JAY ELECTRONICAのアルバム『A Written Testimony』楽曲⑧「Fruits Of The Spirit」からジャスト・ブレイズまで。

この曲を再生(play)すると,まずビートに反応します。2000年代初期の頃にすでにラップをヘヴィに聴いてきたヒップホップ・ヘッズ(Hip-Hop Heads)にとっては,感慨深いものがあるでしょう。なんといったって,ジャスト・ブレイズ(Just Blaze)のビートをサンプリングしているのですからね。

聴き比べて見てください。まずは,ジェイ・エレクトロニカの当曲「Fruits Of The Spirit」です。

そして,このビートの元ネタとなったビート・プロデューサーの鬼才=Just Blaze先生のビートを聴いてみぃ。

ここまでソウルフルなビートネタ使いをできるのは,ジャスト・ブレイズ先生以外にいる?!?・・・あ,カニエがいたな。しかしながら,ジャスト・ブレイズ(「ジャス・ブレェェェィィィィィィィイズ!」)とカニエ・ウェストのネタづかいは,ちと違うんですねえ。

そっくりなんですけどね。

でも違うんですね。

例えばですよ,ジャスト・ブレイズ(Just Blaze)先生のビート・プロデュースの曲として,これを聴いてみて下さい。

The Diplomats – “I Really Mean It”(ビート・プロデューサーは produced by ジャスト・ブレイズ)

続きまして,こちらもジャスト・ブレイズ作。

Memphis Bleek – “Intro (U Know Bleek)”(produced by ジャスト・ブレイズ)

だんだん,感じてきました?ソウルネタも入れているのに,ドラムビートがぶっ飛んでます。

JAY-Z – “PSA (Public Service Announcement)”(produced by ジャスト・ブレイズ)

続けましょう。
次の曲は,メンフィス・ブリークのセカンド・アルバムから。

Memphis Bleek – 曲名が“Just Blaze, Bleek & Free”と3名の名前を並べた曲名。シック!(produced by ジャスト・ブレイズ)

続きまして。
ジャスト・ブレイズの弟子,と言っても,ビートメイカーの弟子ではなく,ラッパーとしての弟子。サイゴン(Saigon),覚えてます? 2011年に遅咲きでデビューして,アルバム『The Greatest Story Never Told』をリリースしたアイツ。レペゼンはニューヨーク市はブルックリン。少なくとも,ビートはキレッキレ!

Saigon – “The Greatest Story Never Told”(produced by ジャスト・ブレイズ)

それから,こういう曲もありました。
アッシャー(Usher)の名曲「Throwback」のビートを制作したのもジャスト・ブレイズ。

ヴォーカル無しで,ビートのみで聴いてみましょう。

最後に,XVっていうラッパー知ってますか?カンザス州出身のラッパーです。カンザス州と言えば『オズの魔法使い』の舞台となった場所で有名ですが,あんな田舎からラッパーが出てくるのか?と言わんばかりにあなた,今,思っていますよね?(笑)出てきたんです。

そのXVが自分の生まれ故郷であるカンザス州ウィチタ(Wichita)にオマージュを捧げた曲として,同名のタイトルで曲を作りました。ビートはもちろん,ジャスト・ブレイズ。

XV – “Wichita”(produced by ジャスト・ブレイズ)

このクラシック・ソウルミュージックをネタに回し,ヒップホップ曲に仕上げるというワザは,ジャスト・ブレイズの特権と言ってもいいほど,この人,廻しまくってます。まず,ジャスト・ブレイズがいて,その後にカニエ・ウェストがそのワザで名を馳せ始めてきました。

上記「ウィチタ」の曲は,ジャスト・ブレイズの典型的なソウル・ネタ回しだと思います。やっぱりカニエとは違いますよね。これはカニエではない,ジャスト・ブレイズだ,っていうのが分かる。

すいません,最後とか言っといて,もう1曲いいですか?ジャスト・ブレイズ制作のビート。

ドレイク(Drake)のセカンド・アルバムから。この曲,Drake – “Lord Knows”(produced by ジャスト・ブレイズ)です。

本日は,ジャスト・ブレイズ(Just Blaze)制作の楽曲を聴きまくりましたので,次回はカニエ・ウェスト(Kanye West)が他のアーティストに提供した楽曲を幾つか聴いてみましょう。

(文責&キュレーション:Jun Nishihara)

JAY ELECTRONICAのアルバム『A Written Testimony』楽曲⑦「Flux Capacitor」(独断偏見ライナーノーツ)

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楽曲の題名「flux capacitor」とは映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズに登場するタイムマシン(デロリアン)の内部装置として装着されている「次元転移装置」のことです。つまり,次元(時代)を行き来するために必要な装置で,ここでは,ジェイ・エレクトロニカとジェイZがこの曲を媒体にして時代(ジェネレーション)を行き来します。

前回の曲から曲調はガラッと変わり,早いテンポで二人のジェイがラップを交わします。

ジェイZはこうラップします。

You backstabbers gon’ turn me back to the old Jay
He’s not who you wanna see, he’s not as sweet as the old Ye

おまえら裏切り者のおかげで,昔のジェイに戻っちまうぜ
ほんとは見せたくねえんだよ,昔のカニエのように全然甘くねえぜ

ジェイ(Jay)とイェィ(Ye)=カニエ(KanYe)が韻を踏みます。

When I die, please don’t tweet about my death
Tryna get mentions, bringin’ attention to yourself
Please don’t post some pic from in the club
With some quote you stole like we was tighter than what we was
Tryna get likes from my love
If you can’t go by the crib and give my mama a hug

俺が死んでも,俺の死に対してツイッターでつぶやかないでくれ
下心みえみえ,結局はじぶんが注目されたいだけなんだろ
クラブで撮った写真を載せねえでくれ
人から盗んだ言葉を引用して,仲良いフリなんかして
俺のラヴを使って「いいね」を獲得しようとして
そのつもりなら,俺の実家に出向いて,俺のおふくろにハグでもしてやってくれ

最後の1行をできるのは,この人しかいないでしょう。
つまり,ジェイZの幼なじみで,子供の頃から,ジェイZの母親からも世話になっている人。プライベートでもジェイの親友である,タイタイ(TyTy:本名 Tyran Smith)です。
以下写真の左側です。

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最後にビギー・スモールズの歌詞をフリップしたこの2行を見ておきましょう。

Remember Rappin Duke? Duh-ha, duh-ha
You never thought we’d make it to Lā ‘ilāha ‘illā Allah

ラッピン・デュークを覚えてるか?「ダッハー,ダッハー」
誰が想像しただろう,俺らが「レイラッハー,イッラー,アッラー」の地まで達するとは

「レイラッハー,イッラー,アッラー」というのはイスラームの祈りの言葉で「神はアッラー以外にありえない」という意味の言葉です。

このラインはザ・ノトーリアス・BIGの「Juicy」からの借用ライムです。

Remember Rappin Duke? Duh-ha, duh-ha
You never thought that Hip-Hop would take it this far

ラッピン・デュークを覚えてるか? 「ダッハー,ダッハー」
誰が想像しただろうか,ヒップホップがここまで来るとはな

(文責:Jun Nishihara)

JAY ELECTRONICAのアルバム『A Written Testimony』楽曲⑥「Universal Soldier」(独断偏見ライナーノーツ)

戦争を忘れるな。とりわけ,第二次世界大戦を忘れるな,と「アメリカの白人に虐げられてきた黒人が」日本人である我々に警告してくれている楽曲と解釈が可能である。「白人に」あの惨事を二度と繰り返させてはならないのだ,と。

曲の冒頭で,第二次世界大戦中に広島に原爆を落下させた3名の白人の名前が挙がります。

これが何をもたらしたか。

それは映画『火垂るの墓』に描かれております。

ここで,第二次世界大戦中に日本人が経た悲痛と,500年続いた黒人奴隷制度の苦悩が一瞬交差します。

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そしてジェイ・エレクトロニカは2回「ビスミッラー」と唱え,イスラームの経典から祈りの言葉を発します。「アウードゥ・ビラーヒ・ミン・アル・シャイターン・イル・ラジーム(アッラーに救いを求め,悪魔から身を守ろうではないか)」。

そして3回目の「ビスミッラー」が唱えられ,最後に「アッラーのみが神であり,ムハンマドはアッラーの使者である」と述べられます。

これは,冒頭の悍しい報道に対する御祓の詞(ことば)の役割も果たしております。

この曲はジェイ・エレクトロニカ自身によって制作されました。曲のビートも本人が最初から作り,第2ヴァースにジェイZを迎えます。

ジェイ・エレクトロニカはこうラップします。

The son of slaves, true, I started out as a peasant
That’s why I build my temple like Solomon in the desert

奴隷の息子として生まれ,庶民として育った
だから砂漠にソロモン宮殿を建ててやろうと思った

前回も取り上げましたが,ジェイ・エレクトロニカの歌詞には頻繁に対比(comparison)が多く起用されております。ここでも奴隷(slaves)や庶民・百姓(peasant)とソロモン宮殿を対比させています。

ジェイは続けます。

My mathematical theology of rhymin’ a touch the soul
I spent many nights bent off Woodford
Clutchin’ the bowl, stuffin’ my nose
Some of the cons, I suffered for prose
My poetry’s livin’ like the God that I fall back on

考え抜かれた俺の「神学ライム」は人々の魂を動かす
ウッドフォード通りで俺は,打ちひしがれる日を幾夜も経てきた
お椀を握りしめ,鼻を詰まらせて
まわりから反対された,散文に苦しんだ
俺の詞(うた)は,いざという時頼りになる神さんのようだ

そして第2ヴァースでジェイZはニーチェの言葉を引用します。

What don’t kill us make us stronger, that’s Nietzsche on me

ニーチェがこう言ってた,「どれだけ苦しくとも,それによって死なない限り,それは俺を強くしてくれるばかりだ」と。

ジェイは最後にこう言います。

We was in your cotton fields, now we sittin’ on Bs, on me

昔,あんたの綿農場(コットンフィールド)で働いていた奴隷野郎が
今は数十億ドルの家に住んでいる,それ俺な
(※註:B’s=Billions)

日本人はどうしてここまで黒人のメンタリティーに共感するところがあるのだろうか,と,長い間考えてきました。そのひとつの答えが,この曲で見つかったように感じました。

(文責:Jun Nishihara)

JAY ELECTRONICAのアルバム『A Written Testimony』楽曲⑤「Shiny Suit Theory」(対訳)

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楽曲⑤「Shiny Suit Theory」歌詞対訳

[Intro: Jay Electronica]
One two, one two, yeah, uh huh, yeah

(イントロ:ジェイ・エレクトロニカ)
1,2,1,2,イヤー,そうだ,イヤー

[Chorus: Jay Electronica]
I’m sailing on a cloud, they trailing below
My shrink told me, “It’s a feeling they’ll never know”
I pack up all my sins and I wear ’em to the show
And let ’em go, let ’em go, let ’em go, let ’em go
I’m sailing on a cloud, they trailing below
My shrink told me, “It’s a feeling they’ll never know”
I pack up all my sins in every L that I blow
And let ’em go, let ’em go, let ’em go, let ’em go

(サビ:ジェイ・エレクトロニカ)
雲の上を滑翔(かっしょう)する俺に,ずっと下で遅れを取る連中
お医者さんに言われたよ「ヤツらには一生わかんねえ爽快感だ」って
今までの罪を全部スーツケースに詰め込んで,俺はツアーに乗り出した
手放せ,手放せ,手放せ,手放せ
雲の上を滑翔する俺に,ずっと下で遅れを取る連中
お医者さんに言われたよ「ヤツらには一生わかんねえ爽快感だ」って
今までの罪を全部ハッパに詰め込んで,一服してやった
ぶっ飛べ,ぶっ飛べ,ぶっ飛べ,ぶっ飛べ

[Verse 1: Jay Electronica]
In the land before time
A land before altar boys, synagogues, and shrines, man was in his prime
Look how far I go in time just to start a rhyme
The method is sublime, you get blessed with every line
I’m in touch with every shrine from Japan to Oaxaca
The melanated carbon-dated phantom of the chakras
Me and Puff, we was chilling in Miami
He said, “Nigga, fuck the underground, you need to win a Grammy
For your mama and your family, they need to see you shined up
You built a mighty high ladder, let me see you climb up
Nigga, what you scared of?
Terrorize these artificial rap niggas and spread love, pollinate they earbuds
Like you supposed to, spit it for the culture
Pay no attention to the critics and the vultures
They rather have a shot of Belvy just to spite you
They casting judgments ’cause they feel they got the right to
Fuck ’em, I let the dice roll like The Father did
I gotta shine, it’s in my blood, I’m a Harlem kid
I treat my babies right, treat my ladies ladylike
Hit them with a remix to make sure that they play me twice
I thought you said, “It’s the return of the black kings
Luxurious homes, fur coats, and fat chains”

(ヴァース1:ジェイ・エレクトロニカ)
その昔の大地でのハナシ
祭壇も無く,礼拝堂も無く,神社も無かった時代,人類は最も生き生き輝いていた
ライムの冒頭で,時代をここまで遡り
極上のメソッド,ラインが飛び出す毎に恩恵を授ける
日本からメキシコのオアハカまで,あらゆる神社のパワーを集め
放射年代測定法によって算出された黒い肌したチャクラの霊と繋がる
俺とディディ,マイアミでチルしてた
ディディに言われた「おまえなぁ,アングラなんてもうやめて,さっさとグラミー獲得しろよ」
「かーちゃんと家族のためにな,おまえが輝いてるとこ,見たがってんだろ」
空高くそびえる梯子を立てかけられ,俺はそれを登るところを期待されている
「おまえは一体,
何におびえてんだ?」
「ウワベだけのラッパーどもをブチのめして,愛を広め,リスナーの耳に受粉の種を植えつけてやれ」
「それがおまえの役目だろ,カルチャーのためにラップしな」
「批評家の言うことは無視していい,ハゲタカも気にすんな」
「ベルヴェデーレのシャンパン飲んで,人の悪口言ってればヤツらは幸せなんだ」
「権利があるからって人を軽蔑の目で見て,好き勝手言ってるんだ」
「糞食らえでいい,気にせずサイコロ転がしてればいい,クラレンス13のように」
ギラギラ輝いていたい性格,動脈を流れる,俺はハーレム野郎
子供たちを良く養い,オンナたちを淑女のようにモテなす
リミックスをヒットさせ,ちゃんと俺の曲を流してもらうために
俺には聞こえたぜ「黒人キングのお戻りだ。
馬鹿デッカイ豪邸に,身にまとうのは毛皮のコート,おまけにぶっといダイヤのチェーン」ってな

[Chorus: Jay Electronica]
I’m sailing on a cloud, they trailing below
My shrink told me, “It’s a feeling they’ll never know”
I pack up all my sins and I wear ’em to the show
And let ’em go, let ’em go, let ’em go, let ’em go
I’m sailing on a cloud, they trailing below
My shrink told me, “It’s a feeling they’ll never know”
I pack up all my sins in every L that I blow
And let ’em go, let ’em go, let ’em go, let ’em go

(サビ:ジェイ・エレクトロニカ)
雲の上を滑翔(かっしょう)する俺に,ずっと下で遅れを取る連中
お医者さんに言われたよ「ヤツらには一生わかんねえ爽快感だ」って
今までの罪を全部スーツケースに詰め込んで,俺はツアーに乗り出した
手放せ,手放せ,手放せ,手放せ
雲の上を滑翔する俺に,ずっと下で遅れを取る連中
お医者さんに言われたよ「ヤツらには一生わかんねえ爽快感だ」って
今までの罪を全部ハッパに詰め込んで,一服してやった
ぶっ飛べ,ぶっ飛べ,ぶっ飛べ,ぶっ飛べ

[Verse 2: Jay-Z]
In this manila envelope, the results of my insanity
Quack said I crossed the line ‘tween real life and fantasy
Can it be the same one on covers with Warren Buffett?
Was ducking the undercovers, was warring with muh’fuckers
Went from warring to Warren, undercovers to covers
If you believe in that sort of luck, your screws need adjusting
In the world of no justice and black ladies on the back of buses
I’m the immaculate conception of rappers-slash-hustlers
My God, it’s so hard to conceive
But it all falls perfect, I’m like autumn is to trees
Aw, the doc interrupted
He scribbled a prescription for some Prozac, he said, “Take that for your mustard
Boy, you must be off your rocker
If you think you’ll make it off the strip before they ‘Pac ya
Nigga, you gotta be psychotic or mixing something potent with your vodka
It takes a lot to shock us but you being so prosperous is preposterous
How could this nappy-headed boy from out the projects
Be the apple of America’s obsession?
You totally disconnected with reality, don’t believe in dreams
Since when did black men become kings?”

(ヴァース2:ジェイZ)
この黄褐色の封筒に,俺の狂気の沙汰が封されている
ヤブ医者に言われた「おまえは現実と幻想をはき違えてる」
ウォーレン・バフェットに並び,これが表紙を飾ったヤツか
覆面ポリを避けて,連中たちと争いを続けてきた
争いからウォーレンへ,覆面から雑誌の表紙へと
そのような運を信じるのなら,あんたの脳味噌のネジに調整が必要だ
正義なんて無い世界,バスの後部に追いやられた黒人女性
ラッパー兼ハスラーの無原罪懐胎説,俺はその象徴
なんてこった,難産の極み
全てがピッタリハマる,紅葉の秋立ち
オゥ,医者が割り込んだ
俺に抗うつ剤を処方してくれた,こう言われた「おまえのその脳味噌にくれてやれ」
まるでイカレてんぜ
ベガスのカジノ通りを,パックのように撃たれず,生きて通れると思うのか
精神病にでもやられたか,もしくはウォッカに強烈な麻薬をぶち込まれたのか
俺らは簡単には驚かねえが,おまえが裕福ってのはまるで荒唐無稽
ゲットー生まれのチリチリ髪した鼻垂れボウズが
どうしてここまでの全米の羨望の的となり得たのか
まるで現実味がひとかけらも感じられねえ,夢を信じてどうなる
黒人野郎がキングになるなんて,いつのハナシだ

[Bridge: The-Dream]
You have no idea, yeah
The meaning to what I say
And you have no idea
Of how I got this way
Now hear my dreams
And by the time you wake
I’ll look down from the clouds
See I’m on my way

(ブリッジ:ザ・ドリーム)
キミは知らない,イヤー
僕の本心をさ
キミは知らない
どうしてここまできたか
僕の夢が聞こえるかい
キミが目を覚ます頃には
雲の上から眺めているよ
もうすぐ行くからね

[Chorus: Jay Electronica]
I’m sailing on a cloud, they trailing below
My shrink told me, “It’s a feeling they’ll never know”
I pack up all my sins and I wear ’em to the show
And let ’em go, let ’em go, let ’em go, let ’em go
I’m sailing on a cloud, they trailing below
My shrink told me, “It’s a feeling they’ll never know”
I pack up all my sins in every L that I blow
And let ’em go, let ’em go, let ’em go, let ’em go

(サビ:ジェイ・エレクトロニカ)
雲の上を滑翔(かっしょう)する俺に,ずっと下で遅れを取る連中
お医者さんに言われたよ「ヤツらには一生わかんねえ爽快感だ」って
今までの罪を全部スーツケースに詰め込んで,俺はツアーに乗り出した
手放せ,手放せ,手放せ,手放せ
雲の上を滑翔する俺に,ずっと下で遅れを取る連中
お医者さんに言われたよ「ヤツらには一生わかんねえ爽快感だ」って
今までの罪を全部ハッパに詰め込んで,一服してやった
ぶっ飛べ,ぶっ飛べ,ぶっ飛べ,ぶっ飛べ

(対訳:Jun Nishihara)

元ネタの曲を知る(12):ドレイク ⇄ JAY-Z ⇄ ボビー・グレン

どうも,西原潤です。

1年半以上前ですが,2018年9月にこういう見出しを1件UPしました。

ジェイZのヒップホップ界歴史に残る名盤『The Blueprint』に収録されている「Song Cry」の元ネタを探ったものでした。

この曲が世にリリースされて,かれこれ18年以上が過ぎておりますが,その18年以上が経過した今,ヒップホップ界でベテランの域に入り始めているドレイクが,この名曲を引っ提げお手本にして,「When To Say When」という曲を今年2月にリリースしました。そして,2020年5月1日にリリースした公式ミックステープに同曲「When To Say When」を収録しました。

私の尊敬するHip-Hop JournalistにElliott Wilsonという方がいます。Elliott(YN)は80年代から米ヒップホップ雑誌(『ego trip』『The Source』『XXL』『RESPECT.』)の編集者(後に編集長)として名を上げてきた人物です。最近はTIDALで放送されている動画付きのラッパー・インタヴュー集「Rap Radar Podcast」を立ち上げております。すでに現時点で,90話まで進んでおりますので,約90名のラッパーをインタヴューしてきた計算になります。このインタヴュー集は,TIDALを月額購買していれば,視聴可能です。

昨年2019年12月25日に公開されたElliott Wilson & B.Dotとドレイク(Drake)のインタヴューは,ドレイクのトロントの自宅で行われました。インタヴューが“あの”ドレイクの自宅で行われた,というのは,どれだけElliottがヒップホップ界でリスペクトされているか,ということを物語っています。このインタヴューはTIDALを月額払って観てみる価値はありますので,お金に少し余裕のある方は,月額スタートしてみると良いですよ。

さて,そのドレイクが「When To Say When」を今年2月にリリースした際に,ミュージックビデオも同日公開されました。そのミュージックビデオは,ドレイクがジェイZの生まれ育ったブルックリンのMarcy Projectsに赴き,そこで撮影しているという感動的なものです。なぜ感動的か,というのは幾つか理由はあるのですが,1つは,タイミングです。2001年8月に亡くなったAaliyahをドレイク自身,当時好きで聴いていました。当時2001年にドレイクはラッパーとしてまだ世に出ていませんでしたが,同じ世代の人間として私も,Aaliyahを当時ヘヴィロテで聴いておりました。当時ヘヴィーローテーションで流していた大好きなアルバムの歌手が亡くなった,と。それを知ったのは,当時インターネットなんて僕はやってなかったですから,誰かアメリカに住んでいた友達から聞いたんだと思います。新聞でも見たのかな?もうアメリカと黒人音楽にどっぷり浸かっていた2001年でしたので,当時の様々な思い出が,「Song Cry」を聴くと甦ってくるのです。そういう最中のことでしたから,Aaliyahが亡くなった翌月にリリースされた『The Blueprint』収録楽曲の最も感動的である曲をサンプリング(という言葉が安っぽく聞こえてしまうので使いたくない)否,サンプリングではなく「お手本として起用させていただいた」曲をドレイクがリリースしたというのは,そして同日にリリースされたミュージックビデオを拝見した時には,あの当時を思い出して,いろいろな感情が溢れ出してきたため,涙が出てしまったのでした。

ここにその「When To Say When」と「Song Cry」と,そしてBobby Glennの「Sounds Like A Love Song」を掲載しておきます。

Drake – “When To Say When”

JAY-Z – “Song Cry”
(ミュージックビデオの冒頭で2002年という文字が出てきますが,この曲を収録したアルバムが出たのは2001年です。当時はミュージックビデオ(当時の言葉でPV)は時間をかけて製作されていましたから,曲が世に出て1年,2年後にPVが発表されても不自然ではなかったのです。最近のように,リードシングル曲ならまだしも,それ以外の曲がリリースされて,同日中にミュージックビデオも世に出るなんていうのは極めて稀なことだったのです。)

Bobby Glenn – “Sounds Like A Love Song”

(文責&キュレーション:Jun Nishihara)

JAY ELECTRONICAのアルバム『A Written Testimony』楽曲⑤「Shiny Suit Theory」(対訳:ジェイZのヴァース)

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楽曲⑤「Shiny Suit Theory」対訳:ジェイZのヴァース

[Verse 2: Jay-Z]
In this manila envelope, the results of my insanity
Quack said I crossed the line ‘tween real life and fantasy
Can it be the same one on covers with Warren Buffett?
Was ducking the undercovers, was warring with muh’fuckers
Went from warring to Warren, undercovers to covers
If you believe in that sort of luck, your screws need adjusting
In the world of no justice and black ladies on the back of buses
I’m the immaculate conception of rappers-slash-hustlers
My God, it’s so hard to conceive
But it all falls perfect, I’m like autumn is to trees
Aw, the doc interrupted
He scribbled a prescription for some Prozac, he said, “Take that for your mustard
Boy, you must be off your rocker
If you think you’ll make it off the strip before they ‘Pac ya
Nigga, you gotta be psychotic or mixing something potent with your vodka
It takes a lot to shock us but you being so prosperous is preposterous
How could this nappy-headed boy from out the projects
Be the apple of America’s obsession?
You totally disconnected with reality, don’t believe in dreams
Since when did black men become kings?”

(ヴァース2:ジェイZ)
この黄褐色の封筒に,俺の狂気の沙汰が封されている
ヤブ医者に言われた「おまえは現実と幻想をはき違えてる」
ウォーレン・バフェットに並び,これが表紙を飾ったヤツか
覆面ポリを避けて,連中たちと争いを続けてきた
争いからウォーレンへ,覆面から雑誌の表紙へと
そのような運を信じるのなら,あんたの脳味噌のネジに調整が必要だ
正義なんて無い世界,バスの後部に追いやられた黒人女性
ラッパー兼ハスラーの無原罪懐胎説,俺はその象徴
なんてこった,難産の極み
全てがピッタリハマる,紅葉の秋立ち
オゥ,医者が割り込んだ
俺に抗うつ剤を処方してくれた,こう言われた「おまえのその脳味噌にくれてやれ」
まるでイカレてんぜ
ベガスのカジノ通りを,パックのように撃たれず,生きて通れると思うのか
精神病にでもやられたか,もしくはウォッカに強烈な麻薬をぶち込まれたのか
俺らは簡単には驚かねえが,おまえが裕福ってのはまるで荒唐無稽
ゲットー生まれのチリチリ髪した鼻垂れボウズが
どうしてここまでの全米の羨望の的となり得たのか
まるで現実味がひとかけらも感じられねえ,夢を信じてどうなる
黒人野郎がキングになるなんて,いつのハナシだ

(対訳:Jun Nishihara)

JAY ELECTRONICAのアルバム『A Written Testimony』楽曲⑤「Shiny Suit Theory」(対訳:ジェイ・エレクトロニカのヴァース)

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楽曲⑤「Shiny Suit Theory」対訳:ジェイ・エレクトロニカのヴァース

[Verse 1: Jay Electronica]
In the land before time
A land before altar boys, synagogues, and shrines, man was in his prime
Look how far I go in time just to start a rhyme
The method is sublime, you get blessed with every line
I’m in touch with every shrine from Japan to Oaxaca
The melanated carbon-dated phantom of the chakras
Me and Puff, we was chilling in Miami
He said, “Nigga, fuck the underground, you need to win a Grammy
For your mama and your family, they need to see you shined up
You built a mighty high ladder, let me see you climb up
Nigga, what you scared of?
Terrorize these artificial rap niggas and spread love, pollinate they earbuds
Like you supposed to, spit it for the culture
Pay no attention to the critics and the vultures
They rather have a shot of Belvy just to spite you
They casting judgments ’cause they feel they got the right to
Fuck ’em, I let the dice roll like The Father did
I gotta shine, it’s in my blood, I’m a Harlem kid
I treat my babies right, treat my ladies ladylike
Hit them with a remix to make sure that they play me twice
I thought you said, “It’s the return of the black kings
Luxurious homes, fur coats, and fat chains”

(ヴァース1:ジェイ・エレクトロニカ)
その昔の大地でのハナシ
祭壇も無く,礼拝堂も無く,神社も無かった時代,人類は最も生き生き輝いていた
ライムの冒頭で,時代をここまで遡り
極上のメソッド,ラインが飛び出す毎に恩恵を授ける
日本からメキシコのオアハカまで,あらゆる神社のパワーを集め
放射年代測定法によって算出された黒い肌したチャクラの霊と繋がる
俺とディディ,マイアミでチルしてた
ディディに言われた「おまえなぁ,アングラなんてもうやめて,さっさとグラミー獲得しろよ」
「かーちゃんと家族のためにな,おまえが輝いてるとこ,見たがってんだろ」
空高くそびえる梯子を立てかけられ,俺はそれを登るところを期待されている
「おまえは一体,
何におびえてんだ?」
「ウワベだけのラッパーどもをブチのめして,愛を広め,リスナーの耳に受粉の種を植えつけてやれ」
「それがおまえの役目だろ,カルチャーのためにラップしな」
「批評家の言うことは無視していい,ハゲタカも気にすんな」
「ベルヴェデーレのシャンパン飲んで,人の悪口言ってればヤツらは幸せなんだ」
「権利があるからって人を軽蔑の目で見て,好き勝手言ってるんだ」
「糞食らえでいい,気にせずサイコロ転がしてればいい,クラレンス13のように」
ギラギラ輝いていたい性格,動脈を流れる,俺はハーレム野郎
子供たちを良く養い,オンナたちを淑女のようにモテなす
リミックスをヒットさせ,ちゃんと俺の曲を流してもらうために
俺には聞こえたぜ「黒人キングのお戻りだ。
馬鹿デッカイ豪邸に,身にまとうのは毛皮のコート,おまけにぶっといダイヤのチェーン」ってな

(対訳:Jun Nishihara)

JAY ELECTRONICAのアルバム『A Written Testimony』楽曲④「The Neverending Story」(独断偏見ライナーノーツ)

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タイトルは「The Neverending Story」(終わりのない物語)です。

ヴァース1のジェイ・エレクトロニカ(Jay Electronica)の歌詞にこういうラインが出てきます。

What a time we livin’ in, just like the scripture says
Earthquakes, fires, and plagues, the resurrection of the dead

なんて時代に我らは生きているんだ,経典に書いていたとおりだ
地震,火事,そして疫病の繰り返し,死者がよみがえった

つまり,こういった出来事が繰り返される合間に,我らは生きている,ということをこの歌詞では言っているわけですが,現在の新型コロナウイルス(COVID-19)にしても同様です。

ジェイ・エレクの歌詞には,対比(comparison)が多く起用されています。

You could catch me bummy as fuck or decked out in designer
On I-10 West to the desert, on a Diavel like a recliner
Listen to everything from a lecture
From the honorable minister Louis Farrakhan
To Serge Gainsbourg or Madonna or a podcast on piranhas

ホームレスのような「なり」する時もあれば,デザイナーブランドの洋服に身をまとう時もある
10号線(南部を串刺しに通過する州間高速道路)に乗って,西の砂漠まで走ることもあれば
 ドゥカティ・ディアベルのバイクに乗って,背をもたれかけ,突っ走ることもある
黒人イスラム指導者であるルイス・ファラカーンの講話を聴くこともあれば
セルジュ・ゲンスブールの語りや,マドンナから,ピラニアに関するポッドキャストまで
なんだって俺は聴くんだぜ

この曲で特筆すべきことは,The Alchemist(ザ・アルケミスト)がプロデューサーとして関わっていることです。The Alchemistといえば,以下に挙げられないくらいのヒップホップ・アーティストと関わり,数多くの名曲を制作してきました。

・Fat Joe率いるTerror Squadの数々のアルバム
・クイーンズ区出身のMobb Deepのアルバム
・Royce Da 5’9のアルバム
・Tony Touchのアルバム
・2001年,Big Punの死後にリリースされたアルバム
・ジェイダキス
・ゴーストフェイス・キラー
・スタイルズ・P
・NAS
・リンキン・パーク
・50セント
・サイゴン
・State Property(!)
・パプース
・ネリー
・エミネム
・ファボラス
・Westside Gunn(!)
・キャムロン
・・・などなどなど。リストはまさに,Neverending(尽きません)。

こういったヒップホップの裏側で活躍している大物人物たちに楽曲を提供してきた歴史があるThe Alchemistのビートに,この度,表(オモテ)の人間であるジェイZ(JAY-Z)が乗った,というのは,とても興味深いことであり,どういう作品ができあがったのか,この機会をとらえて,ぜひ聴いてみてください。

ちなみに,アルケミストがプロデュースしたこの曲にもサンプリング・ネタがあります。アルゼンチン生まれのシンガー・ソングライターであるリト・ネビア(Litto Nebbia)の「La Caida」という1976年にリリースされた曲です。

(対訳及び文責:Jun Nishihara)

JAY ELECTRONICAのアルバム『A Written Testimony』楽曲②「Ghost of Soulja Slim」(独断偏見ライナーノーツ)

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3月13日(金)に突如リリースされたアルバム『A Written Testimony』。ここへ来て,誰が想定していただろうか。10年以上,ジェイ・エレクトロニカのアルバムがリリースされることをファンは待ち,待ち,待ち続けていた。まるでDr. Dreの『Chronic 2.0』のごとく。しかし一向にリリースされない。10年以上待ってもこれなんで,ファンは半ば諦めかけていた。

そうしてジェイ・エレクトロニカの存在が人々の顕在意識から離れようとしていたまさにこの時,ジェイは突如アルバムをリリースした。

そしてアルバムを再生し,2曲目「Ghost of Soulja Slim』に入る時,JAY-Zの声が聞こえる。しかしクレジットにJAY-Zの名前は無い。ファンは驚く。え?えっ?この声はJAY-Zだよね?と。

そう,そのとおり。

そのJAY-Zのヴァースをいくつか引用してみる。

Next time they bring up the Gods, you gon’ respect us
(名人とは俺らのこと,リスペクトしな)

ヒップホップ界では互いのことをGodsと呼び合う。これはお互いにリスペクトの意を含めた呼び名であるが,おそらく最近の若手はこういう呼び名は使わなくなってきている。90年代〜2000年代前半に見られた呼び名で,つまり2020年の現代,そういう呼び名をしていたラッパーは既にベテラン,名人となっているということ。ここではジェイ・エレクトロニカの歌詞でよく登場する宗教的レフェレンスも含めた二重の意の含みを持たせている。

That lil’ vest ain’t gonna do you, I shoot from neck up
(防弾チョッキじゃ足りねえ,首から上は無防備だ)

ジェイ・エレクトロニカはイスラム教徒としてメッカ礼拝を行った。ここでは「neck up(ネカッ(プ))という音と「mecca(メカッ)」という音を重ねている。

I ain’t even tryna hold ya, Magnolia Slim
I’m a soldier from that mode, I’m the ghost of him

マグノリア・スリムの死に対し,誰を責め立てようとしてる訳でもない
俺はその世代に育った勇士(ソウルジャ)であり,ヤツの霊が俺の中に息づく

出ました。この曲のタイトルともなっている「Soulja Slim(ソウルジャ・スリム)」の名。アメリカ深南部(deep south)に位置するジャズ音楽やブラック・ミュージックの源流であるニューオーリンズ。ジェイ・エレクトロニカはそのニューオーリンズ出身。他に有名どころではLil Wayne, Juvenile, Mannie Fresh, Birdman等々が同郷出身。彼らはニューオーリンズ市のスラム街=マグノリア(Magnolia)エリアで生まれ育った。そしてそのマグノリア出身のヒップホップ・アーティストらが尊敬してやまないのが,2003年に亡くなったSoulja Slim又の名をMagnolia Slim。ジェイZはここで,「じぶんはこの世代の野郎だ。Magnolia Simの霊が俺の中に息づく」ということをヴァースで言っています。

Peaceful teaching of Rumi, but don’t confuse me
You mouth off for the cameras, I make a silent movie
Now here’s some jewelry
No civilization is conquered from the outside until it destroys itself from within

ルーミー開祖による平穏なる教え,勘違いすんな
カメラに向かってわめき散らすお前と,無声映画を製作する俺
金言を一つ教えてやろう
文明というものは,外部からの力で滅びるのではなく,とかく内部から腐り滅びる

ルーミー開祖というのは,イスラーム神学であるスーフィズムの重要人物であり,ペルシア(現・イラン)の詩人(1207年〜1273年)。実際に,イスラム教徒の国で本屋さんに入ると,ルーミー開祖が書いた詩集が沢山置いてある。1200年代の詩人であるのに,2000年代の現代になっても,いまだにイスラム教徒をここまで魅了するものとは何なのであろうか。

実際,彼の名=ルーミーにちなんで,JAY-Zとビヨンセは双子の息子をRumiと名付けた。

さて,ヴァース2ではジェイ・エレクトロニカ(Jay Electronica)がこうラップする。

If it come from me and Hov, consider it Qur’an
If it come from any of those, consider it Harām
The minaret that Jigga built me on the Dome of the Roc
Was crafted, so beautifully, consider this Adhan
From a hard place and a rock to the Roc Nation of Islam

俺とホヴァ(=JAY-Z)の曲,コーランの如く
他の連中の曲,ハラームの如く
ジガ(=JAY-Z)が俺のために建ててくれたミナレット,ロック・ドームのテッペンに
あまりにも美しき芸術,アドハーンの如く
苦悩に満ちたどん底から這い上がり到達した,ロック・ネーション・オヴ・イスラーム

ジェイ・エレクトロニカの公式デビューアルバムとして,冒頭の曲にふさわしい,イスラム・レファレンス満載の1曲。イスラーム教に関するレファレンスが次から次へと繰り出します。

1行目の「コーラン(クルァーン)」というのはイスラム教で最も聖なるものといわれている聖書のことです。
2行目の「ハラーム」というのは,ハラール(ムスリム教徒が食して良いとされる合法的と認められたもの)の反対語。つまり,イスラームとして認められていない(非合法の)もの。
3行目の「ミナレット」というのは,イスラム教の国に旅行したことある方であればご存知のとおり,イスラム寺院の尖塔(せんとう)であり,ここの上から人々に歌(アザーン=アドハーン)で礼拝の時を知らせます。
同じく3行目の「the Dome of the Roc」とは,ジェイZのレーベル=ロック・ネーション(Roc Nation)の軍団組織(ドーム)を指す。
4行目の「アドハーン」とは上記でも出た「アザーン」のこと。アザーンという歌をうたい,「これからお祈りが始まりますよ」という時をみんなに知らせる。イスラム教の国ではこれが1日に5回ある。タイミングは,早朝,正午,午後,日没後,就寝前。世界のどこにいても,これを守る。世界のどこにいても,メッカの方向を向いて,額を地面につけて,お祈りする。
5行目の「ロック・ネーション・オヴ・イスラーム」とは,Roc Nationと当サイトでも頻出しているNation of Islamaを重ね合わせている。

最後にJAY-Zがこうラップします。

Think of things I said that you hated then
Empirical facts that can’t be debated now
Things you say today, I was sayin’ then
Tell us who your favorite now

だから当時から言ってんじゃん,あんたらは聞きたくなさそうにしていたけどよ
経験に基づく事実,もはや今となっては火を見るよりも明らか
ようやく理解されようとしてきているけど,当時から俺が言ってたきたこと。
で,誰だっけ?あんたらが大好きなラッパーって

(文責・対訳:Jun Nishihara)

JAY-Zに関する映像等アーカイブ(その1)

“archive”(アーカイブ)という語彙は,2000年初期に流行った一つの思想ともいえます。これは当時は「デジタルアーカイブ」という意味で使用されるようになりました。インターネットの急激な成長により,インターネット上で大量の書物や歴史的文書・音源・映像・データ等を保管できる「書庫」の役割として,アーカイブという思想が当時流行りました。

その少し後に友人から「アーカイブ」を作っておくと面白いかもしれない,というアイディアをもらい,小生も当時は既に聴き込んでいたジェイZ(JAY-Z)に関する音源やら映像やらをどうにかして残しておけないか,残しておくだけではなく,オフラインでもオンラインでも,いつでもアクセスできるような場所に置いておけないか,一箇所に集めておけないか,と思っておりました。

そこで,少しずつ集めていたジェイZに関する音源や映像なり(ほとんどがインターネットから拾ってきたもの)をこのコーナーで紹介していきます。ここで紹介しておけば,後々に自分のためにもなるからです。見たくなった時にここに来れば見られる,そういう場所作りとして,このコーナーを設けました。

1.ジェイZの若かりしき頃,レアな映像。バンダナとチェーン。話し方は最近のジェイの話し方とは全く異なっています。言葉遣い。くだけた話しぶり。アクセントの場所。(2000年頃)

2.ジェイZと世界一有名な投資家=ウォレン・バフェットのForbesインタヴュー映像。成功における「運」について話す。(2010年)

3.ジェイZ,米ニューヨークタイムズ紙の編集長ディーン・バケットによるインタヴュー映像。(2017年)

4.ジェイZ&メアリー・J.ブライジ,全米NBCネットワークTV「Late Night with David Letterman」でのインタヴュー。2人が全米ツアー「Heart of the City Tour」を開催するにあたってのインタヴュー。(2007年)

5.ジェイZ,オプラ・ウィンフリー・ショーに出演。(2009年9月24日)

(文責:Jun Nishihara)