今年2018年に出た最も偉大なるヒップホップ曲ランキング:第26位「XXXTentacionのSAD!」。

2018年総まとめヒップホップ曲ランキング《トップ30》です。
本日は第26位の発表です。

第26位:エックスエックスエックステンタシオン(XXXTentacion)の「SAD!」です。

何度も警察沙汰になり,自殺願望があり,頻繁にうつ病の症状を訴えていた彼でしたが,こういった名曲をいくつも発表していました。まさに現代のワカモノを代表してくれていた素晴らしきアーティストでした。彼に共感していた(自殺願望,警察沙汰の生きザマ,そしてうつ病)ワカモノは現代のアメリカに相当数いたそうです。彼が音楽をとおして伝えていたこと,それは決して命を無駄にするということではなく,まさにその逆でした。実際に彼は最期まで自殺しなかったですし,うつ病が原因で亡くなったわけでもありませんでした。

音楽は彼の「生きる糧」だったというより,彼が生きる場所は音楽でしかあり得なかった。彼の生きザマが良かった,悪かった,ということは別にして,2018年のような「変な現代」を反映したアーティストとして必ず外せない一人であったので,第26位に選びました。

おまけ:「うつ病ラップ」といえば,今年はジュース・ワールドの「Lucid Dreams」も流行りました

(文責:Jun Nishihara)

Advertisements

ジェイZのアルバム『The Black Album』より,楽曲13対訳「Allure」。

ジェイZの名作に2003年リリースの『The Black Album』というアルバムがあります。ジェイZが現在までにリリースしてきたアルバムの中で,3本の指に入るものであると考えております。

さて,本日12月4日(TODAY!)はジェイZの49年目の誕生日です。それを祝うという意味でも,そのアルバムから「Allure」を取り挙げます。ビートはファレル・ウィリアムズやチャド・ヒューゴ率いるThe Neptunesプロダクション・チームの作品です。

内容は,ジェイZのハスリング時代について,「コカインを捌いていた頃,いくらでも金儲けができた。その生きザマがいまだに俺につきまとうんだ,俺の名を呼んでんだ。だがその人生を続けてれば,今頃はムショに入ってたか,それとも死んでたか。だが,あそこまで「生きてる感じ」を味わったのは,その後の人生に無かった」といったものです。ジェイZが2004年にヒップホップ界から「暫定的に」身を退けた,その直前にできた曲です。

よく「ヒップホップのグラマラスな人生」と「ハスリング時代の生きザマ」を重ねてラップするジェイZですが,それがこの曲にはよく表現されていると思います。私の翻訳はまだまだですが,私の翻訳以上に,ジェイZの原語の歌詞はすばらしいものであることを念頭に,読んでいただければ幸いです。

ジェイZの歌詞を訳すにあたり,常に「まだまだ(ジェイZの原語には)到達できないな」と思いながら訳しているのですが,これは生涯の仕事として,ジェイZの歌詞対訳を随時「レベルアップ」させていきたいと思っております。ジェイZの歌詞と「同等の日本語訳」をすることは,死ぬまで出来ないと思いますが,99.999999%まで達することは,いつかは,いけるんじゃないかとか,夢見ながらやっているところです。

その点,カニエ・ウェストの歌詞を訳す時の緊張感とはまた違ったものを感じます。

jayz-blackalbum2_1800x

Jay-Z feat. The Neptunes

[Intro: Pharrell (Jay-Z)]
(Young! It’s the life)
(Once again it’s the life, yes)
I don’t know why, I.. get so high oh
(It’s intoxicating man, y’all don’t know why you do what you do)
Get so high oh, get so high, high off the life

(イントロ:ファレル(ジェイ・Z))
(ヤング!この生きザマに)
(もういちど人生に乾杯)
理由は言えねえ・・・ただハイになるんだ,オゥ
(やみつきだぜ,何をやるにも,理由は今わからなくとも)
ハイになれ,オゥ,ハイになれ,ハイになって生きろ

[Verse 1: Jay-Z]
The allure of breaking the law
Was always too much for me to ever ignore
I’ve got a thing for the big-body Benzes, it dulls my senses
In love with a V-Dub engine
Man, I’m high off life, fuck it, I’m wasted
Bathing Ape kicks, Audemars Piguet wrist
My women-friends get tennis bracelets
Trips to Venice, get their Winters replaced with
The sun…it ain’t even fun no more, I’m jaded
Man, it’s just a game, I just play it to play it
I put my feet in the footprints left to me
Without saying a word, the ghetto’s got a mental telepathy
My brother hustled so, naturally
Up next was me, but what perplexes me
Shit, I know how this movie ends, still I play
The starring role in “Hovito’s Way”

(ヴァース1:ジェイZ)
法を犯すという誘惑
とても魅力的で,シカトするわけにはいかなかった
デカい車体のベンツにあこがれて,もはや感覚麻痺してた
フォルクスワーゲンのエンジンに恋い焦がれて
生きることにハイになってた,クソッ,イカレちまってた
NIGOのアベイジングエイプのスニーカーに,オーデマピゲの腕時計
女友達にはダイヤモンドのブレスレット
ヴェニスに旅行して,暖かい場所で冬を過ごす
太陽の光,もう笑えねえほど,たそがれてる
ただのゲームだと分かってる,プレーが好きでプレーしてる
俺のために残された足跡に導かれて
ひとこともしゃべらなくとも,連中とはゲットー・メンタルで通じ合える
兄弟もハスラーだった,だから自然に俺もそうなった
次は俺の出番,だがひとつ不可解なのは
この映画のエンディングを知ってしまったこと,それでも俺は“プレー”する
『ホヴィートズ・ウェイ(ホヴィートの道)』(『カリートの道』のホヴァ(ジェイ)版)の主演男優として

[Chorus: Jay-Z (Pharrell)]
It’s just life, I solemnly swear
To change my approach, stop shaving coke
Stay away from hoes, put down the toast
Cause I be doing the most (OH NO!)
But every time I felt “That was that”, it called me right back
It called me right back
Man, it called me right back (OH NO!)

(サビ:ジェイZ(ファレル))
ただ人生を生きてるだけさ,俺はここに誓う
もうこの生きザマは変える,コカを捌くことから手を引く
アバズレ女から身を引いて,シャンパングラスは置いて
つい,やり過ぎちまうからな(オゥノゥ!)
だが毎回「もう辞めにする」と言う度に,また呼び戻されんだ
すぐに呼び戻されるんだ
そうさ,ほら,呼び戻された(オゥノゥ!)

[Verse 2: Jay-Z]
I’m like a Russian mobster, drinking distilled vodka
Until I’m under the field with Hoffa, it’s real
Peel the top up like a toupée,mix the water with the soda
Turn the pot up, make a soufflé
All of y’all can get it like group-page on your 2-way
I’m living proof that crime do pay
Say “hooray” to the bad guy, and all the broads
Putting cars in their name, for the stars of the game
Putting ‘caine in their bras and their tomorrows on the train:
All in the Name of Love
Just to see that love locked in chains and the family came
Over the house to take back everything that they claimed
Or even the worse pain is the distress
Learning you’re the mistress only after that love gets slain
And the anger and the sorrow mixed up leads to mistrust
Now it gets tough to ever love again
But the allure of the game, keeps calling your name
To all the Lauras of the world, I feel your pain
To all the Christies in different cities and Tiffany Lanes:
We all hustlers in love with the same thing

(ヴァース2:ジェイZ)
俺はロシアン・マフィアのごとく,蒸留ウォッカを飲み干す
しまいにはホッファの隣で,グラウンドの土の中に埋められて,生々しい
オープンカーの天井をめくる,カツラばり,重曹と水を混ぜ合わせ
コンロを焚いて,泡立てたスフレ,一丁上がり
おまえら全員一気に,金儲けさせてやる,全員配信のポケベルごとく
「犯罪はカネになる」の生きた証
ワル者に万歳,そしてオンナたちへ
このゲームのスター達のため,クルマの名義を貸してくれたオンナたち
ブラの中にコカイン忍ばせて,アムトラック列車に乗って運び,彼女たちの将来を犠牲にしてくれた
愛という名のそのもとに
くさりで縛られた愛を見るために,そして俺にも家族が出来た
家を持つようになり,今まで掴んできた手柄を全て,放り投げた
さらなる苦悩とストレスは
自分が単なる愛人だったことに気づく時だ,ほんとうの愛が滅多斬りされた後
残るのは怒りと悲しみが混ざり合った不信感でしかない
そしてもはや,二度と愛することがさらに難しくなる
だがこのゲームの誘惑が,また俺の名前を呼ぶんだな
世界のローラたちへ,君たちの苦悩に共感するよ
あらゆる街のクリスティーやティファニー・レーンたちへ
俺らは全員,同じものを愛するハスラーなのさ

[Chorus: Jay-Z (Pharrell)]
It’s just life, I solemnly swear
To change my approach, stop shaving coke
Stay away from hoes, put down the toast
Cause I be doing the most (OH NO!)
But every time I felt “That was that”, it called me right back
It called me right back
Man, it called me right back (OH NO!)

(サビ:ジェイZ(ファレル))
ただ人生を生きてるだけさ,俺はここに誓う
もうこの生きザマは変える,コカを捌くことから手を引く
アバズレ女から身を引いて,シャンパングラスは置いて
つい,やり過ぎちまうからな(オゥノゥ!)
だが毎回「もう辞めにする」と言う度に,また呼び戻されんだ
すぐに呼び戻されるんだ
そうさ,ほら,呼び戻された(オゥノゥ!)

[Verse 3: Jay-Z]
I never felt more alive than riding shotgun
In Klein’s green 5, until the cops pulled guns
And I tried to smoke weed to give me the fix I need –
What the game did to my pulse – with no results
And you can treat your nose and still won’t come close
The game is a light bulb with eleventy-million volts
And I’m just a moth addicted to the floss
The doors lift from the floor and the tops come off
By any means necessary, whatever the cost
Even if it means lives is lost
And I can’t explain why I just love to get high
Drink, “life!” smoke the blueberry sky, blink twice
I’m in the blueberry 5, you blink three times
I may not even be alive
I mean even James Dean couldn’t escape the allure
Dying young, leaving a good-lookin corpse, of course

(ヴァース3:ジェイZ)
あの頃は生きてる感じがした,サツから逃げ回って
クライン(=ジェイZのかつてのドラッグディーラー仲間)のベンツの助手席に乗って,コカ捌いてた
ハッパ吸って冷静になろうとしたが
この生きザマ,心臓バクバク,ハッパじゃ足りねえ
鼻から一気に吸っても,これっぽっちも物足りねえ
あの人生は110万ボルトのネオンライトの様だった
だが俺は,その灯(魅惑)に集まる単なる蛾(ガ)
ドアが垂直に開き,天井がスライド式のオープンカー
どんなことがあっても,どんな犠牲を払っても
たとえ命が犠牲になったとしても
理由は言えねえ,ただハイになるのが好きなんだ
乾杯!この生きザマに,ハッパを吸って,まばたき2回
ブルーベリー色のベンツ,ウィンカー3回
とっくに死んだっておかしくない人生
かのジェイムス・ディーンでも,この誘惑に勝てなかった
若くして死に,ハンサムな遺体を遺していった,オフコース

[Chorus: Jay-Z (Pharrell)]
It’s just life, I solemnly swear
To change my approach, stop shaving coke
Stay away from hoes, put down the toast
Cause I be doing the most (OH NO!)
But every time I felt “That was that”, it called me right back
It called me right back
Man, it called me right back (OH NO!)

(サビ:ジェイZ(ファレル))
ただ人生を生きてるだけさ,俺はここに誓う
もうこの生きザマは変える,コカを捌くことから手を引く
アバズレ女から身を引いて,シャンパングラスは置いて
つい,やり過ぎちまうからな(オゥノゥ!)
だが毎回「もう辞めにする」と言う度に,また呼び戻されんだ
すぐに呼び戻されるんだ
そうさ,ほら,呼び戻された(オゥノゥ!)

[Outro: Jay-Z (Pharrell)]
Once again its the life
Yeah I said its the life
Once I again its the life
(OH NO! I don’t know why, I…
Get so high oh
Get so high oh
Get so high, high off the life)

(アウトロ:ジェイZ(ファレル))
もういちど人生に乾杯
そうさ,人生に乾杯
もういちどこの生きザマに乾杯
この生きザマに乾杯
(オゥノゥ!理由は言えねえ,ただ・・・
ハイになるんだ,オゥ
ハイになるんだ,オゥ
ハイになるんだ,この生きザマに)

(文責:Jun Nishihara)

今年2018年に出た最も偉大なるヒップホップ曲ランキング:第27位「エミネムのディスりラップ。」

2018年総まとめヒップホップ曲ランキング《トップ30》です。
本日は第27位の発表です。

第27位:エミネムがマシン・ガン・ケリーをディスったラップ曲「KILLSHOT」です。

今年2018年最高のディス・ラップでした。今年の9月3日にマシン・ガン・ケリーという白人ラッパーがエミネムをディスる「Rap Devil」という曲を発表しました。それを聴いたリアーナ(R&Bアーティスト)がエミネムのケータイにメッセージを送って,「ねぇエミネム,誰かがあなたをディスってる曲を発表してるわよ」と。その曲を聴いたエミネムはすぐにそのアンサーソングならぬディス・ラップを発表をしました。それがこの「KILLSHOT」でした。それが9月14日でしたので,ものの11日間でエミネムはディスラップを完成させ,それをレコーディングし,発表する,この一連の作業を11日間で仕上げて,マシン・ガン・ケリーはあの世に葬られたということです。

この曲でエミネムは言っていますが,こういうことです。

“I’d rather be 80-year-old me than 20-year-old you.”
「20歳の若いおまえになるより,80歳の年老いた自分でいるほうがマシだよ」と。

(文責:Jun Nishihara)

今年2018年に出た最も偉大なるヒップホップ曲ランキング:第28位「ニック・グラントの’96ブルズ」

2018年総まとめヒップホップ曲ランキング《トップ30》です。
本日は第27位の発表です。

第27位:ニック・グラントの楽曲「’96 Bulls」

まさに正統派のラップをするアーティストです。ニック・グラント(Nick Grant)はつい昨年(2017年)にデビューした新人ラッパーです。しかし,まったく新人ラッパーとは思わせないこの「正統派」のラップが好評ですが,世間では,まったく売れていません。最近ハヤリのラップスタイルを取っているわけでもなく,派手さもなく,全然ふざけてもいませんので,「売れない」ということはありますが,しかしここまで上手いラップをし,正確な韻律(cadence)を踏み,見た目も悪くないラッパーですので,もっと売れて良いハズです。現在は,世間にはあまり評価されていない(underratedな)ヒップホップ・アーティストですが,このまま着実に力を付けていけば,将来有望なラッパーといえるでしょう。

↑このミュージックビデオを観てもらってもわかりますが,確実に90年代のラップに影響を受けております。これからが楽しみです。

2018年のヒップホップ曲ランキングの第28位として相応しいアーティストだと思います。曲名の「’96 Bulls」というのは1996年のシカゴ・ブルズのこと。1996年のブルズというのは,ブルズとして最も強かった頃(マイケル・ジョーダンが所属していた頃)です。負ける雰囲気は全くありませんでした。その頃のブルズが抱いていたメンタリティと同じ気持ちを,ニック・グラントも心に持ってラップに挑んでいる,と彼はインタヴューで語っていました。

(文責:Jun Nishihara)

今年2018年に出た最も偉大なるヒップホップ曲ランキング:第29位「ジャネル・モネのジャンゴ・ジェーン」。

2018年総まとめヒップホップ曲ランキング《トップ30》です。
本日は第29位の発表です。

第29位:ジャネル・モネのシングル曲「ジャンゴ・ジェーン」

これは下手なラッパーがラップする曲よりも,はるかに素晴らしいラップ曲です。
ジャネル・モネ(Janelle Monae)は普段はラッパーではなく,R&Bシンガーです。
にもかかわらず,ラップが上手い!巧い!旨い!ウマい!,というのがこの曲で証明されました。

下手なラッパーよりラップが上手い歌手として,ラッパー顔負けの曲として,堂々の29位,ランキング入りです。

(文責:Jun Nishihara)

今年2018年に出た最も偉大なるヒップホップ曲ランキング《トップ30》:第30位「Pusha-Tがドレイクをディスった曲」。

師走になりました。今年2018年も残すところ1ヶ月です。

2018年の総まとめとして,今年リリースされたヒップホップ曲で,最も素晴らしい曲のランキング《トップ30》を今日から毎日,1曲ずつ発表していきます。

早速始めましょう。

2018年総まとめヒップホップ曲ランキング《トップ30》の開幕です。

初日は第30位の発表です。

第30位:プッシャTがドレイクをディスった曲「The Story of Adidon」です。

それは2018年の初夏のことじゃった。
カニエ・ウェスト軍団とドレイク軍団がアルバムを続々とリリースする直前のこと。
いわゆる「アルバム・リリース対決」が始まる前の引き金(トリガー)となった事件として,カニエ・ウェスト軍団に所属するラッパー,プッシャT(Pusha-T)が,ライバル軍団のリーダーであるドレイク(Drake)をディスった曲「The Story of Adidon」をリリースした。

しかし,この事件の前にもボヤがあり,それがドレイクが発表した「Duppy Freestyle」であった。このフリースタイルでドレイクは,ライバルのカニエ・ウェストをディスっている。それを聞いたカニエの弟子的存在であるプッシャTが上記のディス・ソングを発表したというわけである。

2018年に出たヒップホップ曲ランキングの初動として相応しい,エキサイティングな1曲である。こういう「対決」がたまに起こるからこそ,ヒップホップ・アーティストの間にも張り詰めた空気が流れ,緊張感を感じることができる。こういったディスりとか対決とかいうものは,ヒップホップの醍醐味の1つであり,やっている本人も,それを聞いている我々にとっても,エキサイティングなことである。

(文責:Jun Nishihara)

若手アーティストの街角:Rayana Jay – “Sunkissed”

それは昨年のことであった。最近お気に入りの若手アーティスト,Nonameという女性ラッパー/シンガーのデビューアルバム『Telefone』を視聴者が好きな金額を出し合って購入できるサイト=bandcampで購入しようとしていた時であった。もちろん『Telefone』は購入した。そのあと,もっと黒人女性のヴォーカルが聴きたかったので,引き続きbandcampでいろいろとさぐってみた。

するといいのを見つけてしまった。Rayana Jayという新人歌手である。R&Bでもない,ジャズでもない。でも声はまさに私が求めていたものであった。Apple Musicで無料で聴ける時代に,お金を出して買って聴きたくなる声であった。

それから彼女のアルバム『Sorry About Last Night』と『Morning After』を何度聴いたことか。

彼女の声は色っぽくて,ちょっぴりエロいけれど,ぜんぜん下品じゃない。ジャズでもないけれど,ジャジーに聞こえる。メロディーは洗練されている。でも上品すぎない。だって,歌詞に「nigga」とか言ってるんだし。でもやっぱり,ぜんぜん下品に聞こえない。黒人女性が「nigga」という時,なぜかエロく聞こえる。呼びかけの「nigga」じゃなくて,文法的にちゃんとしたセンテンスの中に含む「nigga」である。
たとえば・・・

You are my Rhythm and Blues, the one who invented the cool
The one’s who dented the rules
And showed the world what my niggas could do, ay!
– Rayana Jay “Sunkissed”

私にとって,あなたの存在は“リズム&ブルース”/元祖クールな連中
ルールなんてぶち破ってくれる
世界中に見せつけてやりな,黒人野郎たちが秘めてるスゴイところを,エィ!
– Rayana Jayのシングル曲「Sunkissed」より

黒人女性が同胞の男たちを「niggas」と呼ぶとき,その根底には「共通理解/暗黙の了解」が流れている。「わたしはあなたのことをniggaと呼ぶけど,わかってるわよね」ということである。

また,歌詞中の「dent」の使い方がドキドキする。普通「rules」に付ける動詞は「break」である。それなのに,先の「invented」と韻を踏ませるために過去形の「broke」ではなく「dented」を使っているのだけれども,「niggas」という言葉を使っているような若者の女が「dented」なんていう,よく考え出された知的な語彙を使っているところが,もうたまらなくエロく感じてしまう。

さて,彼女の素顔をこの映像で見てみてほしい。まだ23歳。

そして,先ほど取り上げた歌詞が含まれている楽曲「Sunkissed」をライヴで歌っているRayana Jayは以下のとおりである。

ときにRayana Jayの読み方は「レイアナ・ジェイ」である。まだ彼女の情報は現時点(2018年11月28日時点)では英語版ウィキペディアにも載っていないし,日本盤のCDも出ていないので,彼女の名前の公式な日本語表記はどこにも無いが,読み方は「レイアナ・ジェイ」でございます。(ウィキペディアにも載っていない頃からRayana Jayの音楽をどっぷり聴いているんだけれど,これから近い将来にはRayanaもウィキペディアに掲載されるようになって,そのうちメジャーデビューを果たしたりするんだと思う。もちろんメジャーデビューして,もっともっと金儲けしてもらいたいのだけれど,そうなると,なんか遠くへいってしまったように感じたりするのだろうか。アーティストっていうのは,そんなものよね。なんちゃって。)

Rayanaの生まれはカリフォルニア州リッチモンド市。10歳の頃に教会のクワイヤーで歌い始めて,2012年の夏に初めてプロの歌手として働き始める。出だしはまったく稼げないので,アルバイトと兼業していた。Rayanaとツイッター上で何度かメッセージを交わしたことがあるが,今年になってアルバイトを辞めるだけのお金が稼げるようになり,今年2018年の夏に晴れてニューヨークへ引っ越し,シンガーソングライターとして全面的に働けるようになったという。

これからの活躍に期待大です。

最後に彼女の言葉で締めくくります。

“My friend once said that the church is like the hood Juilliard…like everything starts here.”
(あたしの友達がかつて言ってた。地元の教会って,ゲットーのジュリアード大学みたいなもんよ,ってね。何もかもそこから始まったわ。)

(文責:Jun Nishihara)

元ネタの曲を知る⑧:ジュース・ワールド⇆ナズ

元ネタの曲が二重にさかのぼって発見できる場合があります。

それは例えば,いま旬のジュース・ワールド(Juice WRLD)の楽曲「Lucid Dreams」で発見することができます。この曲は,ヒップホップの最高峰ラッパー=NASの「The Message」を元ネタとしております。

juice-wrld-lean-with-me

ここで少しジュース・ワールドに触れておきますと,彼は現在19歳のまだ青少年です。なんと1998年生まれ。エミネムが公式デビューしたての頃です。エミネムの公式アルバムデビュー作や,セカンドLPがリリースされた頃,ジュース・ワールドはまだ1歳児の赤ん坊だったんです。

ジュース・ワールドは4歳の頃にピアノを習い始め,その後,ギターとドラムへと移行していきました。ラッパーを目指し,本格的にラップの曲をネット(SoundCloudサイト)へとアップし始めたのは,高校2年生の頃でした。

彼のラッパー名である「ジュース」は,2パックの映画『Juice』にちなんでいると言います。シカゴ生まれである彼は,同胞のカニエ・ウェストやチーフ・キーフ,はたまたヒューストン出身のトラヴィス・スコットを影響されたアーティストに挙げています。

さて,現在ビールボードチャート4位(リリース時は2位)の楽曲「Lucid Dreams(邦題:明晰夢(めいせきむ=夢見ていることを意識しながらみている夢))」を聴いてみましょう。

歌詞の内容はともかくも,冒頭のビートを聞くと,NASの「The Message」を想起せずにはいられません。ジュース・ワールドのこの曲はemo rap(エモ・ラップ(=情のこもったラップ))と呼べるでしょうが,NASの「The Message」が描いている夢は,そんなエモ(感情的)になっている暇なんてない連中への応援歌でした。ストリートの生きザマをありのまま描き,いつかそこから抜け出せる,そして成り上がれることを夢見た野郎たちに向けた曲でした。

最近は,黒人もある程度は平和に暮らせるようになった反面,こういった「精神的」な病いが蔓延するようになりました。肉体的に大変な時代には,こういった精神面での苦労はそこまでなかったのかもしれません,否,精神面での苦労があったのかもしれませんが,それ以上に,肉体面での苦労(食っていけるか,くたばるか)の実際面でのストラグルがある中,精神的に弱ってる暇は無かったのかもしれません。

そんな中,生まれたのが,NASの名曲「The Message」です。ストリートから,糞社会へ向けたメッセージです。

そして,冒頭で書いた「時に二重にさかのぼって発見できる場合」についてですが,このNASの「The Message」(1997年リリース)にも元ネタがあります。

それが1993年にリリースされた,スティング(Sting)の「Shape Of My Heart」です。

リュック・ベンソンの映画『レオン』の主題歌です。
このように,けっこうな大作がこうして世代を超えたヒップホップに影響を与えているという場合もあります。

(文責:Jun Nishihara)

元ネタの曲を知る⑦:ザ・ノトーリアスBIG⇆アル・グリーン

先日,ヒップホップの元祖として,ファンクの帝王=ジェームス・ブラウンの曲を取り上げましたが,今回はソウルの貴公子=アル・グリーンがヒップホップに与えた影響を取り上げたいと思います。

MI0002425304

アル・グリーン(Al Green)はヒップホップ世代と呼ばれる現代に,多大なる影響を与えたソウル歌手です。生まれはアーカンソー州。もとはゴスペル歌手の出です。60年代から70年代にかけソウル歌手として活躍しました。

彼が歌った数々の名曲のなかでも,ヒップホップに多大なる影響を与えた1曲は1972年リリースの「I’m Glad You’re Mine」です。

この曲は,ザ・ノトーリアスBIG(愛称:ビギー)や50セント,エミネム,エリックB&ラキムといった錚々たるヒップホップ大御所たちがサンプリングした曲です。

ヒップホップヴァージョンはいろいろなサンプリングの仕方があり,多様ですが,その中からひとつ,ビギーの「I Got A Story To Tell(邦題:話したいことがあるのさ)」を聴いてみます。

ビギーの冒頭歌詞を一部,引用します。

I kick flows for ya, kick down doors for ya
Even left all my motherfuckin’ hoes for ya
Niggas think Frankie pussy-whipped, nigga, picture that
With a Kodak, Insta-ma-tac
We don’t get down like that, lay my game down quite flat
Sweetness, where you parked at?
Petiteness but that ass fat
She got a body make a nigga wanna eat that, I’m fuckin’ with you
The bitch official, doe, dick harder than a missile, yo

おまえのためなら,フローもするし,ドアも蹴り破って,開けてやる
それに街中のアバズレ女どもとも,別れを告げてきた,でもよ
フランキー*(ビギーの愛称:麻薬王を演じたFrank Whiteより)は女の尻に敷かれるような男じゃねえ
想像してみな,コダックのインスタマック(=ポラロイド)で,チェキってみな
そんな趣味はねえ,ゲームはバッチリ決めてやる
可愛いこちゃん,どこにクルマ停めてんだい
小柄な女,でもケツはデカイ
彼女の肉体,むさぼりたくなる,じょーだんだよ
たまんねえこの女,俺のアソコ,勃起マックス,ミサイルばりに,ヨゥ

そしてそのモトとなった,アル・グリーンの「I’m Glad You’re Mine」を聴いてみます。冒頭のドラミングをループで起用していますが,そこを繰り返しループするだけで,ビギーのこの曲の下地ができあがるわけです。

(文責:Jun Nishihara)

黒人英語・考察①:“dope”の意味と用法そしてその濫用について

英語の語彙である”dope”の通常の意味については,以下のとおりです。

1.informal : an illicit drug (such as heroin or cocaine) used for its intoxicating or euphoric effects; especially MARIJUANA
2.informal : information especially from a reliable source

違法ドラッグであるヘロインやコカイン,はたまた,信頼度が高い情報源から得たネタ,とあります。しかし黒人英語として使用される場合,白人=標準に苛まされてきた歴史を持つ黒人たちは,あらゆる語彙の「通常の語義をflip it and use it(くつがえして用いる)」ことをしてきました。それは大多数の白人もしくはメインストリームへの反発でもありました。

現在,ヒップホップやラップ,R&Bといった黒人の歴史から生まれてきた音楽を聴くようになった白人の若者も含めて,「通常の語義ではない」”dope”という語彙が使用されるようになってきました。

違法ドラッグであるヘロインやコカインの「快感」という語義にフォーカスを当て,それをflip it(くつがえして),最高とかナイス,クール,イかす,といった意味で使われるようになってきました。

ここで用法をいくつか取り上げてみます。

Yeah, yeah, I’m so cold like, yeah (yeah)
I’m so dope like, yeah (woo)
We gon’ blow like, yeah (straight up, uh)
そうさ,そうさ,俺は超クールで,イヤー(イヤー)
マジでイカシてる,イヤー(ウー)
ぶっ飛んでくぜ,イヤー(まっすぐな,アッ)
(Childish Gambino – “This Is America”より)

There goes Rabbit, he choked, he’s so mad but he won’t
Give up that easy, no, he won’t have it, he knows
His whole back’s to these ropes, it don’t matter, he’s dope
He knows that but he’s broke, he’s so stagnant, he knows
When he goes back to this mobile home, that’s when it’s
Back to the lab again yo, this whole rhapsody
ラビットの出番だ,言葉に詰まり,キレてる,それでもヤツは
簡単には引き下がらねえ,そんなことじゃクタばらねえ,ヤツは分かってる
もう後には引けないと,すべてを賭けて,ヤツは最高の野郎
自分でも分かってる,だが一文無し,淀んだ人生,そして気づいてる
トレーラーの家に戻れば最後,そんな人生もうゴメン
だからブースに戻って,ラップをカマシてやんのさ
(Eminem – “Lose Yourself”より)

Flippin’ up my skirt and I be whippin’ all that work
Takin’ trips with all them ki’s, car keys got B’s
Stingin’ with the Queen Bey and we be whippin’ all of that D
Cause we dope girls we flawless, we the poster girls for all this
We run around with them ballers, only real niggas in my call list
I’m the big kahuna, go let them whores know
Just on this song alone, bitch is on her fourth flow
スカートまくって,オシリを築き上げて金儲けてる
キロ(コカ)を車に載せて長旅,カギには「B」の文字
クイーン・ビーのビヨンセとタッグ組んで,男たちをメロメロにさせる
アタシたちはイカシた女,欠点ゼロ,世界中の女性のモデルとして
いっちょまえの男たちとデートして,電話帳にはリアルな野郎の番号しか入ってない
女王のアタシについてきな,アバズレ女どもに見せてやれ
曲まだ終わってないのに,すでに4ヴァース決めてやった
(Nicki Minaj feat. Beyonce – “Feeling Myself”)

このように”dope”を形容詞として使用することで,いろいろなものにくっ付けて使うことができます。

Ahhh, that was a dope lunch! We should go there again!
「あぁ,最高のランチだった!またあのお店行こうね!」

The LINE message that you’ve just sent him… it was pretty dope.
「あなたがさっき彼に送ったライン・・・なかなかステキだったわ」

We da dope boyz forreal. Nobody can top us.
「俺らマジ最高。誰にも負けやしねえ」

しかしながら,こういう一時的に流行した語は,廃(すた)れるのも早いものです。今では”dope”というスラングが多くの一般人に使われるようになり,果ては白人にも使われるようになりました。そうなると,もうその語義は廃れの方向へとまっしぐら。もともと,白人=標準から外れるために,語義(意味)をくつがえして用いた黒人英語であったため,それが幅広く白人に使われるようになると,イメージは白々しい(pretentious)なものになってしまいます。

現在(2018年11月時点),”dope”にはかつてあった「カッコいい,イかす」というイメージとは逆に,「まだその言葉使ってるの?」といったようなダサいイメージが付き始めています。

それを物語っているのが,先日,ホワイトハウスに招かれたカニエ・ウェストとトランプ大統領の対話です。

One of the things we gotta set is Ford to have the highest design, the dopest cars, the most amazing — I don’t really say dope. I don’t say negative words and try to flip them. We just say positive, lovely, divine, universal words. So the fly-est, freshest, most amazing car.
1つ言っておきたいのは,フォード社に最高のデザインで,イカシてる車を作ってもらうこと。いや,俺は”dope”なんて言葉は使いたくない。ネガティヴな語を使って,その意味をflip it(くつがえしたり)するなんてことはしたくない。ポジティヴで愛おしてくて,万国共通の言葉を用いて伝えたい。世界一ぶっ飛んでいて,何よりも斬新な,最高に素晴らしい車を作ってもらいたい。
(引用元:カニエ・ウェスト(ホワイトハウスでのトランプ大統領との対話より))

カニエのこの”fly”という語の見事な使い方に拍手を送ります。ここでは形容詞として使われています。さらっと”fly”を形容詞として使っていること,また,もはや時代は”dope”ではないこと,それが象徴となる対話でした。それ以外はカニエのいつもどおりの情熱こもる話しっぷりでした。

(文責:Jun Nishihara)