Cam’ronのアルバム『Purple Haze』を知っているか?

今般の新型コロナウイルスの影響で,アメリカ人も隔離の生活(quarantine life)を送っているわけですけれど,家でこもっている全米の人たちにとって,あらゆる「おうち娯楽(At-Home Entertainment)」が届けられています。

まずは全米音楽ストリーミングサイトであるTIDALでは,「At Home with TIDAL」という題名で,これまでのTIDALインタヴューをまとめて放映しています。

そこでニューヨーク市はイースト・ハーレム出身のベテランラッパー=キャムロン(Cam’ron)のインタヴューが流れていました。

キャムロンについては以前このサイトでも少しだけ取り上げました。

キャムロンがこれまでリリースしてきた公式ソロ・アルバムは7枚。以下のとおりです。

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『Confessions of Fire』

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『S.D.E.』

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『Come Home with Me』

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『Purple Haze』

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『Killa Season』

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『Crime Pays』

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『Purple Haze 2』

この中でキャムロンはじぶんが一番気に入っているアルバムとして,TIDALインタヴュー中で,話します。それが『Purple Haze』であると。

アルバム『Purple Haze』については,知っている人も,リリース当時から何回も聴いてきた人も,この機会にもう一度,聴き直すべき名作です。

収録楽曲は以下のとおりです。

1. “Intro”
2. “More Gangsta Music” (featuring Juelz Santana)
3. “Get Down”
4. “Welcome to Purple Haze” (skit)
5. “Killa Cam”
6. “Leave Me Alone, Pt. 2”
7. “Down and Out” (featuring Kanye West and Syleena Johnson)
8. “Harlem Streets”
9. “Rude Boy” (skit)
10. “Girls” (featuring Mona Lisa)
11. “I’m a Chicken Head” (skit)
12. “Soap Opera”
13. “O.T.” (skit)
14. “Bubble Music”
15. “More Reasons” (featuring Jaheim)
16. “The Block” (skit)
17. “The Dope Man” (featuring Jim Jones)
18. “Family Ties” (featuring Nicole Wray)
19. “Adrenaline” (featuring Twista and Psycho Drama)
20. “Hey Lady” (featuring Freekey Zekey)
21. “Shake” (featuring J.R. Writer)
22. “Get ‘Em Girls”
23. “Dip-Set Forever”
24. “Take ‘Em to Church” (featuring Juelz Santana and Un Kasa)

第一印象は,収録楽曲が多いこと。その理由はなんといっても「スキット」の多さです。

まぁインタヴューの中でも笑い話として語られますが,当時のヒップホップ・アルバムはそれはまぁスキットが多かった。スキットを挟むことによって,ゲットーの暮らしっていうものを再現していた。黒人(とくに若者黒人)が実際に話している英語の使い方等を所々に散りばめて,黒人生活の「リアルさ」を再現していた。とくにキャムロンはそれを「ユーモア」を込めた会話を含め,収録していた。2002年〜2009年頃までにリリースされたヒップホップアルバムはとてもスキット(skits)が多かった。なつかしい。

さて,当時からすでにカニエ・ウェスト(Kanye West)は売れっ子のプロデューサーとして働いていたわけですけれど,キャムロンの当該アルバムには当時,DipSet常連のザ・ヒートメイカーズ(The Heatmakerz:例えば2曲目)と並んで,登場しておりました。カニエ・ウェストが上記収録楽曲中でプロデューサーとして関わったのは2曲。収録楽曲7.の「Down and Out」と楽曲23.の「Dip-Set Forever」です。

当時キャムロン自身,ソウルフルなサンプリングを好んでいましたので,カニエ・ウェストのソウルフルなサンプリング・ネタ使いと相性が合ったのでしょう。聴いているこちらも,とても心地よいです。

23曲も聴くのは大変ですので,つまみ食いするとするならば,次の曲を聴くべきでしょう。キャムロンとその周辺(DipSet野郎たち)のこのぶっ飛んだ音楽に打ちのめされてみてください。

【聴くべき曲目リスト】
7. Down and Out(カニエのソウル・ネタに乗っけた,キャムロンの遅めのラップに注目!)
8. Harlem Streets
10. Girls(マドンナのガールズ・ネタ使い!当時,シングル・ヒットした曲。)
21. Shake(テンポ,ビート,リズム,どれを取ってもクラブ用。ハーレム・シェイクを別の次元にもっていった,当時にしては,ぶっ飛んでいた曲。)
23. Dip-Set Forever

とくに23曲目の「Dip-Set Forever」はソウル・サンプリングを極端に回しているので,もう涙ものです。こんなことをやる人は,最近もういないですよ。こんな一歩まちがえるとシロウトが作ったビートに聞こえてしまいそうなネタ回しを,ここまで大袈裟に,真正面から,愚直にできるのは,もうカニエしかいない。そのカニエの「まわし」についてこれるキャムロンのラップは極上です。

ちなみに,最後になりましたが,この『Purple Haze』は小生自身,初めて対訳をさせてもらったアルバムでもあります。ユニバーサル・ミュージックの皆様,ありがとうございました。この感謝,Dip-Set THANKS Forever。

(文責:Jun Nishihara)

追悼:ソウルの女王=アレサ・フランクリンがヒップホップに与えた影響(その2)

前回のつづきです。

NYはハーレム出身のラッパー=キャムロン(Cam’ron)の引き出しから,この一曲です。

2002年5月にリリースされたヒップホップ名盤『Come Home With Me』から,シングルリリースされた「Day Dreaming」を取り上げます。

このアルバムには,ジェイZがfeat.されている「Welcome to New York City(ニューヨークシティーへようこそ)」という曲も収録されています。

さて,アレサ・フランクリンがヒップホップ界に与えた影響は,当時の若手ラッパーT.I.にとどまらず,ハーレム出身のベテラン・ラッパー=キャムロンにも及びました。

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キャムロンは素晴らしい数々のヒップホップ名曲を残していますが,その中でもアレサ・フランクリンの「Day Dreaming」がサンプリングされた,名前が似ている(スペルの綴り方は異なります)「Daydreaming」(プロデュースはカニエ・ウェスト!)から,この歌詞を取り上げます。

I know fucking with a crook is whack
I lied, cheated, still took me back
What I do? Turn around, ask you to cook me crack
Boost my work with a jerk and tell the truth it hurts
Cause you even ask me to come through to church
What I do? Act second rate
I stole ten dollars out of the collection plate
But I’m ready to change
You got my heart, plus you smart
And the sex is great
And you hate rap, I like that girl
I argue with Keisha, I ain’t like that girl
You jumped right out the car, to fight that girl
You beat her ass, you ain’t have to bite that girl
And my baby got the best thighs
And my whip she ain’t never got to test drive
Copped her the X5
You paid attention when no one acknowledge me
This is my public apology, holla B

ダメ男と付き合うのはダサいなんて思ってんだろ
ウソついて,浮気もした,それでも俺のこと,好きでいてくれた
君にムリも言った,ふり向けば,「コカイン寄こせ」とか言って
仕事前にフェラして,やる気出させてくれた,ちょい痛かったけど
「あたしと教会,いっしょに行こ」って,さそってくれた
でも俺は,ふざけてた
教会の募金箱から,10ドル盗んだり
でも良い人間になろうと決めた
君の愛にやられた,おまけに君は育ちもイイし
君とのセックス,たまんないし
君はラップが大嫌い,それでもダイジョウブ
キーシャと口喧嘩,それはダイジョウブじゃない
君は車から飛び降りて,キーシャを黙らしてくれた
ボッコボコにしてくれた,噛みつくまでもなかった
それに君の太もも最高さ
俺のアメ車,試乗するまでもないさ
君にBMW買ってあげた
だれひとり俺のこと相手にしてくれなかった時に,君だけは認めてくれた
この曲は君に捧げる,謝礼の曲さ,連絡してこいよ,Bちゃんよ

カニエ・ウェストは,この曲のプロデュースに関わっています。前回の「追悼:アレサ・フランクリン」のページでも書きましたが,古い曲をサンプリングすることによって,その曲が現代・現在によみがえります。カニエ・ウェストがやってきたことの偉大なひとつは,まさに,このことでした。

アレサ・フランクリンの才能は,そうそう受け継げるものではありません。しかし,こうして,40年の月日を経て,現代のヒップホップでアレサ・フランクリンの歌声が聴けるなら,「アレサの代わり」がいなくとも,いまのところは,なんとかやってけるかもしれないと感じています。

「アレサ・フランクリンの代わり」はいないかもしれませんが,「アレサ・フランクリンの魂(ソウル)」は,こうして現代のヒップホップ音楽を媒介として,受け継がれていくでしょう。

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Source: photo: WENN.com

(文責:Jun Nishihara)