第47位:Young M.Aの“Thotiana”フリースタイル(後にニッキー・ミナージュ版も)(今年出たHip-Hop名曲名場面ベスト50)

じぶんの曲が他の人にfreestyleでラップされた時,その曲は一人歩きした,つまりそれはヒット曲として認められた証だ,といわれます。

それがまさに,ブルーフェイスの“Thotiana”でした。5年後にこの曲がまだ生き残っているかどうかはさておき,今年の若者の間での全米ヒット曲の一つとして,この曲は数えられることになりました。

NYはブルックリン出身の27歳であるヤングM.A(Young M.A)も,この曲のフリースタイルにジャンプしました。以下がそれです。

これは,オリジナルのブルーフェイス“Thotiana”よりも良いと思いますが,しかし,ヤングM.Aにとっちゃ,人の曲にじぶんのラップを乗っけているだけ。生みの親はやはりブルーフェイスなので,どっちのバージョンがより良いかなんて比較できるもんじゃないですが,このヤングM.Aのバージョンのほうが歌詞はおもしろいですねえ。

題名の“Thotiana”は黒人女子の名前でよくある「タティアナ」。おそらく両親のどちらかがラテン系の血が入っているので,名前の語尾に「アナ」という接辞尾を付けているのでしょう。つまり,黒人女子にラテン系の血が混じっているということは,女体に適度にくねりがあり,とても魅力的な女の子,ということ。ヤングM.Aは女子好きの女子。なので以下の歌詞です。

Thotiana, real name Tatiana (Okay)
Body like Rihanna, but she not Rihanna (No way)
I make the pussy wet, she need a mop-iana, (Ooh)
When she bust down make her buss it like a Glock-iana (Grrt)
She love it when I eat the boxi-iana (Ooh)
Make her body jerk, legs lock-iana (Ooh)

トッティアナ,本名,タティアナ(オッケー)
リアーナ似の体つき,でもリアーナじゃねえ(オッケー)
その女のアソコを濡らして,持ってこいモップ,アーナ(ウーッ)
ケツ落として踊らせて,潮を吹かせろ,グロッキー,アーナ(ガーッ)
アタイが女のアソコを舐めれば,快感に悶えてる(ウーッ)
女の体は痙攣して,太ももに挟まれて(ウーッ)

実はこれには,ニッキー・ミナージュ・バージョンもございます。掲載しておきます。

(文責及び対訳:Jun Nishihara)

エミネムのラップ術に学ぶ(その①:教材はロジックの楽曲「Homicide」)

5月10日(金),ロジック(Logic)はニューアルバム『Confessions of a Dangerous Mind(=アブナい脳ミソから湧き出る告白)』をリリースした。

(翻訳のポイントとして,人がPC画面をパッと見て映るこのタイトルの「長さ」を考慮したとき,
“Confessions of a Dangerous Mind”

「狂気の告白」
とサラッと訳してしまうと,イメージが思い浮かばない。
とは言え,はたまた
「キケンな頭を持った男が打ち明ける告白」
と説明的に(英語原文では所有格の名詞構造なのに,日本語ではS+V+O構造で)訳すとイメージはできるが,原文の構造をくずしてしまう。

原文の構文をくずさずに,だいたい同じ「長さ」を尊重して
「アブない脳ミソから湧き出る告白」
と訳せば,ぱっと見,原文の語彙レベル(confessionsとかdangerousとかなかなかスペルが長い語を使用しているスタイル)を保ちつつ,人がパッと一目で視界に入れた際に,同じ長さだと感じられる訳になる。
ここでの翻訳のポイントは,“of”という前置詞を“from”と読み替えて「〜の」ではなく「〜から」と訳すところがミソである。)

さて,このアルバムの楽曲「Homicide」ではエミネム(Eminem)をフィーチャリング・ラッパーとして迎えて,スピード感ある高速ラップを披露している。この曲でロジックとエミネムを聴き比べてみると,全体的なスピードは双方とも優劣ない勝負を見せているが,やはりエミネムの凄まじさは,ロジックとは比較にならないほど,優れているといえるでしょう。

どういうところがエミネムが優れているか,といいますと,以下3点のとおりでしょう。

1.アクセントの場所を入れ替えるワザ
2.次から次へと連打のように繰り出す韻踏み
3.息の長さ

説明していきましょう。

1.アクセントの場所を入れ替えるワザ

どんな英語の単語にも,シラブル(Syllable=音節)があります。たとえば,“bandana”という単語には,シラブルが3つあります。“ban/da/na”のように3音節に分かれます。「バン」「ダ」「ナ」です。簡単に言いますと,母音1つ(文字上の母音ではなく,音の上での母音。たとえば,beautifulという単語には,文字上の母音は5つありますが,音の上での母音は,「ビュー」「ティ」「フォ」と3つのみです)において,シラブルが1つと考えれば,簡単でしょう。

さて,そのシラブル1つに,アクセントが1つ決まっています。英語は日本語とは違い,上下のアクセント(イントネーション=抑揚)のある(つまり音楽のような)言語ですから,強弱あったり,上下あったり,高低あったり,音的な要素がいろいろ入っております。そして,“bandana”のアクセントは,“ban→DA⤴︎na→”となります。

そこで,もうちょっと話をややこしくして,こんどは別の単語とつなげてみましょう。

“I’m bringing the bandana back.”という一文があったとしましょう。
普通にこの一文を音読するとき,どこにアクセントがあるでしょうか。(つまり,この一文でもっとも強く発音するシラブル(音節)はどこでしょうか。)

答えは,“da”のシラブルです。
(「アイン・ブリンギン・ザ・バンダ⤴︎ーナ・バック」と「ダー」の箇所(シラブル)にもっとも強いアクセントが表れます。ちなみにもっとも弱く発音する所は「ザ」です。聞こえても小さい「ナ」くらいにしか聞こえません。)

これは普通にネイティヴのアメリカ人がこの一文を音読した場合です。

これをエミネムがラップすると,こうなります。
(タイムラインは2:56〜2:57の箇所です。一瞬で過ぎますので,注意して聴いて下さい。)

エミネムは通常のネイティヴが発音するアクセントとは違い,こういう風にラップします。

「ア⤵︎イン・ブリンギン→ナ→バンダ↑ナ→バック」

つまり,もっとも強く発音するアクセントを冒頭の「ア」に置き換えて,その他はフラットに流しています。しいていえば「ダ」にちょっぴりほんの強みを出すだけです。しかし1秒も経たないうちに,一瞬で通り過ぎていきますので,気合を込めて聴く必要があります。

しかし,これはエミネムのワザであり,他の箇所にも,アクセントの場所を入れ替えるというのがちらほら見られます。

例えば,次のような箇所でしょう。
アクセントの場所(エミネム特有のアクセントを入れ替える箇所)を大文字で書いておきますので,目で追いながら,エミネムのラップを聴いてみてください。

BEAST mode, motherfuckers ’bout to get hit
with so many foul lines, you’ll think I’m a FREE throw
figured it was about time for people to EAT crow
you about to get out-rhymed, how could I be DEthroned?
I stay on my toes like the REpo, a beHEmoth in SHEEP’s clothes
from the EAST Coast to the west, I’m the ETHOS and I’m THE goat
who the best, I don’t gotta say a fuckin’ THING, though
’cause emCEEs know

赤文字で反転した箇所と下線を引いた箇所が,エミネムがアクセントを置いている場所です。ネイティヴがこの文章を音読する際とは,異なる箇所にアクセントを置いてラップをしております。たとえば「dethrone(王座を奪う)」という単語のアクセントは「o」にありますが,エミネムは冒頭の「e」にアクセントを置き換えています。また「eat crow(カラスを食べている)」と話すとき,情報としては「何を食べているのか?」「カラス(crow)」が大事なのであって,普通であれば「crow」にアクセントを置きます。エミネムのように「イー(ea)」という音節を強調したいがために,普通の会話や普通の音読で「eat」にアクセントを置くネイティヴはいないでしょう。(「カラスをどうしているのか?」「食べて(eat)いる」という変わった会話をすることがない限り。ちなみに,「eat crow」はイディオムで「屈辱を味わう」や「大恥をかく」という意味です。)しかし,エミネムはこうしてアクセントの箇所を自由自在に入れ替えて,まるで楽器のようにラップを演奏しているのです。

さて,「2.次から次へと連打のように繰り出す韻踏み」と「3.息の長さ」については,来週土曜日,ご説明いたします。

(文責:Jun Nishihara)

DJキャレド,新曲「Higher」を故ニプシー・ハッスルを迎えてミュージックビデオと同時リリース。

ニプシー・ハッスルが亡くなる数日前に撮影されたミュージック・ビデオ「Higher」は,DJキャレドのニューアルバム『Father of Asahd』に収録されております。

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(写真はDJキャレドが溺愛する息子=アサド(Asahd)です。)

5月15日(水),自身のインスタグラムでDJキャレドは,新曲「Higher」の全収益を故ニプシー・ハッスルの遺族へ寄付することを発表いたしました。

ニプシー・ハッスルには二人の子供がいました。イマーニちゃんとクロス君です。この曲「Higher」で,ニプシー・ハッスルはこうラップしております。

Los Angeles love kinda of like Hussle and Boog
Emani turned ten, Kross turned two

ロサンゼルスへの愛,ハッスルとブーグのよう
イマーニは10歳になり,クロスは2歳になったばかり

註釈:
ブーグとは,ニプシーのフィアンセ=ローレン・ロンドンのこと。

ニプシーは亡くなる直前にこうして家族の名前を自身のラップに含めた,というのは,なんというか,不思議なものです。よくやるギャングの闘争のこととか,コカインを売りさばいてどれだけ稼いだとか,そういうことをラップするのではなく,死ぬ前に収録した曲に,こんな素晴らしいリリック(歌詞)を書くのは,彼がどれだけ家族思いだったかというのを象徴しているようです。

ニプシーは曲の冒頭でこうラップしています。

My granny 88, she had my uncle and then
A miscarriage back-to-back every year for like ten
Pregnant with my moms, doctor told her it was slim
Was bed rode for nine months, but gave birth in the end
Pops turned 60, he proud what we done
In one generation, he came from Africa young
He said he met my moms at the Century Club

バアちゃんは88歳,俺の叔父を最初に産んで,その後・・・
流産を繰り返した,毎年,それを10年間
そしてついに子を身ごもって,ドクターの検診で,栄養失調と言われた
9ヶ月ベッドで寝たっきり,でもついに産んでくれた,俺のかあちゃんを
オヤジは今60際,俺らがやってきたことを誇りに思ってくれている
世代をしょって,アフリカから若くして,移民としてこの国に行き着いた
オヤジは言う,「センチュリー・クラブって飯屋で,おまえのかあちゃんと出逢った」と

ニプシーのおばあさんは流産を11回繰り返した後に,ようやくニプシーの母親を身ごもったようです。ニプシーはインタヴューでこう語っておりました。「もしあの時,流産を繰り返していたバアちゃんが妊娠することを諦めていたら,じぶんはここに生まれていなかった」と。

曲中のサビでジョン・レジェンド(John Legend)がピアノを弾きながら,「We keep goin’ higher… higher…」と歌う時,ニプシーの魂が大空に高く,舞い上がっていくように感じられます。

ヴァース1は家族への想い,ヴァース2は生まれ育ったL.A.のストリートについてラップするニプシー。こうして見ると,この曲はニプシーの生き様をぎゅっと凝縮したような内容になっております。

【ご参考】
ニプシー・ハッスル(本名:アーミアス・アスゲドム(Ermias Asghedom))については以下もご参照願います。

☆第8位「本物のヒップホップファンであるのなら,ニプシー・ハッスルのアルバム『Victory Lap』を通しで聴くべし」(今年2018年に出た最も偉大なるヒップホップ曲ランキング)

☆追悼:ニプシー・ハッスル(Nipsey Hussle)

☆スヌープ・ドッグからの追悼の言葉(ニプシー・ハッスルへ)

☆ジェイZの“B-Sides”ライヴ・コンサート(その②:ニプシー・ハッスルへの追悼フリースタイル対訳)

(文責及び対訳:Jun Nishihara)

ヒップホップ歌詞引用解説:キャムロン「Horse & Carriage」の場合

1998年7月21日リリースの名作『Confessions Of Fire』は,後のディップセットのボス=キャムロン(Cam’Ron)のデビュー作です。NYCはハーレム出身。ハーレムと言えば色んなラッパーの出身地です。ディディ(パフ・ダディ),メイス,ビッグL,ブラック・ロブ,Qーティップ,J.R.ライター(ナツい!),そしてまさに「今」をきらめくティアナ・テイラー(先週金曜日にカニエ・プロダクションのアルバムをリリースしたばっか!),そしてキャムロン率いるディップ・セット軍団です。

このようにハーレムは素晴らしき数々のラッパーを輩出してきたヒップホップ聖地です。

そのキャムロンのデビュー作でもあり,名作と呼ばれる『Confessions Of Fire』より,楽曲「Horse & Carriage」から,以下の歌詞を引用します。

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Aye yo, I pull to the hotel with my shit on blast
Tell the valet “Motherfucker don’t hit my Jag”
Seen the bell boy, nigga he can kiss my ass
Just show me my room nigga, and get my bags
So the girl, that’s my hon, almost dropped his glass
I guess he was shocked when I touched her ass
It really wasn’t nothin’ she was peedy aight
“Does that say Harlem World?” yeah you readin’ it right
And we havin a party, be there tonight
Like Phil Collins have her in “The Heat Of The Night”
Cause Cam rocks the party (All Night Long)
‘Til when? (‘Til the early morn’)
It don’t stop (and uh) it don’t quit
(and uh) drop six (and uh) we pop Cris
Right now too tipsy to drive
But I got my horse and carriage right outside

エイヨゥ,自分の曲,爆音で鳴らして,カノジョと一緒にホテルへ行った
駐車係にカギ渡してこう言った,「俺のジャガー,ぶつけんじゃねえぜ」
フロントのベルボーイ,ちんたらしやがって
はよ部屋に連れてってくれ,俺のカバン持てよ
そいつ,俺のカノジョ見て,ジュースをこぼしやがった
カノジョのお尻さわってるとこ見て,そいつビビったんだろ
たいしたことねえよ,カノジョ,まぁまぁイケてんぜ
「そのジャケット,ハーレム・ワールドですか?」って,当たりめーだよ
今夜パーティーあっからよ,おまえも来いよ
フィル・コリンズのように,「今夜は燃えるぜ」
キャムのおかげでパーティー盛り上がり(ひとばんじゅー)
いつまで?(翌朝まで)
やめらんねー(それに)やめさせねー
(それに)高級車(それに)クリスタル・シャンパン
今は酔っ払って,ハンドル握れねえ
でも外によ,「馬と馬車」待たせてっからよ
(訳:Jun Nishihara)

キャムロンのこの歌詞の素晴らしいところは,ちゃんと物語が絵になって見えるところです。「女を連れてホテル行って,ベルボーイさそって,みんなでパーティー盛り上がって,朝まで酒飲んで,暴れてる。」といった内容。ちなみに高級車とシャンパンは,この時代からヒップホップの象徴として,「季語」のように使われています。ヒップホップ歌詞になくてはならない要素として,組み込まれています。

最近のアメリカの10代〜20代の若者は,キャムロンを聴いた人は少ないと思いますが,30〜40代でヒップホップが好きな人なら,必ずキャムロンやディップ・セットを聴いて育ってきています。ヒップホップにとって,とても大切な人物です。ヒップホップ史をちゃんと築いてきた重要人物の一人です。ぜひ,おぼえておいてください。

(文責:Jun Nishihara)