UKの若手黒人音楽シーン(UKシリーズ:その④)

英国UKの黒人音楽シリーズその④として,本日は,UK出身の若手黒人アーティストの楽曲を幾つかお届けします。

まずは1人目,英国はノッティンガム生まれの32歳。NAO(ナオ)です。ノッティンガムは人口27万人越えの学生の街として知られますが,子供の頃にイースト・ロンドンに引越し,学生の街生まれで大都会育ちの女子として育っていきます。

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(photo credit: The Fader)

デビューは2016年,アルバム『For All We Know』を発表し,UKのR&Bチャートで第5位を獲得。セカンド・アルバムは『Saturn』を2018年にリリースし,UKのR&Bチャートで第2位を獲得します。

その『Saturn』からシングル曲「Make It Out Alive」を下記掲載いたします。

2人目は,FKAツイッグス(FKA Twigs),17歳の頃,サウスロンドンという大都会に引越し,バックアップダンサーとして暫く名を馳せます。24歳で歌手デビューを果たし『EP1』をリリース。米ダンス・ミュージックとして第11位にランクイン。EP盤にも関わらず,好成績を挙げます。

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(photo credit: Glamour)

2014年にアルバム『LP1』をリリースし,あらゆるメディアから絶大の高評価を得ます。同アルバムに収録された「Two Weeks」を以下掲載いたします。

続きまして,3人目はロンドン出身のアーティスト,ドーニック(Dornik)です。ドーニックは元はラッパーのゴーストライターとして働いておりました。しかし2015年,ついに自身のために歌詞を書き,アルバムDornik』をリリースします。裏の人間から,オモテに出てきた瞬間です。

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そのドーニック(Dornik)から楽曲「Retail Therapy」を以下掲載いたします。

おまけにもう1曲,英国生まれのソウルフル!な楽曲「God Knows」です。

4人目は,セレステ(Celeste)。生まれは米国カリフォルニアですが,3歳の頃,ロンドン東部のダゲナム地区(Dagenham)に引越します。イギリス人の母親とジャマイカ人の父親を持ち,アレサ・フランクリン(Aretha Franklin)やエラ・フィツジェラルド(Ella Fitzgerald)の音楽に影響を受けます。

そのセレステから「I Can See The Change」をお届けします。

最後5人目は,マイケル・キワヌカ(Michael Kiwanuka),ロンドン出身のシンガー・ソングライターです。2012年にデビューを果たしアルバム『Home Again』をリリース。セカンド・アルバム『Love & Hate』は米GQ雑誌が選ぶ「2016年に出たベスト10枚のアルバム」の第7位に選ばれます。

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アルバム『Love & Hate』から楽曲「Black Man In A White World」を掲載いたします。

(文責及びキュレーション:Jun Nishihara)

第1位:2019年の夏を制し,遂に1年まるごとヒップホップ界を盛り上げてくれた大・大・大ブレイクアーティスト登場!Megan Thee Stallion! (2019年Hip-Hop名曲名場面ベスト50)

2019年を一言で表現するとすれば,これかもしれません。「今年は女子ラッパーが活躍した一年だった」と。

シティ・ガールズ(City Girls)しかり,カーディB(Cardi B)しかり,ニッキー・ミナージュ(Nicki Minaj),カマイヤ(Kamaiyah),ドージャ・キャット(Doja Cat),キャッシュ・ドール(Kash Doll),ティエラ・ワック(Tierra Whack),トリーナ(Trina),ノーネイム(NoName),ステフロン・ドン(Stefflon Don),そしてラプソディ(Rapsody)などなど。いま挙げたのは全員女性です。

必ずしもヒップホップとは呼べませんがポップ界では,黒人女性として歌手のリゾ(Lizzo)も大活躍しました。

そしてさらに追い討ちをかけるかのように,ヒップホップ界の超重鎮黒人女性ラップ・アーティストのミッシー・エリオット(Missy Elliott)も今年のMTV Video Music Award賞受賞会でその伝説的なカムバックを果たしました。おまけにニューEPもリリース!

こんなにも黒人女性及び女子ラッパーが活躍した2019年,なかでも特に,そう,特に,そう,くりかえします,特に!大・大・大ブレイクしたのが,この女性でした。それがMegan Thee Stallion!

ヒップホップ業界ではよく「夏を制すものは,一年を制す」といわれます。つまりその夏に売れたものは,一年をとおして売れる,その一年でもっともHOTなものといえる,ということです。

そして今年の夏を制し,ついには一年をも制すこととなったヒップホップアーティストが,そう,Megan Thee Stallionです。

英語読みは「メーガン・ジー・スタリオン」ですが,日本語表記は「ミーガン・ジー・スタリオン」と書いたり,「メーガン・ザ・スタリオン」と書いたり,「ミーガン・ザ・スタリオン」と書いたりと,あらゆる場所で別記載をしています。英語で読む場合はあくまでも「メー」にアクセント(強調)を置いて「メーガン・ジー(“the”の強調形,舌を噛んで発音)・スタリオン(タにアクセント)」です。

英語表記は満場一致の“Megan Thee Stallion”です。彼女の名前を呼ぶときは仲間たちは「Megan(メーガン)」や「Meg(メグ)」と呼びます。サウス出身の人たちは「メィガン」と呼ぶ場合もあります。愛称は「Stalli(スタリー)」です。

さて,このメィガン AKA メグ,今年の夏前から,こういうハッシュタグで話題になりました。「#HotGirlSummer 」です。

ツイッターやインスタグラム,Facebook,スナップチャットまで,アメリカ中,西から東,北から南まで,女子,いや,クィアな男子たちまでも,#HotGirlSummerで今年の夏を盛り上げてくれました。

実はまだ大学生のメィガン。つまり,まだ学生。まさに,いまのトレンドをいっちばん理解している世代の女子なのです。学校はTexas Southern University(テキサス南部大学)。つまりですよ,キャンパスはほぼ黒人の,いわゆる「HBCU (Historically Black Colleges & Universities=歴史的黒人大学)」と呼ばれる大学に通学しています。

1995年2月15日生まれ。今年で24歳。いま,何が流行っているかをいちばん理解して,そのど真ん中を生きている女の子です。

その彼女=メィガンが,今年の夏,ニッキー・ミナージュとコラボレートを果たしました。

この写真です。

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(左がニッキー,右がメィガン)

そしてその曲が以下です。

Megan Thee Stallion feat. Nicki Minaj & Ty Dolla $ign

メィガンは昨年からジワジワとヒップホップ界,ラップ界を湧かせてきておりました。

昨年2018年に発表したシングル曲が以下の曲です。これは今年になってもストリーミング及びダウンロードされまくり,売れ続けまくりました。

Megan Thee Stallion – “Big Ole Freak”

以下は11月に開催されたAmerican Music Awardsの帰り際にカマした即興フリースタイルです。

12月には遂に,NPR Music: Tiny Desk Concertにも登場いたしました。

メィガンのフリースタイルをもう一本,掲載しておきます。

最近のフィメール・ラッパーつまり女子ラッパーと何が異なるかというと,リリシズム(リリックを重視する)という態度です。

もちろん,タイトなルックスで,奇抜な服を着て(もしくは太ももを露出して)お尻を突き上げて,ダンスもしますが,それ以上に彼女の才能はそのリリシズムにあらわれています。

容赦ないフロー。スピード感あるラップ。90年代から2000年代にかけて,流行ったハードコアラップをも彷彿とさせます。リリックの内容はストリッパーだけじゃない。エロだけじゃない(もちろんエロもありますが,内容をセックスやドラッグばかりに頼っていない。

古き良き時代?!(いや,ヒップホップはそんなに古くない)のヒップホップをbring it back (よみがえらせた)ラッパーとも言えます。そういう点で優れているにもかかわらず,そういう点を差し置いたとしても,今年#HotGirlSummerのハッシュタグでヒップホップ界最高にアツい夏を魅せてくれました。

もうひとつ,メィガンについて,特筆しておくべき点は,アメリカのディープサウス(深南部)出身ということです。その深南部出身という肌感覚から,同じ深南部であるメンフィス出身のジューシーJ(Juicy J)とタッグを組んでラップしております。

肌感覚はよく曲にあらわれます。メィガンの肌感覚は,その昔,深南部で奴隷が経てきた苦しみを深い歴史に刻んでいます。500年間つづいた奴隷制度です。その奴隷の感覚がメィガンの肌感覚に残っている。その肌感覚から溢れ出るメィガンの音楽,といいますか,ラップといいますか,ヒップホップには,北部出身のラッパーには出せないソウルがあります。それはビートによってもあらわれます。コーンフィールドという畑を,鍬をふりかざして,耕す黒人奴隷。その「耕す」という行為には,早いテンポのビートが求められました。ビート(当時は「掛け声」)とともにふりかざして耕さないと,白人のご主人様にムチでぶったたかれますからね。だからダラダラしたラップで,間延びするラップのフローでは,いけなかった。間延びしちゃいけない。そこに深南部出身ラッパーの独特のラップスタイルがあります。それをメィガンも綿々と受け継いでいる。意識的に,無意識的に,どちらかはさて置いて,確実に受け継いでいる。そこにわずか40年という若い歴史のヒップホップを超えた,500年続いた奴隷制度の深い歴史を感じることができます。

Megan Thee StallionがJuicy Jとタッグを組んだ曲に,以下の曲があります。これはエロがメインテーマです。(Juicy Jはエロに生きる男ですから,彼と組めばこういう曲内容になるのは必然でしょう。うなずけます。)

つい先日1月10日(金)にリリースされた,Normani(ノーマニ)との新曲MVも以下に掲載しておきます。現在YouTubeにてトレンド第8位!

なお,こちらは年末年始のバケーション中に撮影したMegan Thee Stallionのフリースタイルです。

https://www.instagram.com/p/B7H6BemF7oL/

2019年,メィガン AKA メグは,ジェイZが築き上げたレーベル=Roc Nationに引き抜かれました。しかし,彼女がRoc Nationに入隊したのは,結果論。メィガンの魅力は彼女がRoc Nationに入ったことではなく,Roc Nationに入る前に,すでに魅力であふれておりました。Roc Nationに入ったのはオマケ。Roc Nationに入る事実を知る前から,Megan Thee Stallionは今年ナンバー1の女子ラッパー,いや,女子も男子もひっくりめての,「まるごと第1位」のヒップホップアーティストとして,ここに記載いたします。

2020年は明けました。2019年(平成31年/令和元年)もありがとうございました。今年も,当サイトに来ていただいて,ありがとうございます。これまでベスト50として,毎日アップをし続けましたが,あさってからは通常どおりのパターンに戻り,ほぼ毎週水曜日と土曜日の朝のアップいたします。2019年は皆さんにとってヒップホップに溢れた一年だったことと願っております。新年2020年はさらに素敵なヒップホップと出会えますように。どうもありがとうございました。

(文責:Jun Nishihara)

久しぶりに今週のカニエ・ウェスト“Sunday Service”模様をお届けします。おまけにカニエ論を。

カニエ・ウェストが10月25日(私の誕生日)に名作『Jesus Is King』をリリースしてから,しばらく“Sunday Service”の模様をアップしておりませんでした。以下のとおり,今年に入ってから,今年初旬から毎週日曜日にはぶっ続けで,休むことなくカニエ・ウェストはソウルフルなジャムセッション=“Sunday Service”を開催してきました。こんなことはラッパー,否,ヒップホップアーティストでは(ここでは何回も書いてきましたが)前代未聞なのであります。

これまでの“Sunday Service”の模様は,ここら辺(↓)でご覧ください。

カニエ・ウェストの“Sunday Service”まとめ(10月6日&10月12日開催分)

カニエ・ウェスト“Sunday Service”を金曜日に開催 (9月27日分) & アルバム『Jesus Is King』のリスニングパーティー

カニエ・ウェストの“Sunday Service” (前回,前々回,前々々回・・・からのつづき)

そして本日,先週末12月8日(日)に実施されたばかりの“Sunday Service”をお届けいたします。
(於:フロリダ州のVOUS Church)

そしてもうひとつ,11月10日(日)にヒューストン市の刑務所に於いて,囚人相手に開催した“Sunday Service”も以下のとおり掲載しておきます。

今年の冒頭でこのサイトで,カニエ・ウェストの与えるエナジーで2019年を一気に乗り越える,と書きましたが,そのエナジーはやむことなく,ここまで火はともされ続けてきました。もう12月も半分を超えたばかりですが,カニエ・ウェストのエナジーは,ほぼ1年経ったいまも,消える気配がしません・・・と,そんなことを今こうして書いておりますが,思い返せば2003年にカニエ・ウェストのmixtapeをニューヨーク市かクリーブランド市がどちらか忘れましたが買った時にも,同じようなエナジーを感じたことは確かです。2003年のあの頃から現在2019年の終盤を迎えようとしている今も,まだまだ健在です。

ニューヨークの大学に通っていた際,クラスメートが当時,「50セントはもう終わりね,ラッパーってのはだいたい10年が寿命よ」と言い放ちましたが,カニエ・ウェストは10年どころか,プロデューサー時代にジェイZにビートを提供していた時代から考えると20年経た今も,まさにこんな新しいことをやっているっていうのは,イカレているというか,まさにこれを人は「天才的」と呼んでいるのでしょうが,カニエ・ウェストほど「天才」という言葉が似合わないアーティストはいないでしょう。カニエは天才ではなく,芸術家なのです。

何が芸術家なのか,というと,それを象徴しているのは,カニエが2004年にデビューシングルを出したとき,当時,それまでのヒップホップのサグやゲットーやハスラーのイメージの「逆」からスタートした。それはカニエの意図的なものなのであったか否かは別として,それまでのヒップホップのイメージに逆らうように,対抗していった。みずから師(=big brother)と仰ぐジェイZの「真逆」を行った。

そこに彼の「芸術」は端を発するのではないかとずっとモヤモヤと感じてきたのですが,誰かがカニエは天才などということをどこかで書いていたので,それは違うだろう〜と違和感を感じ,初めて文字にしたまでなのです。カニエ論なんていうことばがあるのならば,そこを地点にスタートするのもおもしろいかもしれない,というひとつのアイデアです。

ひとまずは,ここで終わりにしますが,カニエのことを天才だと思ったことは,20年以上カニエの音楽を聴いてきて,感じたことはなかった。(Jay-Z feat. Scarface & Beanie Sigel “This Can’t Be Life”はジェイZの『The Dynasty』アルバムに収録。カニエ・ウェストがプロデュース。リリースは1999年。)ひとまずはそれをクリアーにしておきたいです。

カニエ論は,気が向いた時に,ひょっこりと,また続けます。

(文責:Jun Nishihara)

現代の若者黒人文化をリードする人物(その①:レイアナ・ジェイ)

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(上記写真は,2019年4月4日にYouTubeにて生ストリーミングされた番組より。右から2人目がレイアナ・ジェイ。)

新人の女性若手アーティスト=レイアナ・ジェイは,今年でまだ25歳。昨年11月に当サイトでも取り上げました(→こちらです)

これまで3枚のEPを発表し,ついに今年3月22日に初の公式アルバム『Love Me Like』をリリースしました。

いまだにウィキペディアでは取り上げられておりませんが,上記アルバム『Love Me Like』はレイアナにとって人生初の全米ビルボードでチャートインし,冒頭の生ストリーミングでは女友達から「charting queen(チャートの女王)」と呼ばれるようにまでなりました(もちろん誇張していますし,大げさですけれど)。人生初にリリースしたアルバムが,全米ビルボードチャートのR&B部門第25位を達成。メジャーデビューは果たしていないどころか,インディーズのレーベル=EMPIRE RECORDSとの契約であるにもかかわらず,25位というのはアングラでのデビュー作にしてはなかなか良いポジションでしょう。

https://www.instagram.com/p/Bv2szPpgIPu/?utm_source=ig_web_copy_link

昨年レイアナ・ジェイについて書いた際に言及いたしましたが,レイアナは,つい最近まで,音楽だけでは食べていけず,アルバイトと兼業をしておりました。それがいつしか,やがて,アルバイトを辞めてもなんとか食べていけるようになり,音楽に専念するためニューヨークへも引っ越しをするようになり,EMPIREレーベルと契約を交わし,ニューヨークのスタジオでレコーディングをし,公式アルバムをリリースして,ついに全米ビルボードにチャートインする,というのをここ3,4年で果たしております。なかなか素敵な声の持ち主である彼女は,(ジャジーなのにジャジーすぎない)現在ヒップホップ界に蔓延る「ウケ」狙いのアーティストが多い中,そんなものたちとは全くかけ離れた,真の音楽的才能(歌手としての堅実な才能)の持ち主であるといえるでしょう。

本年3月にリリースされた『Love Me Like』より,以下の楽曲「Know Names」をご紹介いたします。

「現代の若者黒人文化(young black culture)をリードする人物」にレイアナ・ジェイを選んだ理由は,彼女はカーディBやニッキー・ミナージュのような派手さはまったくないですが,堅実な音楽性という意味では,最近ヒップホップ界に蔓延る「単なるハヤり」や「ウケ」を遥かに凌駕するものを彼女に感じたからです。冒頭の生ライヴストリームでは,レイアナは,1970年代に活躍したテディ・ペンダーグラス(Teddy Pendergrass)という黒人男性歌手についても言及しています。現代の新しいものばかりで固めるのではなく,「古きをたずねる」ということをちゃんとしています。そういった面を持ち合わせている若手アーティストはこれからも必ず伸びていくことでしょう。

昨年も書きましたが,彼女の名前=Rayana Jayの読み方は「レイアナ・ジェイ」です。英語でこれを発音すると,「レイナ」のように「ア」にアクセントを置きます。つまり「ア」を強く発音するのですが,レイアナ自身が経験した,以下のエピソードを紹介いたします。

あなたはスタバ(正式名:Starbucks)で働いていたとします。そこへ,とある黒人女性のお客さんがやってきて,抹茶ラテのトールを注文しました。スタバでは,カップにお客様の名前を書くことになっていますので,あなたは,その女性に尋ねます。「How may I call you?(あなたのお名前は?)」,すると女性はこう答えました「You can call me ‘Rayana(レイナ)’.」と。

さて,それを聞いたあなたは,彼女の名前を英語で,カップにどう書きますか?忘れてはいけないのは,ここはスタバです。まわりはお客様でにぎわっておりますので,けっして静かな場所とは言えません。静かなところで,耳をすまして,「レイアナ」と聞いたわけではなく,まわりで抹茶ラテを作るシェーカーがガガガガガガガーーーー!と鳴って,がちゃがちゃしているところでそのお客さんが「レイアナ」と発音するのを聞いて,あなたはカップにその名前を英語で書かなきゃいけないのです。さて,英語でなんと書きますか?

これは実際に起こったシチュエーションです。レイアナ・ジェイがアトランタ(ジョージア州アトランタ)にあるTrap Museumを観に旅行した際,寄ったスタバで出てきた抹茶ラテのカップにはこう書かれておりました。

「Rihanna(リーナ)」と。

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なお,女性ファッション雑誌(Nylon Mag)で取り上げられた企画「60秒でわかるレイアナ・ジェイ」を掲載しておきます。

最後に,レイアナ・ジェイの最新アルバム『Love Me Like』から楽曲「Know Names」をセッションした映像を掲載しておきます.

(文責:Jun Nishihara)

ヒップホップ音楽とイスラム教の関係 (アルバム『Ye』のリリースから今年6月1日で1年を経たいま振り返る(その①))

本年6月1日で,カニエ・ウェストのアルバム『Ye』リリースから1年が経ちました。昨年のちょうど今頃,暑い夏が始まろうとしていた頃でした,同アルバムを当サイトで翻訳・対訳を掲載させていただき,いろいろな方々に読んで頂きました。当サイトにお越しいただき,読んでいただき,ありがとうございました。そして今日もここに来ていただき,ありがとうございます。

リリースから1年後の今,アルバム『Ye』を振り返って,カニエがアルバム冒頭の楽曲「I Thought About Killing You」でラップしている歌詞の一部について,注目しておきたいと思います。

カニエはこういう歌詞で曲を始めております。

[Verse: Kanye West]
I called up my loved ones, I called up my cousins
I called up the Muslims, said I’m ’bout to go dumb
Get so bright, it’s no sun, get so loud, I hear none
Screamed so loud, got no lungs, hurt so bad, I go numb
Time to bring in the drums, that prrt-pu-pu-pum
Set the NewTone on ’em, set the nuke off on ’em
I need coke with no rum, I taste coke on her tongue
I don’t joke with no one, they’ll say he die so young
I done had a bad case of too many bad days
Got too many bad traits, used the floor for ashtrays
I don’t do shit halfway, I’ma clear the cache

(ヴァース:カニエ・ウェスト)
愛する人たちに,親戚兄弟に,ムスリムの仲間たちに
電話してこう伝えた,「ついに俺,暴れちゃいそう」
まぶしくなって,太陽は沈んだ,爆音で,音は消えた
悲鳴をあげた,声は出ない,傷ついた,感覚は麻痺した
叩いて響かせろ,太鼓の音を,ダ・ダ・ダ・ダン・ダン
オートチューンを効かせて,ピッチを爆発させろ
ラム無しのコーラ,彼女の舌にコカの味
ふざけてんじゃない,よく言われるよ,「早死にするよ」って
ツイてない日が連続で起こったケースが俺
悪い癖がありすぎて,床を灰皿代わりにしたりして
中途半端なことはしたくない,すべて真っさらにしてやりたい
(対訳:Jun Nishihara)

曲の冒頭でカニエは「I called up my loved ones / I called up my cousins / I called up the Muslims(俺は愛する人たち,親戚兄弟,そしてムスリムの仲間たちに電話してこう伝えた)」と言っております。

ムスリムとはイスラム教の教えを信仰する教徒の人々のことですが,カニエ・ウェストにとって,そしてヒップホップ,はたまた黒人の歴史にとって,イスラム教は切っても切れない一つの宗教といいますか思想でした。アメリカに住む黒人が信仰するイスラム教は一般的にブラック・イスラーム(Black Islam)と呼ばれているものですが,どういう宗派があって,ヒップホップ・アーティストでは誰がそのイスラム教徒で,どういう教えで,なぜ彼らはイスラム教徒に改宗したのか,というのを簡単にひもといていきたいと思います。

カニエ・ウェストの周辺では,カニエと同郷出身でむかしからともに活動してきたラッパーのモス・デフ(Mos Def)がカニエに一番近いムスリム(イスラム教徒)といえるでしょう。

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(上記写真はモス・デフです。)

モス・デフは2011年9月に自身の名前を法的に「Yasiin Bey(ヤシーン・ベイ)」に改名し,2016年1月19日,カニエ・ウェストのホームページでヒップホップ業界からの引退宣言をしました。モス・デフ改めヤシーン・ベイは,母親シェロン・スミスと父親アブドゥル・ラフマーンの子です。父親アブドゥル・ラフマーンはネーション・オヴ・イスラーム(Nation of Islam(略してNOI))の信者で,ワリス・ディーン・ムハンマドというスンニ派(イスラム教徒の宗派)に信徒として仕えました。モス・デフは20代の頃,ア・トライブ・コールド・クエスト(A Tribe Called Quest)という偉大なるヒップホップ・グループのメンバーでありイスラム教徒であるアリ・シャヒード・ムハンマドやQティップ(Q-Tip)とよくつるんでいました。

また,カニエと同郷シカゴ出身ですが,カニエよりも若い世代のルーペ・フィアスコ(Lupe Fiasco)もムスリムです。

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(上記写真はルーペ・フィアスコです。)

ジェイZのレーベル=ロック・ネーション(Roc Nation)に所属しているヒップホップ・アーティスト=ジェイ・エレクトロニカ(Jay Electronica)も熱心なイスラム教徒です。彼の歌詞には,「神の平和を」を意味するムスリム同士の挨拶言葉「As-salāmu ʿalaykum(السَّلَامُ عَلَيْكُمْ)」がよく使われております。以下は,ジェイ・エレクトロニカの名曲「Exhibit C」ですが,以下YouTubeのタイムライン3:11~3:17の箇所で,アラビア語らしきイスラームの祈りの言葉が発せられております。

上記曲「Exhibit C」のプロデューサーはかの有名なジャスト・ブレイズです。ジェイZの名盤『The Blueprint』(2011年9月11日(9.11の日)にリリース)でカニエ・ウェストと双璧をなしたベテラン・プロデューサーです。ビヨンセのアルバム『レモネード(Lemonade)』に収録されているケンドリック・ラマーをfeat.した楽曲「Freedom」も,ジャスト・ブレイズがプロデューサーを務めております。

さて,話を戻しますと,このようにヒップホップ界にはイスラム教徒はめずらしくなく,他にも以下のとおり結構な数でイスラム教徒と呼ばれるヒップホップアーティストはいます。一部を挙げますと,T-ペイン,DJキャレド,バスタ・ライムス,SZA(最近ポップ界でも人気の女性歌手),スウィズ・ビーツ,MCレン,ケヴィン・ゲイツ,アイス・キューブ,フレンチ・モンタナ,フリーウェイ,ビッグ・ダディ・ケイン,ビーニー・シーゲル,エイコン,スカーフェイス,シェック・ウェス,ニプシー・ハッスルです。彼らの多くは,モス・デフの父親と同じく,ネーション・オヴ・イスラーム(NOI)を中心に信仰しているようですが,各アーティストによっては,どれくらい信仰しているかについての程度の差はあると思います。

ブラック・イスラームにおけるネーション・オヴ・イスラームという宗派は,どういった教えなのでしょうか。大きくわけて3つのことがいえるそうです。

1.伝統的イスラームの教えと同じくイスラム教の五行は基本的に信じているが(例えば「ラマダンの月には断食を行う」(夕刻のイフタールまでご飯を食べないし,水も飲まない。しかし最近は,パキスタンやアフガニスタン,イラクなど,酷暑の夏には水分を取らないのは危険なため,水だけは許されている国もあるそうです。)など)しかし,解釈の面で伝統的イスラームと相違している部分もある。

2.堕落した人生を送っている黒人を救うとする。(街角や監獄で,未来への希望も夢もなく時を過ごしている黒人たちや,麻薬,白人女性に対するレイプ,家庭崩壊などといったような(黒人として)誇るべき生き方でない道を歩んでいる者を救うとする。)

3.イライジャ・ムハンマドを使徒とする。(2019年時点の指導者はルイス・ファラカーンであるが,指導者は時代によって変われど,使徒(Messenger)であるイライジャ・ムハンマドは変わらない(注:NOIが解体しない限り。))ちなみに,預言者(Prophet)は伝統的イスラームもNOIも,ムハンマドであると信じる。

さて,こうしたネーション・オヴ・イスラームという黒人を対象とした特有のイスラム教のひとつの思想に,ブラック・ムスリムであるモス・デフやルーペ・フィアスコ,ジェイ・エレクトロニカは,どういうところに魅了されたのでしょか。

この続きは,後日,ひもといて参ります。

(文責:Jun Nishihara)