ドレイクの新曲2分解説「What Did I Miss?」

アメリカでは独立記念日(2025年7月4日)の週末、ドレイク(Drake)が新曲「What Did I Miss?」をリリースしました。自身のSNSなどで近い将来リリースを予定していると発表したアルバム『The Iceman』のストリートカットされたリードシングル曲です。

さて、この曲でドレイクがラップする内容を2分で解説です。まずタイトルの「What Did I Miss?」は「俺は何か見逃してたか?」つまり「何があったんだ?(教えてくれ)」ということですね。これまで仲間だと思ってたヤツらが、いつの間にか自分の仲間ではなくなっている、何が起こったんだ?教えてくれ、っていうことですね。

【ケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)とのビーフ】

言わずもがな、ケンドリックとのビーフ(beef=ラップ対立)に起因する様々な寝返りや裏切りについて語っています。これまで仲間、しかも単なる仲間じゃなくて、近しい友達だと「ドレイクが思っていた」仲間たちが、いつの間にか自分のことを敵視するようになっていたり、人によってはケンドリック側についていたり、ドレイクとしては「え?!なんでコイツ、ケンドリック側にいるの?!何が起きたんだ?」っちゅうことになっている、ということですね。

1人目、フューチャー(Future)。2015年に二人(Drake x Future)はアルバム『What A Time To Be Alive』で全曲コラボレートしたまでの仲でした。が、記憶に新しい昨年2024年のアルバム『We Don’t Trust You』で、ザ・ウィークエンドと組んで出しましたが、その中のケンドリックとドレイクのビーフ(対立)の火種ともなった楽曲(「Like That」)でケンドリックが「Motherfuck the big three(ビッグ3なんてクソ喰らえ)」って言った曲にフューチャーがいました。ドレイクとしては「え?!フューチャー、なんで、そっちにいるの?」っていうことですよね。

2人目、リック・ロス(Rick Ross)。リック・ロスとドレイクは昔から、一緒に数々の名曲を作り上げてきた仲です。中でも名曲「Aston Martin Music」の黄金時代は、Hip-Hop界全体をDJ Khaledとともに、ドレイクとリック・ロスで牛耳っていた時代でもありました。その2人の間に今回のケンドリックとの一連のビーフを介して亀裂が走り、リック・ロスもドレイクをディスるようになった。

3人目、エイサップ・ロッキー(A$AP Rocky)。まず、ドレイクとリアーナ(Rihanna)が近しい関係があり、その後、エイサップ・ロッキーとリアーナは現在も続く家族として、子ども2人(RZA君とRiot君)を育てています。3人目の赤ん坊で今現在、リアーナは妊娠中です。それでも尚、ドレイクとエイサップは良い関係を築いてきたと思えたのですが、今回のケンドリックとのビーフ中、一度もドレイクをサポートする気配を出さなかった。自分は全く関係ないともインタビューで発言したりというようなこともあった。

4人目、ザ・ウィークエンド(The Weeknd)。いやぁ、これは長い長い歴史なので、割愛しますが、一つ言えることはThe Weekndはドレイク(Drake)が立ち上げたレーベルに所属しており、ドレイクのお蔭で有名になるキッカケを得た、と言っても過言ではないアーティストであり、もう少しドレイクに感謝してもよいのではないか、と考えるアーティストですが、冒頭に申し上げたように、アルバム『We Don’t Trust You』でフューチャーとコラボレートしたように、ケンドリック側に回っていた、っていうことですね。

そして5人目、これが一番ショックだったのかもしれないですが、ケンドリックのThe Pop-Outコンサートで、ドレイクへのディスり曲にあわせて踊っていた(ドレイクが親友だと思っていた)レブロン・ジェイムス(LeBron James)です。

歌詞(リリック)の部分解説です。30秒で。

I saw bro went to Pop Out with them / But been dick ridin’ gang since “Headlines”

ブロウ(レブロン・ジェイムス)がPop Outコンサートで踊ってるのを見た/「ヘッドライン」の曲の時代からずっと俺らに媚びてたんじゃなかったのか

What did I miss? / When I was looking at yall and cooking with yall / And giving out verses and bookings to yall? / Making sure wires were hit man, what did I miss?

何が起こったんだ?おまえらの面倒見て、コラボ曲を共にやって、ヴァースも提供してやった。ライヴも盛り上げてやった。あんたの曲がヒットするように、念入りに曲作りに貢献していたと俺は思ってた。何があったんだ?

下記にミュージックビデオを掲載しておきます。ドレイク(Drake)の新曲。”かつての”仲間だと思ってたヤツらへの「俺ら、仲間だったんじゃねえのか」的な静かなディスり曲です。

Drake – “What Did I Miss?”

上記↑は当該シングルカット曲「What Did I Miss?」のアートワークです。

(文責:Jun Nishihara)

出ました。カニエがexecutive produceしたキング・コムズのニューアルバム『NEVER STOP』。(アルバム『NEVER STOP』全曲2分解説)

ここ2週間ほど、世の中から最も嫌われることとなったHip-Hop/R&BアーティストであるDiddy(ディディ)とR. Kelly(R.ケリー)の特集をした。未だにこの2人については世間から批判の目を浴びせられ、彼らを擁護する者たちも批判の対象となり得る。

しかし、である。Hip-Hopというものそのものの存在意義は、1973年に誕生した時から、「世間に反抗して」育まれてきたものであるといえる。つまりいつの時代もHip-Hopは少数派の音楽/文化であり、大多数の人たちの賛同を得られることなく、メインストリームには(その存在性質からして)なりえなかった音楽/文化であった。

ということはつまり、DiddyもR. Kellyも至極Hip-Hopの人生を歩んでいるといえる。そしてこの週末(2025年6月27日(金)米国東部時間真夜中0時)ついにカニエ・ウェスト(Kanye West)改めイェ(イェイ(Ye))がDiddyの息子であるKing Combs(キング・コムズ)とコラボレートし、ニューアルバムをリリースした。その名は『Never Stop』。クレジットにはExecutive produced by Yeの名が。これまでDiddyこそが他のアーティストのアルバムをExecutive produceする立場であり、これまでも数えきれないほどのHip-Hipアルバムに(Executive produced by Sean Combs)というクレジットが表記されてきたのに、ついに、ここにSean Combs (=Diddy) ではなく、カニエの名前が入ることになるとは。

コロナ後、ニューヨークの街はこんな画で溢れ返った。外を歩けば2、3ブロック毎に必ず1軒くらいは、このような状況になっている建物やビルが見られた。

Diddy(ディディ)が創設したBad Boy Records(バッド・ボーイ・レコーズ)という名だたるHip-Hopアーティストを輩出してきた(ビギーもそう!)Hip-Hop史上最も重要なレーベルの一つ、それがいま、こういう状況になっている。まずはアルバムジャケからして90年代のHip-Hopを聴いて育った我々としては蒼然とする画である。これをジャケにしたカニエとDiddyの息子であるKing Combsの静かな憤りが聞こえてくる気がする。

2分で読めるブログにする。1曲ずつ、解説していく。(長く書くともう誰も読んでくれない時代になったので。)

まずタイトルは『NEVER STOP』。DiddyがBad Boy Records創設してきた時から言ってきた合言葉/フレーズである「As we proceed… to give you what you need」の前半部分「As we proceed…(前へ進め)」というフレーズの哲学とも一致するタイトルである。

【収録楽曲】

  1. Lonely Roads
  2. KIM
  3. People Like Me
  4. Diddy Free
  5. Repeat Me
  6. The List
  7. Souls Outro

【各楽曲解説(かけ足で)】

1.Lonely Roads

まずビートはDiddyにリスペクトを捧げたものであるとしか思えない。Bad Boy Recordsの昔っからのビートそのものである。後半、Diddyのかすれた声が聞こえる。おそらく刑務所内で録音したものか。カニエ(Ye)の娘さんであるノース・ウェスト(North West)も軽めのラップをしている。

2.KIM

このKimって誰の事だと思う?Diddyの亡くなった奥さん、キム・ポーター(Kim Porter)のこと。つまり、King Combs(キング・コムズ)のお母さん。冒頭、キング・コムズが歌う。「I love you, Mama. Things aint been the same without you Mama」(ママがいなくなってから、何もかも変わってしまったよ。愛してるよ、ママ。)

もう一つ、カニエも自身の母親を亡くした。アルバム『Graduation』をリリースしてからのこと。その後、Hip-Hopの概念を覆した非常に重要なアルバムである『808s & Heartbreak』をリリースした。キング・コムズの思いは、そのままカニエ(Ye)の思いを乗せているといえる。

もう一つ、ノース・ウェスト(North West)にとっては、母親であるキム・カーダシアン(Kim Kardashian)が父親のカニエと離婚したことの思いも反映しているといえる。

この曲はこの3名の思いを複雑に(というかストレートに)のっけた楽曲であるといえる。

3.People Like Me

個人的にこの曲がいちばん好きである。唯一、アルバム中カニエがラップするトラックである。

冒頭の「You need people like me…so you can point you middle finger and say there go the BAD BOOOOYYYY」これはHip-Hopでよく引用される映画『Scarface(スカーフェイス)』からのスカーフェイスの言葉ですね。「おまえらには俺みたいな人間が必要なんだろ。そうやって指差して、俺をワル者に仕立てあげたいんだろ。」これをもじって「おまえらには俺みたいな人間が必要なんだろ。そうやって中指立てて、ワル者に仕立てあげたいんだろ、Bad Boooyyyをな!」

4.Diddy Free

「フランク・オーシャン構文」と、私が勝手に名付けている英文構造があります。それがこの曲のリリックに出てくる「What’s a good kid to a bad boy」(よい子はバッド・ボーイにはかなわない)という部分です。なぜ、フランク・オーシャン構文と呼ぶかというと、2011年にリリースされたHip-Hop史上最も重要なアルバムであるJAY-Zとカニエが作り上げた『Watch The Throne』(ウォッチ・ザ・スローン)の冒頭の曲で、Frank Ocean(フランク・オーシャン)がこう歌うからです。

What’s a mob to a king / what’s a king to a God / what’s a God to a Non-Believer who don’t believe in anything – Jay-Z & Kanye West feat. Frank Ocean “No Church In The Wild”

輩(やから)はキングにかなわない。キングは神(ゴッド)にかなわない。しかし、その神でも、信じるものがいない野生の無神論者には到底かなわない。

これは同アルバムの冒頭の曲「No Church In The Wild」(野生の地に教会は無い)からR&B歌手であるFrank Ocean(フランク・オーシャン)の余りにも有名なリリックです。このリリックはもはや今や格言化しているため、フランク・オーシャンのこの歌詞の英文構造を私が勝手に「フランク・オーシャン構文」と名付けたのです。

当曲「Diddy Free」に戻ります。「Diddyを解放せよなら「Free Diddy」」ですが、それを逆にして「Diddy Free」にすると、Diddyはすでに解放された(freeである)ことを形容しているフレーズになります。ここら辺も、ただ単にこのアルバムはDiddyを解放することを擁護しているものではないというカニエの意図が窺えます。

5.Repeat Me

エモーショナルなメロディーで始まる曲ですね。前半の1曲目~4曲目まではカニエ(Ye)色が色濃かったですが、ここからはキング・コムズの若さとエロさが出ます。この曲を聴いて、King CombsとIce Spice(アイス・スパイス)に恋愛関係があったのかどうかググってしまったんですが(笑)、あまりにもIce Spiceのラップに似ていたので、二人には恋愛感情があったのかどうか、調べてしまった(笑)。そういう曲です。(どういう曲やねん)

6.The List

このリストってなんのリストかというと、いわんやThot-listのことですね。Thotって「That Hoe Over There(あっちのビッチ)」の頭文字(イニシャル)であすが、要するに「ヤリマン」ということです。そういった女の子たちについて歌っている曲です。

6.Souls Outro

最後の曲です。キング・コムズが言います。「F*** around and lose yourself chasing these hoes.(女を追いかけてばっかいたら、自分を見失うぞ)」と警告してくれている曲です。Diddyの裁判の内容と照らし合わせても、現実味を浴びていて、ゾッとするラインですね。それが「Souls(複数の魂)」つまり、これまで刑務所に入ってきた複数の人間たちの思いを総称して、それをOutro(エンディング)にしている曲です。

駆け足で解説しましたが、7曲にあらゆる感情がギュッと色濃く凝縮された稀有なアルバムになっています。このアルバムが「世の中から嫌われるアルバムになればなるほど」カニエやキング・コムズの思惑(おもわく)通りとなる。世間から嫌われるアルバムになることで存在意義を発するアルバムとなる。嫌われて「勝ち」であり、万が一好かれたとしても(いや、どう考えても世間から好かれるアルバムにはならないと思うが、万が一好かれたとしても)負けではない、つまり「負けがない」アルバムであると言える。しかしながら、カニエが目指したのはもう少し先にある。それが「マイノリティ(minority=少数派)への回帰」である。これについては2分では語れないのでまた今度書くことにする。

左から、カニエ・ウェスト(Ye)、ノース・ウェスト(North West)、キング・コムズ(King Combs)。

毎週月曜日と木曜日に更新していますが、今週木曜日はお休みです。

(文責:Jun Nishihara)

ついにカニエ(Ye)の『DONDA 2』ストリーミングに登場!(これまではStem Playerのみ)

カニエ・ウェスト(Ye)が2022年にリリースした『DONDA 2』アルバムを聴くためだけに、小生は200ドルを支払って購入したStem Playerでしたが、3年後のいま現在、ようやくストリーミングで再リリース!(つまりStem Playerを持ち運ばなくてもスマホで聴ける!これは革命的!(笑))しかも、カニエらしく、楽曲のプロダクションがそれぞれ更新(パワーアップ)されている。カニエにとって音楽は止まったアート(芸術)ではなく、生きているなま物(ナマモノ)であるという思想を持っている。いや、マジ、カニエって芸術家(思想家)なんです。誰もそれ言わないですが。

ですので、カニエは2022年にリリースした音楽を2025年に再リリースする時に、当時と全く同じ音楽をリリースするという頭(考え)では到底無いんです。

更新された(更新ってアプリか!と思うほど、アルバムを”更新する”ラッパーって今までいなかったでしょ)箇所は以下のとおりです。

まず2025年4月29日にストリーミングサイトでリリースされた際に、4曲の新曲が加わりました。楽曲「Mr. Miyagi」と「530 (a shorter version)」と「Burn Everything」と「Maintenance」です。

次に、2025年5月1日に2曲の新曲が加わりました。楽曲「Suzy」と「Jesse」です。

それから、楽曲順序の入れ替えと名前の変更です。「Louie Bag」を複数形にして「Louie Bags」に変更、逆に元々複数形にしていた「City of Gods」を単数形の「City of God」に変更。

それから、昔っからそうでしたが、カニエは音楽家(ミュージシャン)としてあらゆるビートメイカーマシンを用いて「音楽と遊ぶ(純粋に子どもが遊ぶように)」ということをやってきましたが(この映像見たら、カニエが遊んでることがわかるでしょう)、今回もカニエらしく、AIヴォーカル機能を使い、楽曲「Louie Bags」と「Happy」にAIヴォーカルのヴァースを加えました。(後々、AIが作る音楽はクソだ、ってカニエは言ってますが、それは「事後的に」カニエが言っているだけで、AIで「遊んでいる」瞬間のカニエは真剣な子どもの遊びなんですよね。全てはその「瞬間」にあるんですよね、カニエの場合。しかし「瞬間」に停止しているわけではなく、カニエにとって音楽は「停止した芸術」ではなく「生きているナマモノ」であることは前述したとおりです。)

いや、NYにいる時の当サイトのブログが全て、消えてしまったんです。小生もともとパキスタンのカラチに住んでいた時代に当サイトを立ち上げたのですが(2018年6月)、NYに引っ越した2020年から2024年まで書いたブログが消えてしまった。理由はいつか話しますが、取り敢えずその4年間の記事(投稿)が消えてしまったので、しょうがないのですが、何を言いたかったかと言うと、当時発表された「City of Gods(まだ複数形の時代)」についても勿論、当サイトで記事を書きましたが、それをハイパーリンクで書けないのが歯がゆい、ということです(笑)。

兎にも角にも、当時の「City of Gods」から「City of God」へのタイトル変更、楽曲「Get Lost」の再制作にマイク・ディーン(Mike Dean)が加わることにより、よりクリアな編曲に仕上がっているなど、「更新され続ける」アルバムであることは間違いない。3年前を振り返ってみると「なんでカニエはStem Playerでニューアルバムをリリースするの!もう誰も聴かなくなるよ!」なんていう世の中の批判だらけだったのが、そんなメインストリームの意見なんてここへ来て、どうでもよくなるほど、他のラッパーがやっていない「一度発表したアルバムを更新し続ける唯一のアーティスト」という「他にはできないこと」をやる(これからこういうアーティストは出てくるのかもしれないですが、その走りがカニエであることは間違いない)というポジショニングを確立できたのは、もともとStem Playerでしかリリースしなかったお蔭であるともいえる。そしてここへ来て、ストリーミングでリリースするという機縁を得て、その機会に「更新する」という縁に恵まれたカニエは強運であったといえるのではないでしょうか。カニエ(Ye)って世の中から叩かれまくりの運の悪い人生を送っていますが、その運が悪いように「外から見える」人生って、それがこの40数年間の彼の「個性」を作り続けてきた。「世の中から嫌われる」ことで彼はそれを糧に生きてきた。そしてそれが彼の強運さを養成し続けた、という逆説。

人間、いちばん偉いやつは何かということです。いろいろありますけれども、やっぱり運の強いやつが一番偉いと思うんです。(笑)頭がよくて、体格もよくて、社交もうまくて、金は持っている。大変具合いいな、そんならこの人にうちの娘を嫁さんにやろうか、ということで、やったところが、あくる年ころっと死んでしもうた。(笑)さっぱりわやですわ。そうしてみると、人間というものは運の強いやつがいちばん偉い。これはおもしろいことですよ。皆さんにこれを知ってもらいたい。

 松下幸之助『松下幸之助発言集ベストセレクション - 第八巻:強運なくして成功なし』より

(文責&キュレーター:Jun Nishihara)

太陽が照る13ヶ月:Aminéのニューアルバム

5月24日(土)お昼正午頃、アミーネ(Aminé)が5月15日にリリースしたニューアルバム『13 Months of Sunshine』を聴く。1曲目は「New Flower!」いきなりフィーチャリングアーティストとして今ノリに乗ってるレオン・トーマス3世(Leon Thomas)を迎えた楽曲。新しい人生、新しい世界、新しい未来を迎える準備が整った2人が織り成す世界をこのアルバムで満喫。爽快な氣分にさせてくれるアルバム。2人の若さと軽さでまったく胃もたれしない。まさにこんなアルバムをいま求めていた。奥田民生がNHKの『鶴瓶の家族に乾杯』に出演した際、新潟の街を歩きながら、ずっと探していた「道具を作る道具」をようやく見つけた時に言っていた「まさに求めてたものってこれじゃない」の「これ」がまさにこのアルバムじゃない。13 Months of Sunshineってなぜ13ヶ月にしたのか気にならない?まず、この「Sunshine」をどう日本語に訳すかと考えた時に、まっさきに思いついたのは「日なた」という日本語だけれど、これって、またNHKネタですが、ルイ・アームストロングの「On the Sunny Side of the Street」が話題になったNHK連続テレビ小説『カムカムエブリバディ』で出た「Sunny」の訳語だった。1年だけじゃなくて、12ヶ月にプラスしてもう1ヶ月加えることによって、1年という一線を「越えた(抜けた)」感が伝わってくる。これから始まる新しいスタートを表現している。まさにNew Flower!の「New」がこの新しい年の「1ヶ月」とリンクする。そして新しい13ヶ月目の新しい年には、まずは「Be easier on yourself」(自分自身に)あんまり無理させんなよ、と、楽曲11で伝えてくれている。「Just give it time」時間掛ければいいよ、と。あ、大事なことを忘れてた。アミーネのルーツであるエチオピアの暦では1年が13ヶ月あり、エチオピアはまたの名を「13ヶ月の太陽(13 Months of Sunshine)」と呼ばれているんですね。13か月間太陽が照ってる国、それがアミーネのふるさとなのですわ。

ちなみに楽曲5「Cool About It」でfeat.されているLIDOはノルウェーのプロデューサーでチャンス・ザ・ラッパーのアルバム『Coloring Book』でも「Same Drugs」と「Angels」を手掛けた人。冒頭曲の「New Flower!」でアミーネが言ってる「In New York but I’m feeling Memphis / Bleek」のくだりは、今年イチのラインかもしれない。「今年イチのライン」の候補に入れときます。

さて、2曲ここに載せておきます。

まずは1曲目、楽曲7「Vacay」です。

そして2曲目、楽曲15の「Arc de Triomphe」です。

文責・キュレーター:Jun Nishihara

今週の新曲:Big Sean feat. Nipsey Hussle – “Deep Reverence”

出ました。ニプシー・ハッスルをfeat.したビッグ・ショーンの新曲「Deep Reverence」。こちらを以下のとおり掲載しておきます。

Big Sean feat. Nipsey Hussle – “Deep Reverence”

なお,まもなくリリースされる予定のビッグ・ショーンの新盤『Detroit 2』に向けて,こちらのプレビューをどうぞ。

アツい!
外気は寒くなってきたのに,アツい!
ドンの生き様(=DON LIFE),見せてくれや。

(キュレーティング:Jun Nishihara)

UKの若手黒人音楽シーン(UKシリーズ:その④)

英国UKの黒人音楽シリーズその④として,本日は,UK出身の若手黒人アーティストの楽曲を幾つかお届けします。

まずは1人目,英国はノッティンガム生まれの32歳。NAO(ナオ)です。ノッティンガムは人口27万人越えの学生の街として知られますが,子供の頃にイースト・ロンドンに引越し,学生の街生まれで大都会育ちの女子として育っていきます。

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(photo credit: The Fader)

デビューは2016年,アルバム『For All We Know』を発表し,UKのR&Bチャートで第5位を獲得。セカンド・アルバムは『Saturn』を2018年にリリースし,UKのR&Bチャートで第2位を獲得します。

その『Saturn』からシングル曲「Make It Out Alive」を下記掲載いたします。

2人目は,FKAツイッグス(FKA Twigs),17歳の頃,サウスロンドンという大都会に引越し,バックアップダンサーとして暫く名を馳せます。24歳で歌手デビューを果たし『EP1』をリリース。米ダンス・ミュージックとして第11位にランクイン。EP盤にも関わらず,好成績を挙げます。

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(photo credit: Glamour)

2014年にアルバム『LP1』をリリースし,あらゆるメディアから絶大の高評価を得ます。同アルバムに収録された「Two Weeks」を以下掲載いたします。

続きまして,3人目はロンドン出身のアーティスト,ドーニック(Dornik)です。ドーニックは元はラッパーのゴーストライターとして働いておりました。しかし2015年,ついに自身のために歌詞を書き,アルバムDornik』をリリースします。裏の人間から,オモテに出てきた瞬間です。

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そのドーニック(Dornik)から楽曲「Retail Therapy」を以下掲載いたします。

おまけにもう1曲,英国生まれのソウルフル!な楽曲「God Knows」です。

4人目は,セレステ(Celeste)。生まれは米国カリフォルニアですが,3歳の頃,ロンドン東部のダゲナム地区(Dagenham)に引越します。イギリス人の母親とジャマイカ人の父親を持ち,アレサ・フランクリン(Aretha Franklin)やエラ・フィツジェラルド(Ella Fitzgerald)の音楽に影響を受けます。

そのセレステから「I Can See The Change」をお届けします。

最後5人目は,マイケル・キワヌカ(Michael Kiwanuka),ロンドン出身のシンガー・ソングライターです。2012年にデビューを果たしアルバム『Home Again』をリリース。セカンド・アルバム『Love & Hate』は米GQ雑誌が選ぶ「2016年に出たベスト10枚のアルバム」の第7位に選ばれます。

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アルバム『Love & Hate』から楽曲「Black Man In A White World」を掲載いたします。

(文責及びキュレーション:Jun Nishihara)

黒人若手女子アーティスト2名(米公共ラジオ局(NPR)主宰“Tiny Desk Concert”で取り上げられた黒人女子シンガー抜粋(その②))

本日ご紹介する2名のシンガー/ラッパーは,現代音楽界に於ける,とても特別なお二人です。

ひとりめは,当サイトでも以前取り上げました。
公式デビューアルバムを本年3月にリリースしたチカ(CHIKA)です。
(「第4位:大ブレイク寸前,漆黒の女子ラッパー=オラニカ又の名をCHIKA「トランプ大統領への手紙」(2019年Hip-Hop名曲名場面ベスト50)」)

ついに,チカも米公共ラジオ局(NPR)の「Tiny Desk Concert」に登場するようになりました。
以下の演奏と彼女の饒舌ぶり(間奏中の,おしゃべり達者!)をご堪能下さい。

前回,当サイトで彼女を取り上げた際には彼女が公式デビューアルバム『Industry Games』をリリースする前でしたので,彼女のフリースタイル映像をメインにご紹介いたしました。

最近はもう有名になってきておりますので,米国現代の若者文化(スローガンは“The Culture of Now”)を代表するウェブサイトUPROXXに於いて,“Rising Hip-Hop Star”(人気上昇中のヒップホップスター)として取り上げられたこともあり,その洗練されたミニセッション映像をお送りいたします。

チカのシングル曲「No Squares」も掲載しておきます。

ちなみにヒップホップを聴いている方なら誰でも知っている(べき)元Queen of Hip-Hopといえばローリン・ヒル(Lauryn Hill)ですが,彼女のメジャーヒットシングル曲「Doo Wop (That Thing)」のビートに乗っけたチカ(CHIKA)のフリースタイルがありますので,掲載しておきます。これは2017年の映像です。もう3年前!

もうひとつ,チカのフリースタイルを。これも3年前の映像です。キレッキレのフリースタイルです。韻を全くハズさない!脚韻だけでも注意して聴いてみてください。脚韻というのは各ラインの終わりのフレーズで踏む韻です。

続きまして,ふたりめはNoname(ノーネーム)です。本名ファティマ・ワーナー。当サイトでも以前,こちらで取り上げました

彼女の以下“Tiny Desk Concert”での模様は,大好きな動画の一つで,これを観て朝元気になって仕事に行くということもありました。

Nonameはシカゴ出身。シカゴはカニエ・ウェストやコモン,ルーペ・フィアスコなど,ソウルフルなラッパーを数々輩出してきた大都市です。そこにこの特別な星(スター)をわれわれファンに授けてくれるなんて,なんてありがたいことか。

Nonameのように,ラップが詩的な人,って最近はめずらしくなってきています。とくに20代のアーティストではそうです。とっても貴重なアーティストなのですよ,ノーネームは。

そんな特別な存在であるNonameのライヴが51分間堪能できる映像がありますので(YouTube, thank you!)掲載しておきます。

あまりにも有名なシングル曲「Diddy Bop」のサビでNonameは歌います。

Watching my happy block my whole neighborhood hit the diddy bop
(ハッピーな近所の隣人たちが,みんなでディディ・ボップのダンスを踊る)

この1行を聴いた時,聴いた人の頭の中では,「幸せそうな隣人たち」のイメージが浮かんだかと思いきや,その後瞬間的に,イメージは「ディディ・ボップを踊る黒人」に切り替わります。

「幸せそうな隣人たち」といういかにもゆったりした時間かと思いきや,次に飛び込んでくる映像は「ディディ・ボップ」ですからね。もう,たまんないです。

同曲から,もう少し歌詞を引用してみます。

Stop overreacting, it’s past my curfew I’m out after 6
Happily making my accident
Mama gon’ whoop on my ass again
Pray that I’m making my way before 8 and I might have to sneak in the back again

(対訳)
過剰に反応しないで,門限はとっくに過ぎてる,夕方6時を回ってる
嬉しさあまりにアクシデント起こす
ママにまたお尻ぺんぺんされるわよ
祈ってる,午後8時前までには帰宅できること,また家の裏口からこっそり入ろうかしら

なんて素朴な歌詞!
Rauryというノーネーム仲間のヴァースです。

まぁ,これがノーネーム(Noname)なのです。まったく飾らない,素朴な歌詞を曲にするのです。

そして冒頭のチカ(CHIKA)とは対照的で,ノーネームには脚韻はあまり関係ないのです。その分,ラップにキレ感は無いのですが,しかしながら,脚韻なんて踏まなくても,すでに詩的になっている。

もう一丁,歌詞,行ってみましょう。

B2K in the stereo, we juke in the back seat
Or juke in the basement, in love with my KSWISS’s
This feel like jumping in a pool and I’m knowing I can’t swim
Ooh, you about to get your ass beat
For stealing that twenty dollars like “baby, just ask me”

(対訳)
ステレオで流れるB2Kの歌,後部座席でバカ暴れするアタシたち
お気に入りのKSWISSのスニーカー履いて,家の地下でバカ暴れ
まるで気分は,プールに飛び込んで,アタシ,泳げないんだけどね
ウゥゥ,あんた,ママにお尻蹴飛ばされるわよ
20ドル札ドロボーしたでしょ「ベイビー,いつでも言って」って

良いですねえ。

歌詞中の「B2K」っていうのは2000年代前半に流行った黒人のボーイバンドです。↓これです。

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2行目の「KSWISS」っていうのは,これも2000年代前半に流行ったスニーカーです。懐かしいですね。今でも売れていますよ。

で,そのKSWISSを履いて,家の地下で踊りまくるっていうイメージです。まず,KSWISSで1ポイント。それに加えて,アメリカの家はよく地下に部屋がありますよね。郊外の中流階級の家庭では地下の部屋にpool table(ビリヤード台)を置いて,ちょっとした遊びの場所にするっていう。で,もちろんアメリカの家は靴を履いたまま家の中に入りますから,KSWISSを履いて踊るという映像。そういったアメリカの素敵なイメージを思い浮かばせといて,その後に「you ’bout to get your ass beat」というフレーズを繰り出す。まったりした白人の日常かと思いきや,リスナーが安心した瞬間に上記のようなフレーズを繰り出して「アタシは黒人よ!」というアイデンティティの表出を成功させます。

その素敵なシングル曲「Diddy Bop」を掲載して,本日終わりにします。

(対訳,文責及びキュレーション:Jun Nishihara)

「ガタ・カタ・ラタ・アダ・ヤ・ビッチ・オナ・ガナ・ワナ・・・」と続く最新のラップ曲。

2020年5月22日にリリースされたニューアルバム『Wunna(ワナ)』は米国ジョージア州出身の若手ラッパー=Gunna(ガナ)の仕業によるものです。

リードシングルであるアルバムタイトルと同名の楽曲「Wunna」は,フック(サビ)が「ワナ」に韻を踏む語の羅列を用いてリスナーの耳に心地良い錯覚を与えるデキとなっています。

ビジュアルはこんなヤツです。

https://www.instagram.com/p/B4tJbVqpQRY/

以下のミュージックビデオでも聴けますが,そのサビの部分は英文で表記するとこうなります。

Money puddles (puddles) got a cutter (cutter)
Lotta orders (Orders), dollars, quarters (Ayy)
Wrist water (Ayy), Rich Porter (Ayy)
Your bitch on now (On now), Gunna Wunna (Wunna)
Commas, commas (Racks), hundreds, hey (Hey)
I’m a stunna (sauna) summer (Hey)
Benihana (‘Hana), cook up, hey (Hey)
My crew paid (Paid), surf a wave (Wave)

音声をカタカナで表記するとすれば,こうなります。
「マネー」が「マニ」,「ウォーター」が「ワラ」,「コンマ」が「カマ」になります。

マニ・パド・(パド)・ガタ・カタ・(カタ)
ラタ・アダ・(アダ)・ダラ・クォタ・(エィ )
リス・ワラ・(エィ)・リチ・ポタ・(エィ )
ヤ・ビッチ・オナ・(オナ)・ガナ・ワナ(ワナ)
カマ・カマ・(ラク)・ハニッ・ヘイ(ヘイ)
アイマ・スタナ・(ソナ)・サマ(ヘイ)
ベニ・ハナ・(ハナ)・クカッ・ヘイ(ヘイ)
マクル・ペイ・(ペイ)・サファ・ウェィ(ウェィ)

さて,日本語意味に対訳するとなると,こうなります。

カネ・たんまり・(たんまり)・忍ばす・銃・(銃)
どっさり・注文・現ナマ・硬貨(エィ )
手首・ギラギラ・(エィ )・リッチ・野郎(エィ )
おまえの・女・抱く・俺が・ヤる(ヤる)
1万・10万・(札束)・100万・ヘイ(ヘイ)
俺は・スタナ・(サウナ)の如く・夏のよに・アツい・野郎
高級・レストラン・コックの・料理・ヘイ(ヘイ)
仲間も・カネも・(儲け)・波に・ノッてる(ノッてる)

真夏の・夜の・眠れなき・暑さの・中で・こんな・曲は・どで・っか?

1993年生まれのラッパー=ガナ(Gunna)は,同郷であるアトランタ出身の大人気ラッパー野郎ヤング・サグ(Young Thug)に見出されて,ヤング・サグ自身が創設したレコード・レーベル=YSN Recordsに迎えられた。まさに現代の若者ラップをリードするヤング・サグ(Young Thug)に認められたラッパーであり,昨年2019年にはデビューアルバム『Drip Or Drown 2』を発売し,米ビルボードチャート第2位を獲得した。そして先日リリースされた本アルバム『Wunna』では,現在最も勢いあるウェッサイはコンプトン出身のラッパー=ロディ・リッチ(Roddy Ricch)をフィーチャリングした楽曲「Cooler Than A Bitch」も収録。ガナ自身はサウス・ラップのど真ん中であるATL(アトランタ)はカレッジ・パーク出身。カレッジ・パーク出身のラッパーには,2チェインズ(2 Chainz)やリュダクリス(Ludacris),ヤング・ジョック(Yung Joc)等,大物ラッパーが並ぶ,と書くと,ガナにプレッシャーを与えるかな,カナ?

これまで出てきたサウスのラップ調子をさらに鋭敏化させたこの「ガナ・ワナ調」ラップを以下ミュージック・ビデオでお聴き下さい。

Gunna – “Wunna”

(文責&キュレーティング:Jun Nishihara)

ドレイクに影響を与え,そして影響を受けた,UKの黒人音楽シーン(その①)

2017年3月にリリースされたドレイク(Drake)のアルバム『More Life』で特筆すべきことは,アルバム全体をとおして,UK(英国)調のヒップホップシーンが鮮やかに表現されている点です。(このアルバムを「公式ミックステープ」と呼んでいるメディアもあるそうですが,ここでは「アルバム」と呼ぶことにしたいと思います。)

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本アルバムで共演しているアーティストは,Jorja Smith,Black Coffee,Sampha,Baka Not Nice,Giggsなど,英国出身もしくは英国のミュージックシーンに影響を受けてきたアーティストが勢揃いしております。

この中でも収録楽曲⑧「4422」という雨の日のロンドンを彷彿とさせるしっとりとした音調の曲に,英国はロンドン南部のモーデン(Morden)出身アーティスト=サンファ(Sampha)がfeat.されています。

サンファは2016年9月にリリースされた,ビヨンセの妹であるソランジュ(Solange)のアルバム『A Seat At The Table』でも共演しておりました。

実はこのサンファとドレイクの共演は2013年のアルバム『Nothing Was The Same』の楽曲12「Too Much」にまで遡ります。

ドレイクのアルバムに起用された2013年以降,サンファは共演アーティスト(featured artist)としてどんどん売れ始めていきます。

2014年のBlood Orangeとの共演(楽曲「A Kiss Goodbye」),2016年カニエ・ウェストとの共演(楽曲「Saint Pablo」),2016年ソランジュとの共演(楽曲「Don’t Touch My Hair」),2017年ドレイクとの共演(楽曲「4422」),2017年現代ジャズの大物=Kamasi Washingtonとの共演(楽曲「Mountains of Gold」)等々です。そして遂に同年2017年,自身のデビューアルバム『Process』をリリースします。

現代ヒップホップ/R&Bシーンでは,静かに,UKの黒人音楽シーンがグツグツと出現し始めてきております。ヒップホップはもうアメリカ人のものだけじゃないんだよ,と言わんばかりに。

それが見事に垣間見れるのが,ドレイクの2017年発売のアルバム『More Life』でした。

この『More Life』というアルバムが米国のヒップホップシーンに与えた影響,つまり,UKの音楽シーンをそのまんまアメリカに引っ張ってきたという,その偉大さを振り返るとともに,その原点の一つであり,サンファのキャリアに非常な影響を与えた,ドレイクとサンファの共演作品
「Too Much」を以下に掲載しておきます。以下掲載する映像は,英国BBC Radio 1で放映されたサンファのライヴ・パフォーマンスです。

(文責及びキュレーション:Jun Nishihara)

JAY ELECTRONICAのアルバム『A Written Testimony』楽曲⑦「Flux Capacitor」(独断偏見ライナーノーツ)

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楽曲の題名「flux capacitor」とは映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズに登場するタイムマシン(デロリアン)の内部装置として装着されている「次元転移装置」のことです。つまり,次元(時代)を行き来するために必要な装置で,ここでは,ジェイ・エレクトロニカとジェイZがこの曲を媒体にして時代(ジェネレーション)を行き来します。

前回の曲から曲調はガラッと変わり,早いテンポで二人のジェイがラップを交わします。

ジェイZはこうラップします。

You backstabbers gon’ turn me back to the old Jay
He’s not who you wanna see, he’s not as sweet as the old Ye

おまえら裏切り者のおかげで,昔のジェイに戻っちまうぜ
ほんとは見せたくねえんだよ,昔のカニエのように全然甘くねえぜ

ジェイ(Jay)とイェィ(Ye)=カニエ(KanYe)が韻を踏みます。

When I die, please don’t tweet about my death
Tryna get mentions, bringin’ attention to yourself
Please don’t post some pic from in the club
With some quote you stole like we was tighter than what we was
Tryna get likes from my love
If you can’t go by the crib and give my mama a hug

俺が死んでも,俺の死に対してツイッターでつぶやかないでくれ
下心みえみえ,結局はじぶんが注目されたいだけなんだろ
クラブで撮った写真を載せねえでくれ
人から盗んだ言葉を引用して,仲良いフリなんかして
俺のラヴを使って「いいね」を獲得しようとして
そのつもりなら,俺の実家に出向いて,俺のおふくろにハグでもしてやってくれ

最後の1行をできるのは,この人しかいないでしょう。
つまり,ジェイZの幼なじみで,子供の頃から,ジェイZの母親からも世話になっている人。プライベートでもジェイの親友である,タイタイ(TyTy:本名 Tyran Smith)です。
以下写真の左側です。

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最後にビギー・スモールズの歌詞をフリップしたこの2行を見ておきましょう。

Remember Rappin Duke? Duh-ha, duh-ha
You never thought we’d make it to Lā ‘ilāha ‘illā Allah

ラッピン・デュークを覚えてるか?「ダッハー,ダッハー」
誰が想像しただろう,俺らが「レイラッハー,イッラー,アッラー」の地まで達するとは

「レイラッハー,イッラー,アッラー」というのはイスラームの祈りの言葉で「神はアッラー以外にありえない」という意味の言葉です。

このラインはザ・ノトーリアス・BIGの「Juicy」からの借用ライムです。

Remember Rappin Duke? Duh-ha, duh-ha
You never thought that Hip-Hop would take it this far

ラッピン・デュークを覚えてるか? 「ダッハー,ダッハー」
誰が想像しただろうか,ヒップホップがここまで来るとはな

(文責:Jun Nishihara)