ちょうどカニエ・ウェスト(当サイトではYeの日本語名を「カニエ・ウェスト」に統一しております)が2018年にキッド・カディ(KiD CuDi)と組んで、Kids See Ghostsというスーパーグループを組んだ際、カディはラッパーとして売り込んでおらず、アルバム中、ほとんどラップしていませんでした。自分はもう「ラップはしないんだ」と。しかしながら、当時アメリカのメディアではカディのことをrapperと紹介していることが少なくありませんでした。
最近ではメインストリームのメディアに出ることは多くありませんが、カニエが創設したG.O.O.D. Musicのようなメジャーレーベルでデビューを果たしたカディのようなアーティストが当時、15年前に、真っ向からラップを否定する発言をしているのは珍しかった。カディは2010年のMTVインタビューでこう発言しています。
“I’m just over rapping. I don’t get any fulfillment out of it anymore… I really don’t get any fulfillment out of writing a 16 [bar verse]. […] I get more fulfillment now out of singing and learning to play the guitar.” – MTV News (2010)
「もうラップには飽きた。そこからは何の充実感も得られなくなってしまった・・・16小節のヴァースを書いても何の満足感を得られなくなったんだ。(中略)今は歌ったり、ギターを習ったりすることのほうが、よっぽど満たされるよ。」(キッド・カディ、2010年、MTV Newsのインタビューで)
Hip-Hop業界では、まだラップが売れる時代であった当時にこれを言っているHip-Hopアーティストは少なかった。しかしながら、この時期以降、ラップでもなくR&Bでもないポジションにいるアーティストが少なからず現れてきた。
Smino(スミノ)やNoname(ノーネイム)、それから今は亡きXXXTENTACION(エックスエックスエックス・テンタシオン)、Juice WRLD(ジュース・ワールド)。この2名(XXXTENTACIONとJuice WRLD)については、亡くなった後である現在も熱狂的なファンがい続ける物凄いカリスマ性を帯びたアーティストであるのは間違いない。さらに現在に近づいてくると、Saba(サバ)やLil Uzi Vert(リル・ウージー・ヴァート)、SiR(サー)やEarthGang(アースギャング)、Lil Durk(リル・ダーク)、そしてRoddy Ricch(ロディー・リッチ)と、カディの発言は受け継がれてきた。
こうして考えると、時代の趨勢がどうであろうと、世の中がどう思おうと、自分が感じている心の声に正直でいたほうがいいことがわかる。でないと、充実感を得られない、満足感を得られないことをやり続けることとなり、且つ、その後、それを受け継いでくれる人が現れない、もしくは、現れたとしても、自分の言葉がきっかけではなく、自分がそれに乗っかるほうになる、という”イノベーター”にはずっとなれないままとなる。そういった意味で、2010年に心の声に忠実にこのような発言をして、その後、それに続くフォロワーを確実にしたカディは、イノベーターであったといえる。
そのキッド・カディ(KiD CuDi)が16小節のヴァースで構成されたラップではなく、心の底から自分がやりたいと思っていた「歌」ができているミュージックビデオを3点、紹介します。
1. KiD CuDi – Mr. Solo Dolo III
2. KiD CuDi – Mojo So Dope
3. Kanye West feat. KiD CuDi – “Welcome To Heartbreak”
世の中には(いやYouTubeでも)キッド・カディを批判する内容のもので溢れているでしょう。メインストリームのHip-Hopカルチャーから外れたことをずーっとやってきた人間ですから。でもまさにカディにとっては「世の中に理解されない」ということが彼自身の個性であった。それに共感するアメリカ中の隠れ若者は多かった。公には公表していなくとも。そしてカディは生き続けた・・・
最後に、3週間前にリリースされた新曲「Neverland」のステージパフォーマンスを掲載して終わります。
(文責&キュレーター:Jun Nishihara)






