ジェイZのアルバム『The Black Album』より,楽曲13対訳「Allure」。

ジェイZの名作に2003年リリースの『The Black Album』というアルバムがあります。ジェイZが現在までにリリースしてきたアルバムの中で,3本の指に入るものであると考えております。

さて,本日12月4日(TODAY!)はジェイZの49年目の誕生日です。それを祝うという意味でも,そのアルバムから「Allure」を取り挙げます。ビートはファレル・ウィリアムズやチャド・ヒューゴ率いるThe Neptunesプロダクション・チームの作品です。

内容は,ジェイZのハスリング時代について,「コカインを捌いていた頃,いくらでも金儲けができた。その生きザマがいまだに俺につきまとうんだ,俺の名を呼んでんだ。だがその人生を続けてれば,今頃はムショに入ってたか,それとも死んでたか。だが,あそこまで「生きてる感じ」を味わったのは,その後の人生に無かった」といったものです。ジェイZが2004年にヒップホップ界から「暫定的に」身を退けた,その直前にできた曲です。

よく「ヒップホップのグラマラスな人生」と「ハスリング時代の生きザマ」を重ねてラップするジェイZですが,それがこの曲にはよく表現されていると思います。私の翻訳はまだまだですが,私の翻訳以上に,ジェイZの原語の歌詞はすばらしいものであることを念頭に,読んでいただければ幸いです。

ジェイZの歌詞を訳すにあたり,常に「まだまだ(ジェイZの原語には)到達できないな」と思いながら訳しているのですが,これは生涯の仕事として,ジェイZの歌詞対訳を随時「レベルアップ」させていきたいと思っております。ジェイZの歌詞と「同等の日本語訳」をすることは,死ぬまで出来ないと思いますが,99.999999%まで達することは,いつかは,いけるんじゃないかとか,夢見ながらやっているところです。

その点,カニエ・ウェストの歌詞を訳す時の緊張感とはまた違ったものを感じます。

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Jay-Z feat. The Neptunes

[Intro: Pharrell (Jay-Z)]
(Young! It’s the life)
(Once again it’s the life, yes)
I don’t know why, I.. get so high oh
(It’s intoxicating man, y’all don’t know why you do what you do)
Get so high oh, get so high, high off the life

(イントロ:ファレル(ジェイ・Z))
(ヤング!この生きザマに)
(もういちど人生に乾杯)
理由は言えねえ・・・ただハイになるんだ,オゥ
(やみつきだぜ,何をやるにも,理由は今わからなくとも)
ハイになれ,オゥ,ハイになれ,ハイになって生きろ

[Verse 1: Jay-Z]
The allure of breaking the law
Was always too much for me to ever ignore
I’ve got a thing for the big-body Benzes, it dulls my senses
In love with a V-Dub engine
Man, I’m high off life, fuck it, I’m wasted
Bathing Ape kicks, Audemars Piguet wrist
My women-friends get tennis bracelets
Trips to Venice, get their Winters replaced with
The sun…it ain’t even fun no more, I’m jaded
Man, it’s just a game, I just play it to play it
I put my feet in the footprints left to me
Without saying a word, the ghetto’s got a mental telepathy
My brother hustled so, naturally
Up next was me, but what perplexes me
Shit, I know how this movie ends, still I play
The starring role in “Hovito’s Way”

(ヴァース1:ジェイZ)
法を犯すという誘惑
とても魅力的で,シカトするわけにはいかなかった
デカい車体のベンツにあこがれて,もはや感覚麻痺してた
フォルクスワーゲンのエンジンに恋い焦がれて
生きることにハイになってた,クソッ,イカレちまってた
NIGOのアベイジングエイプのスニーカーに,オーデマピゲの腕時計
女友達にはダイヤモンドのブレスレット
ヴェニスに旅行して,暖かい場所で冬を過ごす
太陽の光,もう笑えねえほど,たそがれてる
ただのゲームだと分かってる,プレーが好きでプレーしてる
俺のために残された足跡に導かれて
ひとこともしゃべらなくとも,連中とはゲットー・メンタルで通じ合える
兄弟もハスラーだった,だから自然に俺もそうなった
次は俺の出番,だがひとつ不可解なのは
この映画のエンディングを知ってしまったこと,それでも俺は“プレー”する
『ホヴィートズ・ウェイ(ホヴィートの道)』(『カリートの道』のホヴァ(ジェイ)版)の主演男優として

[Chorus: Jay-Z (Pharrell)]
It’s just life, I solemnly swear
To change my approach, stop shaving coke
Stay away from hoes, put down the toast
Cause I be doing the most (OH NO!)
But every time I felt “That was that”, it called me right back
It called me right back
Man, it called me right back (OH NO!)

(サビ:ジェイZ(ファレル))
ただ人生を生きてるだけさ,俺はここに誓う
もうこの生きザマは変える,コカを捌くことから手を引く
アバズレ女から身を引いて,シャンパングラスは置いて
つい,やり過ぎちまうからな(オゥノゥ!)
だが毎回「もう辞めにする」と言う度に,また呼び戻されんだ
すぐに呼び戻されるんだ
そうさ,ほら,呼び戻された(オゥノゥ!)

[Verse 2: Jay-Z]
I’m like a Russian mobster, drinking distilled vodka
Until I’m under the field with Hoffa, it’s real
Peel the top up like a toupée,mix the water with the soda
Turn the pot up, make a soufflé
All of y’all can get it like group-page on your 2-way
I’m living proof that crime do pay
Say “hooray” to the bad guy, and all the broads
Putting cars in their name, for the stars of the game
Putting ‘caine in their bras and their tomorrows on the train:
All in the Name of Love
Just to see that love locked in chains and the family came
Over the house to take back everything that they claimed
Or even the worse pain is the distress
Learning you’re the mistress only after that love gets slain
And the anger and the sorrow mixed up leads to mistrust
Now it gets tough to ever love again
But the allure of the game, keeps calling your name
To all the Lauras of the world, I feel your pain
To all the Christies in different cities and Tiffany Lanes:
We all hustlers in love with the same thing

(ヴァース2:ジェイZ)
俺はロシアン・マフィアのごとく,蒸留ウォッカを飲み干す
しまいにはホッファの隣で,グラウンドの土の中に埋められて,生々しい
オープンカーの天井をめくる,カツラばり,重曹と水を混ぜ合わせ
コンロを焚いて,泡立てたスフレ,一丁上がり
おまえら全員一気に,金儲けさせてやる,全員配信のポケベルごとく
「犯罪はカネになる」の生きた証
ワル者に万歳,そしてオンナたちへ
このゲームのスター達のため,クルマの名義を貸してくれたオンナたち
ブラの中にコカイン忍ばせて,アムトラック列車に乗って運び,彼女たちの将来を犠牲にしてくれた
愛という名のそのもとに
くさりで縛られた愛を見るために,そして俺にも家族が出来た
家を持つようになり,今まで掴んできた手柄を全て,放り投げた
さらなる苦悩とストレスは
自分が単なる愛人だったことに気づく時だ,ほんとうの愛が滅多斬りされた後
残るのは怒りと悲しみが混ざり合った不信感でしかない
そしてもはや,二度と愛することがさらに難しくなる
だがこのゲームの誘惑が,また俺の名前を呼ぶんだな
世界のローラたちへ,君たちの苦悩に共感するよ
あらゆる街のクリスティーやティファニー・レーンたちへ
俺らは全員,同じものを愛するハスラーなのさ

[Chorus: Jay-Z (Pharrell)]
It’s just life, I solemnly swear
To change my approach, stop shaving coke
Stay away from hoes, put down the toast
Cause I be doing the most (OH NO!)
But every time I felt “That was that”, it called me right back
It called me right back
Man, it called me right back (OH NO!)

(サビ:ジェイZ(ファレル))
ただ人生を生きてるだけさ,俺はここに誓う
もうこの生きザマは変える,コカを捌くことから手を引く
アバズレ女から身を引いて,シャンパングラスは置いて
つい,やり過ぎちまうからな(オゥノゥ!)
だが毎回「もう辞めにする」と言う度に,また呼び戻されんだ
すぐに呼び戻されるんだ
そうさ,ほら,呼び戻された(オゥノゥ!)

[Verse 3: Jay-Z]
I never felt more alive than riding shotgun
In Klein’s green 5, until the cops pulled guns
And I tried to smoke weed to give me the fix I need –
What the game did to my pulse – with no results
And you can treat your nose and still won’t come close
The game is a light bulb with eleventy-million volts
And I’m just a moth addicted to the floss
The doors lift from the floor and the tops come off
By any means necessary, whatever the cost
Even if it means lives is lost
And I can’t explain why I just love to get high
Drink, “life!” smoke the blueberry sky, blink twice
I’m in the blueberry 5, you blink three times
I may not even be alive
I mean even James Dean couldn’t escape the allure
Dying young, leaving a good-lookin corpse, of course

(ヴァース3:ジェイZ)
あの頃は生きてる感じがした,サツから逃げ回って
クライン(=ジェイZのかつてのドラッグディーラー仲間)のベンツの助手席に乗って,コカ捌いてた
ハッパ吸って冷静になろうとしたが
この生きザマ,心臓バクバク,ハッパじゃ足りねえ
鼻から一気に吸っても,これっぽっちも物足りねえ
あの人生は110万ボルトのネオンライトの様だった
だが俺は,その灯(魅惑)に集まる単なる蛾(ガ)
ドアが垂直に開き,天井がスライド式のオープンカー
どんなことがあっても,どんな犠牲を払っても
たとえ命が犠牲になったとしても
理由は言えねえ,ただハイになるのが好きなんだ
乾杯!この生きザマに,ハッパを吸って,まばたき2回
ブルーベリー色のベンツ,ウィンカー3回
とっくに死んだっておかしくない人生
かのジェイムス・ディーンでも,この誘惑に勝てなかった
若くして死に,ハンサムな遺体を遺していった,オフコース

[Chorus: Jay-Z (Pharrell)]
It’s just life, I solemnly swear
To change my approach, stop shaving coke
Stay away from hoes, put down the toast
Cause I be doing the most (OH NO!)
But every time I felt “That was that”, it called me right back
It called me right back
Man, it called me right back (OH NO!)

(サビ:ジェイZ(ファレル))
ただ人生を生きてるだけさ,俺はここに誓う
もうこの生きザマは変える,コカを捌くことから手を引く
アバズレ女から身を引いて,シャンパングラスは置いて
つい,やり過ぎちまうからな(オゥノゥ!)
だが毎回「もう辞めにする」と言う度に,また呼び戻されんだ
すぐに呼び戻されるんだ
そうさ,ほら,呼び戻された(オゥノゥ!)

[Outro: Jay-Z (Pharrell)]
Once again its the life
Yeah I said its the life
Once I again its the life
(OH NO! I don’t know why, I…
Get so high oh
Get so high oh
Get so high, high off the life)

(アウトロ:ジェイZ(ファレル))
もういちど人生に乾杯
そうさ,人生に乾杯
もういちどこの生きザマに乾杯
この生きザマに乾杯
(オゥノゥ!理由は言えねえ,ただ・・・
ハイになるんだ,オゥ
ハイになるんだ,オゥ
ハイになるんだ,この生きザマに)

(文責:Jun Nishihara)

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ヒップホップ歌詞引用解説:“サウスのおもてなし” by Ludacrisの場合

2000年10月17日にリリースされた名作『Back for the First Time』は,アメリカ南部のジョージア州アトランタ出身=リュダクリス(Ludacris)のセカンド・アルバムです。

リュダクリスといえば,巨大なアフロにコミカルな表情して,南部(サウス)訛りの英語でラップする,当時の若者に大人気を博したラッパーです。

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2000年代初期に,ゆっくりと「サウスのラップ」が若者の認知を集めてきました。当時,ニューヨークのラップは「カタすぎる」「マジメすぎる」「リリカルすぎる」っていうんで,リリック(歌詞)よりも,リズムや音,ビートに乗せた「ノリのいい」ラップをより重要視する「サウスのラップ」が若者のあいだで人気となりました。全米ハイスクールの白人までが,黒人のマネして,ラップするのが流行ったのは,こういう「ノリのいい」ラップがきっかけとなりました。「ニューヨークや東海岸のラップは古い。そんなのはオトナが聴くようなラップで,若者が聴くラップはサウスだ」と,小生が通ったアメリカのハイスクールのクラスメートは言っていました。こうして,サウスの時代が到来しました。ヒップホップがサウスに傾き始めたのが,2000年代初期でした。

その「サウス時代」のまさに先駆け(先頭)をいっていたのが,リュダクリスです。「サウスのラップ」がメインストリームとなることに当時最も貢献していたのがリュダクリスです。リュダクリスがきっかけで,サウスのラップが若者に認知され,人気となり,ついにメインストリームとなるに至りました。リュダクリスのおかげで,こうしてゆっくりとサウスのラップがグツグツと沸き出はじめていた頃,2002年後半にサウスのラッパーT.I.が出てきました。2002年にT.I.を知る者はまだ南部にいる黒人/若者だけで,ニューヨークやL.A.等の東西ヒップホップを聴いている人間は,ほぼ,まだT.I.を認知していませんでした。

同時にリル・ウェイン(Lil Wayne)というラッパーが当時,南部から出てきました。しかし,まだ白人はリル・ウェインを上手く理解できていなかったようです。白人に理解できなければ,まだ,メインストリームにはなり得なかった時代です。その点,リュダクリスのラップはわかりやすく,おもしろく,ギャグ豊富,下ネタ豊富,ノリがいい,ということで,白人にもウケが良かったのです。

ということで,白人のあいだでも「ノリのいいサウスのラップ」を馴染みなものにさせたのが,リュダクリスということでした。南部特有の訛りでラップするアーティストたちは,自分たちのことを「こぎたない南部ラッパー(dirty south rappers)」と,愛情を込めて呼んでいました。リュダクリスももちろんその1人でした。

そのリュダクリスのアルバム『Back for the First Time』から,ファレル・ウィリアムス率いるプロダクション軍団=The Neptunesプロデュースの2002年作品「Southern Hospitality(サウスのおもてなし)」の歌詞を引用します。

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Dirty South mind blowing Dirty South bread
Catfish fried up, Dirty South fed
Sleep in a cot’-picking Dirty South bed
Dirty South gurrls give me Dirty South head
Hand-me-down flip-flops, hand-me-down socks
Hand-me-down drug dealers hand me down rocks
Hand me down a 50-pack Swisher Sweets box
And goodfella rich niggas hand me down stocks
Mouth full of platinum, mouth full of gold
40-Glock cal’ keep your mouth on hold
Lie through your teeth, you could find your mouth cold
And rip out your tongue cause of what your mouth told
Sweat for the lemonade, sweat for the tea
Sweat from the hot sauce, sweat from the D
And you can sweat from a burn in the 3rd degree
And if you sweat in your sleep, then you sweat from me

きったねえサウスで,エゲつない額のギャラ,ゲットして
ナマズのフライ料理,一丁アガり! おまえの口も,きたねえサウス慣れ
綿摘み,奴隷のサウスで,泥だらけのベッドに横たわり
サウスの田舎オンナが,ヤらしいフェラ,してくれる
おさがりのサンダル,おさがりのソックス
おさがりの麻薬取引,おさがりのコカイン
50本入りのシガーボックス,こっちへ寄こせ
リッチな連中,グッドフェラ・マフィア,おさがりの株儲け
歯ぐきにプラチナ,詰め物ゴールド
40口径のグロック銃で,おまえの口,ぽっかりあいて
嘘ばっか言ってっと,おまえの口,凍らせちゃう
嘘ばっか言ってっと,おまえのベロ,引き抜いちゃう
汗掻いたあとのレモネード,汗掻いたあとのアイスティー
汗だく,激辛ソース,汗だく,俺のアソコ
拷問ヤケドで冷や汗かいて
汗だくの夜,俺と,ひとばんじゅー
(訳:Jun Nishihara)

まさに南部(サウス)を上手くレペゼンしてくれている歌詞です。南部ゆかりの産物が,ぞくぞく出てきます。以下のとおりです。

◎「ナマズのフライ料理」は,南部ニューオーリンズで名物の料理です。「ナマズ専門店」もいくつかあります。「ニューオーリンズのナマズ料理店トップ5」は,以下で紹介されていますので,興味のある方はどうぞ。https://www.nola.com/dining/index.ssf/2017/04/top_5_fried_catfish_makers_in.html

◎「綿摘み」は,差別用語です。奴隷制度の時代,南部農園で奴隷は綿を摘まされていました。差別用語ですが,リュダクリスはここでおおっぴろげにラップして,それを笑い話にしています。

◎「歯ぐきにプラチナ」,これはラッパーが口の中に入れるグリルです。ダイヤモンドや金メッキのグリルをハメて,口を横に広げて,見せびらかし(show off)します。もともとはサウスで広がり,いまは古今東西関係なく,好きなラッパーは自分の口にグリルをハメます。(「南部ラップ学」の参考に,リル・フリップをググってみてください。)

◎「汗だく,激辛ソース」,これは黒人ソウルフードの大切な薬味です。既出のナマズ料理もソウルフードですが,激辛ソース(hot sauce)を料理にかけるのがソウルフードのミソのひとつです。

このようにサウスに関係する用語をふんだんに取り入れたラップを披露してくれるのがリュダクリスです。YouTube等で,同曲のミュージックビデオをご覧になられると感じると思いますが,ニューヨークのラップとは違って,ビートに乗せてラップをするスタイルは,南部特有です。その南部ラップを全米に広めるキッカケを作った大切なラッパーとして,リュダクリスを覚えておいてください。

当時リュダクリスを聴いていた若者たちは,いまは立派なオトナになり,マジメに仕事して働いています。同曲が流行ったのはもう18年前の話ですが,いまだにリュダクリスのラップは健全ですし,いま聴いても全く古さを感じさせないこの曲「Southern Hospitality」は名曲でございます。

(文責:Jun Nishihara)