第3位「ティアナ・テイラーの“Gonna Love Me”のリミックスが大人と若者のヒップホップを融合させた!」(今年2018年に出た最も偉大なるヒップホップ曲ランキング)

いよいよ今年トップ3になりました。

ヒップホップは「若者のモノ」という概念が常に付きまといましたが,そんな考えは今年,ティアナ・テイラー(Teyana Taylor)がぶち破ってくれました。オトナも若者もカンケーなく,ヒップホップそのものを歌って踊れる曲をリリースしてくれました。

それが「Gonna Love Me」のリミックスです。

ミュージックビデオを観ていただくと分かりますが,これはもう,ほんとうに,90’s(90年代)へのオマージュです。80年代に生まれた世代で,90年代にヒップホップを聴いて育った方々へ,28歳になったばかりの若いティアナ・テイラーが作った素晴らしい楽曲です。

もともとはティアナ・テイラーがソロで歌う(フィーチャリング無しの)曲でしたが,ここへラップをのっけて作ったのがリミックスです。リミックスには,ゴーストフェイス・キラ(Ghostface Killah),メソッド・マン(Method Man),そしてレイクウォン(Raekwon)という全員NYのスタテン・アイランド(Staten Island)出身のウータンクラン(Wu-Tang Clan)メンバーを迎えています。ラップはスタテン出身のウータン,歌うのはハーレム出身のティアナ・テイラーという(もうR&Bにとどまらない)ヒップホップ曲です。

ミュージックビデオの冒頭スキットで,ハーレム出身のティアナ・テイラーとスタテン出身のゴーストフェイスが恋人同士という設定で,ゴーストフェイスの浮気が見つかり,たがいに喧嘩するという設定は,なんか嬉しいですね。ハーレムとスタテンが恋人なんだけど,たまにするハーレムとスタテンの喧嘩みたいで。ハーレム出身のディディ(別名パフ・ダディ,別名Pディディ,別名パフィー,別名パフ)と,スタテン出身のウータンが喧嘩するみたいで。ヒップホップファンにとっては,こういうコラボレーションは嬉しくなりますし,なによりも,90年代へのオマージュというこの曲の重要な点は見逃すことはできません。90’s Hip-Hop(90年代ヒップホップ)を彷彿とさせるこの曲を,今年2018年No.3に選びました。

補足1:上記ミュージックビデオの1:53〜2:02までのティアナのダンスは,ディディ・ボップ(Diddy Bop)という90年代にパフ・ダディとMa$eが流行らせたダンスです。もうこれはまさに90年代ヒップホップへのオマージュ以外の何者でもないですね。

補足2:こういうのを若者英語で#90svibes(ハッシュタグ#90’sヴァイブス)と言います。

補足3:ティアナ・テイラーよ,こういう素晴らしき曲&ミュージックビデオを作ってくれて,ありがとう。

補足4:冒頭のスキットでゴーストフェイスが激おこのティアナに向かって,”You smell the Jackson?”と言って,ティアナが”You think it’s funny?”と言っています。これは本当はめちゃめちゃおもしろいジョークなのですが,なにせティアナがマジでキレている状況下ですので,ゴーストフェイスはおもいきり笑えず,クスッと吹き出すだけで,ティアナは全く笑ってませんね。
 アウトキャスト(Outkast)の曲で「Ms. Jackson」という曲があります。黒人の男が黒人のガールフレンドのお母さんに向かって「ジャクソンさん,すいません!あなたの娘さんに浮気してしまいました!」って本気で謝罪しているのか,ふざけているのか,もうわからないラップ曲なのですが,ここのジョークはそれの言及ですね。”You smell the Jackson?”「なんかジャクソンさんっぽく臭うぞ」って本気で申し訳ないと思っているのか,ふざけているのか,ゴーストフェイスもこんな真面目なシチュエーションで,おもしろいこと言うので,自分自身でクスッと吹き出してしまっています。だからティアナも”You think it’s funny?”「ふざけてんの?」って返しています。こういうディテール(細部)が意外にこのビデオ,おもしろかったりします。

(文責:Jun Nishihara)