2019年MTVビデオ・ミュージック賞(とりわけミッシー・エリオットの偉大さについて)

2019年8月26日(日)に開催された米MTVのVideo Music Awardsより,ハイライトをいくつかピックアップして,以下に掲載しておきます。5年後これを見返して,懐かしい感情を抱けますように。

Taylor Swift
まずは,テイラー・スウィフトです。2曲めに披露するバラード曲を演奏して,ここまで声援が挙がる人は,現ポップス界では他にいらっしゃらないですね。誰もがヒップホップやEDM系の曲を制作している中,ある意味,時代とは逆方向に進むともいえるテイラー・スウィフトのこの曲「Lover」は,人間がもつ心の普遍的な琴線に触れる名曲だと云えるでしょう。

Missy Elliott
やってきました。ミッシー・エリオットです。今夜最高のステージはミッシーが奪い去ったといえるでしょう。2曲めの「The Rain (Supa Dupa Fly)」は1997年リリースの曲ですけれど,一片足りとも古びていない!また,MTV VMAs終了後の数日間(いや,今も?)ツイッターやインスタグラムで騒がれ続けたこの人(↓)(=Alyson Stoner)は,ミッシーが2002年にシングル曲「Work It」をリリースした際,ミュージックビデオで踊っていたあの女の子です。当時この子はわずか9歳。17年ぶりに,ミッシー・エリオットと同曲で共演を果たしたというのは,なんとも感慨深いことです。
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なお,「Get Ur Freak On」「Pass That Dutch」等,名曲が続きます。

Queen Latifah
クイーン・ラティファのお出ましは以下映像の4:34からです。先出のミッシー・エリオットに続き,クイーン・ラティファの今年のMTV VMAsへの登場は今年特に顕著な女性ラッパー世代を象徴しているように思われます。

Lizzo
現代ぽっちゃり女子代表。あらゆるサイズ,人種,カラー,エスニシティ,セクシュアリティの代弁者として,なかなかおもしろいポジションにいる人だと思います。

Megan Thee Stallion
まずは,年齢に驚き。メガンは1995年生まれなので,まだ24歳。24歳でこのラップ力は凄まじいですね。ようやくMTVにまで出られるようになった。とても嬉しいですが,今までのアングラ力の勢いを失わないようにいってほしいというのが,ファンである我々の思いです。けっしてポップ界に流されないように!!

Missy Elliott’s Acceptance Speech of “Michael Jackson Music Video Vanguard Award”
最後にミッシー・エリオットが女性初「マイケル・ジャクソン・ビデオ・ヴァンガード賞」を受賞した際のスピーチで締めくくります。20年以上もミッシーは「ヒップホップダンス界」の大御所としてその才能及び貢献を音楽界のために尽くしてきました。それがようやくここで大いなる賞の贈呈とともに一つの実を結んだといえます。ミッシー・エリオットが本スピーチの中で,感謝している人リストに連なる人物を聞くだけで,どれだけミッシーは謙虚な人であるかということが伺い知ることができます。最後にミッシーが感謝する人(たち)を挙げたところで,ステージも湧き上がります。それではじっくり聴いてみてください。

今日も,当サイトに来てくれてありがとうございます。
ミッシー・エリオットが90年代後半に,MTVで踊っていた映像を見ていた頃を思い出します。世代はだんだんと変わっていっているといいますが,ミッシー・エリオットのような偉大なる人をリアル・タイムで当時TVで観られていたことは幸せですし,どれだけ世代が変わったとしても,こんなありがたいことはない,と思っております。

(文責:Jun Nishihara)

永久保存版:米・女子ラッパーを網羅②:写真&代表作 (ニッキー・ミナージュ(2004)以前)

前回はニッキー・ミナージュ登場以前からすでに活躍していた女子ラッパーについて包括的にご紹介いたしました。つまり2004年以前にすでにヒップホップ最前線で活躍していた女子ラッパーたちです。

本日はその彼女たちの写真にあわせてもっとも最初に聴くべき代表作品とともにご紹介していきます。

1. Roxanne Shante (1984)(ロクサン・シャンティ)
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代表作:『Bad Sister』
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2. Salt-N-Pepa (1986)(ソルト・アン・ペッパー)
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代表作:『Very Necessary』
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3. MY Lyte (1988)(MCライト)
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(↑真ん中がMC Lyteです。)

代表作:『Act Like You Know』
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4. Queen Latifah (1989)(クイーン・ラティファ)
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(左=Mary J. Blige, 右=Queen Latifah)

代表作:『Black Reign』
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5. Mary J. Blige (1989)(メアリー・J.ブライジ)
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代表作:『What’s the 411』
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6. Missy Elliott (1989)(ミッシー・エリオット)
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代表作:『Under Construction』(下記ジャケ写真)もしくは『Miss E… So Addictive』
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7. Monie Love (1990)(モニー・ラヴ)
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代表作:『Down to Earth』
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8. Da Brat (1992)(ダ・ブラット)
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代表作:『Funkdefied』
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9. Rah Digga (1993)(ラー・ディガ)
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(左=Lil’ Kim,右=Rah Digga)

代表作:『Dirty Harriet』
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10. Lauryn Hill (as The Fugees) (1994)(ローリン・ヒル)
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代表作:『The Miseducation of Lauryn Hill』
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11. Lil’ Kim (1994)(リル・キム)
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(左=Lil’ Kim, 右=Eve)

代表作:『Hard Core』
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12. Erykah Badu (1994)(エリカ・バドゥ)
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代表作:『Baduism』
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13. Amil (1994) (アミル)
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(左から,Memphis Bleek, Amil, Jay-Z, Beanie Sigel)

代表作:『All Money Is Legal』
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14. Charli Baltimore (1995)(チャーリ・バルティモア)
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(左=Charli Baltimore, 右=Ashanti)

代表作:『Cold As Ice』
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15. Foxy Brown (1995)(フォクシー・ブラウン)
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(左=Nicki Minaj, 右=Foxy Brown)

代表作:『Broken Silence』(楽曲3,4はアツ過ぎ!“B.K. the Home of Biggie and Jay!”)
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16. Ms. Jade (1995)(ミズ・ジェイド)
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代表作:『Girl Interrupted』(楽曲3はティンバランド制作ビートに似合いすぎ,楽曲10はジェイとの共演作(ヒップホップのクラシック!)。)
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17. Bahamadia (1996)(バハマディア)
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代表作:『Kollage』(↓アルバムジャケの裏面)
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18. Shawnna (1996)(ショーナ)
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(Shawnna, Ludacrisとのツーショット)

代表作:『Block Music』
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19. Eve (1996)(イヴ)
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代表作:『Scorpion』(楽曲9はDa BratおよびTrinaとの女子ラッパー3名の共演作。)
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20. Trina (1998)(トリーナ)
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(同郷マイアミ出身=Rick Rossとのツーショット)

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(元カレ=Lil Wayneと)

代表作:『Who’s Bad』(トリーナのラップ範疇の広さを物語るのは,楽曲16のようなエロい曲から,楽曲4のようなフリースタイルまで,あらゆる内容についてスピットできることです。)
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新曲:「F*** Boy」

21. Vita (1998)(ヴィータ)
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(左から,Vita, Ja Rule, Ashanti)

代表作:『Pre-Cumm』
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22. Remy Ma (2000)(レミー・マ)
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(ダンナのPapooseと)

代表作:『there’s something about remy』
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(文責:Jun Nishihara)

永久保存版:米・女子ラッパーを網羅① (ニッキー・ミナージュ(2004)以前)

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(写真は2018年2月15日,ハーレムのネイルサロン(Junie Bee Nails)のオープニングセレモニーで。左はTeyana Taylor,右はMissy Elliott。)

本年2019年,ヒップホップ界で何が最大の出来事だったかといいますと,ヒップホップ史上最高の度合いで女子ラッパーたちが活躍したという事実でしょう。今年は物凄い勢いで女子ラッパー陣が活躍いたしました。

現代ヒップホップには欠かせないシティ・ガールズ(City Girls)やカーディB(Cardi B)といったラッパーたちもさることながら,今年は「女子ラッパーの年(Year of the Female Rappers)」と呼んでいいほど,あらゆるエリアからの女性ラッパーがメインストリームへの登場を果たしてきました。

シティ・ガールズに関しては,昨年ドレイクが楽曲「In My Feelings」をリリースしたことにより,一躍有名となりました。これまではフロリダ州の一部でしか名を馳せていなかったこの女子ラッパーユニットは,ドレイクのこの曲のおかげで世界的名声を勝ち得たともいえます。

カーディBに関しては,もはやヒップホップ界のみならず,ポップス界で勝負していけるほどの才覚やセンスの持ち主となり,3年前(2016年)の時点ですでに,当時ポップス界のブルーノ・マーズと肩を並べるほどの存在となりました。

さて,こうした現代ヒップホップ界における「女子ラッパー」の存在にスポットライトを注いだ火付け役といえば,おおもとを辿れば,ニッキー・ミナージュが始まりといえます。2007年にアングラでリリースされたミックステープ『Playtime Is Over』収録のフリースタイル曲「Warning」でニッキーはヒップホップのアングラ界で一躍有名となりました。これだけフリースタイルをカマせる女子ラッパーはめずらしいぞ,と。ニッキーが世に出てきたからというもの,数多の女子ラッパーが登場しました。Azealia Banks, Rapsody, Young M.A, Iggy Azalea, Angel Haze, Dreezy, DeJ Loaf, Doja Cat, Snow Tha Product, Saweetie, Lizzo, Teyana Taylor等々です。

逆に,ニッキーが世に出る「までの」女子ラッパーというのももちろんおります。
以下は女子ラッパーの礎を築いた,それこそ最重要人物たちです。
このリストは心に刻んでおくべきでしょう。この人たちがいなければニッキー・ミナージュの存在はなかったといえます。そしてニッキーの存在がいなければ,今のシティ・ガールズやカーディBもいなかったでしょう。しかしながら,ニッキーの存在が凄いのは,黄金時代の女子ラッパーたちと現代の女子ラッパーたちの「あいだ」の存在として,ちゃんと橋渡しをしているところです。ニッキーが出るまでは今の世代の女子ラッパーは半分以上現れていなかったと過言してもよいところでしょう。

『歴代女子ラッパー』:ヒップホップ黄金時代の礎を築き上げた偉大なる女子ラッパーたち
(上からデビュー順に並べていきます。( )内はデビューの年です。)
1. Roxanne Shante (1984)
2. Salt-N-Pepa (1986)
3. MC Lyte (1988)
4. Queen Latifah (1989)
5. Mary J. Blige (1989)
6. Missy Elliott (1989)
7. Monie Love (1990)
8. Da Brat (1992)
9. Rah Digga (1993)
10. Lauryn Hill (as The Fugees) (1994)
11. Lil’ Kim (1994)
12. Erykah Badu (1994)
13. Amil (1994)
14. Charli Baltimore (1995)
15. Foxy Brown (1995)
16. Ms. Jade (1995)
17. Bahamadia (1996)
18. Shawnna (1996)
19. Eve (1996)
20. Trina (1998)
21. Vita (1998)
22. Remy Ma (2000)

ここまでがひととおり,ニッキー・ミナージュがヒップホップのアングラ界で名を挙げるまでに登場した,ヒップホップ黄金時代を築き上げた最も重要な女子ラッパーたちです。(つまり,ニッキー以前のラッパーたち。)

非常にたいせつなリストですので,もういちど復習しておきます。

1. Roxanne Shante (1984)←※昨年,映画『Roxanne Roxanne』を観ました。初期のヒップホップにとってあまりにも重要な人物ですので,彼女へのリスペクトを表し,その半生を描いた映画です。映画の後半には子供の頃のNas(ナズ)も出てきます。この映画を観ると,あのナズでさえも,彼女(Roxanne Shante)の生き様に関わっていたことがわかります。Roxanne Shanteは1969年のクイーンズ生まれ。母子家庭で姉妹とともに育ちました。9歳の頃にラップを始めて,14歳の頃にラッパー名をロリータからロクサン(英語読み)へと変更。周りの女子は誰一人としてラップなんてしていなかった時代に,ラップを始めた。その度胸だけでも称賛されるべきです。その生き様はまことに苦闘の日々でした。その苦闘をラップ曲へと昇華することに成功し,初期ヒップホップを次に紹介するSalt-N-Pepaへと繋げた最重要人物です。

2. Salt-N-Pepa (1986)←※塩(ソルト)はシェリル・ジェイムス,胡椒(ペッパ)はサンドラ・デイトンです。二人はクイーンズの短大(Queensboro Community College)で看護学を学ぶ学生時代に出会い,ラップユニットを結成しました。シェリルはブルックリン出身。サンドラはクイーンズ出身。もともとはスーパーネーチャー(Super Nature)というユニット名で,3人目がいました。専属DJのDJ Spinderella(スピン+シンデレラ=スピンデレラ)です。Salt-N-PepaはRoxanne Shanteと並んで,ヒップホップの創設時代に必ず名前が挙がる人物です。

3. MC Lyte (1988)←※自身の名前に“MC”という呼称を付ける数少ないMCの一人です。しかも女性で。しかもですね,女子ラッパーで“MC”という呼称を入れているのは,MCライトだけです。男子ラッパーでは,MC Ren, MC Eigt, MC Shan, MC Jin, MC Hammer等いますが,女性ではMC Lyteのみ。女子ラッパーというより,女子リリシストと呼べるほど凛々しいラップをする彼女。MC Lyteの曲で「Poor George」というのがあります。ジージー(Young Jeezy)が楽曲「Shake Life」でサンプリングしておりました。名曲ですので,「Poor George」(1991)を聴いてみてください。しかしそれにも,さらに元ネタがありまして,それがTotoの「Georgy Porgy」(1978)でした。

4. Queen Latifah (1989)←※知っていますか?クイーン・ラティファとニッキー・ミナージュが映画『Barbershop: The Next Cut(邦題:バーバーショップ3 リニューアル!)』で共演していることを。女性ヒップホッパーというジャンルを象った一人の女性(=ラティファ)が,今の世代のバービー・ドールたちを産み出した若き女子ラッパー(=ニッキー)とともに「世代を超えて」共演している映画があるということを。ニッキーは今,アップル・ミュージック(Apple Music)専用ラジオ局で,Queen Radioというラジオ局を持っておりますが,おおもとの“Queen”はこの人=Queen Latifaでした。ラティファとニッキーがこうして多面的に繋がっていることにより,ラティファの音楽がいつの時代も生き続けるように祈るばかりです。

5. Mary J. Blige (1989)←※ヒップホップ界ではいろいろな人が「クイーン」の名を好き勝手に使っておりますが,この人こそが正真正銘「元祖クイーン」です。メアリーは次に出るミッシーとともに,黒人女性にとって非常に重要なアイコンでしょう。メアリーの名盤『What’s the 411』は,女子ラップではなく,女子とか男子とかカンケーなく,ヒップホップ音楽(そしてR&B音楽)における最も重要なアルバムです。日本国民全員が一家に一枚持っておくべき最重要アルバムです。今晩の夕ご飯の時には,TVは消して,DVDも消して,Netflixも消して,『What’s the 411』をかけてみてください。ハマります。一度ハマれば,二度と戻れない。一度ブラックにハマれば,二度と戻れない(“Once you go black, you can never go back.”)。入り口は『What’s the 411』です。全てはここで始まります。そんなアルバムを作ったメアリーは次のミッシーとともに歴史的人物として歴史(少なくとも黒人女性の歴史)の教科書に載るべき人物でしょう。日本の小学校の歴史の授業で,「メアリーがいたから〇〇」や「ミッシーがいたから〇〇」の〇〇には,この二人により救われた人々の名前が入ります。メアリーの何がすごいかって,彼女の苦しみと涙に満ちた歌詞に共感する女子が当時も,今も,ほんとうに多くいらっしゃるということです。時代は変われど,メアリーの歌詞と歌に共感する人は絶えないですね。それだけ女子にとって普遍的な音楽を創り続けているメアリーは偉大な人物です。

6. Missy Elliott (1989)←※いやぁ,ミッシーに関しては,現代黒人女子ラッパーのみならず,黒人女性のアイデンティティを作り上げたという点において,特筆すべき,非常に重要な歴史的人物です。「黒人女性史」というジャンルがあるならば,必ずメンションされるべき人です。この前,どこかのTV番組で,若い黒人女性シンガーがこう言っているのを見かけました。「こんなデブの私でもひとりのブラックシンガーとして認められるようになったのは,ミッシーのおかげです。当時ミッシーが,MTVで流れるミュージックビデオでダンスしているのを観て,私も家で曲にあわせて真似して歌った。ミッシーが成し遂げたことは,黒人女性にとって革命的なことだった。」ヒップホップや音楽という範疇を超えて,ミッシーが成し遂げたことは,黒人女性にとっていかにたいせつであったかを,別の機会に書ければと思っております。

7. Monie Love (1990)←※UK出身です。英国はロンドン生まれ。名前の読み方は「マニー・ラヴ」ではなく「モゥニー・ラヴ」。彼女の「Monie in the Middle」を聴いてみて下さい。「彼女は誰だ!」「モゥ,モゥ,モゥニー・インダ・ミド」「ダ,ダ,ダ,ミド!」って言ってます。

8. Da Brat (1992)←※ヒップホップ界最も重要なプロデューサーの一人であるジャーメイン・デュプリ(Jermaine Dupri)率いるソー・ソー・デフ(So So Def)所属の女子ラッパー。高い声に,早いラップが売り。ノリは良く,ツカミは完璧。パッパッパとしたテンポのいいラップが好きな人なら,すぐに好きになれます。彼女のアルバム『Funkdafied』はオススメ。ジャーメイン・デュプリは数えきれないほどの名曲を残しておりますが,Lil’ Kim, Left Eye Lopes, Missy Elliott, Da Brat & Angie Martinezとのコラボレーション曲「Not Tonight」の中でもいちばんハードなラップをカマしているのはDa Bratでした。

9. Rah Digga (1993)←※バスタ・ライムス率いるフリップモード・スクワッド軍団のファースト・レディ!女子なのにタフ.タフ,タフ。タフな女子ラップを聞きたければ,とにかく彼女のアルバムを聞くべし。彼女が尊敬するラッパーは,KRS-One,Rakim,Kool G Rapと,ヒップホップ界でもハードなラップをするベテラン勢を挙げております。メジャーデビューは,当時Q-ティップに才能を見出さられ,バスタ・ライムスを紹介されたことに始まります。

10. Lauryn Hill (as The Fugees) (1994)←※下記12.のエリカ・バドゥもそうですが,ローリン・ヒルについても日本の女子ヒップホッパーの間で特に人気がありますね。彼女のグラミー賞受賞のアルバム『Miseducation of Lauryn Hill』はあまりにも有名です。それまでは,女子ラッパーが「Album of the Year(最優秀アルバム)」を受賞したことはありませんでした。歴史上初めて最優秀アルバム(ヒップホップ部門でもなく,ラップ部門でもなく,女性アーティスト部門でもなく,全てを包括した中で,男女関係なく,ジャンル関係なく,最も優秀なアルバム)は,ヒップホップ,しかも女性のヒップホップとしては,初めての快挙でした。そういった意味では,ヒップホップ史のみならず,音楽史で非常に重要なアルバムでしょう。

11. Lil’ Kim (1994)←※冒頭でニッキー・ミナージュは現代女子ラッパーのおおもとを築き上げた人物だと云いました。ニッキーがそうであれば,リル・キムが成し遂げたのは,ニッキーが成し遂げたものとの性格(性質)は似ているかもしれません。また,90年代のヒップホップで最も有名な女子ラッパーとも呼べるかもしれません。名付けて女子OG。女子のオリジナル・ギャングスタ。ブルックリン出身で,ビギーの愛人。レコードでもビギーとのセックスをそのまま曲に流し,下品なラップ曲を厭わずに,世に出しました。ヒップホップに恥など無関係,と言わんばかりに。このおかげで,あらゆる女性が自由を勝ち取ったことでしょう。女子のエロを解放してくれたラッパー,それがリル・キムでした。

12. Erykah Badu (1994)←※この人が成した功績に関しては,ここだけでは語りきれないでしょう。エリカ・バドゥは日本のヒップホッパー女子にも非常なる人気を誇っております。わたくしがここで語るのはおこがましいことですが,ひとつ彼女について言えるとすれば,エリカ・バドゥほどヒップホップに創造性を与えたアーティストは男女ともにいない,ということでしょう。彼女ほどヒップホップの可能性をさぐった人はいませんでしたし,その可能性をどこまでも挑戦し続けた。実践的な面でも,スピリチュアルな面でも。そしてヒップホップそのものと肉体面での関係を持ち,純粋にそれを愛した。肉体のエロさという極致とスピリチュアルな愛というもののもう片方の極みを昇華させたアーティストは男のアーティストを探してみてもめずらしいでしょう。エリカほど理解不能な歌手は今の時代はあらわれにくくなっていますねえ。

13. Amil (1994)←※アミルの特徴的な声は忘れられません。今はどこにいるのかわかりません。でも彼女の声だけはこの耳にこばりついています。ケガが治りかけた瘡蓋のように。ジェイZの「Can I Get A…」を聴いてみてください。あと,1998年に日本でデフ・ジャム関係のアルバム(国内盤)を入手すると,「次回Def Jamレーベルからリリース予定の新盤!」ということでライナーノーツにおまけでチラシが入っていました。その中で,アミルのアルバム『All Money Is Legal』が近々リリース予定!として記載がありました。そしてそれがリリースされたのは2000年8月29日。リードシングル「I Got That」では当時まだデスチャに所属していたビヨンセをフィーチャリング。デフ・ジャムのみならず,Roc-A-Fellaレーベルの辿った歴史として,重要な女子ラッパーです。

14. Charli Baltimore (1995)←※チャーリー・ボルティモアはビギーの愛人でした。ビギー(=The Notorious B.I.G.)は1995年,ライヴ後のアフター・パーティでチャーリーと出会い,関係を持ち始めました。ビギーとジェイZとパフ・ダディが当時スーパーグループ=The Commissionを結成しようと計画していたのを目の当たりにしていた女子ラッパーこそが彼女チャーリーでした。チャーリーに聞けば聞くほど,当時のビギーの秘話が出てくる出てくる。ビギーと関係を持っていた女子ラッパーとして,おさえておくべき重要人物でしょう。

15. Foxy Brown (1995)←※フォクシーは当時,Nas達とThe Firmというスーパーヒップホップユニットを結成しておりました。その彼女が,ジェイZの楽曲「Ain’t No Nigga」にフィーチャリングされ,一躍有名に。デビュー作の『Ill Na Na』ではその特徴的な声で,ヒップホップ界に「新しい旋風」を巻き起こしました。リル・キムとは違った趣向で切り口,角度でヒップホップに登場しました。当時は,「リル・キム派」か「フォクシー・ブラウン派」か,もしくは第三の波「ミッシー派」か,その三大帝王の指に入るほどメジャーなフィメール・ラッパーでした。

16. Ms. Jade (1995)←※個人的にはとても好きな女子ラッパーです。彼女を知ったのは2001年でした。当時ニューヨークのストリートで売られていたミックステープにMs. JadeとJAY-Zのコラボ曲が収録されていて(「Count It Off」という曲です),あれがヒップホップこてこてのクラブ(当時NYCで有名であったClub Speed(ヒップホップ伝説の男DJ Mister Ceeもここでスピン!))で流され,「おぉ,これミックステープで聴いた曲や!」とテンション上がったのは記憶にあります。Ms. Jadeのフィリーをレペゼンする,ドスの聴いた声で低音ベースがガンガン聴いたティンバランド・ビーツは超マッチ。「Count It Off」はあらゆる意味で名曲ですので,聴いてみてください。

17. Bahamadia (1996)←※デビュー作アルバム『Kollage』のカバー表紙はきっと見たことがあるでしょう。あまりにも有名なアルバム。女子ラッパー名盤。バハマディアのこのアルバムは必ず聴いておくべき。

18. Shawnna (1996)←※アトランタ出身リュダクリスのDisturbing Tha Peaceレーベル所属。ショーナ自身はシカゴ出身。リュダクリスのメインストリーム・デビュー・シングル曲である喘ぎも入るエロエロの曲「What’s Your Fantasy」でコラボレーション。

19. Eve (1996)←※もはや女優としての才能に恵まれた多才なラッパー。当時はスウィズ・ビーツ率いるラフ・ライダーズのファースト・レディー的存在。

20. Trina (1998)←※女子ラッパー,特にサウス出身の女子ラッパー,にとっても最も重要な女子MC。サウス女子のそれこそ礎を築き上げた張本人

21. Vita (1998) ←※当時ジャ・ルールと同胞マーダーINC.に所属していた女子ラッパー。ジャの「Put It On Me」のPVがMTVで流れ,そこでジャの相方としてラップしていた細身の彼女。

22. Remy Ma (2000)←※Ne-Yo(ニーヨ)とのコラボレーション「Feels So Good」はあまりにも有名な楽曲。当時ミックステープを売りまくっていた「アルファベットラッパー」ことPapoose(パプース)と結婚。パプースはオフィシャル・アルバムを出す出す出す,と言っていて,ずっと待ち続けていたが,いまだに出していない。(蛇足ですが「アルファベットラッパー」といっても馬鹿にすることなかれ。アルファベットを「A」から「Z」まで順番に韻を踏んでいくんです。当時ニューヨークのHOT97で聴いたときは,「スゲエッ!こんなん初めて聴いたわ!」と度肝を抜かれました。後に同胞ブルックリン出身のファボラスも「C→G」までアルファベットラップをやって,それもなかなかよかったです。)

さて,次回は各女子ラッパーの写真と代表作を掲載します。

(文責:Jun Nishihara)

ファレル・ウィリアムス主宰=“Something In The Water”フェス(平成最後もうひとつの音楽祭)

ファレル・ウィリアムス出身の地,米ヴァージニア州ヴァージニア・ビーチの海辺で4月26日(金)〜28日(日)にかけて開催されたミュージック・フェス=“Something In The Water”は,平成の幕を閉じるにふさわしい音楽祭となりました。

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その模様をインスタグラムの“Something In The Water”特設ページから掲載いたします。

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BREEZY🔥🔥 @chrisbrownofficial #SITWfest

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Sparks joy ✨🍭 @friendswithyou #SITWfest

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さて,別途特筆すべきことがあるとすれば,このフェスであらわれたキャラクター=KAWSのHolidayでしょう。

それはこういう↓ものです。

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これはファレルもさることながら,カニエ・ウェストが全世界に広めたことでも有名なKAWS先生のキャラクターです。本件ミュージック・フェス“Something In The Water”のコンセプトは,何かの物体(Something)が海に浮かんでいる(in the water)。それが浜辺に乗り上げて,ポツンとこのビーチに座っているわけです。それがこのデッカいキャラクターなのです。これは浜辺に乗り上げた姿なのです。そこから,この物体(=KAWSのHolidayキャラクター)がライヴステージを鑑賞している,という考え方なのです。ですから,この“Something In The Water”ミュージックフェスの主役は,ライヴで演奏するアーティストたちでもはなく,主宰者のファレル・ウィリアムスでもなく,コイツ=KAWSのキャラクターなのです。彼(彼女?無性?)のためにライヴをやり,彼(彼女?無性?)のためにフェスを開催している,というコンセプトであります。

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さて,カニエの息吹はここでも流れておりました。ファレルが着ているカニエの「HOLY SPIRIT」のトレーナーです。

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We are Virginia. @SOMETHINGINTHEWATER

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ファレルはなぜこういったミュージック・フェスを開催したのでしょうか。今年が初めてです。

ファレルはその問いにこう答えます。

「これはただのミュージック・フェスではない。これは地元のお祭りなんだ。ヴァージニアで生まれ育った人たちのために開くお祭りなのさ」(ファレル・ウィリアムス)

そしてファレルと同郷のヴァージニア・ビーチ出身のミッシー・エリオットやティンバランド,プッシャTも参加しておりました。

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地元のためのお祭りとは言い得て妙,カニエが開いたコーチェラでの“Sunday Service”とは,これまた違った趣(おもむき)のあるものとなりました。

ここに2つ並べて,掲載しておきます。その違いは明らかです。

カニエ・ウェストの“Sunday Service”
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ファレル・ウィリアムスの“Something In The Water”
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なんか雰囲気も色も形もぜんぜん違いますね。

アクセスの方法,といいますか,会場のマップもこの際,比べておきましょう。

カニエ・ウェストの“Sunday Service”
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ファレル・ウィリアムスの“Something In The Water”
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最後に“Something In The Water”にはヒップホップの三冠王=ディディ,ジェイZ,ティンバランドも登場しました。

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(ヒップホップ界最も偉大なるプロデューサー=ティンバランド)

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(ジェイZと)

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(ディディakaパフ・ダディと)

(文責:Jun Nishihara)

第14位「シアラの”Level Up”で次世代のヒップホップダンスを踊れ」。(今年2018年に出た最も偉大なるヒップホップ曲ランキング)

さて,前回の第15位に続いて,第14位は,ミッシー・エリオットの女弟子であるシアラ(Ciara)の曲「Level Up」です。

日本でもヒップホップダンスをされる方は,知らない人はいないと言われるシアラの存在ですが,彼女は2002年にリリーされた巨大ヒットシングル曲「1, 2 Step」で全世界にヒップホップダンスの嵐を巻き起こしました。彼女を取り巻くアーティストは,全米ネットで放映されたアメリカン・アイドル(American Idol)でおなじみのファンテイジア(Fantasia)や,ヒップホップ・プロデューサーのジャジー・フェイ(Jazze Pha),そしてシアラの師匠であるミッシー・エリオットです。

シアラのキャリアの一番最初にヒットしたシングル曲としての「1, 2 Step」ではミッシー・エリオットをフィーチャリングしており,実際にミッシーも作曲に加わっています。この曲は当時,ヒップホップダンスの未来と呼ばれた程,ミュージックビデオもダンスの振り付けも,全米で大人気を博しました。

その彼女が,今年リリースした最大のヒップホップダンス曲が本日ランクインした「Level Up」です。2002年にリリースされた「1, 2 Step」がそうであったように,2018年リリースされた「Level Up」も未来のヒップホップダンスと呼んでいい程,今年は誰もこんな素早いヒップホップダンスはやらなかったですね,シアラ以外は。

実際に「Level Up」のミュージックビデオで観られるダンスをご自身でもやってみると分かると思いますが,息が切れます。心拍数が上がり,最強の有酸素運動となるでしょう。今までのヒップホップダンスは,ゆっくりめで態度をデカく見せつけビートに乗ってダンスする,というのが一般的でしたが,今年シアラが全米に流行らせたダンスは,スピード感に溢れ,こまやかなキレで,腰を微妙に使い,早いテンポでバウンスする,というまさに今まで見たことないヒップホップダンスでした。

今まで見たことないヒップホップダンスですが,全米のヒップホッパー女子がこれを真似して,SNS上に自分が踊る「Level Up」のダンスをアップして,話題になりました。一部では男子も真似して踊り,笑いをもたらせてくれました。今年全米に広がったその現象は「レベルアップ・チャレンジ(Level Up Challenge)」と呼ばれました。

以下のビデオは素人コメディアンのクウェイ(Kway)がインスタ上にアップした「Level Up」のダンスビデオのスクリーンショットですが,再生回数はまだシロウトのコメディアンにもかかわらず,すでに500万回を超えています。(@blameitonkway on Instagramより)

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さて,今年全米に「Level Up Challenge」現象を巻き起こした本物のビデオが以下のとおりです。

そして全米・・・いや,以下のビデオを見ると全世界ですね,シアラの公式YouTubeアカウントで発表された素人が踊る「レベルアップ・チャレンジ」のビデオを集めたコンピレーションです。

続いて,Aliya Janellによる別バージョンの振り付け(Choreography)も載せておきます。

ミッシー・エリオットが2002年にシアラという前途多望なアーティストをジョージア州アトランタで発掘していなければ,16年後の現在こういった現象も起きていなかったということです。まさに昨日の話じゃないですけれど,ミッシーがヒップホップ史に与えた功績は計り知れないものですが,いくらミッシーが偉人であったとしても,シアラもシアラで,それを受け容れる器がなければ,ここまで大きなアーティストにはなり得ていなかったでしょう。ヒップホップダンスという「新しいジャンル」を生み出したミッシー,そしてそれを師匠から受け継いでまさに現役で全世界にダンスと振り付けを広めているシアラは,ヒップホップ界にとって現代欠かせない大切なアーティストです。

(文責:Jun Nishihara)

第15位「ミッシー・エリオットの”I’m Better”」。(今年2018年に出た最も偉大なるヒップホップ曲ランキング)

女性ヒップホッパーの代名詞として2000年代を代表する偉大なるアーティストは,ミッシー・エリオット(Missy Elliott)です。彼女の音楽は,ヒップホップを愛する日本の女子にも昔から人気ですね。(昔というのは2000年以降のことです)。

さて,そのミッシー・エリオットが今年も出しました。シングル曲を出しました。「I’m Better」という曲ですが,ビートはミニマリスティックですので,好き嫌いが分かれるかもしれませんが,これを「未来のヒップホップ曲」と呼ぶファンもいるほど,まさに新しいジャンルの音楽と呼べるでしょう。

ミッシーはヒップホップに新しいサブ・ジャンルを生み出しました。「ヒップホップ・ダンサー用の音楽」という今ではしっかり定着している概念を,2000年代に入ってから生み出した張本人です。

ミッシーが遺してきた(継いできた)功績と貢献は素晴らしいものです。「ミッシーがいたから,ダンスを始めた」とか「ミッシーの音楽をバイブルにしている」というダンサーは多いでしょう。

本日ランクインしたこの曲も,「かけよう」によってはダンスせずにはいられない,超ダンサブルな曲でしょう。実際に,ミュージックビデオ内でもバランスボールを使って踊る振り付けや,フロアに寝転がって踊る振り付けが見られます。

こういうノリをヒップホップに生み出したアーティストとして,ミッシー・エリオットはヒップホップ史に残る偉大なアーティストと呼んでよいでしょう。

ちなみに,ミッシー・エリオットは女性ラッパーとして初めて,来年2019年に発表される「ソングライターの殿堂」入りにノミネートされています。ニッキー・ミナージュやカーディBを聴いているバワイじゃないのデス。

最後にこの曲のミュージックビデオを記載しておきます。

第15位:Missy Elliott feat. Lamb – “I’m Better”

(文責:Jun Nishihara)