元ネタの曲を知る(12):ドレイク ⇄ JAY-Z ⇄ ボビー・グレン

どうも,西原潤です。

1年半以上前ですが,2018年9月にこういう見出しを1件UPしました。

ジェイZのヒップホップ界歴史に残る名盤『The Blueprint』に収録されている「Song Cry」の元ネタを探ったものでした。

この曲が世にリリースされて,かれこれ18年以上が過ぎておりますが,その18年以上が経過した今,ヒップホップ界でベテランの域に入り始めているドレイクが,この名曲を引っ提げお手本にして,「When To Say When」という曲を今年2月にリリースしました。そして,2020年5月1日にリリースした公式ミックステープに同曲「When To Say When」を収録しました。

私の尊敬するHip-Hop JournalistにElliott Wilsonという方がいます。Elliott(YN)は80年代から米ヒップホップ雑誌(『ego trip』『The Source』『XXL』『RESPECT.』)の編集者(後に編集長)として名を上げてきた人物です。最近はTIDALで放送されている動画付きのラッパー・インタヴュー集「Rap Radar Podcast」を立ち上げております。すでに現時点で,90話まで進んでおりますので,約90名のラッパーをインタヴューしてきた計算になります。このインタヴュー集は,TIDALを月額購買していれば,視聴可能です。

昨年2019年12月25日に公開されたElliott Wilson & B.Dotとドレイク(Drake)のインタヴューは,ドレイクのトロントの自宅で行われました。インタヴューが“あの”ドレイクの自宅で行われた,というのは,どれだけElliottがヒップホップ界でリスペクトされているか,ということを物語っています。このインタヴューはTIDALを月額払って観てみる価値はありますので,お金に少し余裕のある方は,月額スタートしてみると良いですよ。

さて,そのドレイクが「When To Say When」を今年2月にリリースした際に,ミュージックビデオも同日公開されました。そのミュージックビデオは,ドレイクがジェイZの生まれ育ったブルックリンのMarcy Projectsに赴き,そこで撮影しているという感動的なものです。なぜ感動的か,というのは幾つか理由はあるのですが,1つは,タイミングです。2001年8月に亡くなったAaliyahをドレイク自身,当時好きで聴いていました。当時2001年にドレイクはラッパーとしてまだ世に出ていませんでしたが,同じ世代の人間として私も,Aaliyahを当時ヘヴィロテで聴いておりました。当時ヘヴィーローテーションで流していた大好きなアルバムの歌手が亡くなった,と。それを知ったのは,当時インターネットなんて僕はやってなかったですから,誰かアメリカに住んでいた友達から聞いたんだと思います。新聞でも見たのかな?もうアメリカと黒人音楽にどっぷり浸かっていた2001年でしたので,当時の様々な思い出が,「Song Cry」を聴くと甦ってくるのです。そういう最中のことでしたから,Aaliyahが亡くなった翌月にリリースされた『The Blueprint』収録楽曲の最も感動的である曲をサンプリング(という言葉が安っぽく聞こえてしまうので使いたくない)否,サンプリングではなく「お手本として起用させていただいた」曲をドレイクがリリースしたというのは,そして同日にリリースされたミュージックビデオを拝見した時には,あの当時を思い出して,いろいろな感情が溢れ出してきたため,涙が出てしまったのでした。

ここにその「When To Say When」と「Song Cry」と,そしてBobby Glennの「Sounds Like A Love Song」を掲載しておきます。

Drake – “When To Say When”

JAY-Z – “Song Cry”
(ミュージックビデオの冒頭で2002年という文字が出てきますが,この曲を収録したアルバムが出たのは2001年です。当時はミュージックビデオ(当時の言葉でPV)は時間をかけて製作されていましたから,曲が世に出て1年,2年後にPVが発表されても不自然ではなかったのです。最近のように,リードシングル曲ならまだしも,それ以外の曲がリリースされて,同日中にミュージックビデオも世に出るなんていうのは極めて稀なことだったのです。)

Bobby Glenn – “Sounds Like A Love Song”

(文責&キュレーション:Jun Nishihara)

Cam’ronのアルバム『Purple Haze』を知っているか?

今般の新型コロナウイルスの影響で,アメリカ人も隔離の生活(quarantine life)を送っているわけですけれど,家でこもっている全米の人たちにとって,あらゆる「おうち娯楽(At-Home Entertainment)」が届けられています。

まずは全米音楽ストリーミングサイトであるTIDALでは,「At Home with TIDAL」という題名で,これまでのTIDALインタヴューをまとめて放映しています。

そこでニューヨーク市はイースト・ハーレム出身のベテランラッパー=キャムロン(Cam’ron)のインタヴューが流れていました。

キャムロンについては以前このサイトでも少しだけ取り上げました。

キャムロンがこれまでリリースしてきた公式ソロ・アルバムは7枚。以下のとおりです。

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『Confessions of Fire』

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『S.D.E.』

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『Come Home with Me』

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『Purple Haze』

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『Killa Season』

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『Crime Pays』

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『Purple Haze 2』

この中でキャムロンはじぶんが一番気に入っているアルバムとして,TIDALインタヴュー中で,話します。それが『Purple Haze』であると。

アルバム『Purple Haze』については,知っている人も,リリース当時から何回も聴いてきた人も,この機会にもう一度,聴き直すべき名作です。

収録楽曲は以下のとおりです。

1. “Intro”
2. “More Gangsta Music” (featuring Juelz Santana)
3. “Get Down”
4. “Welcome to Purple Haze” (skit)
5. “Killa Cam”
6. “Leave Me Alone, Pt. 2”
7. “Down and Out” (featuring Kanye West and Syleena Johnson)
8. “Harlem Streets”
9. “Rude Boy” (skit)
10. “Girls” (featuring Mona Lisa)
11. “I’m a Chicken Head” (skit)
12. “Soap Opera”
13. “O.T.” (skit)
14. “Bubble Music”
15. “More Reasons” (featuring Jaheim)
16. “The Block” (skit)
17. “The Dope Man” (featuring Jim Jones)
18. “Family Ties” (featuring Nicole Wray)
19. “Adrenaline” (featuring Twista and Psycho Drama)
20. “Hey Lady” (featuring Freekey Zekey)
21. “Shake” (featuring J.R. Writer)
22. “Get ‘Em Girls”
23. “Dip-Set Forever”
24. “Take ‘Em to Church” (featuring Juelz Santana and Un Kasa)

第一印象は,収録楽曲が多いこと。その理由はなんといっても「スキット」の多さです。

まぁインタヴューの中でも笑い話として語られますが,当時のヒップホップ・アルバムはそれはまぁスキットが多かった。スキットを挟むことによって,ゲットーの暮らしっていうものを再現していた。黒人(とくに若者黒人)が実際に話している英語の使い方等を所々に散りばめて,黒人生活の「リアルさ」を再現していた。とくにキャムロンはそれを「ユーモア」を込めた会話を含め,収録していた。2002年〜2009年頃までにリリースされたヒップホップアルバムはとてもスキット(skits)が多かった。なつかしい。

さて,当時からすでにカニエ・ウェスト(Kanye West)は売れっ子のプロデューサーとして働いていたわけですけれど,キャムロンの当該アルバムには当時,DipSet常連のザ・ヒートメイカーズ(The Heatmakerz:例えば2曲目)と並んで,登場しておりました。カニエ・ウェストが上記収録楽曲中でプロデューサーとして関わったのは2曲。収録楽曲7.の「Down and Out」と楽曲23.の「Dip-Set Forever」です。

当時キャムロン自身,ソウルフルなサンプリングを好んでいましたので,カニエ・ウェストのソウルフルなサンプリング・ネタ使いと相性が合ったのでしょう。聴いているこちらも,とても心地よいです。

23曲も聴くのは大変ですので,つまみ食いするとするならば,次の曲を聴くべきでしょう。キャムロンとその周辺(DipSet野郎たち)のこのぶっ飛んだ音楽に打ちのめされてみてください。

【聴くべき曲目リスト】
7. Down and Out(カニエのソウル・ネタに乗っけた,キャムロンの遅めのラップに注目!)
8. Harlem Streets
10. Girls(マドンナのガールズ・ネタ使い!当時,シングル・ヒットした曲。)
21. Shake(テンポ,ビート,リズム,どれを取ってもクラブ用。ハーレム・シェイクを別の次元にもっていった,当時にしては,ぶっ飛んでいた曲。)
23. Dip-Set Forever

とくに23曲目の「Dip-Set Forever」はソウル・サンプリングを極端に回しているので,もう涙ものです。こんなことをやる人は,最近もういないですよ。こんな一歩まちがえるとシロウトが作ったビートに聞こえてしまいそうなネタ回しを,ここまで大袈裟に,真正面から,愚直にできるのは,もうカニエしかいない。そのカニエの「まわし」についてこれるキャムロンのラップは極上です。

ちなみに,最後になりましたが,この『Purple Haze』は小生自身,初めて対訳をさせてもらったアルバムでもあります。ユニバーサル・ミュージックの皆様,ありがとうございました。この感謝,Dip-Set THANKS Forever。

(文責:Jun Nishihara)