ドレイクに影響を与え,そして影響を受けた,UKの黒人音楽シーン(その③)

まずは,こちらをお聴き頂いて,この英国ヒップホップの雰囲気を十分に堪能して下さい。

ドレイク(Drake)が2017年3月にリリースしたUKミュージックシーンの影響をモロに受けた(heavily influenced)アルバム『More Life』には,UK(英国)のR&Bシンガーソングライターであるジョルジャ・スミス(Jorja Smith)もフィーチャリングされていました。

ジョルジャ・スミスは英国中部に位置するウェスト・ミッドランド州ウォル・ソール市の生まれ。父親はジャマイカ人で母親はイギリス人。2018年にリリースされた公式デビューアルバム『Lost & Found』は「UK R&Bチャート」で第1位を記録。毎年イギリスで開催される音楽の祭典式=ブリット・アワード(The Brit Awards)では,2018年にクリティクス・チョイス・アワード(音楽評論家が選ぶアーティスト)を受賞。翌年2019年には,同ブリット・アワードのベスト・フィメール・ソロ・アーティスト(最優秀女子ソロアーティスト)部門で賞を受賞しました。

雨季が多い英国のしっとりした雰囲気を醸し出す音楽もあれば,冒頭のように現代英国のヒップホップシーンを映し出す楽曲も披露するという多才ぶり。彼女の幾つかのミュージックビデオを以下に紹介いたします。

Jorja Smith – “Goodbyes”

Jorja Smith – “Teenage Fantasy”

Jorja Smith – “Where Did I Go?”

Jorja Smith – “The One”

そして2018年に大ヒットしたマーベル・スタジオ製作の映画『ブラックパンサー』のサウンドトラックでもジョルジャはフィーチャリングされておりました。それがこちらです。

Jorja Smith – “I Am”

最後に英国ラッパーであるストームジー(Stormzy)と,生粋のナイジェリア生まれラッパー=バーナ・ボーイ(Burna Boy)と共演した楽曲をそれぞれ掲載いたします。ストームジーやバーナ・ボーイと共演してここまでぴったりウマが“合う”女性のR&Bアーティストというのは珍しく,ジョルジャ・スミスならではの味が出ていることが伺えます。

Jorja Smith feat. Stormzy – “Let Me Down”

Jorja Smith feat. Burna Boy – “Be Honest”

(文責&キュレーティング:Jun Nishihara)

ドレイクに影響を与え,そして影響を受けた,UKの黒人音楽シーン(その①)

2017年3月にリリースされたドレイク(Drake)のアルバム『More Life』で特筆すべきことは,アルバム全体をとおして,UK(英国)調のヒップホップシーンが鮮やかに表現されている点です。(このアルバムを「公式ミックステープ」と呼んでいるメディアもあるそうですが,ここでは「アルバム」と呼ぶことにしたいと思います。)

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本アルバムで共演しているアーティストは,Jorja Smith,Black Coffee,Sampha,Baka Not Nice,Giggsなど,英国出身もしくは英国のミュージックシーンに影響を受けてきたアーティストが勢揃いしております。

この中でも収録楽曲⑧「4422」という雨の日のロンドンを彷彿とさせるしっとりとした音調の曲に,英国はロンドン南部のモーデン(Morden)出身アーティスト=サンファ(Sampha)がfeat.されています。

サンファは2016年9月にリリースされた,ビヨンセの妹であるソランジュ(Solange)のアルバム『A Seat At The Table』でも共演しておりました。

実はこのサンファとドレイクの共演は2013年のアルバム『Nothing Was The Same』の楽曲12「Too Much」にまで遡ります。

ドレイクのアルバムに起用された2013年以降,サンファは共演アーティスト(featured artist)としてどんどん売れ始めていきます。

2014年のBlood Orangeとの共演(楽曲「A Kiss Goodbye」),2016年カニエ・ウェストとの共演(楽曲「Saint Pablo」),2016年ソランジュとの共演(楽曲「Don’t Touch My Hair」),2017年ドレイクとの共演(楽曲「4422」),2017年現代ジャズの大物=Kamasi Washingtonとの共演(楽曲「Mountains of Gold」)等々です。そして遂に同年2017年,自身のデビューアルバム『Process』をリリースします。

現代ヒップホップ/R&Bシーンでは,静かに,UKの黒人音楽シーンがグツグツと出現し始めてきております。ヒップホップはもうアメリカ人のものだけじゃないんだよ,と言わんばかりに。

それが見事に垣間見れるのが,ドレイクの2017年発売のアルバム『More Life』でした。

この『More Life』というアルバムが米国のヒップホップシーンに与えた影響,つまり,UKの音楽シーンをそのまんまアメリカに引っ張ってきたという,その偉大さを振り返るとともに,その原点の一つであり,サンファのキャリアに非常な影響を与えた,ドレイクとサンファの共演作品
「Too Much」を以下に掲載しておきます。以下掲載する映像は,英国BBC Radio 1で放映されたサンファのライヴ・パフォーマンスです。

(文責及びキュレーション:Jun Nishihara)

元ネタの曲を知る(12):ドレイク ⇄ JAY-Z ⇄ ボビー・グレン

どうも,西原潤です。

1年半以上前ですが,2018年9月にこういう見出しを1件UPしました。

ジェイZのヒップホップ界歴史に残る名盤『The Blueprint』に収録されている「Song Cry」の元ネタを探ったものでした。

この曲が世にリリースされて,かれこれ18年以上が過ぎておりますが,その18年以上が経過した今,ヒップホップ界でベテランの域に入り始めているドレイクが,この名曲を引っ提げお手本にして,「When To Say When」という曲を今年2月にリリースしました。そして,2020年5月1日にリリースした公式ミックステープに同曲「When To Say When」を収録しました。

私の尊敬するHip-Hop JournalistにElliott Wilsonという方がいます。Elliott(YN)は80年代から米ヒップホップ雑誌(『ego trip』『The Source』『XXL』『RESPECT.』)の編集者(後に編集長)として名を上げてきた人物です。最近はTIDALで放送されている動画付きのラッパー・インタヴュー集「Rap Radar Podcast」を立ち上げております。すでに現時点で,90話まで進んでおりますので,約90名のラッパーをインタヴューしてきた計算になります。このインタヴュー集は,TIDALを月額購買していれば,視聴可能です。

昨年2019年12月25日に公開されたElliott Wilson & B.Dotとドレイク(Drake)のインタヴューは,ドレイクのトロントの自宅で行われました。インタヴューが“あの”ドレイクの自宅で行われた,というのは,どれだけElliottがヒップホップ界でリスペクトされているか,ということを物語っています。このインタヴューはTIDALを月額払って観てみる価値はありますので,お金に少し余裕のある方は,月額スタートしてみると良いですよ。

さて,そのドレイクが「When To Say When」を今年2月にリリースした際に,ミュージックビデオも同日公開されました。そのミュージックビデオは,ドレイクがジェイZの生まれ育ったブルックリンのMarcy Projectsに赴き,そこで撮影しているという感動的なものです。なぜ感動的か,というのは幾つか理由はあるのですが,1つは,タイミングです。2001年8月に亡くなったAaliyahをドレイク自身,当時好きで聴いていました。当時2001年にドレイクはラッパーとしてまだ世に出ていませんでしたが,同じ世代の人間として私も,Aaliyahを当時ヘヴィロテで聴いておりました。当時ヘヴィーローテーションで流していた大好きなアルバムの歌手が亡くなった,と。それを知ったのは,当時インターネットなんて僕はやってなかったですから,誰かアメリカに住んでいた友達から聞いたんだと思います。新聞でも見たのかな?もうアメリカと黒人音楽にどっぷり浸かっていた2001年でしたので,当時の様々な思い出が,「Song Cry」を聴くと甦ってくるのです。そういう最中のことでしたから,Aaliyahが亡くなった翌月にリリースされた『The Blueprint』収録楽曲の最も感動的である曲をサンプリング(という言葉が安っぽく聞こえてしまうので使いたくない)否,サンプリングではなく「お手本として起用させていただいた」曲をドレイクがリリースしたというのは,そして同日にリリースされたミュージックビデオを拝見した時には,あの当時を思い出して,いろいろな感情が溢れ出してきたため,涙が出てしまったのでした。

ここにその「When To Say When」と「Song Cry」と,そしてBobby Glennの「Sounds Like A Love Song」を掲載しておきます。

Drake – “When To Say When”

JAY-Z – “Song Cry”
(ミュージックビデオの冒頭で2002年という文字が出てきますが,この曲を収録したアルバムが出たのは2001年です。当時はミュージックビデオ(当時の言葉でPV)は時間をかけて製作されていましたから,曲が世に出て1年,2年後にPVが発表されても不自然ではなかったのです。最近のように,リードシングル曲ならまだしも,それ以外の曲がリリースされて,同日中にミュージックビデオも世に出るなんていうのは極めて稀なことだったのです。)

Bobby Glenn – “Sounds Like A Love Song”

(文責&キュレーション:Jun Nishihara)

ドレイクのデモテープならぬミックステープ登場!タイトルは『Dark Lane Demo Tapes』。

先週は,いそがしい週でした。週の中日(なかび)にミーガン・ジー・スタリオン(Megan Thee Stallion)がビヨンセをフィーチャリングした「Savage Remix」をリリースし,全米がそのRemixで躍りまくっていた最中さながらに,ドレイク(Drake)が新盤公式ミックステープ『Dark Lane Demo Tapes』をリリースしました。

ゆーたら,現代黒人音楽のスリー・トップですよ。ミーガン,ビヨンセ,そしてドレイク。この3人が話題となった先週は2020年始まって,ヒップホップ界的にはなかなか濃い週でした。

そのドレイクの『Dark Lane Demo Tapes』,アルバムジャケはコチラ。

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聴きどころは以下のとおり。

収録楽曲,②「When To Say When」,③「Chicago Freestyle」,⑤「Toosie Slide」の3曲に関しては,3曲とも2020年になってから世に出回っていたストリート・シングル曲。それぞれにミュージック・ビデオもリリースされております。

既出の上記3曲以外で,今回のミックステープで初出の楽曲としては④「Not You Too」(クリス・ブラウンを迎えて,ムードある曲調)⑦「Time Flies」(ポップな仕上がりで,中毒性のあるフック),⑩「Pain 1993」(若者がリスペクトするファッションデザイナー=イアン・コナー(Ian Connor)に捧げた曲),12「From Florida With Love」(2009年に銃を持った強盗にガンポイントで狙われたドレイク自身の体験をもとに曲作りしたもの。まさにアルバムタイトルのとおり“ダーク”な曲調。),そして最終曲14「War」はいわゆる「UK Tings(UK調子)」で作り上げたラップスタイル。他のドレイクのラップスタイルとは全く異なった調子でラップするドレイクに注目。これは数年前から英国(United Kingdom)出身のラッパーと連れ始めたドレイクならではの曲です。

以上,ミックステープの良さは適度に力を抜いて聴けるというところ。収録楽曲の2曲目「When To Say When」以外は,力を抜いて聴けるという,どこへでも持っていけそうな1枚です。

(キュレーティング:Jun Nishihara)

第14位:アメリカ中の女子の間で話題・共感を呼んだSummer Walkerのアルバム『Over It』(2019年Hip-Hop名曲名場面ベスト50)

2019年,ティーンエイジャーから20代,30代〜と,アメリカ中の女子の間で話題と共感を呼んだ女子専用のアルバム『Over It』がリリースされました。今年デビューしたR&Bアーティスト=サマー・ウォーカー(Summer Walker)はジョージア州アトランタ出身の23歳。同アルバムのリードシングル『Girls Need Love Remix』ではドレイク(Drake)をフィーチャリングしたことでまずは超話題となり,その他,アルバム収録楽曲「Come Thru」ではアッシャー(Usher)のナツメロ!!!!!!!!「You Make Me Wanna…」を元ネタのサンプリングとしてゼータクに起用し,しかも本人!!のUsherまでフィーチャリングしたという昔っからのR&B好きには堪らない曲に仕上がっています。

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それでは,リードシングルとなったドレイクをfeat.した曲「Girls Need Love Remix」をどうぞ。

そして本人アッシャーをfeat.したことで話題の曲「Come Thru」もどうぞ。

そして,その元ネタとしてR&B史上最重要ってなもんじゃない,もうR&Bの基本として昔っから聴いておくべきアッシャー(Usher)の名曲「You Make Me Wanna…」がこちらです。リリースは1997年です。黒人音楽がメインストリームとなり始めていた当時,MTVやBETでミュージックビデオが流れまくっておりました。

今年2019年も「黒人音楽の研究室」に来てくれて,ありがとうございました。来年2020年も引き続き,どうぞ宜しくお願い申し上げます。2020年1月1日お正月は第13位から,引き続き2019年ランキングを続けます。

(文責:Jun Nishihara)

第18位:アメリカ中を巻き込んだエロい歌詞とバリバリのリア充ぶり=シティ・ガールズのシングル曲「Act Up」(2019年Hip-Hop名曲名場面ベスト50)

昨年2018年に大ブレイクしたガールズ・ラップユニット=CITY GIRLS(シティ・ガールズ)。去年の社会現象ともなったドレイクの「KiKi! Do you love ME?!」の曲=「In My Feelings」がキッカケとなりシティ・ガールズは大ブレイクしました。同郷のトリーナ(Trina)の愛弟子(まなでし),シティ・ガールズがまさにトリーナの影響を直に受けて育った女子MCたちです。

そして今年も彼女らのシングル曲「Act Up」で,アメリカ中を巻き込み,お尻フリフリ,態度デカデカ,テンションバリバリの女子たちとゲイ業界の男たちを踊らせました。村上春樹も唸るほどのダンス,ダンス,ダンス。

そしてなんといってもハヤりの「Periodt!」(と,最後にtが付く)のフレーズを生み出した張本人たち,Periodt! まぁ,日本語では「丸(マル)」ですけどね。(丸!)

昨年はカーディBとの「Twerk」,おまけにアルバム『Girl Code』をリリースし,今年も売れまくって,現在ノリノリのシティ・ガールズ。

アルバム『Girl Code』から,楽曲「Clout Chasing」を掲載しておきます。

以下はシティ・ガールズ「Act Up」です。

(文責:Jun Nishihara)

第22位:Drakeのアルバム『Care Package』(2019年Hip-Hop名曲名場面ベスト50)

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これはドレイク(Drake)の「やさしさ」が詰まった贈り物です。ドレイクが今までリリースしてきた曲で,以前アルバムには収録されてこなかった楽曲が入っています。たとえば楽曲「Paris Morton Music」,これは大元はリック・ロス(Rick Ross)のヒップホップ史に残る名曲「Aston Martin Music」が元ネタです。

今まで「買えなかった」ドレイクの曲が,このアルバムに揃っている,というゼータクなアルバムです。たとえば「5AM in Toronto」でフリースタイルをカマすドレイクがアルバムで(やっと)聴けるようになりました。

ドレイクは2016年にアルバム『Views』をリリースし,2017年にミックステープ『More Life』をリリースし,2018年に『Scorpion』をリリースし,本年2019年に当該コンピレーションアルバム『Care Package』をリリースしました。ここ数年,毎年のように安定して作品をリリースし続けているドレイクの「安定ぶり(この場合はstabilityではなくconsistency)」は,ラッパーには珍しい特性でしょう。

(文責:Jun Nishihara)

第27位:Chris Brown x Drakeの大ヒット曲「No Guidance」(今年出たHip-Hop名曲名場面ベスト50)

R&B界の王子=クリス・ブラウンと,ヒップホップ界の6God=ドレイク,この二人がゼータクなタッグを組んでリリースした曲。それが今年イチのヒップホップダンス曲「No Guidance」でした。これはもう説明不要。これを今年のヒット曲と呼ばず何をヒット曲を呼ぶというのか,と。これをメインストリームと呼ばず,何をメインストリームと呼ぶのか,と。これを王道と呼ばず何を王道と呼ぶのか,と。以下にMVを掲載しておきます。

Chris Brown & Drake – “No Guidance”

(文責:Jun Nishihara)

カニエ・ウェスト対訳「FML」ヴァース2(アルバム『The Life of Pablo』楽曲11)

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(上記写真は,ドレイクのレーベル=OVO所属のR&Bシンガー,ザ・ウィークエンド(The Weeknd)です。カニエ・ウェストとは本曲「FML」でコラボしました。(左=ドレイク,右=ザ・ウィークエンド))

Kanye West feat. The Weeknd – “FML” Verse 2
カニエ・ウェスト feat. ザ・ウィークエンド「FML」ヴァース2対訳

[Verse 2: Kanye West]
See, before I let you go
One last thing I need to let you know
You ain’t never seen nothing crazier than
This nigga when he off his Lexapro
Remember that last time in Mexico?
Remember that last time, the episode?
Asking me why the hell I text in code?
Four times just to say, “Don’t text me, ho”
Told you four times, “Don’t test me, ho”
And we finna lose all self-control
But you ain’t finna be raising your voice at me
Especially when we in the Giuseppe store
But I’ma have the last laugh in the end
‘Cause I’m from a tribe called check a ho
Yeah, I’ma have to laugh Indian
‘Cause I’m from a tribe called check a ho
And I…

(ヴァース2:カニエ・ウェスト)
あのね,君を手放す前に
最後にひとつだけ,伝えておきたいことがある
こんなにクレイジーな野郎には後にも先にも俺だけさ
抗ウツ剤が抜けてる間はとくにね
メキシコで起こったこと,憶えてる?
この前のあのエピソード,憶えてる?
「あなたどうして暗号でメッセージ打ってくるの?」って
4回目にこう言っちゃうよ,「もうメールしてくんな,ゲス女」
4回もこう言っちゃうよ,「俺を試すんじゃねえ,ゲス女」
それで俺らは自制心を失うが
君は俺に声を荒げることはない
とくにジュゼッペのブランドショップにいる時は
でも最後に笑うのはこの俺さ
だって「ゲス女チェケッ」って部族出身だから
そや,インディアンスタイルの笑いで攻めたるで
だって「ゲス女チェケッ」って部族出身だから
おまけに・・・

(文責及び対訳:Jun Nishihara)

第17位に輝いた「Travis Scott feat. Drake – “SICKO MODE”」対訳(3段階構成のうち,第3構成)

前回の続きです。
この曲は,現代ヒップホップにはめずらしい曲の構成をしておりますが,ここへ来て,少しずつ,他アーティストも真似するようになってきました。先日リリースされたフューチャー(Future)のニューアルバム『Future Hndrxx Presents: The WIZRD』収録の楽曲「F&N」は曲の途中でビートがいきなりスウィッチするスタイルを取っています。それに合わせてラップのスピードも変化させます。しかしこの曲の場合は,1ラインの韻の取り方を短くして,あたかもラップのスピードを変化したような錯覚を持たせるようなスタイルにしております。1ラインの韻が短くなれば,ラップのテンポが次から次へと矢継ぎ早にポンッポンッポンッと早くなるので,「ラップが早くなった!」と錯覚するということです。ちなみにこの「F&N」は2段階構成となっております。

さて,「SICKO MODE」に話を戻します。
この曲は「息継ぎが出来る」ラップをしております。どういう意味かと言いますと,以前もここに書きましたが,以下のとおりです。

ラップの調子(フロー)にちゃんと息継ぎがある。これはどういうことかと言うと,言葉を羅列するだけの,ぎちぎちのラップになっていない,ということです。ちゃんとスペースもあり,空白もあり,息継ぎもあるフローをしています。古さを感じさせない(実際に古くない),新鮮で,若者にもウケる,ということです。しかも,真似してラップすることもできる。メロディーに乗っている。たとえば・・・

It’s absolute, yeah (Yeah), I’m back, reboot (It’s lit!)
LaFerrari to Jamba Juice, yeah (Skrrt, skrrt)
We back on the road, they jumpin’ off, no parachute, yeah
Shawty in the back
She said she workin’ on her glutes, yeah (Oh my God)

このスタンザ(=段落)を歌う(ラップする)ときに・・・

It’s absolute
(息継ぎ)
I’m back, reboot
(息継ぎ)
LaFerrari
(息継ぎ)
to Jamba Juice
(息継ぎ)
We back on the road, they jumpin’ off, no parachute
(息継ぎ)
Shawty in the back
She said she workin’ on her glutes
(息継ぎ)

と歌える,ということです。
これはヒップホップビートを逸れない韻律(cadence)であります。

さて,いよいよ「SICKO MODE」の第3構成の対訳を以下に掲載いたします。

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[Part III]

[Intro: Travis Scott, Drake & Lil Juice]
Yeah!
Astro, yeah, yeah
Tay Keith, fuck these niggas up!
Ayy, ayy

[Chorus: Drake & Travis Scott]
She’s in love with who I am
Back in high school, I used to bus it to the dance (Yeah)
Now I hit the FBO with duffels in my hands
I did half a Xan, 13 hours ’til I land
Had me out like a light, ayy, yeah
Like a light, ayy, yeah

[Verse 3: Drake & Travis Scott]
Like a light, ayy, slept through the flight, ayy
Knocked for the night, ayy
767, man, this shit got double bedroom, man
I still got scores to settle, man
I crept down the block (Down the block)
Made a right (Yeah, right)
Cut the lights (Yeah, what?), paid the price (Yeah)
Niggas think it’s sweet (Nah, never), it’s on sight (Yeah, what?)
Nothin’ nice (Yeah), baguettes in my ice (Aw, man)
Jesus Christ (Yeah), checks over stripes (Yeah)
That’s what I like (Yeah), that’s what we like (Yeah)
Lost my respect, you not a threat
When I shoot my shot, that shit wetty like I’m Sheck (Bitch!)
See the shots that I took (Ayy), wet like I’m Book (Ayy)
Wet like I’m Lizzie
I be spinnin’ Valley, circle blocks ’til I’m dizzy (Yeah, what?)
Like where is he? (Yeah, what?)
No one seen him (Yeah, yeah)
I’m tryna clean ’em (Yeah)

(イントロ:トラヴィス・スコット,ドレイク&リル・ジュース)
イヤー!
アストロ,イヤー,イヤー
テイ・キース,コイツらヤっちまえ!
エィ,エィ

(サビ:ドレイク&トラヴィス・スコット)
彼女は俺に,恋してんのさ
高校時代,ダンス会場まで行くのにバスってた(イヤー)
今となっちゃ,両手にダッフルバッグ,自家用ジェットでぶっ飛ばす
睡眠薬半分に割って,着陸まで13時間
ころっと熟睡,エィ,イヤー
ころっと一瞬,エィ,イヤー

(ヴァース3:ドレイク&トラヴィス・スコット)
ころっと一瞬,エィ,機内ぐーすか熟睡,エィ
気絶したように一晩中,エィ
ボーイング767,ダブルベッド装備してんぜ,メーン
まだ決着つかない戦いがあるメーン
ブロックをこっそり下り(こっそり下り)
右に曲がって(そうさ,右に)
ライト消して(それで次)犠牲を払った(そう)
連中,甘く(スイート)見てんぜ(甘くねえぜ)狙いさだめて(それで次)
「いいヤツ」はやめ(イヤー),ギンギラのダイヤ(オー,メーン)
ジーザス・クライスト(イヤー),ストライプ(アディダス)よりチェック(ナイキ)
それが俺の好み(イヤー),俺らの好み(イヤー)
リスペクト失った,もはやおまえは脅威でもなんでもない
一発撃てば,シェック・ウェスのようにキメてやる(ビッチ!)
俺のショット(エィ)ブック(デヴィン・ブッカー)のように決まってる(エィ)
リジー(エリザベス・キャンベージ)のようにイカシてる
ヴァリーをぐるっと一周,ブロックじゅう車で走らせ目はクラクラ(クラクラ)
そういや,ヤツどこにいる?(どこにいる)
どこにも見当たらねえ(見当たらねえ)
後始末,痕跡残すな(残すな)

[Chorus: Drake & Travis Scott]
She’s in love with who I am
Back in high school, I used to bus it to the dance
Now I hit the FBO with duffels in my hands (Woo!)
I did half a Xan, 13 hours ’til I land
Had me out like a light (Like a light)
Like a light (Like a light)
Like a light (Like a light)
Like a light

[Verse 4: Travis Scott]
Yeah, passed the dawgs a celly
Sendin’ texts, ain’t sendin’ kites, yeah
He said, “Keep that on lock”
I say, “You know this shit, it’s stife,” yeah
It’s absolute, yeah (Yeah), I’m back, reboot (It’s lit!)
LaFerrari to Jamba Juice, yeah (Skrrt, skrrt)
We back on the road, they jumpin’ off, no parachute, yeah
Shawty in the back
She said she workin’ on her glutes, yeah (Oh my God)
Ain’t by the book, yeah, this how it look, yeah
‘Bout a check, yeah (Check), just check the foots, yeah
Pass this to my daughter, I’ma show her what it took (Yeah)
Baby mama cover Forbes, got these other bitches shook
Yeah

(サビ:ドレイク&トラヴィス・スコット)
彼女は俺に,恋してんのさ
高校時代,ダンス会場まで行くのにバスってた(イヤー)
今となっちゃ,両手にダッフルバッグ,自家用ジェットでぶっ飛ばす
睡眠薬半分に割って,着陸まで13時間
ころっと熟睡,エィ,イヤー
ころっと一瞬,エィ,イヤー

(ヴァース4:トラヴィス・スコット)
そや,ムショにいるダチにケータイ電話届けてやった
これで手紙書かんでも,SMSで連絡できる
ヤツはこう言ってた,「あとはまかせた」
俺は答えた,「あたりめーよ,おまえの分もまかせとけ」と
当然だぜ(ヤー)一旦戻って,また出発(ヤー)
ラフェラーリからジャンバ・ジュースまで(スカー,スカー)
全国ツアーに出発,群衆はパラシュート無しで一気に飛び込み,ヤー
後部座席に俺の女
おしりの筋肉鍛えてんだってさ(オーマイガーッ)
常識ハズレ,それがオレ,ヤー
夢中で金儲け,そや(見てみな),オレの足元チェックしな,ヤー
財産は娘に継いで,これまで垂らしてきた血と汗見せて(ヤー)
娘のママはフォーブス誌の表紙を飾り,そこら中の女が身震いしてる
ヤー

(文責:Jun Nishihara)