UKの若手黒人音楽シーン(UKシリーズ:その④)

英国UKの黒人音楽シリーズその④として,本日は,UK出身の若手黒人アーティストの楽曲を幾つかお届けします。

まずは1人目,英国はノッティンガム生まれの32歳。NAO(ナオ)です。ノッティンガムは人口27万人越えの学生の街として知られますが,子供の頃にイースト・ロンドンに引越し,学生の街生まれで大都会育ちの女子として育っていきます。

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(photo credit: The Fader)

デビューは2016年,アルバム『For All We Know』を発表し,UKのR&Bチャートで第5位を獲得。セカンド・アルバムは『Saturn』を2018年にリリースし,UKのR&Bチャートで第2位を獲得します。

その『Saturn』からシングル曲「Make It Out Alive」を下記掲載いたします。

2人目は,FKAツイッグス(FKA Twigs),17歳の頃,サウスロンドンという大都会に引越し,バックアップダンサーとして暫く名を馳せます。24歳で歌手デビューを果たし『EP1』をリリース。米ダンス・ミュージックとして第11位にランクイン。EP盤にも関わらず,好成績を挙げます。

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(photo credit: Glamour)

2014年にアルバム『LP1』をリリースし,あらゆるメディアから絶大の高評価を得ます。同アルバムに収録された「Two Weeks」を以下掲載いたします。

続きまして,3人目はロンドン出身のアーティスト,ドーニック(Dornik)です。ドーニックは元はラッパーのゴーストライターとして働いておりました。しかし2015年,ついに自身のために歌詞を書き,アルバムDornik』をリリースします。裏の人間から,オモテに出てきた瞬間です。

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そのドーニック(Dornik)から楽曲「Retail Therapy」を以下掲載いたします。

おまけにもう1曲,英国生まれのソウルフル!な楽曲「God Knows」です。

4人目は,セレステ(Celeste)。生まれは米国カリフォルニアですが,3歳の頃,ロンドン東部のダゲナム地区(Dagenham)に引越します。イギリス人の母親とジャマイカ人の父親を持ち,アレサ・フランクリン(Aretha Franklin)やエラ・フィツジェラルド(Ella Fitzgerald)の音楽に影響を受けます。

そのセレステから「I Can See The Change」をお届けします。

最後5人目は,マイケル・キワヌカ(Michael Kiwanuka),ロンドン出身のシンガー・ソングライターです。2012年にデビューを果たしアルバム『Home Again』をリリース。セカンド・アルバム『Love & Hate』は米GQ雑誌が選ぶ「2016年に出たベスト10枚のアルバム」の第7位に選ばれます。

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アルバム『Love & Hate』から楽曲「Black Man In A White World」を掲載いたします。

(文責及びキュレーション:Jun Nishihara)

第1位:2019年の夏を制し,遂に1年まるごとヒップホップ界を盛り上げてくれた大・大・大ブレイクアーティスト登場!Megan Thee Stallion! (2019年Hip-Hop名曲名場面ベスト50)

2019年を一言で表現するとすれば,これかもしれません。「今年は女子ラッパーが活躍した一年だった」と。

シティ・ガールズ(City Girls)しかり,カーディB(Cardi B)しかり,ニッキー・ミナージュ(Nicki Minaj),カマイヤ(Kamaiyah),ドージャ・キャット(Doja Cat),キャッシュ・ドール(Kash Doll),ティエラ・ワック(Tierra Whack),トリーナ(Trina),ノーネイム(NoName),ステフロン・ドン(Stefflon Don),そしてラプソディ(Rapsody)などなど。いま挙げたのは全員女性です。

必ずしもヒップホップとは呼べませんがポップ界では,黒人女性として歌手のリゾ(Lizzo)も大活躍しました。

そしてさらに追い討ちをかけるかのように,ヒップホップ界の超重鎮黒人女性ラップ・アーティストのミッシー・エリオット(Missy Elliott)も今年のMTV Video Music Award賞受賞会でその伝説的なカムバックを果たしました。おまけにニューEPもリリース!

こんなにも黒人女性及び女子ラッパーが活躍した2019年,なかでも特に,そう,特に,そう,くりかえします,特に!大・大・大ブレイクしたのが,この女性でした。それがMegan Thee Stallion!

ヒップホップ業界ではよく「夏を制すものは,一年を制す」といわれます。つまりその夏に売れたものは,一年をとおして売れる,その一年でもっともHOTなものといえる,ということです。

そして今年の夏を制し,ついには一年をも制すこととなったヒップホップアーティストが,そう,Megan Thee Stallionです。

英語読みは「メーガン・ジー・スタリオン」ですが,日本語表記は「ミーガン・ジー・スタリオン」と書いたり,「メーガン・ザ・スタリオン」と書いたり,「ミーガン・ザ・スタリオン」と書いたりと,あらゆる場所で別記載をしています。英語で読む場合はあくまでも「メー」にアクセント(強調)を置いて「メーガン・ジー(“the”の強調形,舌を噛んで発音)・スタリオン(タにアクセント)」です。

英語表記は満場一致の“Megan Thee Stallion”です。彼女の名前を呼ぶときは仲間たちは「Megan(メーガン)」や「Meg(メグ)」と呼びます。サウス出身の人たちは「メィガン」と呼ぶ場合もあります。愛称は「Stalli(スタリー)」です。

さて,このメィガン AKA メグ,今年の夏前から,こういうハッシュタグで話題になりました。「#HotGirlSummer 」です。

ツイッターやインスタグラム,Facebook,スナップチャットまで,アメリカ中,西から東,北から南まで,女子,いや,クィアな男子たちまでも,#HotGirlSummerで今年の夏を盛り上げてくれました。

実はまだ大学生のメィガン。つまり,まだ学生。まさに,いまのトレンドをいっちばん理解している世代の女子なのです。学校はTexas Southern University(テキサス南部大学)。つまりですよ,キャンパスはほぼ黒人の,いわゆる「HBCU (Historically Black Colleges & Universities=歴史的黒人大学)」と呼ばれる大学に通学しています。

1995年2月15日生まれ。今年で24歳。いま,何が流行っているかをいちばん理解して,そのど真ん中を生きている女の子です。

その彼女=メィガンが,今年の夏,ニッキー・ミナージュとコラボレートを果たしました。

この写真です。

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(左がニッキー,右がメィガン)

そしてその曲が以下です。

Megan Thee Stallion feat. Nicki Minaj & Ty Dolla $ign

メィガンは昨年からジワジワとヒップホップ界,ラップ界を湧かせてきておりました。

昨年2018年に発表したシングル曲が以下の曲です。これは今年になってもストリーミング及びダウンロードされまくり,売れ続けまくりました。

Megan Thee Stallion – “Big Ole Freak”

以下は11月に開催されたAmerican Music Awardsの帰り際にカマした即興フリースタイルです。

12月には遂に,NPR Music: Tiny Desk Concertにも登場いたしました。

メィガンのフリースタイルをもう一本,掲載しておきます。

最近のフィメール・ラッパーつまり女子ラッパーと何が異なるかというと,リリシズム(リリックを重視する)という態度です。

もちろん,タイトなルックスで,奇抜な服を着て(もしくは太ももを露出して)お尻を突き上げて,ダンスもしますが,それ以上に彼女の才能はそのリリシズムにあらわれています。

容赦ないフロー。スピード感あるラップ。90年代から2000年代にかけて,流行ったハードコアラップをも彷彿とさせます。リリックの内容はストリッパーだけじゃない。エロだけじゃない(もちろんエロもありますが,内容をセックスやドラッグばかりに頼っていない。

古き良き時代?!(いや,ヒップホップはそんなに古くない)のヒップホップをbring it back (よみがえらせた)ラッパーとも言えます。そういう点で優れているにもかかわらず,そういう点を差し置いたとしても,今年#HotGirlSummerのハッシュタグでヒップホップ界最高にアツい夏を魅せてくれました。

もうひとつ,メィガンについて,特筆しておくべき点は,アメリカのディープサウス(深南部)出身ということです。その深南部出身という肌感覚から,同じ深南部であるメンフィス出身のジューシーJ(Juicy J)とタッグを組んでラップしております。

肌感覚はよく曲にあらわれます。メィガンの肌感覚は,その昔,深南部で奴隷が経てきた苦しみを深い歴史に刻んでいます。500年間つづいた奴隷制度です。その奴隷の感覚がメィガンの肌感覚に残っている。その肌感覚から溢れ出るメィガンの音楽,といいますか,ラップといいますか,ヒップホップには,北部出身のラッパーには出せないソウルがあります。それはビートによってもあらわれます。コーンフィールドという畑を,鍬をふりかざして,耕す黒人奴隷。その「耕す」という行為には,早いテンポのビートが求められました。ビート(当時は「掛け声」)とともにふりかざして耕さないと,白人のご主人様にムチでぶったたかれますからね。だからダラダラしたラップで,間延びするラップのフローでは,いけなかった。間延びしちゃいけない。そこに深南部出身ラッパーの独特のラップスタイルがあります。それをメィガンも綿々と受け継いでいる。意識的に,無意識的に,どちらかはさて置いて,確実に受け継いでいる。そこにわずか40年という若い歴史のヒップホップを超えた,500年続いた奴隷制度の深い歴史を感じることができます。

Megan Thee StallionがJuicy Jとタッグを組んだ曲に,以下の曲があります。これはエロがメインテーマです。(Juicy Jはエロに生きる男ですから,彼と組めばこういう曲内容になるのは必然でしょう。うなずけます。)

つい先日1月10日(金)にリリースされた,Normani(ノーマニ)との新曲MVも以下に掲載しておきます。現在YouTubeにてトレンド第8位!

なお,こちらは年末年始のバケーション中に撮影したMegan Thee Stallionのフリースタイルです。

2019年,メィガン AKA メグは,ジェイZが築き上げたレーベル=Roc Nationに引き抜かれました。しかし,彼女がRoc Nationに入隊したのは,結果論。メィガンの魅力は彼女がRoc Nationに入ったことではなく,Roc Nationに入る前に,すでに魅力であふれておりました。Roc Nationに入ったのはオマケ。Roc Nationに入る事実を知る前から,Megan Thee Stallionは今年ナンバー1の女子ラッパー,いや,女子も男子もひっくりめての,「まるごと第1位」のヒップホップアーティストとして,ここに記載いたします。

2020年は明けました。2019年(平成31年/令和元年)もありがとうございました。今年も,当サイトに来ていただいて,ありがとうございます。これまでベスト50として,毎日アップをし続けましたが,あさってからは通常どおりのパターンに戻り,ほぼ毎週水曜日と土曜日の朝のアップいたします。2019年は皆さんにとってヒップホップに溢れた一年だったことと願っております。新年2020年はさらに素敵なヒップホップと出会えますように。どうもありがとうございました。

(文責:Jun Nishihara)