JAY ELECTRONICAのアルバム『A Written Testimony』楽曲③「The Blinding」(独断偏見ライナーノーツ)

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収録楽曲③「The Blinding」

フィーチャリング・アーティストとして現代ヒップホップ界を先導(仙道?)するトラヴィス・スコット(Travis Scott)参戦。プロデューサー陣は,ジー・ライ(G. Ry),エイラーブ・ミュージック(AraabMUZIK),ヒット・ボーイ(Hit-Boy),そしてビートプロデューシング名人=スウィズ・ビーツ(Swizz Beatz)センセー。なんと豪華な。ヒット間違いナシ。

冒頭からアラビア語が飛び出します。もうスローダウン,メーン!

Kayfa ḥal-uk? Kayfa ḥal-uk, habibi?
(調子,どうや?元気に,やってっか?)

この曲では,ヒップホップの伝統芸=マイクリレー(mic relay)が行われます。

ジェイとジェイ,つまり,ジェイ・エレクトロニカとジェイZのマイクリレーです。
ヴァース1でもジェイ・エレクトロのリリックと,ジェイZのリリックが交差します。

It’s the return of the Mahdi, it’s the return of the Akhis
It’s the return of the lost and found tribe of Shabazz, the Annunakis
It’s the return of Mr. Shakur spittin’ out phlegm at paparazzi
That’s my new style

マーディがお戻りになった,アーキーがお戻りになった
シャバズの見失われた部族,つまりアヌナーキーがお戻りになった
パパラッチ向けツバを吐きまくるシャクール(=2パック)がお戻りだ
それが俺の新しいスタイル

マーディというのはイスラームの先導師,アーキーとはムスリムの間での兄弟関係を意味し,
シャバズとはアフリカの内陸部へ黒人を導いた部族の長,
アヌナーキーとは,シュメール神話に登場する神々のこと。
シャクールとはご存知,2パックの本名(=トゥパック・アマル・シャクール)。

さて,曲の途中でビートを一変させる技については,このページで説明しました

まさにこの技を得意とするトラヴィス・スコット(Travis Scott)の登場です。エンジニアリング・ミクスチャーはヒップホップ界の大ベテランでありロッカフェラ時代からジェイZの盟友である=ヤング・グールー(Young Guru)が担当。

Blinding (Hit-Boy)
Blinded by the light
See the stars and our sun

目がくらむ(ヒット・ボーイ)
光がまばゆくて,目がくらむ
見えるか,スターたちとあの太陽が

そして,ヴァース2ではジェイ・エレクトロニカが内省的(introspected)なラップを試みます。

When I lay down in my bed it’s like my head in the vice
When I look inside the mirror all I see is flaws
When I look inside the mirror all I see is Mars
In the wee hours of night, tryna squeeze out bars
Bismillah, just so y’all could pick me apart?

夜中,床(トコ)につき,悪徳にアタマをうずめる
鏡を見れば,映るのは俺の欠点ばっか
鏡を見れば,映るのは娘(マーズ)の姿
夜が開けようとする早朝,俺はリリックを搾り出している
ビスミッラー,そのリリックを聴いて,俺を批判しまくってくれ

ビスミッラー,つまり,アッラーの名にかけて。

(文責及び対訳:Jun Nishihara)