’70年代のディスコ名曲を4曲もサンプリングネタとして起用したゼータクなカニエ・ウェストの楽曲「Fade」。

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件名のとおり,まずそのゼータクな楽曲「Fade」とはこの曲のこと。↓
ちなみにこのミュージックビデオで素晴らしくキレがあるダンスを披露してくれているのはティアナ・テイラー(Teyana Taylor)。

Kanye West – “Fade”

さてこの曲には,’70年代〜’80年代にかけてディスコブームの全盛期に流行った名曲をなんと4曲もサンプリングネタとして起用しているという物凄くマニアックな曲なのである。その元ネタを以下のとおり紹介いたします。

第1のサンプリングネタ:Fingers Inc.の「Mystery Of Love (Club Mix)」
これは1986年にリリースされたハウス・ミュージック界の名曲。「Fade」の冒頭を飾っている。Fingers Inc.もカニエと同じシカゴ出身。ハウス・ミュージックをディープに知る者こそ知る名曲である。

第2のサンプリングネタ:Rare Earthの「I Know I’m Losing You」
おおもとはモータウン黄金時代に活躍したザ・テンプテーションズの名曲(1966年リリース)。それをレア・アース(Rare Earth)が1970年にカバー曲として発表したもの。この曲を上記のハウス・ナンバーと組み合わせてみようという発想はそうそう出ない。(カニエしかそんなことしようとしない。)冒頭の「Your love is fadin’(キミの気持ちがうすれていくのがわかる)」という本来であればセツない歌詞をフリップさせ,力強くインパクトのある「Fade!」(色褪せ!)という一語にあらゆるフィーリングを収斂させている。

第3のサンプリングネタ:Hardriveの「Deep Inside」
1993年にリリースされたテクノ系の楽曲。「Deep, deep inside」というフレーズをスローダウンさせ,サンプリングしている。

第4のサンプリングネタ:Barbara Tuckerの「I Get Lifted」
ブルックリン出身の黒人ハウス・ソウルシンガーであるバーバラ・タッカーの曲。1994年発表。この「I Get Lifted」は全米ホット・ダンスクラブ・チャート第1位を記録。翌年同じくバーバラ・タッカーの「Stay Together」は同チャート第1位を獲得。まさにハウスミュージック界で大活躍していた時代の曲。考えてみれば,「Fade」のMVで踊るティアナ・テイラーは現在まだ28歳であるが,カニエを介してここまでディープな曲と触れ合っているという事実に,今後のアーティストとしての将来性を感じる。

(文責:Jun Nishihara)

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第3位「ティアナ・テイラーの“Gonna Love Me”のリミックスが大人と若者のヒップホップを融合させた!」(今年2018年に出た最も偉大なるヒップホップ曲ランキング)

いよいよ今年トップ3になりました。

ヒップホップは「若者のモノ」という概念が常に付きまといましたが,そんな考えは今年,ティアナ・テイラー(Teyana Taylor)がぶち破ってくれました。オトナも若者もカンケーなく,ヒップホップそのものを歌って踊れる曲をリリースしてくれました。

それが「Gonna Love Me」のリミックスです。

ミュージックビデオを観ていただくと分かりますが,これはもう,ほんとうに,90’s(90年代)へのオマージュです。80年代に生まれた世代で,90年代にヒップホップを聴いて育った方々へ,28歳になったばかりの若いティアナ・テイラーが作った素晴らしい楽曲です。

もともとはティアナ・テイラーがソロで歌う(フィーチャリング無しの)曲でしたが,ここへラップをのっけて作ったのがリミックスです。リミックスには,ゴーストフェイス・キラ(Ghostface Killah),メソッド・マン(Method Man),そしてレイクウォン(Raekwon)という全員NYのスタテン・アイランド(Staten Island)出身のウータンクラン(Wu-Tang Clan)メンバーを迎えています。ラップはスタテン出身のウータン,歌うのはハーレム出身のティアナ・テイラーという(もうR&Bにとどまらない)ヒップホップ曲です。

ミュージックビデオの冒頭スキットで,ハーレム出身のティアナ・テイラーとスタテン出身のゴーストフェイスが恋人同士という設定で,ゴーストフェイスの浮気が見つかり,たがいに喧嘩するという設定は,なんか嬉しいですね。ハーレムとスタテンが恋人なんだけど,たまにするハーレムとスタテンの喧嘩みたいで。ハーレム出身のディディ(別名パフ・ダディ,別名Pディディ,別名パフィー,別名パフ)と,スタテン出身のウータンが喧嘩するみたいで。ヒップホップファンにとっては,こういうコラボレーションは嬉しくなりますし,なによりも,90年代へのオマージュというこの曲の重要な点は見逃すことはできません。90’s Hip-Hop(90年代ヒップホップ)を彷彿とさせるこの曲を,今年2018年No.3に選びました。

補足1:上記ミュージックビデオの1:53〜2:02までのティアナのダンスは,ディディ・ボップ(Diddy Bop)という90年代にパフ・ダディとMa$eが流行らせたダンスです。もうこれはまさに90年代ヒップホップへのオマージュ以外の何者でもないですね。

補足2:こういうのを若者英語で#90svibes(ハッシュタグ#90’sヴァイブス)と言います。

補足3:ティアナ・テイラーよ,こういう素晴らしき曲&ミュージックビデオを作ってくれて,ありがとう。

補足4:冒頭のスキットでゴーストフェイスが激おこのティアナに向かって,”You smell the Jackson?”と言って,ティアナが”You think it’s funny?”と言っています。これは本当はめちゃめちゃおもしろいジョークなのですが,なにせティアナがマジでキレている状況下ですので,ゴーストフェイスはおもいきり笑えず,クスッと吹き出すだけで,ティアナは全く笑ってませんね。
 アウトキャスト(Outkast)の曲で「Ms. Jackson」という曲があります。黒人の男が黒人のガールフレンドのお母さんに向かって「ジャクソンさん,すいません!あなたの娘さんに浮気してしまいました!」って本気で謝罪しているのか,ふざけているのか,もうわからないラップ曲なのですが,ここのジョークはそれの言及ですね。”You smell the Jackson?”「なんかジャクソンさんっぽく臭うぞ」って本気で申し訳ないと思っているのか,ふざけているのか,ゴーストフェイスもこんな真面目なシチュエーションで,おもしろいこと言うので,自分自身でクスッと吹き出してしまっています。だからティアナも”You think it’s funny?”「ふざけてんの?」って返しています。こういうディテール(細部)が意外にこのビデオ,おもしろかったりします。

(文責:Jun Nishihara)