Nasアルバム『The Lost Tapes』(2002年)より,対訳「Purple」(ヴァース1)

2002年にNYの街角でNasの『The Lost Tapes』というアルバム(当時はミックステープと呼ばれていた)を5ドルで購入し,ポータブルCDプレイヤーで聴き込んだ頃,まさかじぶんがこの曲を将来翻訳することになるとはこれっぽっちも思っていなかった。そして,そのアルバムを聴いていた当時は,日本語に訳すというマインドはまったく持たず,ありのままにNasがラップするのを聴いていた。「訳す」ということを考えず。

たとえば最近では,ラップを聴いていると,「ふむ,この部分は日本語に訳すとすればこう訳すだろう」ということを考えながら聴いている時もある。しかしそんなことは当時まったく考えずに聴いていた。

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(上記写真は,2002年のMTV Music Awards(MTVミュージックアワード賞)のリハーサルにて。左からNas,Ashanti,Ja Rule。当時2002年,彼ら3人は,ヒット曲「The Pledge」という曲をリリースしていました。当時,アーヴ・ゴッティ率いるザ・マーダー・インクというレーベルが勢いつけてきており,アシャンティやジャ・ルールなどがヒット曲をリリースしていました。この楽曲「The Pledge」は2パックの楽曲「So Many Tears」をサンプリングしており,曲の終わりにかけて,2パック本人のセリフも登場します。)

さて,そのNasの偉大なるウラのアルバム『The Lost Tapes』(2002年)から,楽曲「Purple」の対訳を掲載いたします。

Nas(ナズ) – “Purple” (Verse 1) 対訳

[Verse 1]
The whole city is mine, prettiest Don
I don’t like the way P. Diddy did Shyne with different lawyers
Why it’s mentioned in my rhymes? Fuck it
It’s just an intro, hate it or love it, like it, bump it or dump it
Write it, across the stomach spell “God son”
Life is like a jungle, black, it’s like the habitat of Tarzan
Matter of fact, it’s harder than most can imagine
Most of my niggas packed in correctional facilities
Half of them passed on, MAC strong, couple of shots
Made the ghost leave a body, now they hauntin’ the block
Where they used to stand at, somebody’s takin’ they place
A younger man perhaps, hand slaps, can’t understand that
Same walk, same talk, I wonder can that be possible?
A thug dies, another step inside his shoes
And they will hurt you, layin’ low with a bottle
I’m blowin’ circles, my state of mind purple

(ヴァース1)
この街はどこまでも俺の街,イケメンの首領(ドン)
P.ディディが弁護士を数人雇い,シャイン*(註)相手に勝訴したのはイカセねえ
どうしてそんな内容のラップするかって? 理由なんてねえ
それがイントロ,好けど嫌えど,聴けど捨てれど
俺は“書いた”,肚に文字,「神の息子(ゴッド・サン)」と
人生はジャングル,真っ暗で,まるでターザンの住処
実際のとこ,ここは,おまえらが想像する以上にハードなトコ
俺の仲間のほとんどが,ムショにとっつかまえられている
その半分があの世にいっちまい,マック銃にやられ,2,3発喰らった
その霊は肉体を離脱し,いま,ゲットーをさまよい歩く
かつてハッスルしていた場所で,今となっては,別の野郎がそこにいるが
若手の野郎が,大金の取引を交わす,それが現実,俺は理解に苦しむ
似た歩き方,似た話し方,俺は思う,んなことあっていいのか?
サグは死に,ヤツの代わりに別のヤツがそこを継ぐ
そしてまた傷つけられる,ボトルを片手に身をひそめる
ケムリをふかして,円を吐く,俺の気分は「パープル」

*註釈
シャイン(Shyne):90年代後半から2000年前半にかけて活躍したラッパー。一時はそのドスの効いた声で,ザ・ノトーリアスBIG(AKAビギー)の生まれ変わりとも称された。最大のヒット曲は,ヒップホップ史上,極めて危険で,最も“ビギーを彷彿とさせる”と呼ばれた名曲“Bad Boyz”を下記掲載しておきます。

(文責及び対訳:Jun Nishihara)

おまけ:
Shyne – “Bad Boyz”