今年2018年に出た最も偉大なるヒップホップ曲ランキング:第15位「ミッシー・エリオットの”I’m Better”」。

女性ヒップホッパーの代名詞として2000年代を代表する偉大なるアーティストは,ミッシー・エリオット(Missy Elliott)です。彼女の音楽は,ヒップホップを愛する日本の女子にも昔から人気ですね。(昔というのは2000年以降のことです)。

さて,そのミッシー・エリオットが今年も出しました。シングル曲を出しました。「I’m Better」という曲ですが,ビートはミニマリスティックですので,好き嫌いが分かれるかもしれませんが,これを「未来のヒップホップ曲」と呼ぶファンもいるほど,まさに新しいジャンルの音楽と呼べるでしょう。

ミッシーはヒップホップに新しいサブ・ジャンルを生み出しました。「ヒップホップ・ダンサー用の音楽」という今ではしっかり定着している概念を,2000年代に入ってから生み出した張本人です。

ミッシーが遺してきた(継いできた)功績と貢献は素晴らしいものです。「ミッシーがいたから,ダンスを始めた」とか「ミッシーの音楽をバイブルにしている」というダンサーは多いでしょう。

本日ランクインしたこの曲も,「かけよう」によってはダンスせずにはいられない,超ダンサブルな曲でしょう。実際に,ミュージックビデオ内でもバランスボールを使って踊る振り付けや,フロアに寝転がって踊る振り付けが見られます。

こういうノリをヒップホップに生み出したアーティストとして,ミッシー・エリオットはヒップホップ史に残る偉大なアーティストと呼んでよいでしょう。

ちなみに,ミッシー・エリオットは女性ラッパーとして初めて,来年2019年に発表される「ソングライターの殿堂」入りにノミネートされています。ニッキー・ミナージュやカーディBを聴いているバワイじゃないのデス。

最後にこの曲のミュージックビデオを記載しておきます。

第15位:Missy Elliott feat. Lamb – “I’m Better”

(文責:Jun Nishihara)

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今年2018年に出た最も偉大なるヒップホップ曲ランキング:第16位「チャイルディッシュ・ガンビーノの”This Is America”か,もしくはジョイナー・ルーカスの”I’m Not Racist”」。

2018年総まとめヒップホップ曲ランキング《トップ30》の第16位をどの曲にするか検討するにあたり,今年全米に最も物議を醸し出した曲を2つ選びました。それが以下の2曲でした。

1.Childish Gambino – “This Is America”
もしくは,
2.Joyner Lucas – “I’m Not Racist”

1つは,現代全米に蔓延る銃問題。白人の警察官が黒人の若者を銃殺するという事件が増えているという事実にとどまらず,白人同士でも黒人同士でも,アメリカ中で銃問題が現在,大問題となっております。それを音楽や映像という媒体をとおして,ここまで過激なミュージックビデオに仕上げているチャイルディッシュ・ガンビーノの芸術性に脱帽しますが,それはさておき,近代のアメリカ史で,ここまで銃を使った犯罪が大きく問題になっている時期は無かったでしょう。

2つは,現代全米に蔓延る人種問題。ジョイナー・ルーカスは黒人アーティストですが,ミュージックビデオに白人を起用し,白人の目線からの「言い分」と,セカンド・ヴァースには黒人の目線からの「言い分」を両方載せています。白人の言い分は,黒人は自分らが差別されていることを大昔の奴隷時代のことをいまだに持ち出してきて,それを理由(言い訳)にして,だらしない生活を送っているだけ,そんな大昔のことを言い訳にせずに,ちゃんと真面目に働けば,貧困を抜け出すこともできるし,ちゃんとした生活を送ることもできるし,「白人のせいにする」こともないだろう,と言っております。逆に黒人の言い分としては,奴隷制度は大昔の歴史であるものの,現代に生きている自分たちにはその影響はあるんだ,と。おばあちゃんやおじいちゃんが経てきた苦しみは,現代の黒人の俺たちに受け継がれているんだ,と。とりわけ「Nigga」という言葉は,黒人の我々を抑制するために,「白人が作り出した単語」であるのだ,と。けっきょくいまだにこの国(アメリカ)は白人が支配しているもの。黒人が職を見つけようと面接とかやっても,面接やテストが通ることはない。けっきょくは肌の色で判断されているんだ,と。だからドラッグを売りさばいて,子供のために金を稼ぐしかないんだ,と。しかも,最近は黒人がクールだと勝手に解釈して,黒人の真似している白人の若者ども,おまえらには「黒人の生き様(カルチャー)」なんて分かってたまるか,と。この国(アメリカ)には「システム化された糞人種差別(systematic racism bullshit)」がある,と。

ちなみにこのジョイナー・ルーカスの「I’m Not Racist」は来年(2019年)のグラミー賞に先日ノミネートされたばかりです。

ということで,第16位は,Childish Gambinoの「This Is America」及びJoyner Lucasの「I’m Not Racist」の両方,ということで締めくくりたいと思います。

現代のアメリカにとって最も必要である会話は,この2つの楽曲から生まれる会話である,と言っても過言では無いでしょう。

最後に,この2つの楽曲のミュージックビデオを記載しておきます。

今年ヒップホップ第16位:Childish Gambino – “This Is America”

今年ヒップホップ第16位(タイ):Joyner Lucas – “I’m Not Racist”

追記:黒人のJoyner Lucasのセリフを口パクで完璧に真似た白人男性に拍手。

(文責:Jun Nishihara)

今年2018年に出た最も偉大なるヒップホップ曲ランキング:第17位「ドレイクとトラヴィス・スコットの”Sicko Mode”という3段階の曲」。

この曲の魅力は「曲の途中に突然,3段階でビートとフローが一変するところ」です。

2018年総まとめヒップホップ曲ランキング《トップ30》です。

本日は第17位の発表です。

第17位:Travis Scott feat. Drake “SICKO MODE”

この曲の凄いところは3つ。

1.冒頭でも申し上げた「曲の途中で突然,曲調(ビート)とフローが変化するところ」がまず1つ。

2.やり過ぎていない。ビートが変化する1回目に誰かがバックで「ウー!」と言います。これがぜんぜん邪魔でない。「ウー!」というのは,間違えると邪魔に聞こえたり,飽きたりしますが,何回聴いても飽きない。

3.ラップの調子(フロー)にちゃんと息継ぎがある。これはどういうことかと言うと,言葉を羅列するだけの,ぎちぎちのラップになっていない,ということです。ちゃんとスペースもあり,空白もあり,息継ぎもあるフローをしています。古さを感じさせない(実際に古くない),新鮮で,若者にもウケる,ということです。しかも,真似してラップすることもできる。メロディーに乗っている。たとえば・・・

It’s absolute, yeah (Yeah), I’m back, reboot (It’s lit!)
LaFerrari to Jamba Juice, yeah (Skrrt, skrrt)
We back on the road, they jumpin’ off, no parachute, yeah
Shawty in the back
She said she workin’ on her glutes, yeah (Oh my God)

これを歌う(ラップする)ときに・・・

It’s absolute
(息継ぎ)
I’m back, reboot
(息継ぎ)
LaFerrari
(息継ぎ)
to Jamba Juice
(息継ぎ)
We back on the road, they jumpin’ off, no parachute
(息継ぎ)
Shawty in the back
She said she workin’ on her glutes
(息継ぎ)

と歌える,ということです。
これはヒップホップビートを逸れない韻律(cadence)であります。

(文責:Jun Nishihara)

今年2018年に出た最も偉大なるヒップホップ曲ランキング:第18位「ローリン・ヒルの生まれ変わりか。H.E.R.の”Lost Souls”という曲」。

フローがローリン・ヒルに似ている,と思われた方もいらっしゃるでしょう。

2018年総まとめヒップホップ曲ランキング《トップ30》です。

本日は第18位の発表です。

第18位:H.E.R. feat. DJスクラッチ「Lost Souls」です。

この曲のお手本となっているローリン・ヒル(Lauryn Hill)の名曲「Lost Ones」(1998年リリース)を聴いてみましょう。

まさにH.E.R.は,ローリン・ヒルの音楽をちゃんと勉強して育ったR&Bアーティストということです。こういう風にローリン・ヒルを学んで育っていった世代のアーティストを「ローリン・スクールの歌手」と言います。

ローリン・ヒルの存在はデカすぎますが,ローリン・スクールの歌手はゴマンといます。

しかしゴマンといる中で,ここまでローリン・ヒルのフローを巧みに受け継いでいる(受け継げている)アーティストは珍しいでしょう。H.E.R.は1997年生まれで,彼女が1歳とか2歳の赤ん坊の頃に,ちょうどローリン・ヒルが活躍しておりました。この曲で言及されているカニエ・ウェストも,2000年頃からじわじわ活躍し始めており,H.E.R.はまだ5歳児ほどの幼児でした。そんな幼児の頃におそらく両親が聴いていた音楽を,自身のこの曲「Lost Souls」で,言及しているという事実はまさに偉大なることです。まだ現在21歳のアーティストですが,フローも歌詞の内容も,21歳とは思えない「ベテランぶり」を見せつけております。

H.E.R.からはしばらく目が離せません。今後の活躍に期待大です。

(文責:Jun Nishihara)

今年2018年に出た最も偉大なるヒップホップ曲ランキング:第19位「リル・ウェインの”Uproar”という今ハヤりの超ダンサブルな曲」。

2018年総まとめヒップホップ曲ランキング《トップ30》です。

本日は第19位の発表です。

第19位:リル・ウェイン feat. スウィズ・ビーツのシングル曲「Uproar」です。

この曲を語るには,いくつか切り口があります。

まず1つ目は,上記ミュージックビデオに出演して猿暴れしているシギー(Shiggy)です。彼はドレイクの”In My Feelings”(あの「キーキー,Do you love me?ってやつです)の曲がシングルカットされる以前からインスタ上に自分のダンスを載せていました。そして彼のそのダンスがきっかけとなって,それを真似してインスタに載せる若者たちが全国に増えていきました。そうして始まったのが,「シギー・チャレンジ(Shiggy Challenge)」でした。これは一種のインスタ現象として今年イチ話題になりました。米国はもちろんのこと,海外のあらゆるTV曲でも報じられました。リル・ウェインはドレイクの師匠として,そして”In My Feelings”と同じく超ダンサブルな曲として,この「Uproar」は《第2のShiggy曲》と呼ばれるに至りました。

そして2つ目。このビートをプロデュースしたスウィズ・ビーツ(Swizz Beatz)の存在です。彼は昨年2月にヒップホップ界超ベテランのビートメイカー=Just BlazeとYouTube上で「ビート対決」しました。それが発端となり,スウィズ・ビーツはあらゆる場面で他のビートメイカーと対決するという機会を設けてきました。

まずは,全ての発端となったおおもとのビート対決(Swizz Beatz vs. Just Blaze)を観てみましょう。2時間以上ある大作です。

そして,マドンナやジャスティン・ティンバーレイク,ミッシー・エリオットやジェイZのビートベイカーとして活躍しているヒップホップ界最も偉大なるビート・プロデューサーであるティンバランド(Timbaland)ともビート対決しました。その映像が以下のとおりです。

(Swizz Beatz vs. Timbaland)

そのスウィズ・ビーツがリル・ウェインの超ダンサブルな曲でビートを作っているという事実も,この曲が「売れる」理由の一つとなっています。昔からThe L.O.X.やRuff Ryders(ラフ・ライダーズ)を聴いてきたゴッテゴテのヒップホップ・ヘッズたちにはたまらん曲ですね。90年代や2000年代初期に大活躍したスウィズ・ビーツが今爆発的に流行るポテンシャルを秘めているこんな偉大なる曲をプロデュースしたというのは,偉大なる事実です。

ビートメイカーといえば,単に「ビートを作って,そのビートをラッパーに提供している人」というように聞こえますが,スウィズ・ビーツも,ジャスト・ブレイズも,ティンバランドも,楽曲全体をプロデュースしているビート・プロデューサーと呼べるでしょう。

さてこの楽曲「Uproar」を語る上でたいせつな3つ目の切り口は,元ネタの曲を知るということです。

この曲には元ネタとなっている曲があり,それが2001年リリースのG.Dep feat. P. Diddyのシングル曲「Special Delivery」です。これはパフ・ダディ改めパフィー改めP.ディディ改めディディのレーベルBad Boy Entertainment(バッド・ボーイ・エンターテインメント)全盛期2000年代初期に流行った曲です。

リル・ウェインのこの曲だけでこれだけ語られるのですが,それだけ今年第19位にはもってこいの曲と呼ぶことができるでしょう。

(文責:Jun Nishihara)

元ネタの曲を知る⑦:ザ・ノトーリアスBIG⇆アル・グリーン

先日,ヒップホップの元祖として,ファンクの帝王=ジェームス・ブラウンの曲を取り上げましたが,今回はソウルの貴公子=アル・グリーンがヒップホップに与えた影響を取り上げたいと思います。

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アル・グリーン(Al Green)はヒップホップ世代と呼ばれる現代に,多大なる影響を与えたソウル歌手です。生まれはアーカンソー州。もとはゴスペル歌手の出です。60年代から70年代にかけソウル歌手として活躍しました。

彼が歌った数々の名曲のなかでも,ヒップホップに多大なる影響を与えた1曲は1972年リリースの「I’m Glad You’re Mine」です。

この曲は,ザ・ノトーリアスBIG(愛称:ビギー)や50セント,エミネム,エリックB&ラキムといった錚々たるヒップホップ大御所たちがサンプリングした曲です。

ヒップホップヴァージョンはいろいろなサンプリングの仕方があり,多様ですが,その中からひとつ,ビギーの「I Got A Story To Tell(邦題:話したいことがあるのさ)」を聴いてみます。

ビギーの冒頭歌詞を一部,引用します。

I kick flows for ya, kick down doors for ya
Even left all my motherfuckin’ hoes for ya
Niggas think Frankie pussy-whipped, nigga, picture that
With a Kodak, Insta-ma-tac
We don’t get down like that, lay my game down quite flat
Sweetness, where you parked at?
Petiteness but that ass fat
She got a body make a nigga wanna eat that, I’m fuckin’ with you
The bitch official, doe, dick harder than a missile, yo

おまえのためなら,フローもするし,ドアも蹴り破って,開けてやる
それに街中のアバズレ女どもとも,別れを告げてきた,でもよ
フランキー*(ビギーの愛称:麻薬王を演じたFrank Whiteより)は女の尻に敷かれるような男じゃねえ
想像してみな,コダックのインスタマック(=ポラロイド)で,チェキってみな
そんな趣味はねえ,ゲームはバッチリ決めてやる
可愛いこちゃん,どこにクルマ停めてんだい
小柄な女,でもケツはデカイ
彼女の肉体,むさぼりたくなる,じょーだんだよ
たまんねえこの女,俺のアソコ,勃起マックス,ミサイルばりに,ヨゥ

そしてそのモトとなった,アル・グリーンの「I’m Glad You’re Mine」を聴いてみます。冒頭のドラミングをループで起用していますが,そこを繰り返しループするだけで,ビギーのこの曲の下地ができあがるわけです。

(文責:Jun Nishihara)

黒人英語・考察①:“dope”の意味と用法そしてその濫用について

英語の語彙である”dope”の通常の意味については,以下のとおりです。

1.informal : an illicit drug (such as heroin or cocaine) used for its intoxicating or euphoric effects; especially MARIJUANA
2.informal : information especially from a reliable source

違法ドラッグであるヘロインやコカイン,はたまた,信頼度が高い情報源から得たネタ,とあります。しかし黒人英語として使用される場合,白人=標準に苛まされてきた歴史を持つ黒人たちは,あらゆる語彙の「通常の語義をflip it and use it(くつがえして用いる)」ことをしてきました。それは大多数の白人もしくはメインストリームへの反発でもありました。

現在,ヒップホップやラップ,R&Bといった黒人の歴史から生まれてきた音楽を聴くようになった白人の若者も含めて,「通常の語義ではない」”dope”という語彙が使用されるようになってきました。

違法ドラッグであるヘロインやコカインの「快感」という語義にフォーカスを当て,それをflip it(くつがえして),最高とかナイス,クール,イかす,といった意味で使われるようになってきました。

ここで用法をいくつか取り上げてみます。

Yeah, yeah, I’m so cold like, yeah (yeah)
I’m so dope like, yeah (woo)
We gon’ blow like, yeah (straight up, uh)
そうさ,そうさ,俺は超クールで,イヤー(イヤー)
マジでイカシてる,イヤー(ウー)
ぶっ飛んでくぜ,イヤー(まっすぐな,アッ)
(Childish Gambino – “This Is America”より)

There goes Rabbit, he choked, he’s so mad but he won’t
Give up that easy, no, he won’t have it, he knows
His whole back’s to these ropes, it don’t matter, he’s dope
He knows that but he’s broke, he’s so stagnant, he knows
When he goes back to this mobile home, that’s when it’s
Back to the lab again yo, this whole rhapsody
ラビットの出番だ,言葉に詰まり,キレてる,それでもヤツは
簡単には引き下がらねえ,そんなことじゃクタばらねえ,ヤツは分かってる
もう後には引けないと,すべてを賭けて,ヤツは最高の野郎
自分でも分かってる,だが一文無し,淀んだ人生,そして気づいてる
トレーラーの家に戻れば最後,そんな人生もうゴメン
だからブースに戻って,ラップをカマシてやんのさ
(Eminem – “Lose Yourself”より)

Flippin’ up my skirt and I be whippin’ all that work
Takin’ trips with all them ki’s, car keys got B’s
Stingin’ with the Queen Bey and we be whippin’ all of that D
Cause we dope girls we flawless, we the poster girls for all this
We run around with them ballers, only real niggas in my call list
I’m the big kahuna, go let them whores know
Just on this song alone, bitch is on her fourth flow
スカートまくって,オシリを築き上げて金儲けてる
キロ(コカ)を車に載せて長旅,カギには「B」の文字
クイーン・ビーのビヨンセとタッグ組んで,男たちをメロメロにさせる
アタシたちはイカシた女,欠点ゼロ,世界中の女性のモデルとして
いっちょまえの男たちとデートして,電話帳にはリアルな野郎の番号しか入ってない
女王のアタシについてきな,アバズレ女どもに見せてやれ
曲まだ終わってないのに,すでに4ヴァース決めてやった
(Nicki Minaj feat. Beyonce – “Feeling Myself”)

このように”dope”を形容詞として使用することで,いろいろなものにくっ付けて使うことができます。

Ahhh, that was a dope lunch! We should go there again!
「あぁ,最高のランチだった!またあのお店行こうね!」

The LINE message that you’ve just sent him… it was pretty dope.
「あなたがさっき彼に送ったライン・・・なかなかステキだったわ」

We da dope boyz forreal. Nobody can top us.
「俺らマジ最高。誰にも負けやしねえ」

しかしながら,こういう一時的に流行した語は,廃(すた)れるのも早いものです。今では”dope”というスラングが多くの一般人に使われるようになり,果ては白人にも使われるようになりました。そうなると,もうその語義は廃れの方向へとまっしぐら。もともと,白人=標準から外れるために,語義(意味)をくつがえして用いた黒人英語であったため,それが幅広く白人に使われるようになると,イメージは白々しい(pretentious)なものになってしまいます。

現在(2018年11月時点),”dope”にはかつてあった「カッコいい,イかす」というイメージとは逆に,「まだその言葉使ってるの?」といったようなダサいイメージが付き始めています。

それを物語っているのが,先日,ホワイトハウスに招かれたカニエ・ウェストとトランプ大統領の対話です。

One of the things we gotta set is Ford to have the highest design, the dopest cars, the most amazing — I don’t really say dope. I don’t say negative words and try to flip them. We just say positive, lovely, divine, universal words. So the fly-est, freshest, most amazing car.
1つ言っておきたいのは,フォード社に最高のデザインで,イカシてる車を作ってもらうこと。いや,俺は”dope”なんて言葉は使いたくない。ネガティヴな語を使って,その意味をflip it(くつがえしたり)するなんてことはしたくない。ポジティヴで愛おしてくて,万国共通の言葉を用いて伝えたい。世界一ぶっ飛んでいて,何よりも斬新な,最高に素晴らしい車を作ってもらいたい。
(引用元:カニエ・ウェスト(ホワイトハウスでのトランプ大統領との対話より))

カニエのこの”fly”という語の見事な使い方に拍手を送ります。ここでは形容詞として使われています。さらっと”fly”を形容詞として使っていること,また,もはや時代は”dope”ではないこと,それが象徴となる対話でした。それ以外はカニエのいつもどおりの情熱こもる話しっぷりでした。

(文責:Jun Nishihara)

番組『Hip-Hop Evolution』の紹介

いまNetflixでおもしろいのがやっています。ヒップホップの進化をたどっていく番組です。ヒップホップの誕生から,現在のヒップホップまで,どういう経緯をたどって進化してきたか。また,ヒップホップの「もと」となった音楽は何だったか。どういう影響を受けたか。そして,どういう影響を与えてきたか。誰が始めたか。そこへヒップホップ界の大御所のインタヴューを流し,かなり完成度の高いドキュメンタリー番組となっています。『Hip-Hop Evolution』という名前の番組です。これはエピソードもので,現在(2018年11月時点で)「エピソード8」まで進んでいます。

ヒップホップの生みの親は,DJ Kool Herc,Afrika Bambaataa, Grandmaster Flashの3名と言われています。彼らが1970年代,場所はニューヨークのサウス・ブロンクスという場所で,ヒップホップの基盤を築き上げました。

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しかし,70年代にヒップホップが生まれるよりもずっと前に,別のジャンルの音楽で,ヒップホップに種を植え付けた人間がいます。ヒップホップという名がまだ存在していなかった頃です。それがジェームス・ブラウン(James Brown)でした。

ジェームス・ブラウンの名盤に『The Payback』(ザ・ペイバック)というアルバムがあります。本日は,その中に収録されている楽曲「Time Is Running Out Fast」を紹介します。

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James Brown – “Time Is Running Out Fast”

Ba, ba, ba, da, da, ah
Ba, da, ba, ah, ba, ba
Ba, ba, ba, be, de, ba
Go on now!

バ バ バ バ ダ ダ アー
バ ダ バ アー バ バ
バ バ バ ビー ディー バ
そらいくぜ!

Ba, da, ba, da, be, de
Ba, da, ah, ah
Be, de, da, ba, ba
Yeah
Ba, ba, ba, da, da

バ ダ バ ダ ビー ディー
バ ダ アー アー
ビー ディー ダ バ バ
イヤー
バ バ バ ダ ダ

Here, here, here, here
Yeah, yeah, yeah, here
Here, here, here, here, here
Here, here, here, here, here
Here, here, here, here, here
Here, here, here, here, here
Here, here, here, here
Here, here, here, here, here
Here, here, here, here, here
Here, here, here, here, huh
Here, here, here, here, here
Here, here, here, agh, whoa

ほら ほら ほら ほら
イヤー イヤー イヤー ほら
ほら ほら ほら ほら ほら
ほら ほら ほら ほら ほら
ほら ほら ほら ほら ほら
ほら ほら ほら ほら ほら
ほら ほら ほら ほら
ほら ほら ほら ほら ほら
ほら ほら ほら ほら ほら
ほら ほら ほら ほら ほら
ほら ほら ほら ほら ほら

Yeah, yeah, yeah, yeah, yeah
Yeah, yeah, yeah, yeah, yeah
Yeah, yeah, yeah, yeah, yeah
Yeah, yeah, yeah, yeah, yeah
Yeah, wah, ho, yeah
Yeah, yeah, yeah, yeah, yeah

イヤー イヤー イヤー イヤー イヤー
イヤー イヤー イヤー イヤー イヤー
イヤー イヤー イヤー イヤー イヤー
イヤー イヤー イヤー イヤー イヤー
イヤー ワー ええか イヤー
イイェアー イヤー イヤー イヤー イヤー

Oh, oh, oh, oh, oh, oh
Oh, oh, oh, oh, oh, oh
Oh, oh, oh, oh, oh, whoa
Whoa, whoa
Oh, oh, oh, oh, oh, oh
Oh, oh, oh, oh, oh, oh
Oh, oh, oh, oh, oh, oh
Here man, here man, man

オゥ オゥ オゥ オゥ オゥ オゥ
オゥ オゥ オゥ オゥ オゥ オゥ
オゥ オゥ オゥ オゥ オゥ ウォゥ
ウォゥ ウォゥ
オゥ オゥ オゥ オゥ オゥ オゥ
オゥ オゥ オゥ オゥ オゥ オゥ
オゥ オゥ オゥ オゥ オゥ オゥ
ほらよメーン ほらよメーン メーン

La, la, la, la, la, la, la, la
La, la, la, la, la, la, la, la
La, la, la, la, la, la, la, la
I’m a leader and I can do it
I’m a believer

ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ
ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ
ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ
俺がリーダー やったるで
信じとるで

Ku, da, da, ku, da, da
Ku, da, da, ku, da, da
Ku, da, ba, da, ba, da, da
Ku, da, da, ba, ba
Ku, ba, da, da, da
La, la, la, la, la, la
Ku, ba, da, ku, ba, da, da
Da ba, da, de, da, da

ク ダ ダ ク ダ ダ
ク ダ ダ ク ダ ダ
ク ダ バ ダ バ ダ バ
ク ダ ダ バ バ
ラ ラ ラ ラ ラ ラ
ク バ ダ ク バ ダ ダ
ダ バ ダ ディー ダ ダ

Abo, jabba, jabba, abo
Ha, ha, abo, ha, ha
Jabba, ba, ha, jabbam ba, ha
Jabba, ba, ba, ba, ha, do
Do, do, do, do, do, do
Yo, go, go, go, go, go
Mi, bak, ya see you are
Ba, da, de, de, da
Ba, da, de, da
Ba, da, da, ba, da, da
Da, da, da, da
Da, da, da, da

アボ ジャバ ジャバ アボ
ハッ ハッ アボ ハッ ハッ
ジャバ バ ハッ ジャバム バ ハッ
ジャバ バ バ バ ハッ ドゥ
ドゥ ドゥ ドゥ ドゥ ドゥ ドゥ
ヨゥ ゴー ゴー ゴー ゴー ゴー
もどってきたぜ そや ほらそこや
バ ダ ディー ディー ダ
バ ダ ディー ダ
バ ダ ダ バ ダ ダ
ダ ダ ダ ダ
ダ ダ ダ ダ

Gee, la, la, la, la
(Come on, come on, come on)
Gee, la, la, la, la
(Come on, come on, come on)
Gee, la, la, la, la
(Come on, come on your right)
Your a leader
(That’s what I’m talking about)
La, la, la, la
(Opportunity there when you gonna fight)
Man blow your damn horn

ジー ラ ラ ラ ラ
(カモン,カモン,カモン)
ジー ラ ラ ラ ラ
(カモン,カモン,カモン)
ジー ラ ラ ラ ラ
(カモン,カモン そのとおりや)
リーダーはおまえ
(そういうことや)
ラ ラ ラ ラ
(チャンスはそこにある,掴みに行け)
メーン おまえのイイとこ見せてやれ

Blow your big fat horn
Blow your big fat horn
Blow your big fat horn
Blow your big fat horn
Blow your big fat horn
Blow your big fat horn
Blow your big fat horn
Blow your big fat horn
Blow your big fat horn
Blow your big fat horn

その図太いラッパ,吹いてやれ
おまえの図太いラッパ,吹いてやれ
その図太いラッパ,吹いてやれ
おまえの図太いラッパ,吹いてやれ
その図太いラッパ,吹いてやれ
おまえの図太いラッパ,吹いてやれ
その図太いラッパ,吹いてやれ
おまえの図太いラッパ,吹いてやれ
その図太いラッパ,吹いてやれ
おまえの図太いラッパ,吹いてやれ

(文責:Jun Nishihara)

元ネタの曲を知る⑥:ファット・ジョー⇆ニュー・エディション

ヒップホップの黄金時代を表象している楽曲をもうひとつ紹介して宜しいでしょうか。

これは2002年11月12日に発売された(当時はCDオンリーで!MP3もApple MusicもSpotifyもiTunesも無い時代。ナップスターはあった!)ファット・ジョーのアルバム『Loyalty』へ収録の「All I Need(邦題:俺の全て)」という曲です。

これはファット・ジョーのレーベルであったTerror Squad仲間である,アーマゲドンというラッパーとトニー・サンシャインというR&B歌手をフィーチャリングした楽曲です。

「他に何もいらねえ。君と一緒に過ごせるなら。他の女には目もくれねえ。君が俺の全てだから」という,一言でまとめれば,こういう内容の曲です。

そこにヒップホップ史に残る最も大事なラッパーであるファット・ジョー(Fat Joe)がヴァースをスピットしている,というものです。

To all the ladies out there if you love your man
You need to hold your man embrace your man
And just grab his hand repeat after me
I promise to stay true and give you all of me
Whether he’s locked down or on the grind
Or whether is out of work or at work on time
You need to trust that man and respect that man
And you get what you feel you deserve from that man, and

世界中の女たちへ捧げるこの曲,君が自分のオトコを愛しているのなら
そのオトコを抱いてやれ,抱擁してやってくれ
カレシの手を握って,俺の後についてこう言ってやってくれ
「ずっとあなたに一途でいる,あなたに全てを尽くす
あなたがムショに入っても,裏の仕事やってても
職を追われても,マジメに働いていたとしても」
そいつを信じて,そいつをリスペクトしてやってくれ
そうすれば,ヤツもきっと,君に全てを尽くしてくれるから
(訳:Jun Nishihara)

この曲のMV(ミュージックビデオ)は以下のとおりです。

Fat Joe feat. Armageddon & Tony Sunshine – “All I Need”

そしてこの曲にサンプリングとして起用されているのは,ニュー・エディション(New Edition)の「Can You Stand The Rain」という名曲です。

New Edition – “Can You Stand The Rain”

どうでしょう,現代ヒップホップは古典R&Bにモロ影響を受けていることが分かるでしょう。

(文責:Jun Nishihara)

元ネタの曲を知る③:ジェイZ⇄ローズ・ロイス⇄ビヨンセ

前回はジェイZの名曲「Song Cry」の元ネタとなっている1976年の曲を紹介いたしました。

引き続いてジェイZの曲です。
ジェイの隠れた傑作である「Wishing On A Star」(1998年3月11日リリース)という曲を紹介します。「隠れた」というのは米国で公式にリリースされたジェイZのアルバムには,この曲は収録されたことがないからです。現時点(2018年9月時点)では,月額サービスのApple Musicでも聴くことはできません。

もともとこの曲は,ジェイZのアルバム『In My Lifetime Vol.1』のUK(英国)盤のボーナストラックとして収録されました。その後,日本では,ジェイZの『Chapter One: Greatest Hits』(2002年リリース盤)に収録され,聴くことができます。

聴き比べてみてください。

Jay-Z – “Wishing On A Star”

その元ネタがこちらです。
Rose Royce – “Wishing On A Star”

ジェイZはこの曲を1998年にリリースしましたが,その6年後,2004年にビヨンセが同曲をカバーしました。

こちらです。

Beyonce – “Wishing On A Star”

元ネタは,1978年にリリースされたローズ・ロイス(Rose Royce)という女性歌手の曲です。1978年の曲がこうして,20年の年月を経て,ジェイZにサンプリングされたことがよみがえり,その6年後にビヨンセがカバーしました。

まさにこれがヒップホップの醍醐味のひとつであります。古い曲が現代に“真新しく”よみがえり,これを聴いている老若男女が「おおもとの曲(元ネタの曲)」を探しに行く,また,探したくなる,見つけて,聴きたくなる,という欲を掻き立ててくれるものだと感じております。そうなると,たまらなくおもしろいです。

(文責:Jun Nishihara)