キム・カーダシアンのツイッターでは,ニューアルバム『Jesus Is King』のトラックリストが発表されました。前回発表されたものからは少し改訂されています。この「改訂していく」というのも,カニエの仕事に対する態度でカニエによく見られる傾向です。カニエは過去に一度アルバムに収録してすでに発表した楽曲のビートを後に改訂したことがありました。「たとえアルバムに収録された曲でも,さらに良いものにし続ける態度」というのはカニエの傾向です。
また,以下に,昨日27日(金)にカニエ・ウェストがデトロイトで行った特別の“Sunday Service”ならぬ“Friday Service”のストリーミングを掲載しておきます。題して「Jesus is King: A Kanye West Experience(邦題:ジーザスはキング:カニエ・ウェスト体験)」。タイムライン16:40では,パパ(カニエ)の横で跳びはねて踊る娘(ノース)も映ります。なお,これはストリーミングですので,一定期間を過ぎますとリンクが消えます。(映像が見られなくなります。)
なお,先ほど映画『Jesus Is King: A Kanye West Film』(一部報道では『Jesus Is Lord』となっておりましたが,『Jesus Is King』だそうです)は来月10月25日(金)にIMAXにて上映開始されると発表がありました。以下がそのカバーアートです。
このサイトを見られている方の中には,30年前はMary J. Bligeの曲を聴いていたけれど,今はもうそういった音楽はめっきり聴かなくなったという方もいらっしゃると思います。もしくは,今は日々の仕事に追われて,ヒップホップなんかとは全く関係のない仕事をして,せわしなく仕事や生活をされている方もいらっしゃると思います。
しかしそんな時にこそ,Mary J. Bligeのこの曲「You Remind Me」を聴いて,ほんとうは何がたいせつだったのかを,一時的にも思い出すことができれば,人生がすこし良い方向に進むかもしれません。
黒人音楽を聴くという習慣がついているものにとって,アメリカのBETというTVチェンネルは欠かせないものです。アメリカ黒人のカルチャーやファッション,音楽やミュージックビデオ等に関するあらゆる番組を一日中放映しているTVです。(BET=Black Entertainment TV)2000年代初期の頃にはまだまだBETよりもMTVという時流はありましたが,最近ではMTVと双璧をなすほどのクオリティとトレンド力をBETはつけてきたと思います。
MTVと同じくBETでも毎年「BET Music Awards」が開催されます。2001年から開催するようになり,今年で19年目です。
そのBET Music Awardsで今年開かされたAwards授賞式では,メアリー・J.ブライジ(Mary J. Blige)が素晴らしきステージパフォーマンスを見せてくれました。メアリーが活動を始めたのは1989年,BETが創設されたのは1980年,アメリカの全国版TVチャンネルとして認められたのは1983年でした。つまり,BETがアメリカ全土に放映されるようになって僅か6年後にメアリーのミュージックビデオはBETチャンネルで放映されるようになったのでした。
こうして四半世紀以上の黒人音楽史を,Mary J. Bligeとともに歩んできた米国BETチャンネルは,今年(2019年)のBET授賞式で彼女を特別に讃えることとしました。まさにその名に等しい「Lifetime Achievement Award(特別功労賞)」です。この特別功労賞は,黒人音楽の歴史において名を馳せるとともに,黒人音楽に長年の間貢献した偉大なる人物に贈られる賞です。過去に同賞を受賞した人物にホイットニー・ヒューストン(Whitney Houston),ジェイムス・ブラウン(James Brown),チャカ・カーン(Chaka Khan),プリンス(Prince),ダイアナ・ロス(Diana Ross)等,まさに偉大なる人物が並びます。
その偉大なる人物の中に,ついにMary J. Bligeも並ぶこととなりました。現代の世代のヒップホップアーティストでこの受賞者の欄に並ぶのは初めてです。「ヒップホップ」が初めてなんです。信じられないようで,ずっとヒップホップを聞いてきたものにとっては感慨深いものがあります。繰り返しますが,「功労賞」にヒップホップという音楽も入るようになったんです。今まで「若者の音楽」だと勝手に思ってきたヒップホップも「歳をとったものだなぁ」とこれを見て思いましたよ。あのダボダボのシャツとダボダボのパンツとベースボールキャップを被って腰を屈めてストリートを闊歩したいたナインティーズのヒップホップスタイルも,今や,小ぎれいに着飾って,ジュエリーなんかしちゃって,パンツもタイト,シャツもタイト,キャップも高価,もうかつての「土臭さ」はなくなりつつありますけれど,以下のメアリーのパフォーマンス映像では,ミーゴスもカーディBもリスペクトの目でメアリーを見る映像が映し出されます。この姿はMTVでは観られないんじゃないかなぁなんて思います。
Kanye West feat. Sia & Vic Mensa – “Wolves” (Verse 2)
カニエ・ウェスト feat. シーア&ヴィック・メンサ 「ウルヴス」(ヴァース2対訳)
[Verse 2: Sia]
I was lost and beat up
Turned out, burned up
You found me, through a heartache
Didn’t know me, you were drawn in
I was lost and beat up
I was warm flesh, unseasoned
You found me, in your gaze
Well, I found me, oh, Jesus
I was too wild, I was too wild
I was too wild, I was too wild
I was too wild, I was too wild
2019年8月26日(日)に開催された米MTVのVideo Music Awardsより,ハイライトをいくつかピックアップして,以下に掲載しておきます。5年後これを見返して,懐かしい感情を抱けますように。
Taylor Swift
まずは,テイラー・スウィフトです。2曲めに披露するバラード曲を演奏して,ここまで声援が挙がる人は,現ポップス界では他にいらっしゃらないですね。誰もがヒップホップやEDM系の曲を制作している中,ある意味,時代とは逆方向に進むともいえるテイラー・スウィフトのこの曲「Lover」は,人間がもつ心の普遍的な琴線に触れる名曲だと云えるでしょう。
Missy Elliott
やってきました。ミッシー・エリオットです。今夜最高のステージはミッシーが奪い去ったといえるでしょう。2曲めの「The Rain (Supa Dupa Fly)」は1997年リリースの曲ですけれど,一片足りとも古びていない!また,MTV VMAs終了後の数日間(いや,今も?)ツイッターやインスタグラムで騒がれ続けたこの人(↓)(=Alyson Stoner)は,ミッシーが2002年にシングル曲「Work It」をリリースした際,ミュージックビデオで踊っていたあの女の子です。当時この子はわずか9歳。17年ぶりに,ミッシー・エリオットと同曲で共演を果たしたというのは,なんとも感慨深いことです。
Missy Elliott’s Acceptance Speech of “Michael Jackson Music Video Vanguard Award”
最後にミッシー・エリオットが女性初「マイケル・ジャクソン・ビデオ・ヴァンガード賞」を受賞した際のスピーチで締めくくります。20年以上もミッシーは「ヒップホップダンス界」の大御所としてその才能及び貢献を音楽界のために尽くしてきました。それがようやくここで大いなる賞の贈呈とともに一つの実を結んだといえます。ミッシー・エリオットが本スピーチの中で,感謝している人リストに連なる人物を聞くだけで,どれだけミッシーは謙虚な人であるかということが伺い知ることができます。最後にミッシーが感謝する人(たち)を挙げたところで,ステージも湧き上がります。それではじっくり聴いてみてください。
Kanye West feat. Sia & Vic Mensa – “Wolves” (Verse 1)
カニエ・ウェスト feat. シーア&ヴィック・メンサ 「ウルヴス」(ヴァース1対訳)
[Verse 1: Kanye West]
Lost and, found out
Turned out, how you thought
Daddy, found out
That you turned out, how you turned out
If mama knew now
How you turned out, you too wild
You too wild, you too wild
You too wild, I need you now
Love you, got to
Love you, love you
Found you, found you
Right now, right now
Right now, right now
If your mama knew how
You turned out, you too wild
You too wild, you too wild
You too wild, and I need you now
Lost in… my doubt
Kanye West feat. Ty Dolla $ign – “Real Friends” (the whole verses)
カニエ・ウェスト feat. タイ・ダラー・サイン「リアル・フレンズ」(全ヴァース対訳)
[Verse 1: Kanye West]
Real friends, how many of us?
How many of us, how many jealous? Real friends
It’s not many of us, we smile at each other
But how many honest? Trust issues
Switched up the number, I can’t be bothered
I cannot blame you for havin’ an angle
I ain’t got no issues, I’m just doin’ my thing
Hope you’re doin’ your thing, too
I’m a deadbeat cousin, I hate family reunions
Fuck the church up by drinkin’ at the communion
Spillin’ free wine, now my tux is ruined
In town for a day, what the fuck we doin’?
Who your real friends? We all came from the bottom
I’m always blamin’ you, but what’s sad, you not the problem
Damn I forgot to call her, shit I thought it was Thursday
Why you wait a week to call my phone in the first place?
When was the last time I remembered a birthday?
When was the last time I wasn’t in a hurry?
[Bridge: Ty Dolla $ign]
Tell me you want your tickets when it’s gametime
Even to call your daughter on her FaceTime
Even when we was young I used to make time
Now we be way too busy just to make time
Even for my…
[Chorus: Kanye West, Kanye West & Ty Dolla $ign]
Real friends
I guess I get what I deserve, don’t I?
Word on the streets is they ain’t heard from him
I guess I get what I deserve, don’t I?
Talked down on my name, throwed dirt on him
[Verse 2: Kanye West & Ty Dolla $ign]
I couldn’t tell you how old your daughter was
Couldn’t tell you how old your son is
I got my own Jr. on the way, dawg
Plus I already got one kid
Couldn’t tell you much about the fam though
I just showed up for the yams though
Maybe 15 minutes, took some pictures with your sister
Merry Christmas, then I’m finished, then it’s back to business
You wanna ask some questions ’bout some real shit?
Like I ain’t got enough pressure to deal with
Please don’t pressure me with that bill shit
Cause everybody got ’em that ain’t children
Oh you’ve been nothin’ but a friend to me
Niggas thinkin’ I’m crazy, you defendin’ me
It’s funny I ain’t spoke to niggas in centuries
To be honest, dawg, I ain’t feelin’ your energy
Money turn your kin into an enemy
Niggas ain’t real as they pretend to be
[Verse 3: Kanye West & Ty Dolla $ign]
Lookin’ for all my real friends
How many of us? How many of us are real friends
To real friends, ’til the reel end
‘Til the wheels fall off, ’til the wheels don’t spin
To 3 A.M., callin’
How many real friends?
Just to ask you a question
Just to see how you was feelin’
How many?
For the last you was frontin’
I hate when a nigga text you like, “What’s up, fam? Hope you good”
You say, “I’m good, I’m great,” the next text they ask you for somethin’
How many?
What’s best for your family, immediate or extended
Any argument, the media’ll extend it
I had a cousin that stole my laptop that I was fuckin’ bitches on
Paid that nigga 250 thousand just to get it from him
Real friends
Huh?
[Chorus: Kanye West, Kanye West & Ty Dolla $ign]
Real friends
I guess I get what I deserve, don’t I
Word on the streets is they ain’t heard from him
I guess I get what I deserve, don’t I
Talked down on my name, throwed dirt on him
現代ヒップホップには欠かせないシティ・ガールズ(City Girls)やカーディB(Cardi B)といったラッパーたちもさることながら,今年は「女子ラッパーの年(Year of the Female Rappers)」と呼んでいいほど,あらゆるエリアからの女性ラッパーがメインストリームへの登場を果たしてきました。
シティ・ガールズに関しては,昨年ドレイクが楽曲「In My Feelings」をリリースしたことにより,一躍有名となりました。これまではフロリダ州の一部でしか名を馳せていなかったこの女子ラッパーユニットは,ドレイクのこの曲のおかげで世界的名声を勝ち得たともいえます。
2. Salt-N-Pepa (1986)←※塩(ソルト)はシェリル・ジェイムス,胡椒(ペッパ)はサンドラ・デイトンです。二人はクイーンズの短大(Queensboro Community College)で看護学を学ぶ学生時代に出会い,ラップユニットを結成しました。シェリルはブルックリン出身。サンドラはクイーンズ出身。もともとはスーパーネーチャー(Super Nature)というユニット名で,3人目がいました。専属DJのDJ Spinderella(スピン+シンデレラ=スピンデレラ)です。Salt-N-PepaはRoxanne Shanteと並んで,ヒップホップの創設時代に必ず名前が挙がる人物です。
3. MC Lyte (1988)←※自身の名前に“MC”という呼称を付ける数少ないMCの一人です。しかも女性で。しかもですね,女子ラッパーで“MC”という呼称を入れているのは,MCライトだけです。男子ラッパーでは,MC Ren, MC Eigt, MC Shan, MC Jin, MC Hammer等いますが,女性ではMC Lyteのみ。女子ラッパーというより,女子リリシストと呼べるほど凛々しいラップをする彼女。MC Lyteの曲で「Poor George」というのがあります。ジージー(Young Jeezy)が楽曲「Shake Life」でサンプリングしておりました。名曲ですので,「Poor George」(1991)を聴いてみてください。しかしそれにも,さらに元ネタがありまして,それがTotoの「Georgy Porgy」(1978)でした。
4. Queen Latifah (1989)←※知っていますか?クイーン・ラティファとニッキー・ミナージュが映画『Barbershop: The Next Cut(邦題:バーバーショップ3 リニューアル!)』で共演していることを。女性ヒップホッパーというジャンルを象った一人の女性(=ラティファ)が,今の世代のバービー・ドールたちを産み出した若き女子ラッパー(=ニッキー)とともに「世代を超えて」共演している映画があるということを。ニッキーは今,アップル・ミュージック(Apple Music)専用ラジオ局で,Queen Radioというラジオ局を持っておりますが,おおもとの“Queen”はこの人=Queen Latifaでした。ラティファとニッキーがこうして多面的に繋がっていることにより,ラティファの音楽がいつの時代も生き続けるように祈るばかりです。
5. Mary J. Blige (1989)←※ヒップホップ界ではいろいろな人が「クイーン」の名を好き勝手に使っておりますが,この人こそが正真正銘「元祖クイーン」です。メアリーは次に出るミッシーとともに,黒人女性にとって非常に重要なアイコンでしょう。メアリーの名盤『What’s the 411』は,女子ラップではなく,女子とか男子とかカンケーなく,ヒップホップ音楽(そしてR&B音楽)における最も重要なアルバムです。日本国民全員が一家に一枚持っておくべき最重要アルバムです。今晩の夕ご飯の時には,TVは消して,DVDも消して,Netflixも消して,『What’s the 411』をかけてみてください。ハマります。一度ハマれば,二度と戻れない。一度ブラックにハマれば,二度と戻れない(“Once you go black, you can never go back.”)。入り口は『What’s the 411』です。全てはここで始まります。そんなアルバムを作ったメアリーは次のミッシーとともに歴史的人物として歴史(少なくとも黒人女性の歴史)の教科書に載るべき人物でしょう。日本の小学校の歴史の授業で,「メアリーがいたから〇〇」や「ミッシーがいたから〇〇」の〇〇には,この二人により救われた人々の名前が入ります。メアリーの何がすごいかって,彼女の苦しみと涙に満ちた歌詞に共感する女子が当時も,今も,ほんとうに多くいらっしゃるということです。時代は変われど,メアリーの歌詞と歌に共感する人は絶えないですね。それだけ女子にとって普遍的な音楽を創り続けているメアリーは偉大な人物です。
7. Monie Love (1990)←※UK出身です。英国はロンドン生まれ。名前の読み方は「マニー・ラヴ」ではなく「モゥニー・ラヴ」。彼女の「Monie in the Middle」を聴いてみて下さい。「彼女は誰だ!」「モゥ,モゥ,モゥニー・インダ・ミド」「ダ,ダ,ダ,ミド!」って言ってます。
8. Da Brat (1992)←※ヒップホップ界最も重要なプロデューサーの一人であるジャーメイン・デュプリ(Jermaine Dupri)率いるソー・ソー・デフ(So So Def)所属の女子ラッパー。高い声に,早いラップが売り。ノリは良く,ツカミは完璧。パッパッパとしたテンポのいいラップが好きな人なら,すぐに好きになれます。彼女のアルバム『Funkdafied』はオススメ。ジャーメイン・デュプリは数えきれないほどの名曲を残しておりますが,Lil’ Kim, Left Eye Lopes, Missy Elliott, Da Brat & Angie Martinezとのコラボレーション曲「Not Tonight」の中でもいちばんハードなラップをカマしているのはDa Bratでした。
9. Rah Digga (1993)←※バスタ・ライムス率いるフリップモード・スクワッド軍団のファースト・レディ!女子なのにタフ.タフ,タフ。タフな女子ラップを聞きたければ,とにかく彼女のアルバムを聞くべし。彼女が尊敬するラッパーは,KRS-One,Rakim,Kool G Rapと,ヒップホップ界でもハードなラップをするベテラン勢を挙げております。メジャーデビューは,当時Q-ティップに才能を見出さられ,バスタ・ライムスを紹介されたことに始まります。
10. Lauryn Hill (as The Fugees) (1994)←※下記12.のエリカ・バドゥもそうですが,ローリン・ヒルについても日本の女子ヒップホッパーの間で特に人気がありますね。彼女のグラミー賞受賞のアルバム『Miseducation of Lauryn Hill』はあまりにも有名です。それまでは,女子ラッパーが「Album of the Year(最優秀アルバム)」を受賞したことはありませんでした。歴史上初めて最優秀アルバム(ヒップホップ部門でもなく,ラップ部門でもなく,女性アーティスト部門でもなく,全てを包括した中で,男女関係なく,ジャンル関係なく,最も優秀なアルバム)は,ヒップホップ,しかも女性のヒップホップとしては,初めての快挙でした。そういった意味では,ヒップホップ史のみならず,音楽史で非常に重要なアルバムでしょう。
11. Lil’ Kim (1994)←※冒頭でニッキー・ミナージュは現代女子ラッパーのおおもとを築き上げた人物だと云いました。ニッキーがそうであれば,リル・キムが成し遂げたのは,ニッキーが成し遂げたものとの性格(性質)は似ているかもしれません。また,90年代のヒップホップで最も有名な女子ラッパーとも呼べるかもしれません。名付けて女子OG。女子のオリジナル・ギャングスタ。ブルックリン出身で,ビギーの愛人。レコードでもビギーとのセックスをそのまま曲に流し,下品なラップ曲を厭わずに,世に出しました。ヒップホップに恥など無関係,と言わんばかりに。このおかげで,あらゆる女性が自由を勝ち取ったことでしょう。女子のエロを解放してくれたラッパー,それがリル・キムでした。
12. Erykah Badu (1994)←※この人が成した功績に関しては,ここだけでは語りきれないでしょう。エリカ・バドゥは日本のヒップホッパー女子にも非常なる人気を誇っております。わたくしがここで語るのはおこがましいことですが,ひとつ彼女について言えるとすれば,エリカ・バドゥほどヒップホップに創造性を与えたアーティストは男女ともにいない,ということでしょう。彼女ほどヒップホップの可能性をさぐった人はいませんでしたし,その可能性をどこまでも挑戦し続けた。実践的な面でも,スピリチュアルな面でも。そしてヒップホップそのものと肉体面での関係を持ち,純粋にそれを愛した。肉体のエロさという極致とスピリチュアルな愛というもののもう片方の極みを昇華させたアーティストは男のアーティストを探してみてもめずらしいでしょう。エリカほど理解不能な歌手は今の時代はあらわれにくくなっていますねえ。
13. Amil (1994)←※アミルの特徴的な声は忘れられません。今はどこにいるのかわかりません。でも彼女の声だけはこの耳にこばりついています。ケガが治りかけた瘡蓋のように。ジェイZの「Can I Get A…」を聴いてみてください。あと,1998年に日本でデフ・ジャム関係のアルバム(国内盤)を入手すると,「次回Def Jamレーベルからリリース予定の新盤!」ということでライナーノーツにおまけでチラシが入っていました。その中で,アミルのアルバム『All Money Is Legal』が近々リリース予定!として記載がありました。そしてそれがリリースされたのは2000年8月29日。リードシングル「I Got That」では当時まだデスチャに所属していたビヨンセをフィーチャリング。デフ・ジャムのみならず,Roc-A-Fellaレーベルの辿った歴史として,重要な女子ラッパーです。
15. Foxy Brown (1995)←※フォクシーは当時,Nas達とThe Firmというスーパーヒップホップユニットを結成しておりました。その彼女が,ジェイZの楽曲「Ain’t No Nigga」にフィーチャリングされ,一躍有名に。デビュー作の『Ill Na Na』ではその特徴的な声で,ヒップホップ界に「新しい旋風」を巻き起こしました。リル・キムとは違った趣向で切り口,角度でヒップホップに登場しました。当時は,「リル・キム派」か「フォクシー・ブラウン派」か,もしくは第三の波「ミッシー派」か,その三大帝王の指に入るほどメジャーなフィメール・ラッパーでした。
16. Ms. Jade (1995)←※個人的にはとても好きな女子ラッパーです。彼女を知ったのは2001年でした。当時ニューヨークのストリートで売られていたミックステープにMs. JadeとJAY-Zのコラボ曲が収録されていて(「Count It Off」という曲です),あれがヒップホップこてこてのクラブ(当時NYCで有名であったClub Speed(ヒップホップ伝説の男DJ Mister Ceeもここでスピン!))で流され,「おぉ,これミックステープで聴いた曲や!」とテンション上がったのは記憶にあります。Ms. Jadeのフィリーをレペゼンする,ドスの聴いた声で低音ベースがガンガン聴いたティンバランド・ビーツは超マッチ。「Count It Off」はあらゆる意味で名曲ですので,聴いてみてください。
21. Vita (1998) ←※当時ジャ・ルールと同胞マーダーINC.に所属していた女子ラッパー。ジャの「Put It On Me」のPVがMTVで流れ,そこでジャの相方としてラップしていた細身の彼女。
22. Remy Ma (2000)←※Ne-Yo(ニーヨ)とのコラボレーション「Feels So Good」はあまりにも有名な楽曲。当時ミックステープを売りまくっていた「アルファベットラッパー」ことPapoose(パプース)と結婚。パプースはオフィシャル・アルバムを出す出す出す,と言っていて,ずっと待ち続けていたが,いまだに出していない。(蛇足ですが「アルファベットラッパー」といっても馬鹿にすることなかれ。アルファベットを「A」から「Z」まで順番に韻を踏んでいくんです。当時ニューヨークのHOT97で聴いたときは,「スゲエッ!こんなん初めて聴いたわ!」と度肝を抜かれました。後に同胞ブルックリン出身のファボラスも「C→G」までアルファベットラップをやって,それもなかなかよかったです。)