続いては,ブルックリンからマンハッタンダウンタウンの映像を細切れに集めたコラージュをミュージックビデオに昇華させたタリブ・クウェリの名曲「Get By」。“get by”とは「ありあわせのものでなんとかやっていく」という意味で,ゼータクなんてできねぇよ的なサヴァイヴァル・ミュージック。「just to get by」ってタリブがリピートしますよね?それ「なんとかやっていくだけで」っていう意味です。
そして,密かにHip-Hop史上原点回帰の楽曲「What We Do」。一つには,ワルやらなきゃ生きてけねえ時代を映し出した音楽。まさに「正しさ」とは逆のことをやって生きていた2002年。他方で,ハスリングという,ヒップホップ界で当時流行った金儲けのやり方も表現している。2002年という時代が俺らの心の中で永遠にすたれることのないように,この曲にそれらを閉じ込めてくれた,偉大なる曲。この曲を聴けば,2002年当時の精神(ワルやってた,その代わり勢いはめちゃめちゃあった生き様)に即,戻してくれる。
It’s the return of the Mahdi, it’s the return of the Akhis
It’s the return of the lost and found tribe of Shabazz, the Annunakis
It’s the return of Mr. Shakur spittin’ out phlegm at paparazzi
That’s my new style
When I lay down in my bed it’s like my head in the vice
When I look inside the mirror all I see is flaws
When I look inside the mirror all I see is Mars
In the wee hours of night, tryna squeeze out bars
Bismillah, just so y’all could pick me apart?
3月13日(金)に突如リリースされたアルバム『A Written Testimony』。ここへ来て,誰が想定していただろうか。10年以上,ジェイ・エレクトロニカのアルバムがリリースされることをファンは待ち,待ち,待ち続けていた。まるでDr. Dreの『Chronic 2.0』のごとく。しかし一向にリリースされない。10年以上待ってもこれなんで,ファンは半ば諦めかけていた。
Peaceful teaching of Rumi, but don’t confuse me
You mouth off for the cameras, I make a silent movie
Now here’s some jewelry
No civilization is conquered from the outside until it destroys itself from within
If it come from me and Hov, consider it Qur’an
If it come from any of those, consider it Harām
The minaret that Jigga built me on the Dome of the Roc
Was crafted, so beautifully, consider this Adhan
From a hard place and a rock to the Roc Nation of Islam
1行目の「コーラン(クルァーン)」というのはイスラム教で最も聖なるものといわれている聖書のことです。
2行目の「ハラーム」というのは,ハラール(ムスリム教徒が食して良いとされる合法的と認められたもの)の反対語。つまり,イスラームとして認められていない(非合法の)もの。
3行目の「ミナレット」というのは,イスラム教の国に旅行したことある方であればご存知のとおり,イスラム寺院の尖塔(せんとう)であり,ここの上から人々に歌(アザーン=アドハーン)で礼拝の時を知らせます。
同じく3行目の「the Dome of the Roc」とは,ジェイZのレーベル=ロック・ネーション(Roc Nation)の軍団組織(ドーム)を指す。
4行目の「アドハーン」とは上記でも出た「アザーン」のこと。アザーンという歌をうたい,「これからお祈りが始まりますよ」という時をみんなに知らせる。イスラム教の国ではこれが1日に5回ある。タイミングは,早朝,正午,午後,日没後,就寝前。世界のどこにいても,これを守る。世界のどこにいても,メッカの方向を向いて,額を地面につけて,お祈りする。
5行目の「ロック・ネーション・オヴ・イスラーム」とは,Roc Nationと当サイトでも頻出しているNation of Islamaを重ね合わせている。
最後にJAY-Zがこうラップします。
Think of things I said that you hated then
Empirical facts that can’t be debated now
Things you say today, I was sayin’ then
Tell us who your favorite now
これまで3枚のEPを発表し,ついに今年3月22日に初の公式アルバム『Love Me Like』をリリースしました。
いまだにウィキペディアでは取り上げられておりませんが,上記アルバム『Love Me Like』はレイアナにとって人生初の全米ビルボードでチャートインし,冒頭の生ストリーミングでは女友達から「charting queen(チャートの女王)」と呼ばれるようにまでなりました(もちろん誇張していますし,大げさですけれど)。人生初にリリースしたアルバムが,全米ビルボードチャートのR&B部門第25位を達成。メジャーデビューは果たしていないどころか,インディーズのレーベル=EMPIRE RECORDSとの契約であるにもかかわらず,25位というのはアングラでのデビュー作にしてはなかなか良いポジションでしょう。
本年3月にリリースされた『Love Me Like』より,以下の楽曲「Know Names」をご紹介いたします。
「現代の若者黒人文化(young black culture)をリードする人物」にレイアナ・ジェイを選んだ理由は,彼女はカーディBやニッキー・ミナージュのような派手さはまったくないですが,堅実な音楽性という意味では,最近ヒップホップ界に蔓延る「単なるハヤり」や「ウケ」を遥かに凌駕するものを彼女に感じたからです。冒頭の生ライヴストリームでは,レイアナは,1970年代に活躍したテディ・ペンダーグラス(Teddy Pendergrass)という黒人男性歌手についても言及しています。現代の新しいものばかりで固めるのではなく,「古きをたずねる」ということをちゃんとしています。そういった面を持ち合わせている若手アーティストはこれからも必ず伸びていくことでしょう。
あなたはスタバ(正式名:Starbucks)で働いていたとします。そこへ,とある黒人女性のお客さんがやってきて,抹茶ラテのトールを注文しました。スタバでは,カップにお客様の名前を書くことになっていますので,あなたは,その女性に尋ねます。「How may I call you?(あなたのお名前は?)」,すると女性はこう答えました「You can call me ‘Rayana(レイアナ)’.」と。
リリースから1年後の今,アルバム『Ye』を振り返って,カニエがアルバム冒頭の楽曲「I Thought About Killing You」でラップしている歌詞の一部について,注目しておきたいと思います。
カニエはこういう歌詞で曲を始めております。
[Verse: Kanye West]
I called up my loved ones, I called up my cousins
I called up the Muslims, said I’m ’bout to go dumb
Get so bright, it’s no sun, get so loud, I hear none
Screamed so loud, got no lungs, hurt so bad, I go numb
Time to bring in the drums, that prrt-pu-pu-pum
Set the NewTone on ’em, set the nuke off on ’em
I need coke with no rum, I taste coke on her tongue
I don’t joke with no one, they’ll say he die so young
I done had a bad case of too many bad days
Got too many bad traits, used the floor for ashtrays
I don’t do shit halfway, I’ma clear the cache
モス・デフは2011年9月に自身の名前を法的に「Yasiin Bey(ヤシーン・ベイ)」に改名し,2016年1月19日,カニエ・ウェストのホームページでヒップホップ業界からの引退宣言をしました。モス・デフ改めヤシーン・ベイは,母親シェロン・スミスと父親アブドゥル・ラフマーンの子です。父親アブドゥル・ラフマーンはネーション・オヴ・イスラーム(Nation of Islam(略してNOI))の信者で,ワリス・ディーン・ムハンマドというスンニ派(イスラム教徒の宗派)に信徒として仕えました。モス・デフは20代の頃,ア・トライブ・コールド・クエスト(A Tribe Called Quest)という偉大なるヒップホップ・グループのメンバーでありイスラム教徒であるアリ・シャヒード・ムハンマドやQティップ(Q-Tip)とよくつるんでいました。
Big bills like a platypus
A caterpillar’s comin’ to get the cannabis
I’m lookin’ for the smoke but you motherfuckers are scatterin’ Batterin’ everything and I’ve had it with the inadequate Man, I can see my dick is standin’ stiff as a mannequin
And I’m bringin’ the bandana back, and the fuckin’ headband again
A handkerchief and I’m thinkin’ of bringin’ the fuckin’ fingerless gloves back
And not giving a singular fuck, like fuck rap
You are my Rhythm and Blues, the one who invented the cool
The one’s who dented the rules
And showed the world what my niggas could do, ay!
– Rayana Jay “Sunkissed”
“My friend once said that the church is like the hood Juilliard…like everything starts here.”
(あたしの友達がかつて言ってた。地元の教会って,ゲットーのジュリアード大学みたいなもんよ,ってね。何もかもそこから始まったわ。)
引き続いてジェイZの曲です。
ジェイの隠れた傑作である「Wishing On A Star」(1998年3月11日リリース)という曲を紹介します。「隠れた」というのは米国で公式にリリースされたジェイZのアルバムには,この曲は収録されたことがないからです。現時点(2018年9月時点)では,月額サービスのApple Musicでも聴くことはできません。
もともとこの曲は,ジェイZのアルバム『In My Lifetime Vol.1』のUK(英国)盤のボーナストラックとして収録されました。その後,日本では,ジェイZの『Chapter One: Greatest Hits』(2002年リリース盤)に収録され,聴くことができます。