カニエ・ウェストの“Sunday Service”(22週目)

もともとはカニエ・ウェストの仲間内だけで身内の小さなジャム・セッションとして始めた“Sunday Service”でしたが,6月2日(日)に開催されたいつもの“Sunday Service”は,ひときわ際立ってクオリティの高いものになりました。声(Voice)と手拍子(clappings)をたくみに使い,シンセサイザーやドラムマシンなんていう人工的なサウンドはまったく使っていないにも関わらず,ここまで質の高いものに仕上がるとは,衝撃的なものといえるでしょう。

音楽を生業としてやっているミュージシャンがこれを見ると,「これは並大抵のものじゃないぞ」と驚嘆すると思いますが,なにせカニエのこの“Sunday Service”は謂わばアングラでやっているものですので,著名なミュージシャンには見つけられる可能性が低いというだけでそこまで有名にはなっていないのでしょうが,たちまちこれが有名になれば,その才能の高さには衝撃を受けることでしょう。

白人には作れないセッション(いや,これはもうセッションなんかではなく,もはやゴスペルだ)であると思います。このテンポといい,力強さといい,キレのある手拍子といい,とおる声といい,黒人が歴史上経てきた「いろいろなもの」がこういう形でひとつの強力な合唱に昇華したといえるでしょう。

以下をご覧ください。3ページあります。右にスライドするとページをめくれます。
(2ページ目ではカニエも映っております。これを群衆にまぎれて同じように身体を揺らしているカニエは,聖歌隊の仲間たちがここまでついてきてくれている(そして彼・彼女ら自身が楽しんでやっている)のを肌で感じて,誇りに思う父親のようなまなざしで見ているのは,どこか感慨深いものがあります。)

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SUNDAY SERVICE

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いつものようにキム・カーダシアン(Kim Kardashian)もサンデーサービスに参加しているのですが,彼女のインスタグラムからのIGTVも以下のとおり掲載しておきます。

以上,22週目の“Sunday Service”でした。

(文責:Jun Nishihara)

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カニエ・ウェストの“Sunday Service”まとめ(20週目と21週目)

本年2019年の最初の日曜日(Sunday)から始動したカニエ・ウェストの“Sunday Service”は,はやくも現在20週目を迎えることとなりました。

今年初めての日曜日は1月6日にあたりますが,その日から日曜日は1日たりとも休まず,カニエ・ウェストとその仲間たち(名付けてカニエ軍団)は“Sunday Service”を開催してまいりました。

本日はその20週目(5月19日)と21週目(5月26日)を以下にて記録しておきます。

20週目(5月19日開催):この回では奇抜なミュージックビデオとミステリアスな存在感で知られるシンガー=Sia(シーア)が登場します。彼女のヒット曲「Elastic Heart」をミサのゴスペル・クワイア(聖歌隊)と合唱します。

キム・カーダシアンのツイッターでも以下のとおり掲載されております。

21週目(5月26日開催):この回ではついに,こどもたちの合唱まで聴くことができます。こども達の合唱を聞いているのもいいのですが,この動画のほんとうに重要なポイントは,タイムライン01:02から始まります。(ビデオはもう少し下のほうに掲載しております。)タイムライン01:02から始まる曲では,次第に手拍子(clappings)が始まるのが分かります。黒人音楽の歴史において,リズム感抜群の「手拍子」はとても重要な意味をもっております。手拍子は黒人が奴隷として重労働を強いられていた1900年代初期,手拍子でリズムをとって,重労働のつらさを幾分か和らげておりました。以下は,ウェルズ恵子先生の『魂をゆさぶる歌に出会うーアメリカ黒人文化のルーツへ』より抜粋します。

歌は,身体を使うどんな仕事のときも,働き手に力をくれました。リズムをとってみなが力を合わせた方が大きい力が出ますし,単純作業のときは歌いながらの方が飽きずに仕事がはかどります。帆船の船乗りは帆を揚げるときや錨を巻き上げるときに歌いましたし,農民が固い地面を耕したり,鉄道工夫が岩山をうがってトンネルを掘ったり,鉱山の坑夫が鉱石にハンマーを当てて砕くときなども,黒人たちは「はっ!」というかけ声を入れた歌をうたって力を合わせました。
(中略)
人間の筋力で固い地面を耕したり,鉱脈や石炭をハンマーとたがねで切り崩したりしていた時代,男たちは集団で歌のリズムにあわせて働きました。鉄の道具を振り上げるまでに息を吸ってひと呼吸,振り下ろすときに息を吐いてひと呼吸。テンポの速い曲も遅い曲もありますが,歌詞は呼吸と動作の速度にあわせて選ばれています。
−ウェルズ恵子・著『魂をゆさぶる歌に出会う(アメリカ黒人文化のルーツへ)』より︎

このように黒人にとって「リズム」は奴隷制度の時代から,黒人の身体を血液のように脈打つたいせつな要素でありました。リズムの中でも「打つ」という要素が高いものは「ビート」とも呼ばれます。

このように,黒人の身体の奥底に脈打つとても大事な要素としてリズムやビートがあり,黒人歴史にとっては,それはメロディや音色というものよりもさらに古くからあるものでした。メロディや音色を奏でるだけでは,重労働ははかどらないですからね。黒人にとってはリズムやビートが先に来ていた。逆に,貴族の暮らしをして,舞踏会に出向き,メロディにあわせて舞うように踊っていた白人にとっては,音楽のメロディや音色が重要視されておりました。こうした歴史を鑑みますと,黒人はビートの文化,白人は音色の文化,と位置付けることが一つの見方となりますでしょう。

そこで上記のカニエ軍団聖歌隊の「手拍子」に話を戻します。

この手拍子はとても速いテンポで叩かれます。「Jesus died for you.(ジーザスは我々の犠牲となった)」という歌詞を手拍子の合間に挿入し,聖歌隊メンバーが同じリズムで歌います。とても短いクリップですが,黒人文化に息づく音楽のとても大事な部分がここに垣間見れます。さて,そのビデオを以下に掲載しておきます。(タイムラインは01:02〜の箇所です。)

(文責:Jun Nishihara)

イースター以降のカニエ・ウェスト“Sunday Service”まとめ(17週目〜19週目)

4月21日(イースターの日曜日)に全米最大ミュージック・フェス=コーチェラ祭で開催されたカニエ・ウェストのSunday Service(サンデー・サービス)以降も,実は,カニエ・ウェストは引き続き,休むことなく,“Sunday Service(日曜のミサ)”を開催しております。

イースター以降の“Sunday Service”を以下にまとめておきます。

4月28日(日)開催“Sunday Service”(17週目)

5月5日(日)開催“Sunday Service”(18週目)

5月12日(日)開催“Sunday Service”(母の日:Mother’s Day Service)
この日は母の日ということで,世界中のママに捧げたサンデー・サービスとなりました。カニエは2007年に母親をなくし(その後カニエは『ハートブレイク&808』というアルバムを発表),母への追悼の曲として楽曲「Hey Mama」を捧げました。これはこじんまりとしたコンサートというよりも,毎週開かれているジャム・セッションですが,カニエ・ウェスト(とキム・カーダシアン)の自宅があるカリフォルニア州カラバサスの近郊で行われました。

(以下の映像はBillboard Newsより。)

(以下の映像はキム・カーダシアン(Kim Kardashian)のインスタグラムより。)

以下はご参考までに,2005年8月30日にリリースされたカニエ・ウェストの楽曲「Hey Mama」を掲載しておきます。

(文責:Jun Nishihara)

エミネムのラップ術に学ぶ(その②:教材はロジックの楽曲「Homicide」)

前回は,エミネムのラップ術について,1.アクセントの場所を入れ替えるワザを取り上げました。
本日はその②として,以下のとおり説明していきます。

2.次から次へと連打のように繰り出す韻踏み

まずは以下のヴァースをご覧下さい。

Big bills like a platypus
A caterpillar’s comin’ to get the cannabis
I’m lookin’ for the smoke but you motherfuckers are scatterin’
Batterin’ everything and I’ve had it with the inadequate
Man, I can see my dick is standin’ stiff as a mannequin
And I’m bringin’ the bandana back, and the fuckin’ headband again
A handkerchief and I’m thinkin’ of bringin’ the fuckin’ fingerless gloves back
And not giving a singular fuck, like fuck rap

上記の赤文字で反転している箇所の特に下線を引いているシラブルは韻を踏んでおり,これをまるでエミネムは連打するかのように,次から次へをスピットしています。

この部分を音声で聴いてみましょう。
以下のタイムライン,2:49〜3:02の部分です。

ものの13秒で以上のヴァースをスピットするのも驚くべきことではありますが,それ以上に注目すべきは「韻踏みを1秒に1回以上繰り出しているということ」です。13秒のうちに14回韻を踏んでいますので,その計算になります。

3.息の長さ

これは言うまでもないことですが,上記のヴァースにしても,ひと息でラップをやり遂げています。最後の「fuck rap」という箇所で息継ぎをして,その後の「I sound like a fuckin’ millionaire」のくだりへと進んでいます。

息継ぎはリセットです。たとえ,へとへとになっていたとしても,エミネムはこんなことないでしょうが,ぐだぐだのラップになっていたとしても,息継ぎの箇所で一旦持ち直して,心機一転,新たな心持ちで,その後に進めていけるようになります。

息継ぎをどこでするかという大切さはあります。ラップは息継ぎの場所で決まります。むかしから思っていたのは,ジェイZ(Jay-Z)は息継ぎがとてもうまい人だな〜と思って聴いておりました。しかも息をしているということが判らないように,「息の音」をひそめている。ラッパーによっては,「スーッ」とはっきりと息継ぎをしていることが聞こえる人もいますが,ジェイZはむかしから聞こえなかった。自分でもラップしてみると必ず,「スーッ」とやってしまうのですが,慣れてくると,「息の音」をひそめて息継ぎをすることができるようになってきます。意識をするかしないか,という要素もあります。「スーッ」と聞こえるように息継ぎするのが悪いというわけでもないです。ラップは芸術ですから,どちらが正解ということはないですが,おそらく息の音を聞かせると,敵に心の内を読まれてしまうキケンがあるので,下積み時代をハスラーとして過ごしたジェイZは,人に心の内を読まれないようにするため,自然に息の音を消すことを身につけていったのかもしれません。それが彼のラップに顕在していた,と言えるかもしれません。

(文責:Jun Nishihara)

5月31日,カニエ・ウェストがNetflixに登場。

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(上記写真は,2018年5月,アルバム『キッズ・シー・ゴースト』制作に当たる村上隆(左),カニエ・ウェスト(真ん中),キッド・カディ(右)。)

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(上記写真は10年前,2008年4月,ブルックリン・ミュージアムで村上隆展覧会が開かれる前夜祭のディナー会場で。(左=村上隆,右=カニエ・ウェスト))

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(上記写真は,2018年4月,ユニクロとコラボした村上隆)

2019年5月31日,Netflixにて,今となっては偉大なるコメディアンであり全米トークショーホストであるデイヴィッド・レターマン(David Letterman)の番組『My Next Guest Needs No Introduction with David Letterman』にて,カニエ・ウェストが登場します。そのトレーラーは以下のとおりです。

同時に以下のゲストが登場予定。

・カニエ・ウェスト(Kanye West)
・エレン・デジェネレス(Ellen DeGeneres)
・ティファニー・ハディシュ(Tiffany Hadish)
・メリンダ・ゲイツ(Melinda Gates)
・ルイス・ハミルトン(Lewis Hamilton)

さて,5月31日に登場するカニエ・ウェスト,インタヴューの予告ですが,その一部(snippet)をご紹介します。

以下は妻のキム・カーダシアンのツイッターより。(英語字幕付)

カニエ・ウェスト
もし今おふくろが生きてれば,
おふくろにとって最高に楽しい時だったと思う。
俺の子供たちが家中を走り回ってるのを面倒見たり,
おもちゃをいっぱい買ってくれたりしていただろう。

思い出すよ,むかし,おふくろが俺に
カラフルなクマさんのぬいぐるみを買ってくれた。
当時『グラデュエーション』って3枚目のアルバムを俺はリリースした頃で,
俺はとても村上隆の作品に凝っていた。

おふくろはそのクマさんのぬいぐるみ持ってこう言うんだ,
「このクマさん,村上隆のみたいでしょ」って。
でも俺は,「こんなのいらねえよ!
ゼンゼン村上隆の作品に似てねえし!」って言った。

その後,おふくろは死んで,数週間後,くれたそのぬいぐるみを探しまくった。
やっと見つけたそのぬいぐるみを俺は,
自宅にある村上隆コレクションの一番最上段に飾った。

おふくろは今も俺らを見守ってくれていて,
いつも俺たちを導いてくれていると思ってる。

(文責:Jun Nishihara)

エミネムのラップ術に学ぶ(その①:教材はロジックの楽曲「Homicide」)

5月10日(金),ロジック(Logic)はニューアルバム『Confessions of a Dangerous Mind(=アブナい脳ミソから湧き出る告白)』をリリースした。

(翻訳のポイントとして,人がPC画面をパッと見て映るこのタイトルの「長さ」を考慮したとき,
“Confessions of a Dangerous Mind”

「狂気の告白」
とサラッと訳してしまうと,イメージが思い浮かばない。
とは言え,はたまた
「キケンな頭を持った男が打ち明ける告白」
と説明的に(英語原文では所有格の名詞構造なのに,日本語ではS+V+O構造で)訳すとイメージはできるが,原文の構造をくずしてしまう。

原文の構文をくずさずに,だいたい同じ「長さ」を尊重して
「アブない脳ミソから湧き出る告白」
と訳せば,ぱっと見,原文の語彙レベル(confessionsとかdangerousとかなかなかスペルが長い語を使用しているスタイル)を保ちつつ,人がパッと一目で視界に入れた際に,同じ長さだと感じられる訳になる。
ここでの翻訳のポイントは,“of”という前置詞を“from”と読み替えて「〜の」ではなく「〜から」と訳すところがミソである。)

さて,このアルバムの楽曲「Homicide」ではエミネム(Eminem)をフィーチャリング・ラッパーとして迎えて,スピード感ある高速ラップを披露している。この曲でロジックとエミネムを聴き比べてみると,全体的なスピードは双方とも優劣ない勝負を見せているが,やはりエミネムの凄まじさは,ロジックとは比較にならないほど,優れているといえるでしょう。

どういうところがエミネムが優れているか,といいますと,以下3点のとおりでしょう。

1.アクセントの場所を入れ替えるワザ
2.次から次へと連打のように繰り出す韻踏み
3.息の長さ

説明していきましょう。

1.アクセントの場所を入れ替えるワザ

どんな英語の単語にも,シラブル(Syllable=音節)があります。たとえば,“bandana”という単語には,シラブルが3つあります。“ban/da/na”のように3音節に分かれます。「バン」「ダ」「ナ」です。簡単に言いますと,母音1つ(文字上の母音ではなく,音の上での母音。たとえば,beautifulという単語には,文字上の母音は5つありますが,音の上での母音は,「ビュー」「ティ」「フォ」と3つのみです)において,シラブルが1つと考えれば,簡単でしょう。

さて,そのシラブル1つに,アクセントが1つ決まっています。英語は日本語とは違い,上下のアクセント(イントネーション=抑揚)のある(つまり音楽のような)言語ですから,強弱あったり,上下あったり,高低あったり,音的な要素がいろいろ入っております。そして,“bandana”のアクセントは,“ban→DA⤴︎na→”となります。

そこで,もうちょっと話をややこしくして,こんどは別の単語とつなげてみましょう。

“I’m bringing the bandana back.”という一文があったとしましょう。
普通にこの一文を音読するとき,どこにアクセントがあるでしょうか。(つまり,この一文でもっとも強く発音するシラブル(音節)はどこでしょうか。)

答えは,“da”のシラブルです。
(「アイン・ブリンギン・ザ・バンダ⤴︎ーナ・バック」と「ダー」の箇所(シラブル)にもっとも強いアクセントが表れます。ちなみにもっとも弱く発音する所は「ザ」です。聞こえても小さい「ナ」くらいにしか聞こえません。)

これは普通にネイティヴのアメリカ人がこの一文を音読した場合です。

これをエミネムがラップすると,こうなります。
(タイムラインは2:56〜2:57の箇所です。一瞬で過ぎますので,注意して聴いて下さい。)

エミネムは通常のネイティヴが発音するアクセントとは違い,こういう風にラップします。

「ア⤵︎イン・ブリンギン→ナ→バンダ↑ナ→バック」

つまり,もっとも強く発音するアクセントを冒頭の「ア」に置き換えて,その他はフラットに流しています。しいていえば「ダ」にちょっぴりほんの強みを出すだけです。しかし1秒も経たないうちに,一瞬で通り過ぎていきますので,気合を込めて聴く必要があります。

しかし,これはエミネムのワザであり,他の箇所にも,アクセントの場所を入れ替えるというのがちらほら見られます。

例えば,次のような箇所でしょう。
アクセントの場所(エミネム特有のアクセントを入れ替える箇所)を大文字で書いておきますので,目で追いながら,エミネムのラップを聴いてみてください。

BEAST mode, motherfuckers ’bout to get hit
with so many foul lines, you’ll think I’m a FREE throw
figured it was about time for people to EAT crow
you about to get out-rhymed, how could I be DEthroned?
I stay on my toes like the REpo, a beHEmoth in SHEEP’s clothes
from the EAST Coast to the west, I’m the ETHOS and I’m THE goat
who the best, I don’t gotta say a fuckin’ THING, though
’cause emCEEs know

赤文字で反転した箇所と下線を引いた箇所が,エミネムがアクセントを置いている場所です。ネイティヴがこの文章を音読する際とは,異なる箇所にアクセントを置いてラップをしております。たとえば「dethrone(王座を奪う)」という単語のアクセントは「o」にありますが,エミネムは冒頭の「e」にアクセントを置き換えています。また「eat crow(カラスを食べている)」と話すとき,情報としては「何を食べているのか?」「カラス(crow)」が大事なのであって,普通であれば「crow」にアクセントを置きます。エミネムのように「イー(ea)」という音節を強調したいがために,普通の会話や普通の音読で「eat」にアクセントを置くネイティヴはいないでしょう。(「カラスをどうしているのか?」「食べて(eat)いる」という変わった会話をすることがない限り。ちなみに,「eat crow」はイディオムで「屈辱を味わう」や「大恥をかく」という意味です。)しかし,エミネムはこうしてアクセントの箇所を自由自在に入れ替えて,まるで楽器のようにラップを演奏しているのです。

さて,「2.次から次へと連打のように繰り出す韻踏み」と「3.息の長さ」については,来週土曜日,ご説明いたします。

(文責:Jun Nishihara)

DJキャレド,新曲「Higher」を故ニプシー・ハッスルを迎えてミュージックビデオと同時リリース。

ニプシー・ハッスルが亡くなる数日前に撮影されたミュージック・ビデオ「Higher」は,DJキャレドのニューアルバム『Father of Asahd』に収録されております。

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(写真はDJキャレドが溺愛する息子=アサド(Asahd)です。)

5月15日(水),自身のインスタグラムでDJキャレドは,新曲「Higher」の全収益を故ニプシー・ハッスルの遺族へ寄付することを発表いたしました。

ニプシー・ハッスルには二人の子供がいました。イマーニちゃんとクロス君です。この曲「Higher」で,ニプシー・ハッスルはこうラップしております。

Los Angeles love kinda of like Hussle and Boog
Emani turned ten, Kross turned two

ロサンゼルスへの愛,ハッスルとブーグのよう
イマーニは10歳になり,クロスは2歳になったばかり

註釈:
ブーグとは,ニプシーのフィアンセ=ローレン・ロンドンのこと。

ニプシーは亡くなる直前にこうして家族の名前を自身のラップに含めた,というのは,なんというか,不思議なものです。よくやるギャングの闘争のこととか,コカインを売りさばいてどれだけ稼いだとか,そういうことをラップするのではなく,死ぬ前に収録した曲に,こんな素晴らしいリリック(歌詞)を書くのは,彼がどれだけ家族思いだったかというのを象徴しているようです。

ニプシーは曲の冒頭でこうラップしています。

My granny 88, she had my uncle and then
A miscarriage back-to-back every year for like ten
Pregnant with my moms, doctor told her it was slim
Was bed rode for nine months, but gave birth in the end
Pops turned 60, he proud what we done
In one generation, he came from Africa young
He said he met my moms at the Century Club

バアちゃんは88歳,俺の叔父を最初に産んで,その後・・・
流産を繰り返した,毎年,それを10年間
そしてついに子を身ごもって,ドクターの検診で,栄養失調と言われた
9ヶ月ベッドで寝たっきり,でもついに産んでくれた,俺のかあちゃんを
オヤジは今60際,俺らがやってきたことを誇りに思ってくれている
世代をしょって,アフリカから若くして,移民としてこの国に行き着いた
オヤジは言う,「センチュリー・クラブって飯屋で,おまえのかあちゃんと出逢った」と

ニプシーのおばあさんは流産を11回繰り返した後に,ようやくニプシーの母親を身ごもったようです。ニプシーはインタヴューでこう語っておりました。「もしあの時,流産を繰り返していたバアちゃんが妊娠することを諦めていたら,じぶんはここに生まれていなかった」と。

曲中のサビでジョン・レジェンド(John Legend)がピアノを弾きながら,「We keep goin’ higher… higher…」と歌う時,ニプシーの魂が大空に高く,舞い上がっていくように感じられます。

ヴァース1は家族への想い,ヴァース2は生まれ育ったL.A.のストリートについてラップするニプシー。こうして見ると,この曲はニプシーの生き様をぎゅっと凝縮したような内容になっております。

【ご参考】
ニプシー・ハッスル(本名:アーミアス・アスゲドム(Ermias Asghedom))については以下もご参照願います。

☆第8位「本物のヒップホップファンであるのなら,ニプシー・ハッスルのアルバム『Victory Lap』を通しで聴くべし」(今年2018年に出た最も偉大なるヒップホップ曲ランキング)

☆追悼:ニプシー・ハッスル(Nipsey Hussle)

☆スヌープ・ドッグからの追悼の言葉(ニプシー・ハッスルへ)

☆ジェイZの“B-Sides”ライヴ・コンサート(その②:ニプシー・ハッスルへの追悼フリースタイル対訳)

(文責及び対訳:Jun Nishihara)

米VOGUE誌による「73の質問 with キム・カーダシアン」

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キム・カーダシアン(Kim Kardashian West)と旦那のカニエ・ウェスト(Kanye West)の豪邸を米VOGUE雑誌が訪れて,73の質問を投げかけるという企画。4月11日(木)にYouTubeに掲載されて,再生回数はすでに3000万回を超えたという脅威の数字。

カーダシアンとカニエ夫婦の自宅が見れるというこの企画,レアな映像です。先日ニューシーズン(シーズン16)がスタートした米リアリティTVショー『Keeping Up With The Kardashians』(邦題:カーダシアン家のお騒がせセレブライフ)の最新エピソードでもカニエ・ウェストが登場しておりました。しかし,ここまでキム&カニエの私的な生活を映した番組は初めてではないでしょうか。カーダシアン家のプレイベートライフはTVで放映されまくりですが,カニエが絡んでくるというのは,めずらしいと思います。いかがでしょう。

VOGUEからの質問にも出てきますが,キム&イェー(=カニエ)が住んでいるカリフォルニア州カラバサス市は,カニエの“Sunday Service”が開催されてきた場所でもあります。カニエのhome studioももちろんこの場所にあります。ちなみにカニエが手掛けるコレクション名は“YEEZY Calabasas(イージー・カラバサス)”ですので,ぜひご覧あれ。

(文責:Jun Nishihara)

ジェイZの“B-Sides”ライヴ・コンサート(その②:ニプシー・ハッスルへの追悼フリースタイル対訳)

先日,ジェイZの「B-Sides」コンサートについて掲載いたしました。

そこで初披露されたNipsey Hussle(ニプシー・ハッスル)へ贈る追悼フリースタイルを以下に掲載いたします。

JAY-Z – “FREESTYLE for Nipsey Hussle”

[Verse]
Gentrify your own hood, before these people do it
Claim eminent domain and have your people movin’
That’s a small glimpse into what Nipsey was doing
For anybody that’s still confused as to what he was doing
The neighborhood is designed to keep us trapped
They red line us, so property declines if you live by blacks
They depress the asset and take the property back
It’s a ruthless but a genius plan in fact
So now we fighting over scraps
Crabs in a barrel, but crabs don’t belong in the barrel and they ain’t never tell us that
So in the barrel, we gonna act like we act
We can easily get out the barrel if we stand on each other’s back
Whoever gets on top, as long as they stay attached
They gonna pull everybody out
I was doing just that

よそから来た連中に,おまえ自身のフッド(=地元)を手渡すんじゃない
その名高い故郷と住民を,今すぐ奮い立たせんだ
それはニプシーがやっていたことの,ほんの一部分にすぎないが
あいつが何をやっていたのか,おまえらに伝えたかった
ある地区(ネイバフッド)は,まるで牢屋のように俺らを閉じ込める
政府は俺らをマークして,「黒人」という理由だけで所有地の価値は下がる
資産は下落させられ,所有地は奪われる
容赦の無いやり方だが,「ヤツら」にしてみりゃ最も都合のいいやり方だ
ついに俺らは,残されたクズ切れを求めて戦い合ってる
樽(タル)に囚われたカニ(=低所得層),しかしカニはカニでも囚人でいる義務はない
樽に囚われていたとしても,その中でできる最良の策をとればいい
背中の上に乗ってけば,樽の中から這い上がることは可能だ
ひとりずつ背中を積み上げていけば,いちばん上にあがった者が
樽の中のカニ全員をつかみあげて,外へ逃すことができる
俺がやっていたのは,そういうことだ

I told Neighborhood Nipsey stay close
There’s a 100 million dollars on your schedule, lay low
Tell your team to be on point in the places that they go
I never dreamed that he get killed in the place that he called home
How we gonna get in power if we kill the source?
Y’all like to run off on the plug, so of course

フッド出身のニプシーに言ったことがあった「地元を大事にしろ」
「おまえのプランには1億ドルの価値がある,つまり嫉妬する連中が出てくるから,自分の動きはおおっぴろげにするな」
「チーム仲間にだけ行く先を伝えて,確実にそこへ着かせるようにしていけ」
しかし夢にも思わなかった,あいつがまさか,その地元でやられちまうとは
黒人同士でやりあってたら,いつになっても上にはあがれない
最もキーとなる人間を殺してばっかいるから,いつまでもこうなんだよ

That ain’t lit, that’s a means to an end
Me and my team was playing the plug ahead of plan
Sometimes we was only making a $1000 a joint
That ain’t no money, but that ain’t main point
So those 92 bricks was only 92 thou
So y’all can close your mouth, it ain’t nothing for y’all to wild (wow)
But it is something to study
We was chasing our goals, not chasing money
Niggas chasing hoes, we find that funny
I pull up in the Rolls, that hoe gon’ want me
But I don’t want no hoe, I want a wife
Somebody to bounce these ideas off at night
I be going to sleep hoping Nip visit me
That young king had a lot of jewels to split with me
And we ain’t gotta leave the hood physically
But we gotta leave that shit mentally

イカレちまってる,原因と結果がごた混ぜになっちまってる
俺は常にキーとなることをかなり先まで進めてから,人に行く先を伝えていった
1本1000ドルしか稼げない時だってあった
しかしカネじゃない,そこがポイントなんじゃない
つまり92本のコカで92,000ドルしか上がらなかったことも
だから黙ってハッスルしな,すぐに稼げなくても騒ぎ立てんじゃない
しかしそこから学ぶことはできる
俺らはマネーを追っかけてたんじゃない,ゴールを追っかけてた
アバズレ女を追っかけてる男がいまだにいる,見てると可笑しいぜ
ロールスロイスを横付けすれば,アバズレ女が寄ってくる
しかし俺は「女」を求めてんじゃない,一生の伴侶を求めてんだ
夜中にいろんなアイディアを出し合って話し合える人
夜寝る前に,ニプシーが俺んとこ寄ってくれるのを願ったこともあった
「若いキング(=ニプシー)」は,俺にいろんな宝(コト)を教えてくれた
フッドを出る必要なんてどこにもない
だが心に刻んどけ,おまえがいるところをフッドと考えるんじゃない
(対訳:Jun Nishihara)

ジェイZの“B-Sides”ライヴ・コンサート(その①)

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(4月26日開催のB-Sidesライヴにて。左=ジェイZ,右=Nas)

4月26日(金),NYCの歴史的なダンスクラブであるウェブスター・ホール(Webster Hall:2002年頃当時はヒップホップのフロアもあった)の再開を記念して,ジェイZが「B-Sides(B面)」と題するライヴコンサートを開催しました。

ウェブスター・ホールは2017年8月9日に建物の修繕を理由に一時閉鎖されておりましたが,めでたく4月26日にジェイZのライヴをもって再開いたしました。建物自体は1886年に建設されており,建立から100年以上経ている歴史的な建造物です。ロケーションはNYCのイースト・ヴィッレジに位置します。現在はフロアごとにジャンルが分けれている,マルチダンス(ナイト)クラブです。

そのre-opening nightをジェイZが飾りました。

タイトルは「B-Sides」といって,今までめったにライヴでは演じてこなかったいわゆる「B面」の曲の数々をここで(久々に)披露しました。

さらにその夜,ニューヨークのヒップホップ史として大事なことが,Nas(ナズ)と今まで犬猿の仲であったCam’ron(キャムロン),そしてJim Jones(ジム・ジョーンズ)をステージに呼んだということです。(これに関する動画はYouTubeで検索願います。)

さて,3月31日(日)に亡くなったNipsey Hussle(ニプシー・ハッスル)のトリビュートとして,この夜ジェイZは追悼のフリースタイルも披露しました。こちらです。

(このフリースタイルの邦訳は次回に。)

(文責:Jun Nishihara)