Nasアルバム『The Lost Tapes』(2002年)より,対訳「Purple」(ヴァース2)

前回に引き続き,Nasアルバム『The Lost Tapes』(2002年)収録の楽曲「Purple」より,ヴァース2の対訳をお届けいたします。

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Nasが初めて雑誌“Mass Appeal”のカバーを飾ったのは上記写真の2002年でした。その11年後の2013年,Nasは同雑誌の株主となり,オーナー側の立場となりました。“Mass Appeal”雑誌は1996年にポップ・カルチャーやヒップホップ文化(特にグラフィティ等)を紹介する雑誌として創設されました。そして2014年には雑誌のみならず,Mass Appeal社はレコードレーベルとしても幅を広げていきました。以下のビデオは今年2019年に開催された,Mass Appealレコードレーベルの5周年記念パーティです。

なお,Nasが立ちあげた事業としては他にも“Sweet Chick”というレストランがあります。まさに米国時間7月19日(金)に『The Lost Tapes 2』のリリースイベントとして,米TIDAL社提供で生放送インタヴューが開催された場所も,ブルックリンはBedford Ave.に位置する“Sweet Chick”です。ロケーションの詳細はコチラをどうぞ。

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さて,前置きが長くなってしまいましたが,以下,2002年にリリースされたおおもとの『The Lost Tapes』収録楽曲「Purple」よりヴァース2対訳を掲載いたします。

[Verse 2]
Y’all just wanna deal with drama
Talk about niggas who got things, y’all ready to kill his mama
Everything you into is underworld related
You sell your man out, not even your girl is sacred
You don’t trust a soul, hold up, you moldin’ soldiers
To pull guns quick and always look behind the shoulder
Think of how many dudes died tryna be down with you
Everybody’s under six feet of ground but you
Still standin’, still roamin’ through the streets, that’s real
You a survivor, knowin’ all the beef is ill
You got a bunch of thugs with you even now that’s ready
Trustin’ your judgment, quick to put it down, they deadly
The hood love you, but behind your back they pray for the day
A bullet hit your heart and ambulances take you away
That ain’t love, it’s hate, think of all the mothers at wakes
Whose sons you killed and you ain’t got a cut on your face?
Unmarked police cars roam the streets hard, the heat is God
Somebody tell these shorties reach for the stars
Instead they tell ’em how to reach through the bars holdin’ a mirror
Lookin’ down a tear in jail, makin’ weapons to kill ya
Weed smoke, three tokes, nigga, pour more Henny
He sighs with eyes that seen a war too many
Cold-blooded murderers, universal
Hood to hood, blowin’ smoke, state of mind is purple

(ヴァース2)
あんたらはドラマのように騒ぎ立ててばっか
金持ちの連中に嫉妬して,おふくろを人質にして
かかわっている世界は,どこに行ってもウラの社会
仲間の魂を売るやつもいれば,ガールフレンドでさえ狙ってくるやつもいる
誰一人でさえ信用できない,そうだろ,無邪気なヤツを戦士に育てあげ
条件反射で拳銃を握るまでにしては,常に後ろを振り向かせて不安を駆り立てる
おまえらに尽くそうとして死んでいったヤツはごまんといる
そんなヤツらはすでに地中に埋葬され,生き残っているのはおまえだけという有様
未だ立ち続け,ストリートをさまよう,リアルだろ
そんなおまえは生き残り(サヴァイヴァー),どんなビーフもイカシてる
おまえの跡をつけるサグ連中,いつだって飛びつく準備はできている
決断すればすぐ,いさかいなくキメる,致命的
ゲットーに愛されているというが,陰でヤツらはおまえが銃弾に倒れる日を
望み続けて祈ってる,救急車のサイレンを聞きたがってる
それは愛なんかじゃねえ,ヘイトってもんだ,通夜に参列する母親がどれだけ多いか
おまえが仕留めたその息子,にもかかわらず,おまえはかすれ傷ひとつとない
覆面パトカーがストリートをさまよう真夜中,熱気はプンプン
誰か女子に言ってやってくれ,「星空に手を伸ばすんだ」って
現実は異なり,最近の女子は刑務所の鉄ポールの間から腕を伸ばし手鏡を持ち上げる
豚箱にぶち込まれ,涙がしみる,そしてまた新たに武器が生産される
ハッパを焚いて,3発吸い込み,ヘネシーそそぐ
数え切れないほど目の当たりにしてきた戦(いく)さを思い出す瞳にため息をつく
冷血の殺人鬼,世界中どこにでもいる
ゲットーからゲットーへ,ハッパを一服吐き出して,俺の気分は「パープル」さ

(文責及び対訳:Jun Nishihara)

ヒップホップ歌詞引用解説:2ライヴ・クルー「Me So Horny」の場合。

ヒップホップの風物詩といえば,「お尻」と「女性」ですね。とくに「お尻」をフリフリする「女性」が出ているミュージックビデオが新旧問わず,どこでも流れています。「お尻」と「女性」を前面に出しているミュージックビデオを思いつくかぎり以下10個挙げてみます。

1.ネリー      「Tip Drill」
2.リュダクリス   「Pussy Poppin’」
3.レイ・シュリマー 「Shake It fast」
4.ヤングM.A    「Petty Wap」
5.トリーナ     「Damn」
6.フレンチ・モンタナ「Pop That」
7.イギー・アゼリア 「Kream」
8.タイガ      「Taste」
9.イン・ヤン・ツインズ「Salt Shaker」
10.69ボーイズ  「Tootsee Roll」

さて,今回紹介しますのは,1989年にリリースされた2ライヴ・クルーの名盤『As Nasty As They Wanna Be』アルバムからシングル曲としてカットされた「Me So Horny」という曲です。当時このアルバムは卑猥すぎる,歌詞は過激すぎる,ということで,2ライヴ・クルーの出身地=フロリダ州の州政府が「わいせつ罪」で訴え,逮捕しました。裁判は1990年に行われ,2年後の1992年に上級審が下級審の判決を却下し,リリースから3年の時を経て,無事,2ライヴ・クルーの名は晴れて,アルバムは市場に出回ることになりました。このアルバムは音楽の歴史で,史上初「わいせつ罪」をふっかけられたアルバムとして,名を残す大切なアルバムです。

ジャケ写真は以下のとおりです。

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これは卑猥すぎるということで,「お尻」を隠したアルバムジャケも出回りました。
まさに「クリーン版」ということですが,それがこのジャケです。

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「お尻」はうまく隠れていますが,余計に想像力が掻き立てられますね。

さて,この伝説のアルバムからシングルカットされた「Me So Horny」から,このヴァースを取り上げます。

Sitting at home with my dick on hard
So I got the black book for a freak to call
Picked up the telephone, then dialed the 7 digits
Said, “Yo, this Marquis, baby! Are you down with it?”
I arrived at her house, knocked on the door
Not having no idea of what the night had in store
I’m like a dog in heat, a freak without warning
I have an appetite for sex, cause me so horny

おうちでまったり,アソコは勃起
電話帳とってきて,エッチな女に電話した
受話器をあげて,カノジョの番号,ダイアルした
「もしもし,オレだオレ,マーキスだ,ベイビー,今夜エエか?」
カノジョの家着いて,玄関ノックした
期待はふくらみ,気分はウキウキ
まるで発情した狂犬,イカれた変態野郎
性欲止まんない,気分はムラムラ,たまんない
(訳:Jun Nishihara)

さて,マジメな話に戻しますと,2ライヴ・クルーはその後も名曲をずらずらと残しています。YouTubeやウィキペディアで検索してみると面白いかもしれません。

彼らがデビューしたのは1984年,「The Revelation」という曲をファーストシングルとしてリリースしました。創始メンバーの中には,世界で初めてのアジア系ラッパーと言われているフレッシュ・キッド・アイスもいました。残念ながら彼は昨年2017年7月に人間界を去りましたが,彼の遺した偉大なる遺産(レガシー)は後のマイアミ出身のラッパー達=Trick Daddy, DJ Khaled達に受け継がれていくこととなりました。

それを最もうまく表現しているのが,フロリダ出身で女性ラッパーのトリーナです。トリーナ自身もミュージックビデオでお尻をフリフリしておりますが,彼女こそが2ライヴ・クルーに認められたSlip-N-Slideレーベルの初女性アーティストです。Trina feat. Trick Daddy – “Pull Over”を検索してみてください。

話は少し逸れますが,女性ラッパーというと最近,特に増えてきました。そういう数多の女性ラッパーがいる中で,唯一昔っっっからヒップホップシーンを席巻し続け,いまだに現役というラッパーは,リル・キムではなく,トリーナですね。しかしながら,リル・キムがヒップホップの世界に与えた影響は計り知れないものですが,トリーナの「静か」な安定感については,そうそう右に出るものはいないと思います。

ニッキー・ミナージュ以降にデビューした女性ラッパーは除外して,それ以前にいた,リル・キム,ミッシー・エリオット,ローリン・ヒル,フォクシー・ブラウン,クイーン・ラティーファ,MCライト,イーヴ,レミー・マー,ダ・ブラット・・・といる中で,唯一今もアルバムやミックステープを出し続けているのはトリーナくらいだと思います。ウィキペディア情報では,トリーナは2010年以降はアルバムをリリースしていないことになっておりますが,2011年に『Diamonds Are Forever』,2012年に『Back 2 Business』,2014年に『Incredible』,2015年に『Trina EP』,2016年に『Dynasty 6』というEPを含むミックステープをリリースしています。そして今年2018年にはアルバム『The One』をリリースする予定です。

フロリダ州マイアミつながりで,2ライヴ・クルーからトリーナの話へと移行しましたが,「お尻」と「女性」というヒップホップ風物詩は,30年前の1988年でも,現代のミュージックビデオでも健在です。

こうして「今」のヒップホップに多大なる影響を与え続けているラッパー達=2ライヴ・クルーを是非,覚えておいてください,そしてご自身でもいろいろなところで探してみてください。LPレコード店等に行くと,掘り出し物のLP盤が見つかったりします。

(文責:Jun Nishihara)