追悼:ソウルの女王=アレサ・フランクリンがヒップホップに与えた影響(その2)

前回のつづきです。

NYはハーレム出身のラッパー=キャムロン(Cam’ron)の引き出しから,この一曲です。

2002年5月にリリースされたヒップホップ名盤『Come Home With Me』から,シングルリリースされた「Day Dreaming」を取り上げます。

このアルバムには,ジェイZがfeat.されている「Welcome to New York City(ニューヨークシティーへようこそ)」という曲も収録されています。

さて,アレサ・フランクリンがヒップホップ界に与えた影響は,当時の若手ラッパーT.I.にとどまらず,ハーレム出身のベテラン・ラッパー=キャムロンにも及びました。

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キャムロンは素晴らしい数々のヒップホップ名曲を残していますが,その中でもアレサ・フランクリンの「Day Dreaming」がサンプリングされた,名前が似ている(スペルの綴り方は異なります)「Daydreaming」(プロデュースはカニエ・ウェスト!)から,この歌詞を取り上げます。

I know fucking with a crook is whack
I lied, cheated, still took me back
What I do? Turn around, ask you to cook me crack
Boost my work with a jerk and tell the truth it hurts
Cause you even ask me to come through to church
What I do? Act second rate
I stole ten dollars out of the collection plate
But I’m ready to change
You got my heart, plus you smart
And the sex is great
And you hate rap, I like that girl
I argue with Keisha, I ain’t like that girl
You jumped right out the car, to fight that girl
You beat her ass, you ain’t have to bite that girl
And my baby got the best thighs
And my whip she ain’t never got to test drive
Copped her the X5
You paid attention when no one acknowledge me
This is my public apology, holla B

ダメ男と付き合うのはダサいなんて思ってんだろ
ウソついて,浮気もした,それでも俺のこと,好きでいてくれた
君にムリも言った,ふり向けば,「コカイン寄こせ」とか言って
仕事前にフェラして,やる気出させてくれた,ちょい痛かったけど
「あたしと教会,いっしょに行こ」って,さそってくれた
でも俺は,ふざけてた
教会の募金箱から,10ドル盗んだり
でも良い人間になろうと決めた
君の愛にやられた,おまけに君は育ちもイイし
君とのセックス,たまんないし
君はラップが大嫌い,それでもダイジョウブ
キーシャと口喧嘩,それはダイジョウブじゃない
君は車から飛び降りて,キーシャを黙らしてくれた
ボッコボコにしてくれた,噛みつくまでもなかった
それに君の太もも最高さ
俺のアメ車,試乗するまでもないさ
君にBMW買ってあげた
だれひとり俺のこと相手にしてくれなかった時に,君だけは認めてくれた
この曲は君に捧げる,謝礼の曲さ,連絡してこいよ,Bちゃんよ

カニエ・ウェストは,この曲のプロデュースに関わっています。前回の「追悼:アレサ・フランクリン」のページでも書きましたが,古い曲をサンプリングすることによって,その曲が現代・現在によみがえります。カニエ・ウェストがやってきたことの偉大なひとつは,まさに,このことでした。

アレサ・フランクリンの才能は,そうそう受け継げるものではありません。しかし,こうして,40年の月日を経て,現代のヒップホップでアレサ・フランクリンの歌声が聴けるなら,「アレサの代わり」がいなくとも,いまのところは,なんとかやってけるかもしれないと感じています。

「アレサ・フランクリンの代わり」はいないかもしれませんが,「アレサ・フランクリンの魂(ソウル)」は,こうして現代のヒップホップ音楽を媒介として,受け継がれていくでしょう。

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Source: photo: WENN.com

(文責:Jun Nishihara)