黒人若手女子アーティスト2名(米公共ラジオ局(NPR)主宰“Tiny Desk Concert”で取り上げられた黒人女子シンガー抜粋(その②))

本日ご紹介する2名のシンガー/ラッパーは,現代音楽界に於ける,とても特別なお二人です。

ひとりめは,当サイトでも以前取り上げました。
公式デビューアルバムを本年3月にリリースしたチカ(CHIKA)です。
(「第4位:大ブレイク寸前,漆黒の女子ラッパー=オラニカ又の名をCHIKA「トランプ大統領への手紙」(2019年Hip-Hop名曲名場面ベスト50)」)

ついに,チカも米公共ラジオ局(NPR)の「Tiny Desk Concert」に登場するようになりました。
以下の演奏と彼女の饒舌ぶり(間奏中の,おしゃべり達者!)をご堪能下さい。

前回,当サイトで彼女を取り上げた際には彼女が公式デビューアルバム『Industry Games』をリリースする前でしたので,彼女のフリースタイル映像をメインにご紹介いたしました。

最近はもう有名になってきておりますので,米国現代の若者文化(スローガンは“The Culture of Now”)を代表するウェブサイトUPROXXに於いて,“Rising Hip-Hop Star”(人気上昇中のヒップホップスター)として取り上げられたこともあり,その洗練されたミニセッション映像をお送りいたします。

チカのシングル曲「No Squares」も掲載しておきます。

ちなみにヒップホップを聴いている方なら誰でも知っている(べき)元Queen of Hip-Hopといえばローリン・ヒル(Lauryn Hill)ですが,彼女のメジャーヒットシングル曲「Doo Wop (That Thing)」のビートに乗っけたチカ(CHIKA)のフリースタイルがありますので,掲載しておきます。これは2017年の映像です。もう3年前!

もうひとつ,チカのフリースタイルを。これも3年前の映像です。キレッキレのフリースタイルです。韻を全くハズさない!脚韻だけでも注意して聴いてみてください。脚韻というのは各ラインの終わりのフレーズで踏む韻です。

続きまして,ふたりめはNoname(ノーネーム)です。本名ファティマ・ワーナー。当サイトでも以前,こちらで取り上げました

彼女の以下“Tiny Desk Concert”での模様は,大好きな動画の一つで,これを観て朝元気になって仕事に行くということもありました。

Nonameはシカゴ出身。シカゴはカニエ・ウェストやコモン,ルーペ・フィアスコなど,ソウルフルなラッパーを数々輩出してきた大都市です。そこにこの特別な星(スター)をわれわれファンに授けてくれるなんて,なんてありがたいことか。

Nonameのように,ラップが詩的な人,って最近はめずらしくなってきています。とくに20代のアーティストではそうです。とっても貴重なアーティストなのですよ,ノーネームは。

そんな特別な存在であるNonameのライヴが51分間堪能できる映像がありますので(YouTube, thank you!)掲載しておきます。

あまりにも有名なシングル曲「Diddy Bop」のサビでNonameは歌います。

Watching my happy block my whole neighborhood hit the diddy bop
(ハッピーな近所の隣人たちが,みんなでディディ・ボップのダンスを踊る)

この1行を聴いた時,聴いた人の頭の中では,「幸せそうな隣人たち」のイメージが浮かんだかと思いきや,その後瞬間的に,イメージは「ディディ・ボップを踊る黒人」に切り替わります。

「幸せそうな隣人たち」といういかにもゆったりした時間かと思いきや,次に飛び込んでくる映像は「ディディ・ボップ」ですからね。もう,たまんないです。

同曲から,もう少し歌詞を引用してみます。

Stop overreacting, it’s past my curfew I’m out after 6
Happily making my accident
Mama gon’ whoop on my ass again
Pray that I’m making my way before 8 and I might have to sneak in the back again

(対訳)
過剰に反応しないで,門限はとっくに過ぎてる,夕方6時を回ってる
嬉しさあまりにアクシデント起こす
ママにまたお尻ぺんぺんされるわよ
祈ってる,午後8時前までには帰宅できること,また家の裏口からこっそり入ろうかしら

なんて素朴な歌詞!
Rauryというノーネーム仲間のヴァースです。

まぁ,これがノーネーム(Noname)なのです。まったく飾らない,素朴な歌詞を曲にするのです。

そして冒頭のチカ(CHIKA)とは対照的で,ノーネームには脚韻はあまり関係ないのです。その分,ラップにキレ感は無いのですが,しかしながら,脚韻なんて踏まなくても,すでに詩的になっている。

もう一丁,歌詞,行ってみましょう。

B2K in the stereo, we juke in the back seat
Or juke in the basement, in love with my KSWISS’s
This feel like jumping in a pool and I’m knowing I can’t swim
Ooh, you about to get your ass beat
For stealing that twenty dollars like “baby, just ask me”

(対訳)
ステレオで流れるB2Kの歌,後部座席でバカ暴れするアタシたち
お気に入りのKSWISSのスニーカー履いて,家の地下でバカ暴れ
まるで気分は,プールに飛び込んで,アタシ,泳げないんだけどね
ウゥゥ,あんた,ママにお尻蹴飛ばされるわよ
20ドル札ドロボーしたでしょ「ベイビー,いつでも言って」って

良いですねえ。

歌詞中の「B2K」っていうのは2000年代前半に流行った黒人のボーイバンドです。↓これです。

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2行目の「KSWISS」っていうのは,これも2000年代前半に流行ったスニーカーです。懐かしいですね。今でも売れていますよ。

で,そのKSWISSを履いて,家の地下で踊りまくるっていうイメージです。まず,KSWISSで1ポイント。それに加えて,アメリカの家はよく地下に部屋がありますよね。郊外の中流階級の家庭では地下の部屋にpool table(ビリヤード台)を置いて,ちょっとした遊びの場所にするっていう。で,もちろんアメリカの家は靴を履いたまま家の中に入りますから,KSWISSを履いて踊るという映像。そういったアメリカの素敵なイメージを思い浮かばせといて,その後に「you ’bout to get your ass beat」というフレーズを繰り出す。まったりした白人の日常かと思いきや,リスナーが安心した瞬間に上記のようなフレーズを繰り出して「アタシは黒人よ!」というアイデンティティの表出を成功させます。

その素敵なシングル曲「Diddy Bop」を掲載して,本日終わりにします。

(対訳,文責及びキュレーション:Jun Nishihara)

JAY ELECTRONICAのアルバム『A Written Testimony』楽曲④「The Neverending Story」(独断偏見ライナーノーツ)

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タイトルは「The Neverending Story」(終わりのない物語)です。

ヴァース1のジェイ・エレクトロニカ(Jay Electronica)の歌詞にこういうラインが出てきます。

What a time we livin’ in, just like the scripture says
Earthquakes, fires, and plagues, the resurrection of the dead

なんて時代に我らは生きているんだ,経典に書いていたとおりだ
地震,火事,そして疫病の繰り返し,死者がよみがえった

つまり,こういった出来事が繰り返される合間に,我らは生きている,ということをこの歌詞では言っているわけですが,現在の新型コロナウイルス(COVID-19)にしても同様です。

ジェイ・エレクの歌詞には,対比(comparison)が多く起用されています。

You could catch me bummy as fuck or decked out in designer
On I-10 West to the desert, on a Diavel like a recliner
Listen to everything from a lecture
From the honorable minister Louis Farrakhan
To Serge Gainsbourg or Madonna or a podcast on piranhas

ホームレスのような「なり」する時もあれば,デザイナーブランドの洋服に身をまとう時もある
10号線(南部を串刺しに通過する州間高速道路)に乗って,西の砂漠まで走ることもあれば
 ドゥカティ・ディアベルのバイクに乗って,背をもたれかけ,突っ走ることもある
黒人イスラム指導者であるルイス・ファラカーンの講話を聴くこともあれば
セルジュ・ゲンスブールの語りや,マドンナから,ピラニアに関するポッドキャストまで
なんだって俺は聴くんだぜ

この曲で特筆すべきことは,The Alchemist(ザ・アルケミスト)がプロデューサーとして関わっていることです。The Alchemistといえば,以下に挙げられないくらいのヒップホップ・アーティストと関わり,数多くの名曲を制作してきました。

・Fat Joe率いるTerror Squadの数々のアルバム
・クイーンズ区出身のMobb Deepのアルバム
・Royce Da 5’9のアルバム
・Tony Touchのアルバム
・2001年,Big Punの死後にリリースされたアルバム
・ジェイダキス
・ゴーストフェイス・キラー
・スタイルズ・P
・NAS
・リンキン・パーク
・50セント
・サイゴン
・State Property(!)
・パプース
・ネリー
・エミネム
・ファボラス
・Westside Gunn(!)
・キャムロン
・・・などなどなど。リストはまさに,Neverending(尽きません)。

こういったヒップホップの裏側で活躍している大物人物たちに楽曲を提供してきた歴史があるThe Alchemistのビートに,この度,表(オモテ)の人間であるジェイZ(JAY-Z)が乗った,というのは,とても興味深いことであり,どういう作品ができあがったのか,この機会をとらえて,ぜひ聴いてみてください。

ちなみに,アルケミストがプロデュースしたこの曲にもサンプリング・ネタがあります。アルゼンチン生まれのシンガー・ソングライターであるリト・ネビア(Litto Nebbia)の「La Caida」という1976年にリリースされた曲です。

(対訳及び文責:Jun Nishihara)

第11位:イマドキラッパー最前線!若者黒人の間で今年超ハヤったDaBaby,おまけに今覚えておくべき4人のラッパー!(2019年Hip-Hop名曲名場面ベスト50)

ヒップホップ業界は,移り変わりがきわめて激しい業界だといえます。それぞれの年ごとに,キーとなる最重要人物がいて,他方で,それぞれの年ごとに大ブレイクした新人若手アーティストというのもいます。

たとえば2016年。キーとなる最重要人物は名盤『Awaken, My Love!』をリリースしたチャイルディッシュ・ガンビーノ(Childish Gambino)であり,歴史に残るアルバム『blond』をリリースしたフランク・オーシャン(Frank Ocean)でした。大ブレイクした新人若手アーティストはチャンス・ザ・ラッパー(Chance The Rapper)であったり,ミーゴス(Migos)であったり,カーディB(Cardi B)であったり,21サベージ(21 Savage)でした。

その翌年は2017年。キーとなる最重要人物は名作『DAMN.』をリリースしたケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)であり,そのケンドリック自身が絶賛していたアルバム『4:44』をリリースしたジェイZ(JAY-Z)でした。大ブレイクした新人若手アーティストはXXXテンタシオン(XXXTentacion)であったり,アンダーソン・パーク(Anderson .Paak)であったり,レイ・シュレマー(Rae Sremmurd)であったり,テカシ69(6ix9ine)でした。

昨年は2018年。キーとなる最重要人物は『More Life』や『Scorpion』を立て続けにリリースしたドレイク(Drake)であったり,『Astroworld』をリリースしたトラヴィス・スコット(Travis Scott)でした。大ブレイクした新人若手アーティストにはジュース・ワールド(Juice WRLD)やプレイボーイ・カーティ(Playboy Carti)やリル・パンプ(Lil Pump)やシェック・ウェス(Sheck Wes)という名前が並びました。

そして今年!2019年!キーとなる最重要人物はもうヤツ=カニエ・ウェスト(Kanye West)でしょう。2010年に始まったこのデケイド(decade)を代表する最重要人物でもあります。そして今年大ブレイクした新人若手アーティストには・・・(今覚えておくべき4人のラッパーとして)

DaBaby(ダ・ベイビー),YBN Cordae(YBNコーデー(テニス選手大坂なおみの恋人として報道)),J.I.D.,そしてYoung M.A(ヤングM.A)の4名です。

中でも,勢いが止まらないのが,ダ・ベイビー(DaBaby)!!!!!

ダ・ベイビーの勢いは電光石火のごとく,閃光が放つ稲妻のごとく,物凄い勢いで2019年を圧巻させました。まぁ,ここまで威勢のいいヤツがあらわれるのは久しぶりです。どれくらい威勢のいい野郎かっていうのは,次の動画を見てみるとその感じが掴めると思います。

ライトブルーの服着たヤツがダ・ベイビー(DaBaby)で,赤いのがミーゴス(Migos)のメンバーでカーディB(Cardi B)の旦那さんであるオフセット(Offset)です。

早速,ダ・ベイビーが人気を博すキッカケとなったフリースタイルがこちら。当サイトでも常連のHOT97: Funk Flex Freestyle番組でフリースタイルをカマすDaBabyです。

それにしてもこの1年で,ダ・ベイビーの盛り上がりは,急上昇。これは物凄いですね。

続いて2人目!テニス選手の大坂なおみの恋人として報じられているラッパー=YBNコーデー(YBN Cordae)も今年2019年,大人気,絶好調です。同じフリースタイル番組で,お届けします。ビートはJAY-Z & Kanye Westの名曲「Otis」です。2曲目のビートは「Suge」,3曲目のビートはルーペ・フィアスコの「Kick, Push」です。YBNコーデー自身もフリースタイル中に言うように「ビートのヴァラエティ,たまんねえ!」です。7分間みっちりフリースタイルするヤツ(顔はこんなんですけど,ラップはスゲえ!)ですので,最後まで聴いてください。大坂なおみが惚れる理由もわかります。たしかに,すごいです。この7分間のあいだに,ラップの「スタイル」を5,6回,変えてますから。わかります?このすごさ。

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続いて3人目!J.Coleのチーム=Dreamvilleから,超リリカルなヤツが出てきました。その名もJ.I.D.です。彼もすごいですよ。若手なのに。新人なのに。このフリースタイルのことを英語で「bar game」とも呼びます。ファンク・フレックスが言うように,I know your bar game crazy, bruh!(あんたのフリースタイルもたまんねえぜ,ブラザー!)。

続いて4人目!彼女(彼)=Young M.Aのことは,もう新人とは呼べないですが(でもまだ若手!),ブルックリン出身。2014年にリリースしたデビューフリースタイルの「ChiRaq」は傑作。ストリート音楽の傑作です。

その彼女(彼)が同じくFunk Flex Freestyle番組でフリースタイルを今年カマしましたので,ご覧あれ。

本日は,今年2019年に出た物凄い勢いの若手4名を紹介しました。来年2020年,この4人(DaBabay, YBN Cordae, J.I.D., Young M.A)ますます注目!!!!

(文責:Jun Nishihara)

第19位:ウェッサイはオークランド出身の現在ノリノリの若手女子MC=Kamaiyahの新曲「Still I Am」(2019年Hip-Hop名曲名場面ベスト50)

スローでメロウなラップをカマすカマイヤ(Kamaiyah)は1992年生まれ。ギャングスタの血を引き継ぎ,ラップスタイルは西海岸出身の雰囲気がドクドク血のように流れるBay Area臭いアーティストです。Bay Area… more specifically, Oak Town A.K.A. Oakland出身です。

2019年の第19位は若手女子MCの彼女=カマイヤ(Kamaiyah)に贈ります。

Kamaiyah – “Still I Am”

Kamiayah feat. Quavo & Tyga – “Windows”

MERRY CHRISTMAS!!!!!

(文責:Jun Nishihara)

久しぶりに今週のカニエ・ウェスト“Sunday Service”模様をお届けします。おまけにカニエ論を。

カニエ・ウェストが10月25日(私の誕生日)に名作『Jesus Is King』をリリースしてから,しばらく“Sunday Service”の模様をアップしておりませんでした。以下のとおり,今年に入ってから,今年初旬から毎週日曜日にはぶっ続けで,休むことなくカニエ・ウェストはソウルフルなジャムセッション=“Sunday Service”を開催してきました。こんなことはラッパー,否,ヒップホップアーティストでは(ここでは何回も書いてきましたが)前代未聞なのであります。

これまでの“Sunday Service”の模様は,ここら辺(↓)でご覧ください。

カニエ・ウェストの“Sunday Service”まとめ(10月6日&10月12日開催分)

カニエ・ウェスト“Sunday Service”を金曜日に開催 (9月27日分) & アルバム『Jesus Is King』のリスニングパーティー

カニエ・ウェストの“Sunday Service” (前回,前々回,前々々回・・・からのつづき)

そして本日,先週末12月8日(日)に実施されたばかりの“Sunday Service”をお届けいたします。
(於:フロリダ州のVOUS Church)

そしてもうひとつ,11月10日(日)にヒューストン市の刑務所に於いて,囚人相手に開催した“Sunday Service”も以下のとおり掲載しておきます。

今年の冒頭でこのサイトで,カニエ・ウェストの与えるエナジーで2019年を一気に乗り越える,と書きましたが,そのエナジーはやむことなく,ここまで火はともされ続けてきました。もう12月も半分を超えたばかりですが,カニエ・ウェストのエナジーは,ほぼ1年経ったいまも,消える気配がしません・・・と,そんなことを今こうして書いておりますが,思い返せば2003年にカニエ・ウェストのmixtapeをニューヨーク市かクリーブランド市がどちらか忘れましたが買った時にも,同じようなエナジーを感じたことは確かです。2003年のあの頃から現在2019年の終盤を迎えようとしている今も,まだまだ健在です。

ニューヨークの大学に通っていた際,クラスメートが当時,「50セントはもう終わりね,ラッパーってのはだいたい10年が寿命よ」と言い放ちましたが,カニエ・ウェストは10年どころか,プロデューサー時代にジェイZにビートを提供していた時代から考えると20年経た今も,まさにこんな新しいことをやっているっていうのは,イカレているというか,まさにこれを人は「天才的」と呼んでいるのでしょうが,カニエ・ウェストほど「天才」という言葉が似合わないアーティストはいないでしょう。カニエは天才ではなく,芸術家なのです。

何が芸術家なのか,というと,それを象徴しているのは,カニエが2004年にデビューシングルを出したとき,当時,それまでのヒップホップのサグやゲットーやハスラーのイメージの「逆」からスタートした。それはカニエの意図的なものなのであったか否かは別として,それまでのヒップホップのイメージに逆らうように,対抗していった。みずから師(=big brother)と仰ぐジェイZの「真逆」を行った。

そこに彼の「芸術」は端を発するのではないかとずっとモヤモヤと感じてきたのですが,誰かがカニエは天才などということをどこかで書いていたので,それは違うだろう〜と違和感を感じ,初めて文字にしたまでなのです。カニエ論なんていうことばがあるのならば,そこを地点にスタートするのもおもしろいかもしれない,というひとつのアイデアです。

ひとまずは,ここで終わりにしますが,カニエのことを天才だと思ったことは,20年以上カニエの音楽を聴いてきて,感じたことはなかった。(Jay-Z feat. Scarface & Beanie Sigel “This Can’t Be Life”はジェイZの『The Dynasty』アルバムに収録。カニエ・ウェストがプロデュース。リリースは1999年。)ひとまずはそれをクリアーにしておきたいです。

カニエ論は,気が向いた時に,ひょっこりと,また続けます。

(文責:Jun Nishihara)

第28位:Dreamvilleから今年イチのリリカル・ヒップホップ曲「Down Bad」(今年出たHip-Hop名曲名場面ベスト50)

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(上記写真はベテランのヒップホップ・フォトグラファー=ジョナサン・マニオン(Jonathan Mannion)によるものです。Dreamvilleレーベル所属のメンバーたち。時計回りに左端から,Lute,Bas,Childish Major,Omen,Ari Lennox,Cozz,J.I.D,J. Cole,Earthgang。)

あれはたしか約9年前だったと思います。J. Coleがまだ駆け出しの頃,ヒップホップ雑誌のXXLで私は彼のインタヴュー記事を読みました。もともと彼(J. Cole)はディディからレーベル契約のオファーをもらっておりましたが,当時若気の至りであったJ. Coleはこう言って断ります。「じぶんがほんとうに納得できるレーベルじゃなきゃ入りたくねえ」と。なんと生意気な(笑)。しかしこうして後ほど彼が「ほんとうに納得した」JAY-Zのレーベル=Roc Nation(ロック・ネーション)に入ることになり,その後はもうトントン拍子でここまで成り上がった,というアメリカン・ヒップホップ界の一つのサクセス・ストーリーであります。

J. Coleは自分ひとりだけの成功では満足せず,Dreamville(ドリームヴィル)というチームを立ち上げ,仲間たちをも成功に導きました。その仲間たちが冒頭の写真ですが,その中でもダントツにきわだってラップが上手いヤツがいます。それがJ.I.D。本日とりあげたい以下のMVをご覧あれ。そしてJ.I.Dのヴァースにぶっ飛んじまえ。

Dreamville feat. J.I.D, Bas, J. Cole, Earthgang & Young Nudy – “Down Bad”

(文責:Jun Nishihara)

第32位:今年最高の盛り上がりを見せたリル・ナズ・Xの曲「Old Town Road」(今年出たHip-Hop名曲名場面ベスト50)

テイラー・スウィフト(Taylor Swift)は,さかのぼれば,大元はカントリーシンガー(カントリー音楽を歌う歌手)でした。カントリー出身の彼女は,次第にアメリカン・ポップを歌うようになり,今ではアメリカ,いや,全米のみならず,全世界を代表するポップ・シンガーとなりました。つまり彼女は,カントリーを出て国際的世界ナンバーワンとなったアーティストでした。

しかし今年出たこのリル・ナズ・X(Lil Nas X)の全世界ヒット曲「Old Town Road」では,今まで成し遂げられなかったことが成功しました。それは何かといえば,まさにテイラー・スウィフトとは逆,「ヒップホップをカントリーに入れ込んだ」ということです。今まで,「カントリーを出て,ヒップホップに行った」人(たとえばKid Rock(キッド・ロック))はいました。そしてテイラー・スウィフトのように「カントリーを出て,ポップに行った」人もいました。つまり「カントリー出て,他へ行った」人はいたのでしたが,リル・ナズ・Xはそれらとは逆に「ヒップホップをカントリーの世界にもってった」,言わば「ヒップホップをカントリーの世界に逆流させた」ことに成功した,きわめてめずらしいアーティストになりました。

ヒップホップはここ数年,アメリカの「ポップ」として認知されるようになってきました。ロックやジャズと比べると歴史は相当浅いですが,ここへ来て,もうアメリカ中の誰もがヒップホップを無視することはできなくなってきました。ニッキー・ミナージュが世に出てきた頃から徐々に,ヒップホップは一部「ポップ」として認知されるようになってきました。

この曲の偉大さについてはさて置き,今年出たヒップホップ曲第32位として,以下リル・ナズ・Xの「Old Town Road」の2ヴァージョンを掲載しておきます。

Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus – “Old Town Road”

※スキット無し

※スキットあり

(文責:Jun Nishihara)

第33位:Big K.R.I.T.のニューアルバム『K.R.I.T. Iz Here』(今年出たHip-Hop名曲名場面ベスト50)

ビッグ・クリット(Big K.R.I.T.)というアーティストは安定してアルバムをリリースしてきております。日本での認知度はまだ低いのかもしれませんが,アメリカ南部,とりわけミシシッピ州では彼を知らないラップファンはいないほど有名,人気者です。彼の有名なリリックに以下があります。

King city, king, king city
Third coast representer, Mississippi-ssippi-land
Three hundred, three hundred, my stomping ground
Three hundred, three hundred, my stomping ground
Three hundred, three hundred, my stomping ground
King city, M-town, hometown hero

キングの街,キング,キングの街
第3の海岸をレペゼン,そこはミシシッピ,ミシシッピの地
300,300,そこが俺のたまり場
300,300,そこが俺のたまり場
300,300,そこが俺のたまり場
キングの街,Mで始まる地,地元のヒーロー

「キングの街」というのはキング牧師を示唆し,「第3の海岸」というのは,東海岸でもなく西海岸でもないというところ。数字の「300」はビッグ・クリットが育ったミシシッピ州メリディアン市の30アベニュー,そこを俗語で「スリーハンドレッド(300)」と呼んでいます。

彼に希望を見るところは,「田舎者でもここまでやっていけるんだ」という共感する思いです。ミシシッピ州のメリディアンというわずか4万人足らずの人口密度の街で生まれ育ちました。じぶんを田舎者(country boy)と呼び,時に名曲「Hometown Hero」をリリースし(2010年),南部のMCやラッパーたちから根強い支持を受けてきました。

そういう素晴らしき南部ラッパーが今年リリースしたアルバムが『K.R.I.T. Iz Here』。東京に似合わないラップアルバムです。もしあなたが田舎出身でラップ好きであるならば,聴いてみる価値は必ずあります。決して,大都会に依ることなく,東海岸や西海岸のヒップホップに染まることもなく,デビューしてすでに14年,ここまでやってきました。

今年リリースしたアツいシングル曲,ここに掲載しておきます。

(文責:Jun Nishihara)

第36位:Nonameのインディーズ出版のアルバム『Room 25』をスルメのように味わう(今年出たHip-Hop名曲・名場面ベスト50)

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これまでのランキング(第49位〜第37位まで)は,ヒップホップ色が濃いこてこてのアーティストが揃っていました。

だんだんとランキングが上がってきまして(本日は第36位),ゆっくりと洗練性とインテリ性を上げていきます。

まだまだインディーズ・レーベルで頑張っているアーティスト=Noname(ノーネーム)の登場です。

彼女のデビューアルバム『Telefone』(2016年リリース)はあまりにも有名です。インディーズなのにここまで有名になったのは新鮮で新鋭的でとても素晴らしいことだと思います。インディーズのアーティストにもっと光が当たっていい。ここまで素晴らしいマテリアルを提供してくれているのだから。という一つの使命をもって展開してくれているのが,以下のウェブサイト(bandcamp)です。ここでは,購入者が曲やアルバムに支払える金額を決められるという,おもしろい試みを提供してくれているサイトです。

https://nonameraps.bandcamp.com/

Noname(ノーネーム:名無し)のフローは特徴的です。少し聴けば,彼女の声を別のところで聴いても,「あ,Nonameだ」と分かる。そういう声とフローをしています。

その彼女の最新作アルバム『Room 25』から以下の曲を聴いてみます。昨日のKash DollやDoja Catの曲の雰囲気から,ガラッと変わります。冒頭の歌の部分はわずか20歳のR&B歌手Ravyn Lenae(ラヴィン・レネ)が歌う声です。

Noname – “Montego Bay” feat. Ravyn Lenae

同アルバムからもう1曲,Noname – “Ace”を聴いてみます。

ノーネームのこのアルバム(『Room 25』)は,ギャングスタ・ラップのような野蛮で最高なラップアルバムとは異なり,静けさがともなうと共に,何度聴いても飽きが来ないアルバムとなっており,完成度は高いです。すぐに好きになれるような劇薬のアルバムとは呼べませんが,1回目より2回目。2回目より3回目,というふうに,少しずつスルメのように噛んでいくと,だんだんとハマっていくという不思議なアルバムです。過激な味は無いですが,一見無味乾燥のように思えた音楽が,ゆっくりと深い味わいを感じさせてくれる,というアルバムです。少なくとも1曲好きな曲を見つけて,3回は聴くべきアルバムです。

(文責:Jun Nishihara)

第45位:21 Savage feat. J. Coleの“a lot” (今年出たHip-Hop名曲名場面ベスト50)

ミュージックビデオはこちらです。

冒頭の立派な豪邸は,アメリカの中産階級(あるいは中間階級)の家庭でよく見る家の形をしています。わたしもアメリカの高校に通っていた際,卒業生プロムパーティーの準備で,お相手の友達の家に集合して,男子はレンタルしてきたタキシードを着て,女子は綺麗なプロムドレスに身を纏って写真を撮ってから会場に行ったのですが,その人の家は映像の家の造りに似ており,裏庭(backyard)は芝生で広く,そこでグループフォトを取るスペースがある。そういうことを思い出して感慨に耽っている場合ではないのですが,とても懐かしい感じがするとともに,アメリカの中間階級の家庭では一般的な家であり,大富豪にならずともアメリカの中西部ではこのくらいの家は持てる人が多いようです。

このソウルフルなビートは,1960年代の名曲East of Undergroundの「I Love You」をベースにサンプリングしております。

Verse by 21 Savage:

Penitentiary chances just to make a couple bucks
My heart so cold I could put it in my cup
Gang vs. the world, me and my dawg, it was us
Then you went and wrote a statement, and that really fucked me up
My brother lost his life and it turned me to a beast
My brother got life and it turned me to the streets
I been through the storm and it turned me to a G
But the other side was sunny, I get paid to rap on beats

2, 3ドルの儲けのために,あやうくムショにぶち込まれ
ギンギンに冷えたハート,グラスにカランカラン
世間vs.俺と仲間たち,いつも共にいた
それがいきなり俺の元を去り,チクリやがって,途方に暮れた
弟が命を犠牲にしてから,俺は野獣のように戦った
兄貴が終身刑を宣告され,俺はストリートをさまよった
嵐のなかを進んできた俺は,立派なギャングスタとなった
しかしそういった生き様の真逆にあったのは,華やかで,ラップをビートに乗っけて稼ぎ始める人生だった

(文責及び対訳:Jun Nishihara)