DJキャレド,新曲「Higher」を故ニプシー・ハッスルを迎えてミュージックビデオと同時リリース。

ニプシー・ハッスルが亡くなる数日前に撮影されたミュージック・ビデオ「Higher」は,DJキャレドのニューアルバム『Father of Asahd』に収録されております。

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(写真はDJキャレドが溺愛する息子=アサド(Asahd)です。)

5月15日(水),自身のインスタグラムでDJキャレドは,新曲「Higher」の全収益を故ニプシー・ハッスルの遺族へ寄付することを発表いたしました。

ニプシー・ハッスルには二人の子供がいました。イマーニちゃんとクロス君です。この曲「Higher」で,ニプシー・ハッスルはこうラップしております。

Los Angeles love kinda of like Hussle and Boog
Emani turned ten, Kross turned two

ロサンゼルスへの愛,ハッスルとブーグのよう
イマーニは10歳になり,クロスは2歳になったばかり

註釈:
ブーグとは,ニプシーのフィアンセ=ローレン・ロンドンのこと。

ニプシーは亡くなる直前にこうして家族の名前を自身のラップに含めた,というのは,なんというか,不思議なものです。よくやるギャングの闘争のこととか,コカインを売りさばいてどれだけ稼いだとか,そういうことをラップするのではなく,死ぬ前に収録した曲に,こんな素晴らしいリリック(歌詞)を書くのは,彼がどれだけ家族思いだったかというのを象徴しているようです。

ニプシーは曲の冒頭でこうラップしています。

My granny 88, she had my uncle and then
A miscarriage back-to-back every year for like ten
Pregnant with my moms, doctor told her it was slim
Was bed rode for nine months, but gave birth in the end
Pops turned 60, he proud what we done
In one generation, he came from Africa young
He said he met my moms at the Century Club

バアちゃんは88歳,俺の叔父を最初に産んで,その後・・・
流産を繰り返した,毎年,それを10年間
そしてついに子を身ごもって,ドクターの検診で,栄養失調と言われた
9ヶ月ベッドで寝たっきり,でもついに産んでくれた,俺のかあちゃんを
オヤジは今60際,俺らがやってきたことを誇りに思ってくれている
世代をしょって,アフリカから若くして,移民としてこの国に行き着いた
オヤジは言う,「センチュリー・クラブって飯屋で,おまえのかあちゃんと出逢った」と

ニプシーのおばあさんは流産を11回繰り返した後に,ようやくニプシーの母親を身ごもったようです。ニプシーはインタヴューでこう語っておりました。「もしあの時,流産を繰り返していたバアちゃんが妊娠することを諦めていたら,じぶんはここに生まれていなかった」と。

曲中のサビでジョン・レジェンド(John Legend)がピアノを弾きながら,「We keep goin’ higher… higher…」と歌う時,ニプシーの魂が大空に高く,舞い上がっていくように感じられます。

ヴァース1は家族への想い,ヴァース2は生まれ育ったL.A.のストリートについてラップするニプシー。こうして見ると,この曲はニプシーの生き様をぎゅっと凝縮したような内容になっております。

【ご参考】
ニプシー・ハッスル(本名:アーミアス・アスゲドム(Ermias Asghedom))については以下もご参照願います。

☆第8位「本物のヒップホップファンであるのなら,ニプシー・ハッスルのアルバム『Victory Lap』を通しで聴くべし」(今年2018年に出た最も偉大なるヒップホップ曲ランキング)

☆追悼:ニプシー・ハッスル(Nipsey Hussle)

☆スヌープ・ドッグからの追悼の言葉(ニプシー・ハッスルへ)

☆ジェイZの“B-Sides”ライヴ・コンサート(その②:ニプシー・ハッスルへの追悼フリースタイル対訳)

(文責及び対訳:Jun Nishihara)