今年2018年に出た最も偉大なるヒップホップ曲ランキング:第24位「J. Coleの”Album of the Year”という曲名のフリースタイル」。

昨日,第25位として挙げたMigosの曲を聴いて耳が腐りそうになったというヒップホップ好きの諸君,安心したまえ。

本日は第24位の紹介であるぞ。
ようやく「彼」の番であるぞ。
お待たせしたぞ。
これで君たち,本物のヒップホップ好き諸君たち,腐りかけた耳を掃除したまえ。

第24位:J. Coleの「Album of the Year」という曲名のフリースタイル・ラップ。

ビートは何を隠そう,NASの名曲「Oochie Wally」を下敷きにしている。

元ネタは以下の曲のとおり(※音声注意:職場で聴く場合は適切でない音声が含まれておりますのでご注意を※)。

(文責:Jun Nishihara)

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元ネタの曲を知る⑧:ジュース・ワールド⇆ナズ

元ネタの曲が二重にさかのぼって発見できる場合があります。

それは例えば,いま旬のジュース・ワールド(Juice WRLD)の楽曲「Lucid Dreams」で発見することができます。この曲は,ヒップホップの最高峰ラッパー=NASの「The Message」を元ネタとしております。

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ここで少しジュース・ワールドに触れておきますと,彼は現在19歳のまだ青少年です。なんと1998年生まれ。エミネムが公式デビューしたての頃です。エミネムの公式アルバムデビュー作や,セカンドLPがリリースされた頃,ジュース・ワールドはまだ1歳児の赤ん坊だったんです。

ジュース・ワールドは4歳の頃にピアノを習い始め,その後,ギターとドラムへと移行していきました。ラッパーを目指し,本格的にラップの曲をネット(SoundCloudサイト)へとアップし始めたのは,高校2年生の頃でした。

彼のラッパー名である「ジュース」は,2パックの映画『Juice』にちなんでいると言います。シカゴ生まれである彼は,同胞のカニエ・ウェストやチーフ・キーフ,はたまたヒューストン出身のトラヴィス・スコットを影響されたアーティストに挙げています。

さて,現在ビールボードチャート4位(リリース時は2位)の楽曲「Lucid Dreams(邦題:明晰夢(めいせきむ=夢見ていることを意識しながらみている夢))」を聴いてみましょう。

歌詞の内容はともかくも,冒頭のビートを聞くと,NASの「The Message」を想起せずにはいられません。ジュース・ワールドのこの曲はemo rap(エモ・ラップ(=情のこもったラップ))と呼べるでしょうが,NASの「The Message」が描いている夢は,そんなエモ(感情的)になっている暇なんてない連中への応援歌でした。ストリートの生きザマをありのまま描き,いつかそこから抜け出せる,そして成り上がれることを夢見た野郎たちに向けた曲でした。

最近は,黒人もある程度は平和に暮らせるようになった反面,こういった「精神的」な病いが蔓延するようになりました。肉体的に大変な時代には,こういった精神面での苦労はそこまでなかったのかもしれません,否,精神面での苦労があったのかもしれませんが,それ以上に,肉体面での苦労(食っていけるか,くたばるか)の実際面でのストラグルがある中,精神的に弱ってる暇は無かったのかもしれません。

そんな中,生まれたのが,NASの名曲「The Message」です。ストリートから,糞社会へ向けたメッセージです。

そして,冒頭で書いた「時に二重にさかのぼって発見できる場合」についてですが,このNASの「The Message」(1997年リリース)にも元ネタがあります。

それが1993年にリリースされた,スティング(Sting)の「Shape Of My Heart」です。

リュック・ベンソンの映画『レオン』の主題歌です。
このように,けっこうな大作がこうして世代を超えたヒップホップに影響を与えているという場合もあります。

(文責:Jun Nishihara)

ちょこっと解説:Nasのニューアルバム『Nasir』より

6月16日(土)にビヨンセとジェイZ夫婦(名付けてThe Carters)のコラボレーション・アルバム『Everything Is Love』がTidal上でリリースされてから,カニエ・プロダクションによる一連の7トラック・アルバムは落ち着きを見せはじめた。

しかし,ザ・カーターズが『Everything Is Love』をリリースしたのは,Nasが『Nasir』をリリースしたまさに翌日。そこで注目は一気にNasからザ・カーターズへとシフトしていったわけであるが,あえてここで,Nasにスポットライトを当ててみたいと思う。

アルバム『Nasir』からすでに名曲と揶揄されている楽曲⑤『everything』(feat. The-Dream)より,Nas自身のヴァースである以下を引用してみたい。

“When the media slings mud, we use it to build huts /
Irrefutable facts, merciful, beautiful black”

「マスコミが泥を投げてくれば,その泥で仮小屋を作り上げてきた/
まぎれもない事実,なさけ深く,美しい“ブラック”」(訳:J.N.)

このようにNasは,今までカニエ・ウェストがリリースしてきたプッシャTやカニエ自身のようにドレイクに対してサブ・ディスを投げかけたりすることなく,黒人としての強さを表現している。Nasのライムにはこのような「強さ」を常に感じる。Nasがデビューしたのは1994年のことであるが,あれから24年経た今も,アンダードッグとしての「強さ」を感じる。他方でジェイZのラップ内容は時期を経て,変わってきた。ハスラー時代からコーナーオフィス時代を経て,リッチ時代,そして今やルーブル美術館でMVを撮影するほどのアート時代。しかし,それとは対をなしてNasのライムには24年前に聴いた「強さ」をいまだに感じることができる。

ザ・カーターズの『Everything Is Love』も素晴らしいが,Nasの『NASIR』も同じくらい聴いていくこととしたい。