エミネムのラップ術に学ぶ(その②:教材はロジックの楽曲「Homicide」)

前回は,エミネムのラップ術について,1.アクセントの場所を入れ替えるワザを取り上げました。
本日はその②として,以下のとおり説明していきます。

2.次から次へと連打のように繰り出す韻踏み

まずは以下のヴァースをご覧下さい。

Big bills like a platypus
A caterpillar’s comin’ to get the cannabis
I’m lookin’ for the smoke but you motherfuckers are scatterin’
Batterin’ everything and I’ve had it with the inadequate
Man, I can see my dick is standin’ stiff as a mannequin
And I’m bringin’ the bandana back, and the fuckin’ headband again
A handkerchief and I’m thinkin’ of bringin’ the fuckin’ fingerless gloves back
And not giving a singular fuck, like fuck rap

上記の赤文字で反転している箇所の特に下線を引いているシラブルは韻を踏んでおり,これをまるでエミネムは連打するかのように,次から次へをスピットしています。

この部分を音声で聴いてみましょう。
以下のタイムライン,2:49〜3:02の部分です。

ものの13秒で以上のヴァースをスピットするのも驚くべきことではありますが,それ以上に注目すべきは「韻踏みを1秒に1回以上繰り出しているということ」です。13秒のうちに14回韻を踏んでいますので,その計算になります。

3.息の長さ

これは言うまでもないことですが,上記のヴァースにしても,ひと息でラップをやり遂げています。最後の「fuck rap」という箇所で息継ぎをして,その後の「I sound like a fuckin’ millionaire」のくだりへと進んでいます。

息継ぎはリセットです。たとえ,へとへとになっていたとしても,エミネムはこんなことないでしょうが,ぐだぐだのラップになっていたとしても,息継ぎの箇所で一旦持ち直して,心機一転,新たな心持ちで,その後に進めていけるようになります。

息継ぎをどこでするかという大切さはあります。ラップは息継ぎの場所で決まります。むかしから思っていたのは,ジェイZ(Jay-Z)は息継ぎがとてもうまい人だな〜と思って聴いておりました。しかも息をしているということが判らないように,「息の音」をひそめている。ラッパーによっては,「スーッ」とはっきりと息継ぎをしていることが聞こえる人もいますが,ジェイZはむかしから聞こえなかった。自分でもラップしてみると必ず,「スーッ」とやってしまうのですが,慣れてくると,「息の音」をひそめて息継ぎをすることができるようになってきます。意識をするかしないか,という要素もあります。「スーッ」と聞こえるように息継ぎするのが悪いというわけでもないです。ラップは芸術ですから,どちらが正解ということはないですが,おそらく息の音を聞かせると,敵に心の内を読まれてしまうキケンがあるので,下積み時代をハスラーとして過ごしたジェイZは,人に心の内を読まれないようにするため,自然に息の音を消すことを身につけていったのかもしれません。それが彼のラップに顕在していた,と言えるかもしれません。

(文責:Jun Nishihara)

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エミネムのラップ術に学ぶ(その①:教材はロジックの楽曲「Homicide」)

5月10日(金),ロジック(Logic)はニューアルバム『Confessions of a Dangerous Mind(=アブナい脳ミソから湧き出る告白)』をリリースした。

(翻訳のポイントとして,人がPC画面をパッと見て映るこのタイトルの「長さ」を考慮したとき,
“Confessions of a Dangerous Mind”

「狂気の告白」
とサラッと訳してしまうと,イメージが思い浮かばない。
とは言え,はたまた
「キケンな頭を持った男が打ち明ける告白」
と説明的に(英語原文では所有格の名詞構造なのに,日本語ではS+V+O構造で)訳すとイメージはできるが,原文の構造をくずしてしまう。

原文の構文をくずさずに,だいたい同じ「長さ」を尊重して
「アブない脳ミソから湧き出る告白」
と訳せば,ぱっと見,原文の語彙レベル(confessionsとかdangerousとかなかなかスペルが長い語を使用しているスタイル)を保ちつつ,人がパッと一目で視界に入れた際に,同じ長さだと感じられる訳になる。
ここでの翻訳のポイントは,“of”という前置詞を“from”と読み替えて「〜の」ではなく「〜から」と訳すところがミソである。)

さて,このアルバムの楽曲「Homicide」ではエミネム(Eminem)をフィーチャリング・ラッパーとして迎えて,スピード感ある高速ラップを披露している。この曲でロジックとエミネムを聴き比べてみると,全体的なスピードは双方とも優劣ない勝負を見せているが,やはりエミネムの凄まじさは,ロジックとは比較にならないほど,優れているといえるでしょう。

どういうところがエミネムが優れているか,といいますと,以下3点のとおりでしょう。

1.アクセントの場所を入れ替えるワザ
2.次から次へと連打のように繰り出す韻踏み
3.息の長さ

説明していきましょう。

1.アクセントの場所を入れ替えるワザ

どんな英語の単語にも,シラブル(Syllable=音節)があります。たとえば,“bandana”という単語には,シラブルが3つあります。“ban/da/na”のように3音節に分かれます。「バン」「ダ」「ナ」です。簡単に言いますと,母音1つ(文字上の母音ではなく,音の上での母音。たとえば,beautifulという単語には,文字上の母音は5つありますが,音の上での母音は,「ビュー」「ティ」「フォ」と3つのみです)において,シラブルが1つと考えれば,簡単でしょう。

さて,そのシラブル1つに,アクセントが1つ決まっています。英語は日本語とは違い,上下のアクセント(イントネーション=抑揚)のある(つまり音楽のような)言語ですから,強弱あったり,上下あったり,高低あったり,音的な要素がいろいろ入っております。そして,“bandana”のアクセントは,“ban→DA⤴︎na→”となります。

そこで,もうちょっと話をややこしくして,こんどは別の単語とつなげてみましょう。

“I’m bringing the bandana back.”という一文があったとしましょう。
普通にこの一文を音読するとき,どこにアクセントがあるでしょうか。(つまり,この一文でもっとも強く発音するシラブル(音節)はどこでしょうか。)

答えは,“da”のシラブルです。
(「アイン・ブリンギン・ザ・バンダ⤴︎ーナ・バック」と「ダー」の箇所(シラブル)にもっとも強いアクセントが表れます。ちなみにもっとも弱く発音する所は「ザ」です。聞こえても小さい「ナ」くらいにしか聞こえません。)

これは普通にネイティヴのアメリカ人がこの一文を音読した場合です。

これをエミネムがラップすると,こうなります。
(タイムラインは2:56〜2:57の箇所です。一瞬で過ぎますので,注意して聴いて下さい。)

エミネムは通常のネイティヴが発音するアクセントとは違い,こういう風にラップします。

「ア⤵︎イン・ブリンギン→ナ→バンダ↑ナ→バック」

つまり,もっとも強く発音するアクセントを冒頭の「ア」に置き換えて,その他はフラットに流しています。しいていえば「ダ」にちょっぴりほんの強みを出すだけです。しかし1秒も経たないうちに,一瞬で通り過ぎていきますので,気合を込めて聴く必要があります。

しかし,これはエミネムのワザであり,他の箇所にも,アクセントの場所を入れ替えるというのがちらほら見られます。

例えば,次のような箇所でしょう。
アクセントの場所(エミネム特有のアクセントを入れ替える箇所)を大文字で書いておきますので,目で追いながら,エミネムのラップを聴いてみてください。

BEAST mode, motherfuckers ’bout to get hit
with so many foul lines, you’ll think I’m a FREE throw
figured it was about time for people to EAT crow
you about to get out-rhymed, how could I be DEthroned?
I stay on my toes like the REpo, a beHEmoth in SHEEP’s clothes
from the EAST Coast to the west, I’m the ETHOS and I’m THE goat
who the best, I don’t gotta say a fuckin’ THING, though
’cause emCEEs know

赤文字で反転した箇所と下線を引いた箇所が,エミネムがアクセントを置いている場所です。ネイティヴがこの文章を音読する際とは,異なる箇所にアクセントを置いてラップをしております。たとえば「dethrone(王座を奪う)」という単語のアクセントは「o」にありますが,エミネムは冒頭の「e」にアクセントを置き換えています。また「eat crow(カラスを食べている)」と話すとき,情報としては「何を食べているのか?」「カラス(crow)」が大事なのであって,普通であれば「crow」にアクセントを置きます。エミネムのように「イー(ea)」という音節を強調したいがために,普通の会話や普通の音読で「eat」にアクセントを置くネイティヴはいないでしょう。(「カラスをどうしているのか?」「食べて(eat)いる」という変わった会話をすることがない限り。ちなみに,「eat crow」はイディオムで「屈辱を味わう」や「大恥をかく」という意味です。)しかし,エミネムはこうしてアクセントの箇所を自由自在に入れ替えて,まるで楽器のようにラップを演奏しているのです。

さて,「2.次から次へと連打のように繰り出す韻踏み」と「3.息の長さ」については,来週土曜日,ご説明いたします。

(文責:Jun Nishihara)

第17位に輝いた「Travis Scott feat. Drake – “SICKO MODE”」対訳(3段階構成のうち,第3構成)

前回の続きです。
この曲は,現代ヒップホップにはめずらしい曲の構成をしておりますが,ここへ来て,少しずつ,他アーティストも真似するようになってきました。先日リリースされたフューチャー(Future)のニューアルバム『Future Hndrxx Presents: The WIZRD』収録の楽曲「F&N」は曲の途中でビートがいきなりスウィッチするスタイルを取っています。それに合わせてラップのスピードも変化させます。しかしこの曲の場合は,1ラインの韻の取り方を短くして,あたかもラップのスピードを変化したような錯覚を持たせるようなスタイルにしております。1ラインの韻が短くなれば,ラップのテンポが次から次へと矢継ぎ早にポンッポンッポンッと早くなるので,「ラップが早くなった!」と錯覚するということです。ちなみにこの「F&N」は2段階構成となっております。

さて,「SICKO MODE」に話を戻します。
この曲は「息継ぎが出来る」ラップをしております。どういう意味かと言いますと,以前もここに書きましたが,以下のとおりです。

ラップの調子(フロー)にちゃんと息継ぎがある。これはどういうことかと言うと,言葉を羅列するだけの,ぎちぎちのラップになっていない,ということです。ちゃんとスペースもあり,空白もあり,息継ぎもあるフローをしています。古さを感じさせない(実際に古くない),新鮮で,若者にもウケる,ということです。しかも,真似してラップすることもできる。メロディーに乗っている。たとえば・・・

It’s absolute, yeah (Yeah), I’m back, reboot (It’s lit!)
LaFerrari to Jamba Juice, yeah (Skrrt, skrrt)
We back on the road, they jumpin’ off, no parachute, yeah
Shawty in the back
She said she workin’ on her glutes, yeah (Oh my God)

このスタンザ(=段落)を歌う(ラップする)ときに・・・

It’s absolute
(息継ぎ)
I’m back, reboot
(息継ぎ)
LaFerrari
(息継ぎ)
to Jamba Juice
(息継ぎ)
We back on the road, they jumpin’ off, no parachute
(息継ぎ)
Shawty in the back
She said she workin’ on her glutes
(息継ぎ)

と歌える,ということです。
これはヒップホップビートを逸れない韻律(cadence)であります。

さて,いよいよ「SICKO MODE」の第3構成の対訳を以下に掲載いたします。

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[Part III]

[Intro: Travis Scott, Drake & Lil Juice]
Yeah!
Astro, yeah, yeah
Tay Keith, fuck these niggas up!
Ayy, ayy

[Chorus: Drake & Travis Scott]
She’s in love with who I am
Back in high school, I used to bus it to the dance (Yeah)
Now I hit the FBO with duffels in my hands
I did half a Xan, 13 hours ’til I land
Had me out like a light, ayy, yeah
Like a light, ayy, yeah

[Verse 3: Drake & Travis Scott]
Like a light, ayy, slept through the flight, ayy
Knocked for the night, ayy
767, man, this shit got double bedroom, man
I still got scores to settle, man
I crept down the block (Down the block)
Made a right (Yeah, right)
Cut the lights (Yeah, what?), paid the price (Yeah)
Niggas think it’s sweet (Nah, never), it’s on sight (Yeah, what?)
Nothin’ nice (Yeah), baguettes in my ice (Aw, man)
Jesus Christ (Yeah), checks over stripes (Yeah)
That’s what I like (Yeah), that’s what we like (Yeah)
Lost my respect, you not a threat
When I shoot my shot, that shit wetty like I’m Sheck (Bitch!)
See the shots that I took (Ayy), wet like I’m Book (Ayy)
Wet like I’m Lizzie
I be spinnin’ Valley, circle blocks ’til I’m dizzy (Yeah, what?)
Like where is he? (Yeah, what?)
No one seen him (Yeah, yeah)
I’m tryna clean ’em (Yeah)

(イントロ:トラヴィス・スコット,ドレイク&リル・ジュース)
イヤー!
アストロ,イヤー,イヤー
テイ・キース,コイツらヤっちまえ!
エィ,エィ

(サビ:ドレイク&トラヴィス・スコット)
彼女は俺に,恋してんのさ
高校時代,ダンス会場まで行くのにバスってた(イヤー)
今となっちゃ,両手にダッフルバッグ,自家用ジェットでぶっ飛ばす
睡眠薬半分に割って,着陸まで13時間
ころっと熟睡,エィ,イヤー
ころっと一瞬,エィ,イヤー

(ヴァース3:ドレイク&トラヴィス・スコット)
ころっと一瞬,エィ,機内ぐーすか熟睡,エィ
気絶したように一晩中,エィ
ボーイング767,ダブルベッド装備してんぜ,メーン
まだ決着つかない戦いがあるメーン
ブロックをこっそり下り(こっそり下り)
右に曲がって(そうさ,右に)
ライト消して(それで次)犠牲を払った(そう)
連中,甘く(スイート)見てんぜ(甘くねえぜ)狙いさだめて(それで次)
「いいヤツ」はやめ(イヤー),ギンギラのダイヤ(オー,メーン)
ジーザス・クライスト(イヤー),ストライプ(アディダス)よりチェック(ナイキ)
それが俺の好み(イヤー),俺らの好み(イヤー)
リスペクト失った,もはやおまえは脅威でもなんでもない
一発撃てば,シェック・ウェスのようにキメてやる(ビッチ!)
俺のショット(エィ)ブック(デヴィン・ブッカー)のように決まってる(エィ)
リジー(エリザベス・キャンベージ)のようにイカシてる
ヴァリーをぐるっと一周,ブロックじゅう車で走らせ目はクラクラ(クラクラ)
そういや,ヤツどこにいる?(どこにいる)
どこにも見当たらねえ(見当たらねえ)
後始末,痕跡残すな(残すな)

[Chorus: Drake & Travis Scott]
She’s in love with who I am
Back in high school, I used to bus it to the dance
Now I hit the FBO with duffels in my hands (Woo!)
I did half a Xan, 13 hours ’til I land
Had me out like a light (Like a light)
Like a light (Like a light)
Like a light (Like a light)
Like a light

[Verse 4: Travis Scott]
Yeah, passed the dawgs a celly
Sendin’ texts, ain’t sendin’ kites, yeah
He said, “Keep that on lock”
I say, “You know this shit, it’s stife,” yeah
It’s absolute, yeah (Yeah), I’m back, reboot (It’s lit!)
LaFerrari to Jamba Juice, yeah (Skrrt, skrrt)
We back on the road, they jumpin’ off, no parachute, yeah
Shawty in the back
She said she workin’ on her glutes, yeah (Oh my God)
Ain’t by the book, yeah, this how it look, yeah
‘Bout a check, yeah (Check), just check the foots, yeah
Pass this to my daughter, I’ma show her what it took (Yeah)
Baby mama cover Forbes, got these other bitches shook
Yeah

(サビ:ドレイク&トラヴィス・スコット)
彼女は俺に,恋してんのさ
高校時代,ダンス会場まで行くのにバスってた(イヤー)
今となっちゃ,両手にダッフルバッグ,自家用ジェットでぶっ飛ばす
睡眠薬半分に割って,着陸まで13時間
ころっと熟睡,エィ,イヤー
ころっと一瞬,エィ,イヤー

(ヴァース4:トラヴィス・スコット)
そや,ムショにいるダチにケータイ電話届けてやった
これで手紙書かんでも,SMSで連絡できる
ヤツはこう言ってた,「あとはまかせた」
俺は答えた,「あたりめーよ,おまえの分もまかせとけ」と
当然だぜ(ヤー)一旦戻って,また出発(ヤー)
ラフェラーリからジャンバ・ジュースまで(スカー,スカー)
全国ツアーに出発,群衆はパラシュート無しで一気に飛び込み,ヤー
後部座席に俺の女
おしりの筋肉鍛えてんだってさ(オーマイガーッ)
常識ハズレ,それがオレ,ヤー
夢中で金儲け,そや(見てみな),オレの足元チェックしな,ヤー
財産は娘に継いで,これまで垂らしてきた血と汗見せて(ヤー)
娘のママはフォーブス誌の表紙を飾り,そこら中の女が身震いしてる
ヤー

(文責:Jun Nishihara)