カニエ・ウェストのアルバム『The Life of Pablo』より,楽曲②対訳「Father Stretch My Hand, Pt. 1」。

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Kanye West feat. Kid Cudi – “Father Stretch My Hands, Pt. 1”

[Intro: Pastor T.L. Barrett / Choir & Future]
You’re the only power (power)
You’re the only power that can
You’re the only power (power)
You’re the only power that can
Ohh, ohh, ohh, other…
If young Metro don’t trust you I’m gon’ shoot you

(イントロ:T.L.バレット牧師/聖歌隊&フューチャー)
あなたが唯一のパワー(パワー)
あなたが唯一のパワー
あなたが唯一のパワー(パワー)
あなたが唯一のパワー
オゥ,オゥ,オゥ,他は・・・
「ヤング・メトロ信じないなら,テメエ撃っちまう」

[Pre-Chorus: Kid Cudi & Pastor T.L. Barrett / Choir]
Beautiful mornin’, you’re the sun in my mornin’, babe
Who can I turn to?
Nothin’ unwanted
After all, who can I turn to?
Beautiful mornin’, you’re the sun in my mornin’, babe
If I don’t turn to you
Nothin’ unwanted
No other help I know, I stretch my hands

(プレ・サビ:キッド・カディ&T.L.バレット牧師/聖歌隊)
爽やかな朝,あなたは朝日のようさ,ベイビー
誰に頼ればいい
まさに求めていたもの
結局信頼できるのは
爽やかな朝,あなたは朝日のようさ,ベイビー
あなたに頼れなきゃ
まさに求めていたもの
他には誰もいない,だから両手を広げる

[Chorus: Kanye West & Pastor T.L. Barrett / Choir]
I just wanna feel liberated, I-I, na-na-na
Who can I turn to?
I just wanna feel liberated, I-I, na-na-na
After all, who can I turn to?
If I ever instigated, I am sorry
If I don’t turn to you
Tell me who in here could relate, I-I-I
No other help I know, I stretch my hands

(サビ:カニエ・ウェスト&T.L.バレット牧師/聖歌隊)
解放されたいのさ,ナナナ
誰に頼ればいい
解放されたいだけなのさ,ナナナ
結局信頼できるのは
けしかけたように思っていたら,悪かった
あなたに頼れなきゃ
共感してくれる人はいるかい
他には誰もいない,だから両手を広げる

[Verse: Kanye West & Kelly Price]
Now, if I fuck this model
And she just bleached her asshole
And I get bleach on my T-shirt
I’ma feel like an asshole
I was high when I met her
We was down in Tribeca
She’ll get under your skin if you let her
She’ll get under your skin if you-uh
I don’t even wanna talk about it
I don’t even wanna talk about it
I don’t even wanna say nothin’
Everybody gon’ say somethin’
I’d be worried if they said nothin’
Remind me where I know you from
She lookin’ like she owe you some’n
You know just what we want
I wanna wake up with you in my…
I wanna wake up with you in my…

(ヴァース:カニエ・ウェスト&ケリー・プライス)
俺がモデルの女を抱けば
その女は漂白剤で,自分のケツの穴を洗うだろう
そして俺のTシャツに漂白剤がぶっかかる
まるで気分はクソったれ
カノジョに会った時,ハイになってた
トライベッカでデートして
放っておくと,メロメロになっちまうぜ
放っておくと,メロメロになっちまうぜ
もう話したくもない
もう語りたくもない
もう喋りたくもない
周りはいっつも何か言ってる
っつか,何か言ってもらわないと逆に不安
キミとはどこで出会ったっけ
どこかでキミに貸しを作ったっけ
とっておきの案があるのさ
俺のベッドでキミと目覚めたい
「俺のベッドでキミと目覚めたい」

[Pre-Chorus: Kid Cudi, Pastor T.L. Barrett / Choir & Kelly Price]
Beautiful mornin’, you’re the sun in my mornin’, babe
Who can I turn to?
Beautiful mornin’
Nothin’ unwanted
After all, who can I turn to?
Beautiful mornin’, you’re the sun in my mornin’, babe
If I don’t turn to you
Nothin’ unwanted
No other help I know, I stretch my hands

(プレ・サビ:キッド・カディ,T.L.バレット牧師/聖歌隊&ケリー・プライス)
爽やかな朝,あなたは朝日のようさ,ベイビー
誰に頼ればいい
爽やかな朝
まさに求めていたもの
結局信頼できるのは
爽やかな朝,あなたは朝日のようさ,ベイビー
あなたに頼れなきゃ
まさに求めていたもの
他には誰もいない,だから両手を広げる

[Chorus: Kanye West & Pastor T.L. Barrett / Choir]
I just wanna feel liberated, I-I, na-na-na
Who can I turn to?
I just wanna feel liberated, I-I, na-na-na
After all, who can I turn to?
If I ever instigated, I am sorry
If I don’t turn to you
Tell me who in here could relate, I-I-I
No other help I know, I stretch my hands

(サビ:カニエ・ウェスト&T.L.バレット牧師/聖歌隊)
解放されたいのさ,ナナナ
誰に頼ればいい
解放されたいだけなのさ,ナナナ
結局信頼できるのは
けしかけたように思っていたら,悪かった
あなたに頼れなきゃ
共感してくれる人はいるかい
他には誰もいない,だから両手を広げる

(文責:Jun Nishihara)

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Guest Versesのコーナー:カニエ・ウェスト(ゴーストフェイス・キラーの「Back Like That (Remix)」より)

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このコーナーでは,カニエ・ウェストが人の曲にヴァース(歌詞)を提供している曲を紹介します。
本日ご紹介する楽曲は,Ghostface Killah feat. Ne-Yo & Kanye West で「Back Like That (Remix)」です。

[Verse: Kanye West]
I’m high powered, put Eva Mendes to sleep
Yo pardon, that bitch been on my mind all week
But back to you, MAC gloss chick, you’re way fit
How you have everything in this world and waste it
Prince told me it’ll be okay
I’m so sick like Ne-Yo say
I’m laid back, like neo-soul
I holla back at this Creole ho
She from the N.O., but she never told me “N-O” so
We at the spot to chill, where the food get grilled
She ordered the Kobe beef like Shaquille O’Neal
Second I walked in, the whole room got still
I don’t know how to put this, but I’m kind of a big deal
And she conceited, she got a reason
She got her hair did, she got her weave in
And I’mma sweat that out by the evening
You, I don’t sweat that now, I got a new

(ヴァース:カニエ・ウェスト)
精力アゲアゲ,俺とヤり過ぎで,エヴァ・メンデスもクタクタ
失礼しやした,今週ずっとカノジョが頭から離れない
でもキミのリップグロスがタマんない,ボディラインもピチピチだし
世のどんな男でもキミなら手にできるのに,この俺を放っておくのかい
プリンスに言われた,「気にすんな」って
ニーヨが言ってた,「心の病い(ソー・シック)さ」って
いい気分でくつろいで,雰囲気はネオ・ソウル
俺が声かけたい女の子の血は,クレオール
ニューオーリンズ出身,一度も断ったことがない
お決まりのスポットで,グリルで肉焼いて,一緒にチルして
神戸牛をオーダー,まるでシャキール,コービーじゃないぜ
俺のお出まし,部屋中のみんな一瞬フリーズ
言わせてくれるか,俺ってね,ちょっぴりセレブなの
カノジョはちょっぴり自惚れてる,でもあのボディじゃ無理もない
髪型キメて,ウェーヴ風にして
でも今晩はキミと汗だくで髪はクチャクチャ
キミにはもう冷や汗かかない,みっけ,新しい女の子

カニエ・ウェストの才能は,ビートプロデュースにとどまることなく,ちゃんとライム・スキルにも生かされています。

たとえば,冒頭の4行です。このラインでは,常日頃からヒップホップと接している人にはたまらないカラクリが隠されています。もともと,これはヒップホップ史に残る最高のリリシストの1人=レイクウォンがリリースしたヒップホップの歴史的名曲「Ice Cream」の歌詞からです。同曲でfeat.されているゴーストフェイス・キラーのヴァースをもじって,カニエ・ウェストがラップしています。これはカニエからゴーストフェイスに送る,最高のリスペクトです。

おおもとの歌詞はこうでした。

原曲のヴァースです。
I’m high-powered put Adina Howard to sleep
Yo pardon, that bitch been on my mind all week
Back to you Maybeline Queen let’s make a team
You can have anything in this world except C.R.E.A.M

精力アゲアゲ,俺とヤり過ぎで,アディーナ・ハワードもクタクタ
失礼しやした,今週ずっとカノジョが頭から離れない
でもキミはコスメの女王,俺と一緒にチームを組もうぜ
世のどんなものでもあげちゃうよ,C.R.E.A.M(Cash Rules Everything Around Me)以外はね

こちらが現代によみがえる,カニエ・ウェスト版です。
I’m high powered, put Eva Mendes to sleep
Yo pardon, that bitch been on my mind all week
But back to you, MAC gloss chick, you’re way fit
How you have everything in this world and waste it

精力アゲアゲ,俺とヤり過ぎで,エヴァ・メンデスもクタクタ
失礼しやした,今週ずっとカノジョが頭から離れない
でもキミのリップグロスがタマんない,ボディラインもピチピチだし
世のどんな男でもキミなら手にできるのに,この俺を放っておくのかい

こういう風に「元ネタの曲から一部の歌詞をもじる」というのは,実際ヒップホップを常日頃から聴き込んでいる人でないと,気づかないものです。現代の曲に,さりげなく(subtle)昔の曲をほのめかしている,というのは,常に明示的(clear cut)で,なんでも堂々と(in your face)はっきり見せるアメリカでは珍しいことです。カニエ・ウェストはシカゴ市の芸術大学を卒業していますが,和にも通ずる日本的なこの「さりげなさ(subtlety)」というのを曲中にちりばめている,というのは,アメリカの芸術もだんだんと変わってきたことを示しています。いままではアメリカでは白人が大多数(majority)を占めていましたが,現在はそれが逆転し始めている州も出てきております。これまで通例と思われてきた「白人のアメリカ」というイメージや,「明示的で,大きくて,わかりやすく,堂々としたものが一番良い」と当然のように思われてきたアメリカが変わりつつあります。そうした中で,カニエ・ウェストに共感するアメリカ人が増えてきたのも確かです。トランプ大統領がここまで不人気なのもうなずけます。もしもこれが1990年代であれば,トランプ大統領の支持率もここまでは低くはなかったはずです。また,カニエ・ウェストもここまで受け入られてなかったでしょう。

ますます多様・多彩化(diversify)する現代のアメリカで,多民族・多人種が「共感しあえる同じ土壌」(empathic common ground)を見つけるというのはとても大切なことであるはずです。その「共感しあえる同じ土壌」のひとつがカニエ・ウェストの音楽であっても良いと思うのです。

(文責:Jun Nishihara)

元ネタの曲を知る④:ゴーストフェイス・キラー⇄ウィリー・ハッチ

ヒップホップの黄金時代とは,まさにこの曲のことです。黄金時代を築き上げたウータン・クランのメンバーであるゴーストフェイス・キラーが当時デビューしたての若手R&BシンガーのNe-Yoと組んでリリースした曲です。

2006年2月28日にリリースされたこの曲=「Back Like That」の美しきピアノメロディを聴いてみてください。ゴーストフェイスの迫真のラップと対照的(コントラスト)で,素晴らしい相乗効果を生み出しています。

Ghostface Killah feat. Ne-Yo – “Back Like That”

そしてこの曲の元ネタとなっているのは,1976年にリリースされた,ウィリー・ハッチ(Willie Hutch)の「Come Back Home」という曲です。聴き比べてみてください。

Willie Hutch – “Come Back Home”

ゴーストフェイスの感情的な「泣きのラップ」と,ウィリー・ハッチの「泣きの歌声」が世代を超えて響き合っているように感じませんでしょうか。

次は,この同曲に「あの人」が加わったリミックス(REMIX)バージョンを紹介いたします。

(文責:Jun Nishihara)

アレサ・フランクリンに捧げた記事(米TIME誌より)

店頭で何気なく手にした米TIME誌に,アレサ・フランクリンの記事が載っていた。「アレサ・フランクリンが歌い始めた時,月と太陽が輝きだした」(When Aretha Franklin sang, out poured the sun and the moon.)という一文で始まる。英語は倒置法を使用している。冒頭の一文にとっておきの用法だ。「アレサの声は希望を纏った哀しみであり,喜びであり,人生に完璧なものなど何も無いという達観であった。しかし,その声は,いつだって光を放ち,輝きを解き放っていた。」(Her voice was optimism shaded with sorrow, joy tempered by the understanding that nothing in life can be perfect – but above all it was a sound that both absorbed and radiated light.)

この記事は,米TIME誌に所属する映画評論家,ステファニー・ザカレック(Stephanie Zacharek)が書いた記事だ。文中に“explosive”(爆発的)という単語を使っている。なにを表現しているかといえば,まさに,アレサの声だ。

「アレサ・フランクリンは,ビリー・ホリデーや,ニナ・シモン,そしてマハリア・ジャクソンたちが築き上げたいしずえから生まれた歌手である。また,その逆に,アレサ・フランクリンがいなければ,ドナ・サマーも,シャカ・カーンも,ホイットニー・ヒューストンもいなかっただろう。そしてジャネル・モネやリアーナ,そしてビヨンセも生まれていなかった。」(Franklin emerged from the multiple paths forged by Holiday, Nina Simone and Mahalia Jackson. Without her there could have been no Donna Summer, Chaka Khan or Whitney Houston; nor would there be a Janelle Monae, a Rihanna or a Beyonce.)

先の文に不定冠詞の“a”を使い「a Janelle Monae, a Rihanna or a Beyonce」と書いているのは,まさに逆説的であるが,複数を意味しているためである。「ジャネル・モネのようなアーティストたちも,リアーナのようなアーティストたちも,ビヨンセのようなアーティストたちも」アレサがいなければ生まれていなかった,というニュアンスを不定冠詞はもたらしてくれている。

「表現をすることに長けており,また,(表現を)抑えることに優れているアーティストであった。」(She was an expert at both expressing and hiding.)

記事全文はこちらで読むことができます。
http://time.com/5367138/aretha-franklin-appreciation/

以下↓は1968年6月28日付米TIME誌の表紙です。
aretha-franklin-cover

以下↓は1961年コロンビア・レコーズから初リリースしたLPジャケです。
Aretha-Franklin-Columbia-Debut-1961

この記事で,評論家であるステファニー・ザカレックは最後にこう書いています。

「この長い歴史の中で一瞬のあいだ,われわれはクイーン(アレサ)とともに生きる恩恵に預かった。この国のもっとも過酷で困難を極める時代に,アレサ・フランクリンはその声でわれわれに歌を授けてくれた。そして“彼女の歌”を標(しるべ)に,われわれはあとにつづいた。アレサ・フランクリンはわれわれに多くのことを教えてくれた。彼女の歌声を聴く喜びとともにありながら。」(Yet for a time, this sweet land of liberty was graced with a queen. She sang her way through one of our nation’s most charged and challenging eras, and we followed the sound of her voice. She taught us so much, just because it was pure joy to listen.)

こういった文章を読んでいつも気づかされるのであるが,彼女のようなスーパースターと「同じ時代」に「同じ空気を吸って生きることができた」ということに,ほんとうに感慨深いものを感じる。アレサ・フランクリンと同じ時代に生きられたというのは,当然のことではないし,とてもラッキーなことであると思っている。糸井重里さんがビートルズを語っていたときに言っていたのを憶えているが,ビートルズが活動していたのは8年と,意外と短い。しかしその8年間のビートルズを,10代の頃の糸井重里は,リアルタイムで体験していた。今の若者は(若者といわなくても,30代や40代でも)もうビートルズが活動を終えたあとで,「アーカイブとしてぜんぶいっぺんに聴いているわけ」なのである。そう,アーカイブとしてぜんぶいっぺんに聴いている,というのは,「明日ビートルズの新しいアルバムが出るぜ!」とか,「明日ビートルズのライヴコンサートに行ってくるぜ!」とか,もう無いということだ。だって,もうアルバムは全部出てしまっているし,あのワクワク感は,もう経験できない。リアルタイムで聴いていた人は,そのワクワク感を,リアルタイムで経験していたということだ。それをわれわれは,アレサ・フランクリンで,経験できていたんだ。

糸井重里さんは,ビートルズについてこう語っていました。

「まあ、あれだ、ビートルズに影響を受けたり
憧れたりした人はものすごくたくさんいてね、
たとえ何年経ったとしても、
その人たちのなかには「ビートルズ」が
脈々と血として流れていると思うんです。」

アレサ・フランクリンをリアルタイムで聴いていたわれわれの血には,たとえ黒人でなくとも,「アレサ・フランクリン」が脈々と流れているものなんです。

(文責:Jun Nishihara)

元ネタの曲を知る③:ジェイZ⇄ローズ・ロイス⇄ビヨンセ

前回はジェイZの名曲「Song Cry」の元ネタとなっている1976年の曲を紹介いたしました。

引き続いてジェイZの曲です。
ジェイの隠れた傑作である「Wishing On A Star」(1998年3月11日リリース)という曲を紹介します。「隠れた」というのは米国で公式にリリースされたジェイZのアルバムには,この曲は収録されたことがないからです。現時点(2018年9月時点)では,月額サービスのApple Musicでも聴くことはできません。

もともとこの曲は,ジェイZのアルバム『In My Lifetime Vol.1』のUK(英国)盤のボーナストラックとして収録されました。その後,日本では,ジェイZの『Chapter One: Greatest Hits』(2002年リリース盤)に収録され,聴くことができます。

聴き比べてみてください。

Jay-Z – “Wishing On A Star”

その元ネタがこちらです。
Rose Royce – “Wishing On A Star”

ジェイZはこの曲を1998年にリリースしましたが,その6年後,2004年にビヨンセが同曲をカバーしました。

こちらです。

Beyonce – “Wishing On A Star”

元ネタは,1978年にリリースされたローズ・ロイス(Rose Royce)という女性歌手の曲です。1978年の曲がこうして,20年の年月を経て,ジェイZにサンプリングされたことがよみがえり,その6年後にビヨンセがカバーしました。

まさにこれがヒップホップの醍醐味のひとつであります。古い曲が現代に“真新しく”よみがえり,これを聴いている老若男女が「おおもとの曲(元ネタの曲)」を探しに行く,また,探したくなる,見つけて,聴きたくなる,という欲を掻き立ててくれるものだと感じております。そうなると,たまらなくおもしろいです。

(文責:Jun Nishihara)

元ネタの曲を知る②:ジェイZ ⇄ ボビー・グレン

さて,このコーナーでは,現代のヒップホップ曲で起用されている「おおもととなっている曲ネタ」を紹介しています。

前回は,ドレイクがマライア・キャリーの曲をネタにした「Emotionless」⇄「Emotions」を紹介しました。

このように「もとのネタ」を知ることによって,ヒップホップのおもしろさが少しでも伝われば幸いです。

さて,今回はこんな曲を紹介します。

カニエ・ウェストよりも少し前に出現した異次元ビートメイカーにジャスト・ブレイズ(Just Blaze)というビート・プロデューサーがいます。カニエ・ウェストは「元ネタづかい」を世界中のヒップホップ界に広めたビートメイカーとして知られていますが,カニエが世に出るよりもずっと前に「元ネタあそび」をグヅグヅとアングラで温め続けてきたのは,ジャスト・ブレイズです。

ジャスト・ブレイズがプロデュースしたヒップホップ曲には,数々の名曲が生まれています。

その豊富なレパートリーの中から,ジェイZの名盤『The Blueprint』に収録されている楽曲(名曲!)「Song Cry」を取り上げます。

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この「Song Cry」は2001年9月11日(世界同時多発テロ事件と同日)にリリースされたアルバム収録楽曲ですが,この曲のおおもととなっている曲は,美しきまさに名曲(名曲をサンプリングにしたからこそジェイZの名曲が生まれたという,なんというビート・プロデューサーのセンス!)である,ボビー・グレン(Bobby Glenn)の1976年リリースの楽曲「Sounds Like A Love Song」を元ネタにしています。

それでは聴いてみましょう。

Bobby Glenn – “Sounds Like A Love Song”

(文責:Jun Nishihara)

元ネタの曲を知る①:ドレイク ⇄ マライア・キャリー

ヒップホップの楽しみ方の1つに「元ネタで遊ぶ」というものがあります。あるヒップホップ曲を聴いて,その曲に起用されているおおもととなっている曲ネタを探す,というものです。

ネタは時にメロディーであったり,ビートであったり,はたまたリリックであったりもします。

この元ネタを知ることによって,同じヒップホップ曲でも,たんなる平面的な音楽ではなく,奥深い,立体的な音に聞こえるようになってきます。

そこにはこれまで綿々と連ねられてきた歴史を感じることができます。それを知ってしまえば,その1曲はもはや「たんなる点」などではなく,遠いむかしから綿々とつづく「線状にある途中」の1曲として,「つながり」をその曲に感じることができるようになります。

イマドキの流行りに乗っかった「one hit wonder(一発屋)」のように聞こえる曲でさえ,その曲の「元ネタ」を知ればたちまち,「おっ,これはアノ曲か」と,つながりを感じることができるようになります。

このコーナーでは,現代のヒップホップにつながる「元ネタ」となっている曲を紹介します。元ネタとなる曲は,むかしの曲もありますが,けっして古い曲だけでなく,最近リリースされた曲もあります。

たとえば,こういうものです。

ついこのあいだ(2018年6月29日に)リリースされた,ドレイク(Drake)のニューアルバム『Scorpion』から収録楽曲「Emotionless」の元ネタとなっている曲=マライア・キャリー(Mariah Carey)の「Emotions」を紹介します。

ドレイクの「Emotionless」を聴いていただいた後に,元ネタとなっているマライア・キャリーの「Emotions」を聴いていただくと分かるかと思いますが,この曲は「リリックを元ネタにしたパターン」の曲です。

マライアが歌う下記の歌詞部分をループで回し,起用しています。

You’ve got me feeling emotions
Ayy, higher
Ahhhhhhh
You’ve got me fe–
You, ohhhh

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ドレイクがマライアの声を起用したり,アリーヤ(Aaliyah)の声とメロディを起用したりすることは今までもありました。特にアリーヤの声を起用したドレイクの曲は,どれも感慨深いものがあります。

こうして過去の偉大なる音楽が,現代のヒップホップを媒介としてよみがえります。

マライア・キャリー「Emotions」

(文責:Jun Nishihara)

マック・ミラー(Mac Miller)の追悼に代えて(その②)

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前回のお約束通り,マック・ミラー(Mac Miller)の楽曲「Frick Park Market」(対訳)をお届けします。

[Intro]
Uhh, let me get a turkey sandwich, uh lettuce tomato (bitch)

(イントロ)
ターキーのサンドイッチ1つ,レタスとトマトも入れてくれ(ビッチ)

[Verse 1]
My name Mac Miller, who the fuck are you
Well my crew too live but I ain’t Uncle Luke
And I ain’t no hipster, but girl I can make your hips stir
From Pittsburgh, smoke papers or a swisher
Welcome to the Cam Rellim chronicles
Looking out my monocle
I’m dodging obstacles, I gamble like the Bellagio
You cock-a-roach, I’m heroin cause everything I talk is dope
Type to leave it clean and fucking shiny word to Mop & Glo
Tryin’ to get a mansion ain’t nobody here gon’ find my room
Money gonna be green I guarantee you that my slide stay blue
So press play, I start from scratch and never use no template
The next day these losers always goin’ with whats trendy
My pen game is something these motherfuckers have never seen
All City Champion everybody is second string
No need to testify (testify) for the best is I (best is I)
And anybody in my way goin’ to be left to die

(ヴァース1)
俺の名はマック・ミラー,おまえは何様だ?
クルーはヤバいヤツら(2ライヴ),つってもアンクル・ルークじゃねえ
ヒップスターじゃないけど,君のお尻をグラグラ揺らす
ピッツバーグ出身,ハッパにシーシャを吸いまくり
ようこそ,「キャム・レリムのクロニクル」へ
片眼鏡(モノクル)から覗き込み
障害物を交わして,ベラッジオ・カジノのように賭けの人生
おまえはゴキ野郎,俺のラップ,ヘロインのように中毒系
俺が触ればクリーンでシャイニー,キラキラ輝くぜ
おっきな豪邸,じぶんの部屋が見つからねえ
カネの色は豊かなグリーン,滑り台(スライド)はいつもブルー
PLAYボタン押しな,オリジナルを届けて,型にはハマらない
負け犬どもは,トレンドに流されてばっかだし
俺のペンゲーム,コイツら見たことないってビビってる
そこらじゅうでチャンピオン,他の連中,しょせんは二流
宣言なんかいらねえ,勝ちは明らか,それは俺
俺の邪魔するヤツらは,野垂れ死ぬ

[Hook]
I’mma feed the world you can put it on my tab
Run until my legs go numb, I don’t plan on looking back
Anything you need you can find it at the market
If you don’t hold me down, for all I care, you can starve bitch
I’mma feed the world you can put it on my tab
Run until my legs go numb, I don’t plan on looking back
Anything you need you can find it at the market
Anything you need you can find it at the market

(サビ)
俺が世界を食わせてやる,勘定は,つけといてくれ
足が麻痺するまで走り続け,後ろは振り返らない
必要なものならなんでも,ここのマーケットで手に入る
共感できねえヤツは,カンケーねえ,飢え死にすればいい
俺が世界を食わせてやる,勘定は,つけといてくれ
足が麻痺するまで走り続け,後ろは振り返らない
必要なものならなんでも,ここのマーケットで手に入る
必要なものならなんでも,ここのマーケットで手に入る

[Verse 2]
I got my own stickers now so literally I’m everywhere
Hundred different shoes still feel the need to cop a fresher pair
These motherfuckers treat me like it’s just my second year
Fool you better get prepared
Don’t know ‘bout you but all my rhymes is deadly here
Frick Park Market where we kicking out the garbage
Sick bars I’ve been a boss so stick around and watch it
Didn’t fit around no college campus, chilling writing on top of planet Earth
Fuck who’s first, It’s just bout who the hardest
On my own two, fuck who’s saying different
Every time I rhyme I get that Punxsutawney feeling
I’m the starter you the fill in
You a martyr I’m just killing
Getting harder with each time I write
Wish I could rewind last night
I had so much fun just kickin’ it and goin’ in
Don’t call me Malcolm if you didn’t fuckin’ know me then
And if you lonely girl I could be your only friend
You got some shit to say I suggest you hold it in

(ヴァース2)
俺のブランドのステッカーもできた,だから文字通り,世界進出だ
靴なら100足以上ある,だけどそれでも,まだフレッシュな靴が必要だ
俺のこと2年生のように下級扱いしてるヤツら
愚か者,覚悟しとけ
おまえのは知らねえが,俺のライムは百発百中
場所は「フリック・パーク・マーケット」,ゴミ箱バンバン蹴飛ばして
イカレた韻を踏み,はじめっからボス,ちょいと見ていきな
カレッジ・キャンパスは合わなかった,だからこの大地でラップを書いた
誰が1番になってもいい,だが最高にハードなヤツになってやる
両足でしっかり地に足を付け,反対するヤツは糞食らえ
ライムを繰り出せば,地元のフィラデルフィアをレペゼン気分
俺がメインコース,おまえは単なる「つなぎの曲」
おまえが殉教者なら,俺はライムの殺人鬼
ペンを走らせるたびにハードになっていく
昨夜のこと,もいっかい巻き戻してやろうか
たまんなく楽しかった,ワイルドに遊びまくった
以前の俺を知らねえなら,マルコムなんて本名で呼ぶんじゃねえ
ガール,君が寂しがってるなら,君の唯一の友になってあげるよ
なにか文句あっか? 文句はゴックン飲み込んどけよ

[Hook]
I’mma feed the world you can put it on my tab
Run until my legs go numb, I don’t plan on looking back
Anything you need you can find it at the market
If you don’t hold me down, for all I care, you can starve bitch
I’mma feed the world you can put it on my tab
Run until my legs go numb, I don’t plan on looking back
Anything you need you can find it at the market
Anything you need you can find it at the market

(サビ)
俺が世界を食わせてやる,勘定は,つけといてくれ
足が麻痺するまで走り続け,後ろは振り返らない
必要なものならなんでも,ここのマーケットで手に入る
共感できねえヤツは,カンケーねえ,飢え死にすればいい
俺が世界を食わせてやる,勘定は,つけといてくれ
足が麻痺するまで走り続け,後ろは振り返らない
必要なものならなんでも,ここのマーケットで手に入る
必要なものならなんでも,ここのマーケットで手に入る

(文責:Jun Nishihara)

マック・ミラー(Mac Miller)の追悼に代えて(その①)

まずはこの写真をご覧あれ。

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これは前途多望の若手ラッパー=Mac Millerの写真です。
彼の右肩に映るのは,ジェイZのツイートを膨らませて額縁に入れ,飾っているものです。
こう書かれています。

Too many ..Fab , black people really magic . Mac Miller nice too though .

これはジェイZが昨年,Songwriters Hall Of Fame(ソングライターの殿堂)入りを果たした際に,今までジェイZ自身を感化・鼓舞(インスパイア)させてきたアーティスト達に感謝の念を捧げたものです。その時に,いろいろなアーティストを挙げていましたが,その中に,まだまだ若手のMac Millerがいました。

いろんなヤツらにインスピレーションをもらった。ファボラスもそうだし,黒人アーティストたちには不思議な力(マジック)を感じる。マック・ミラーもナイスだし。

このツイートをバックに,誇らしげなマック・ミラーが写真に映っているものです。

アリアナ・グランデとマック・ミラーがコラボレートした曲(”The Way”(YouTubeではなんと,348万回再生!))は余りにも有名です。しかしマック・ミラーの豊富な楽曲の中では,下の方に位置すると言えるでしょう。彼にはもっともっと素敵な数々の曲があります。アリアナ・グランデが有名すぎて,マック・ミラーの魅力が影に隠れてしまっていますが,彼はとんでもなく素晴らしいコレクションの持ち主です。ひとまずは,初期の頃にリリースしたこの曲を聴いてみてください。若いエネルギーと,デビュー当時の勢いに溢れています。この曲のリリースは2011年,マック・ミラー19歳です。

Mac Miller – “Frick Park Market”

さらに,Anderson .Paakとコラボレートした以下の曲(2016年,マック・ミラー24歳)もあります。

Mac Miller feat. Anderson .Paak – “Dang!”

さらに,さらに,ミニマリスティックなこんなビデオもあります。

Mac Miller – “Stay”

最後に,ケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)とコラボレートしたこの曲です。

Mac Miller feat. Kendrick Lamar – “Fight The Feeling”

ラッパーの中のラッパー,つまり,ラッパーに好かれるラッパーとして,マック・ミラーはこの世で素晴らしきラップ曲の数々を生み出してくれました。こんなに若いラップ好きの青年が,これだけ豊富なヒップホップ曲をこの世に残したのは,奇跡とも言えるでしょう。その奇跡を起こしたマック・ミラーであるからこそ,ジェイZは彼のことを「マジック」だと呼んだのでしょう。

次回は,マック・ミラーの「Frick Park Market」を取り上げて,対訳を紹介いたします。

(文責:Jun Nishihara)

Guest Versesのコーナー:ジェイZ(ドレイク「Talk Up」より)

このコーナーでは,カニエ・ウェストもしくはジェイZが人の曲にヴァース(歌詞)を提供している曲を紹介します。

今日は6月29日にリリースされたドレイクのアルバム『Scorpion』より,収録楽曲「Talk Up feat. Jay-Z」を取り上げます。

Drake feat. Jay-Z – “Talk Up”

(Verse: Jay-Z)
Yo, get close enough to HOV, smell like a kilo still
First album 26, I ain’t need no deal
Already a hood legend, I ain’t need no shine
First Rollie flooded out, I ain’t see no time, woah
Stand-up niggas, we only duckin’ indictments
Dope boys, Off-White, lookin’ like soft white on ’em
Heh, you know what I’m sayin’?
We in the buildin’, we came for a billion, ain’t nobody playin’
Live every word that I’m rappin’
Say I lost 90 bricks and it happened
You probably wouldn’t believe everything that you seein’ right now if it wasn’t live action
I ain’t on the ‘Gram, they record who I am
God to these dope boys, how do you not be a HOV fan?
I’m what Meech shoulda been
I’m what Supreme didn’t become
If Alpo didn’t snitch, niggas’d be like Young
I got your President tweetin’, I won’t even meet with him
Y’all killed X and let Zimmerman live, shhh, s-streets is done

(ヴァース:ジェイZ)
ヨゥ,ホヴァ(=ジェイZ)に近寄れば,いまだにコカが匂う
26歳でデビューアルバム,当時レコード会社には雇われず
それでも腕時計(ロレックス)はダイアだらけで,針が見えねえ,ウォゥ
ピン芸人の野郎どもと,裁判沙汰を上手くかわしてきた
ドラッグディーラー,“オフ・ホワイト”,白い粉末が光ってた
なんのことかわかるだろう
俺らが一発売れば,億単位で稼ぎ,中途ハンパなことはしなかった
ラップで言ってきた一言一言,全部リアルに生きてきた
90キロのコカを失った話(*註1),それもマジ
こうしてナマで届けなきゃ,おまえら何にも信じねえからな
インスタはやってない,TVが俺を追いかけてるから
ドラッグディーラーにご加護あれ,ホヴァのファンたちに幸あれ
ビッグ・ミーチ(=ドラッグディーラー)も俺の様にはなれなかった
シュープリーム(=同上)も俺になれなかった
もしアルポ(=同上)が人のことチクらなければ,俺の様になれていただろう
おまえらの大統領がツイートしてる,あんな野郎に俺は合わねえ
おまえらX(=エックスエックスエックステンタシオン)は見殺しにして
ジョージ・ジマーマン(*註2)は救うのか?
もう「ストリート」は終わりだな

註1:ジェイZの名盤『The Blueprint』収録の楽曲「Never Change」より。
註2:黒人の若者(トレイヴォン・マーティン)を銃殺した容疑者。

(文責:Jun Nishihara)