,2年後にPVが発表されても不自然ではなかったのです。最近のように,リードシングル曲ならまだしも,それ以外の曲がリリースされて,同日中にミュージックビデオも世に出るなんていうのは極めて稀なことだったのです。)

Bobby Glenn – “Sounds Like A Love Song”

(文責&キュレーション:Jun Nishihara)

JAY ELECTRONICAのアルバム『A Written Testimony』楽曲④「The Neverending Story」(独断偏見ライナーノーツ)

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タイトルは「The Neverending Story」(終わりのない物語)です。

ヴァース1のジェイ・エレクトロニカ(Jay Electronica)の歌詞にこういうラインが出てきます。

What a time we livin’ in, just like the scripture says
Earthquakes, fires, and plagues, the resurrection of the dead

なんて時代に我らは生きているんだ,経典に書いていたとおりだ
地震,火事,そして疫病の繰り返し,死者がよみがえった

つまり,こういった出来事が繰り返される合間に,我らは生きている,ということをこの歌詞では言っているわけですが,現在の新型コロナウイルス(COVID-19)にしても同様です。

ジェイ・エレクの歌詞には,対比(comparison)が多く起用されています。

You could catch me bummy as fuck or decked out in designer
On I-10 West to the desert, on a Diavel like a recliner
Listen to everything from a lecture
From the honorable minister Louis Farrakhan
To Serge Gainsbourg or Madonna or a podcast on piranhas

ホームレスのような「なり」する時もあれば,デザイナーブランドの洋服に身をまとう時もある
10号線(南部を串刺しに通過する州間高速道路)に乗って,西の砂漠まで走ることもあれば
 ドゥカティ・ディアベルのバイクに乗って,背をもたれかけ,突っ走ることもある
黒人イスラム指導者であるルイス・ファラカーンの講話を聴くこともあれば
セルジュ・ゲンスブールの語りや,マドンナから,ピラニアに関するポッドキャストまで
なんだって俺は聴くんだぜ

この曲で特筆すべきことは,The Alchemist(ザ・アルケミスト)がプロデューサーとして関わっていることです。The Alchemistといえば,以下に挙げられないくらいのヒップホップ・アーティストと関わり,数多くの名曲を制作してきました。

・Fat Joe率いるTerror Squadの数々のアルバム
・クイーンズ区出身のMobb Deepのアルバム
・Royce Da 5’9のアルバム
・Tony Touchのアルバム
・2001年,Big Punの死後にリリースされたアルバム
・ジェイダキス
・ゴーストフェイス・キラー
・スタイルズ・P
・NAS
・リンキン・パーク
・50セント
・サイゴン
・State Property(!)
・パプース
・ネリー
・エミネム
・ファボラス
・Westside Gunn(!)
・キャムロン
・・・などなどなど。リストはまさに,Neverending(尽きません)。

こういったヒップホップの裏側で活躍している大物人物たちに楽曲を提供してきた歴史があるThe Alchemistのビートに,この度,表(オモテ)の人間であるジェイZ(JAY-Z)が乗った,というのは,とても興味深いことであり,どういう作品ができあがったのか,この機会をとらえて,ぜひ聴いてみてください。

ちなみに,アルケミストがプロデュースしたこの曲にもサンプリング・ネタがあります。アルゼンチン生まれのシンガー・ソングライターであるリト・ネビア(Litto Nebbia)の「La Caida」という1976年にリリースされた曲です。

(対訳及び文責:Jun Nishihara)

元ネタの曲を知る(11):Megan Thee Stallion⇄2パック⇄ファンクの奇才=ブーツィー・コリンズ

久しぶりにこのコーナーをやってみました。
「元ネタ」というのは,ある曲(とりわけ旧い曲)を下敷き(つまり元ネタ)にして,新しいヒップホップやR&B曲を作り出す,というものです。

本日ご紹介するのは,現在全米チャートを総ナメ状態の,大ブレイクしているシングル曲「B.I.T.C.H.」です。アーティスト名は,ご存知Megan Thee Stallion(ミーガン・ジー・スタリオン,メーガン・ジー・スタリオン,愛称メグ,メィガン)です。昨年2019年に最も活躍したアーティストとして,大ブレイクを果たしました。

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(ビヨンセと娘ブルー・アイヴィー,そしてMegan Thee Stallionとの3ショット)

さて,そのチャート急上昇の楽曲「B.I.T.C.H.」を以下のとおりまずお聴きください。

この曲を聴いて,どこか「なつかしさ」を感じた方は,理由があります。なぜ「なつかしく」感じたか。それは1996年2月にリリースされた2パック(2Pac = Tupac)の名盤『All Eyez on Me』に収録されている楽曲「Ratha Be Ya Nigga」をこの曲は下敷きにしているからなのです。

聴いてみましょう。1996年のカリフォルニアを思い起こされるでしょう。

しかしながら,これにもさらに「大元(おおもと)」のサンプリング・ネタが存在します。

それがファンク界でもエキセントリックな格好をし,サイケデリックさをバンバン醸し出していたベースの天才=ブーツィー・コリンズの「I’d Rather Be With You」です。

これらを聴いた上で,もとに戻ってMegan Thee Stallionの「B.I.T.C.H.」を聴いてみてください。

最後にもう一つ。黒人音楽(ブラック・ミュージック)の歴史に残る素晴らしき名曲と呼ばれた「Redbone」についても同曲を一部サンプリングとして起用しております。

(文責:Jun Nishihara)

元ネタの曲を知る⑩:クリス・ブラウン⇆Q-Tip&カニエ・ウェスト⇆アリシア・マイヤーズ

元ネタの曲が二重にさかのぼって発見できる場合があります。

今回もそのケース第2弾です。

先般リリースされたクリス・ブラウン(Chris Brown)のニューアルバム『Indigo』より,楽曲「Temporary Lover」の紹介です。これは,サウスイチのパーティー野郎=リル・ジョンをfeat.しており,以下のネタを回しています。

まずは,新曲のChris Brown feat. Lil Jon – “Temporary Lover”を聴いてみて下さい。

さて,上記楽曲を聴いた人はリアクションが二手に分かれると思います。ひとつはカニエ・ウェストがサンプリングした「Thank You」という曲をまっさきに思い出すという人。そんな方は,この曲を想起されたことでしょう。

Busta Rhymes feat. Q-Tip, Lil Wayne & Kanye West (2013)

上記楽曲のQ-ティップのフローは別格です。この曲に彼をもってきたカニエも素晴らしいセンスの持ち主です。

さて,上記2曲には,おおもとのネタがあります。以下のおおもとの曲をまっさきに思い出されたという方もいらっしゃいますでしょう。そんな方々,さすがでございます。

Alicia Myers – “I Want To Thank You”です。

1981年には既にヒップホップ界ではカーティス・ブローやシュガーヒル・ギャングが活躍しておりましたが,「ネタ回し」というテクニックはまだ生まれておりませんでした。その年に誕生したこの「I Want To Thank You」という名曲は,30年以上の時を経て,ヒップホップ界の大御所とR&B界の王子にサンプリングされることになりました。サンプリングされるということは,第一にリスペクトがなければ出来ないことでもあります。1981年当初の楽曲を最大の敬意をもって,2019年,このように再び蘇らせられたというのはまことにあっぱれなことでございます。

(文責:Jun Nishihara)

Nasアルバム『The Lost Tapes』(2002年)より,対訳「Purple」(ヴァース1)

2002年にNYの街角でNasの『The Lost Tapes』というアルバム(当時はミックステープと呼ばれていた)を5ドルで購入し,ポータブルCDプレイヤーで聴き込んだ頃,まさかじぶんがこの曲を将来翻訳することになるとはこれっぽっちも思っていなかった。そして,そのアルバムを聴いていた当時は,日本語に訳すというマインドはまったく持たず,ありのままにNasがラップするのを聴いていた。「訳す」ということを考えず。

たとえば最近では,ラップを聴いていると,「ふむ,この部分は日本語に訳すとすればこう訳すだろう」ということを考えながら聴いている時もある。しかしそんなことは当時まったく考えずに聴いていた。

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(上記写真は,2002年のMTV Music Awards(MTVミュージックアワード賞)のリハーサルにて。左からNas,Ashanti,Ja Rule。当時2002年,彼ら3人は,ヒット曲「The Pledge」という曲をリリースしていました。当時,アーヴ・ゴッティ率いるザ・マーダー・インクというレーベルが勢いつけてきており,アシャンティやジャ・ルールなどがヒット曲をリリースしていました。この楽曲「The Pledge」は2パックの楽曲「So Many Tears」をサンプリングしており,曲の終わりにかけて,2パック本人のセリフも登場します。)

さて,そのNasの偉大なるウラのアルバム『The Lost Tapes』(2002年)から,楽曲「Purple」の対訳を掲載いたします。

Nas(ナズ) – “Purple” (Verse 1) 対訳

[Verse 1]
The whole city is mine, prettiest Don
I don’t like the way P. Diddy did Shyne with different lawyers
Why it’s mentioned in my rhymes? Fuck it
It’s just an intro, hate it or love it, like it, bump it or dump it
Write it, across the stomach spell “God son”
Life is like a jungle, black, it’s like the habitat of Tarzan
Matter of fact, it’s harder than most can imagine
Most of my niggas packed in correctional facilities
Half of them passed on, MAC strong, couple of shots
Made the ghost leave a body, now they hauntin’ the block
Where they used to stand at, somebody’s takin’ they place
A younger man perhaps, hand slaps, can’t understand that
Same walk, same talk, I wonder can that be possible?
A thug dies, another step inside his shoes
And they will hurt you, layin’ low with a bottle
I’m blowin’ circles, my state of mind purple

(ヴァース1)
この街はどこまでも俺の街,イケメンの首領(ドン)
P.ディディが弁護士を数人雇い,シャイン*(註)相手に勝訴したのはイカセねえ
どうしてそんな内容のラップするかって? 理由なんてねえ
それがイントロ,好けど嫌えど,聴けど捨てれど
俺は“書いた”,肚に文字,「神の息子(ゴッド・サン)」と
人生はジャングル,真っ暗で,まるでターザンの住処
実際のとこ,ここは,おまえらが想像する以上にハードなトコ
俺の仲間のほとんどが,ムショにとっつかまえられている
その半分があの世にいっちまい,マック銃にやられ,2,3発喰らった
その霊は肉体を離脱し,いま,ゲットーをさまよい歩く
かつてハッスルしていた場所で,今となっては,別の野郎がそこにいるが
若手の野郎が,大金の取引を交わす,それが現実,俺は理解に苦しむ
似た歩き方,似た話し方,俺は思う,んなことあっていいのか?
サグは死に,ヤツの代わりに別のヤツがそこを継ぐ
そしてまた傷つけられる,ボトルを片手に身をひそめる
ケムリをふかして,円を吐く,俺の気分は「パープル」

*註釈
シャイン(Shyne):90年代後半から2000年前半にかけて活躍したラッパー。一時はそのドスの効いた声で,ザ・ノトーリアスBIG(AKAビギー)の生まれ変わりとも称された。最大のヒット曲は,ヒップホップ史上,極めて危険で,最も“ビギーを彷彿とさせる”と呼ばれた名曲“Bad Boyz”を下記掲載しておきます。

(文責及び対訳:Jun Nishihara)

おまけ:
Shyne – “Bad Boyz”

’70年代のディスコ名曲を4曲もサンプリングネタとして起用したゼータクなカニエ・ウェストの楽曲「Fade」。

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件名のとおり,まずそのゼータクな楽曲「Fade」とはこの曲のこと。↓
ちなみにこのミュージックビデオで素晴らしくキレがあるダンスを披露してくれているのはティアナ・テイラー(Teyana Taylor)。

Kanye West – “Fade”

さてこの曲には,’70年代〜’80年代にかけてディスコブームの全盛期に流行った名曲をなんと4曲もサンプリングネタとして起用しているという物凄くマニアックな曲なのである。その元ネタを以下のとおり紹介いたします。

第1のサンプリングネタ:Fingers Inc.の「Mystery Of Love (Club Mix)」
これは1986年にリリースされたハウス・ミュージック界の名曲。「Fade」の冒頭を飾っている。Fingers Inc.もカニエと同じシカゴ出身。ハウス・ミュージックをディープに知る者こそ知る名曲である。

第2のサンプリングネタ:Rare Earthの「I Know I’m Losing You」
おおもとはモータウン黄金時代に活躍したザ・テンプテーションズの名曲(1966年リリース)。それをレア・アース(Rare Earth)が1970年にカバー曲として発表したもの。この曲を上記のハウス・ナンバーと組み合わせてみようという発想はそうそう出ない。(カニエしかそんなことしようとしない。)冒頭の「Your love is fadin’(キミの気持ちがうすれていくのがわかる)」という本来であればセツない歌詞をフリップさせ,力強くインパクトのある「Fade!」(色褪せ!)という一語にあらゆるフィーリングを収斂させている。

第3のサンプリングネタ:Hardriveの「Deep Inside」
1993年にリリースされたテクノ系の楽曲。「Deep, deep inside」というフレーズをスローダウンさせ,サンプリングしている。

第4のサンプリングネタ:Barbara Tuckerの「I Get Lifted」
ブルックリン出身の黒人ハウス・ソウルシンガーであるバーバラ・タッカーの曲。1994年発表。この「I Get Lifted」は全米ホット・ダンスクラブ・チャート第1位を記録。翌年同じくバーバラ・タッカーの「Stay Together」は同チャート第1位を獲得。まさにハウスミュージック界で大活躍していた時代の曲。考えてみれば,「Fade」のMVで踊るティアナ・テイラーは現在まだ28歳であるが,カニエを介してここまでディープな曲と触れ合っているという事実に,今後のアーティストとしての将来性を感じる。

(文責:Jun Nishihara)

元ネタの曲を知る⑧:ジュース・ワールド⇆ナズ

元ネタの曲が二重にさかのぼって発見できる場合があります。

それは例えば,いま旬のジュース・ワールド(Juice WRLD)の楽曲「Lucid Dreams」で発見することができます。この曲は,ヒップホップの最高峰ラッパー=NASの「The Message」を元ネタとしております。

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ここで少しジュース・ワールドに触れておきますと,彼は現在19歳のまだ青少年です。なんと1998年生まれ。エミネムが公式デビューしたての頃です。エミネムの公式アルバムデビュー作や,セカンドLPがリリースされた頃,ジュース・ワールドはまだ1歳児の赤ん坊だったんです。

ジュース・ワールドは4歳の頃にピアノを習い始め,その後,ギターとドラムへと移行していきました。ラッパーを目指し,本格的にラップの曲をネット(SoundCloudサイト)へとアップし始めたのは,高校2年生の頃でした。

彼のラッパー名である「ジュース」は,2パックの映画『Juice』にちなんでいると言います。シカゴ生まれである彼は,同胞のカニエ・ウェストやチーフ・キーフ,はたまたヒューストン出身のトラヴィス・スコットを影響されたアーティストに挙げています。

さて,現在ビールボードチャート4位(リリース時は2位)の楽曲「Lucid Dreams(邦題:明晰夢(めいせきむ=夢見ていることを意識しながらみている夢))」を聴いてみましょう。

歌詞の内容はともかくも,冒頭のビートを聞くと,NASの「The Message」を想起せずにはいられません。ジュース・ワールドのこの曲はemo rap(エモ・ラップ(=情のこもったラップ))と呼べるでしょうが,NASの「The Message」が描いている夢は,そんなエモ(感情的)になっている暇なんてない連中への応援歌でした。ストリートの生きザマをありのまま描き,いつかそこから抜け出せる,そして成り上がれることを夢見た野郎たちに向けた曲でした。

最近は,黒人もある程度は平和に暮らせるようになった反面,こういった「精神的」な病いが蔓延するようになりました。肉体的に大変な時代には,こういった精神面での苦労はそこまでなかったのかもしれません,否,精神面での苦労があったのかもしれませんが,それ以上に,肉体面での苦労(食っていけるか,くたばるか)の実際面でのストラグルがある中,精神的に弱ってる暇は無かったのかもしれません。

そんな中,生まれたのが,NASの名曲「The Message」です。ストリートから,糞社会へ向けたメッセージです。

そして,冒頭で書いた「時に二重にさかのぼって発見できる場合」についてですが,このNASの「The Message」(1997年リリース)にも元ネタがあります。

それが1993年にリリースされた,スティング(Sting)の「Shape Of My Heart」です。

リュック・ベンソンの映画『レオン』の主題歌です。
このように,けっこうな大作がこうして世代を超えたヒップホップに影響を与えているという場合もあります。

(文責:Jun Nishihara)

元ネタの曲を知る⑦:ザ・ノトーリアスBIG⇆アル・グリーン

先日,ヒップホップの元祖として,ファンクの帝王=ジェームス・ブラウンの曲を取り上げましたが,今回はソウルの貴公子=アル・グリーンがヒップホップに与えた影響を取り上げたいと思います。

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アル・グリーン(Al Green)はヒップホップ世代と呼ばれる現代に,多大なる影響を与えたソウル歌手です。生まれはアーカンソー州。もとはゴスペル歌手の出です。60年代から70年代にかけソウル歌手として活躍しました。

彼が歌った数々の名曲のなかでも,ヒップホップに多大なる影響を与えた1曲は1972年リリースの「I’m Glad You’re Mine」です。

この曲は,ザ・ノトーリアスBIG(愛称:ビギー)や50セント,エミネム,エリックB&ラキムといった錚々たるヒップホップ大御所たちがサンプリングした曲です。

ヒップホップヴァージョンはいろいろなサンプリングの仕方があり,多様ですが,その中からひとつ,ビギーの「I Got A Story To Tell(邦題:話したいことがあるのさ)」を聴いてみます。

ビギーの冒頭歌詞を一部,引用します。

I kick flows for ya, kick down doors for ya
Even left all my motherfuckin’ hoes for ya
Niggas think Frankie pussy-whipped, nigga, picture that
With a Kodak, Insta-ma-tac
We don’t get down like that, lay my game down quite flat
Sweetness, where you parked at?
Petiteness but that ass fat
She got a body make a nigga wanna eat that, I’m fuckin’ with you
The bitch official, doe, dick harder than a missile, yo

おまえのためなら,フローもするし,ドアも蹴り破って,開けてやる
それに街中のアバズレ女どもとも,別れを告げてきた,でもよ
フランキー*(ビギーの愛称:麻薬王を演じたFrank Whiteより)は女の尻に敷かれるような男じゃねえ
想像してみな,コダックのインスタマック(=ポラロイド)で,チェキってみな
そんな趣味はねえ,ゲームはバッチリ決めてやる
可愛いこちゃん,どこにクルマ停めてんだい
小柄な女,でもケツはデカイ
彼女の肉体,むさぼりたくなる,じょーだんだよ
たまんねえこの女,俺のアソコ,勃起マックス,ミサイルばりに,ヨゥ

そしてそのモトとなった,アル・グリーンの「I’m Glad You’re Mine」を聴いてみます。冒頭のドラミングをループで起用していますが,そこを繰り返しループするだけで,ビギーのこの曲の下地ができあがるわけです。

(文責:Jun Nishihara)