第23位:サウス出身の新人ワル女ラッパー=Mulatto(ムラート)(2020年Hip-Hop名曲名場面ベスト30)

2020年にラップ界のメインストリームにその名をとどろかせた女子ラッパーの一人としてMulatto(ムラート)を第23位に取り上げたい。

彼女(本名:アリッサ・ミッシェル・スティーヴンズ)は米国北東エリア(五大湖エリア)のオハイオ州コロンバス市生まれ。しかし2歳の頃,南部ジョージア州に両親に連れられ移り住み,黒人の父親と白人の母親を持つにもかかわらず,アリッサ自身,皮膚の色が無色であったことから学校でイジメに遭っていたことが理由で,自分のことをその時からムラート(Mulatto)と呼ぶことにし,当初はMiss Mulattoという名でラップを始めた。

ちなみにMulattoというのは,黒人と白人の混血を指す言葉であり,奴隷制度時代には,黒人の血が一滴でも入っていればcolored(有色人種)として扱われ,差別の対象となった。有名人の間ではオバマ大統領もMulattoとして知られる。

その彼女(ムラート)が有名になるキッカケとなったMVを下記に掲載する。

Mulatto feat. Saweetie & Trina – “Bitch From Da Souf”

(文責:Jun Nishihara)

第24位:2020年大活躍若手ラッパー5名大放出。ロディー・リッチ,リル・ベイビー,リル・ダーク,NLE・チョッパー,そしてYoungBoy Never Broke Again。(2020年Hip-Hop名曲名場面ベスト30)

2020年大活躍した若手ラッパー5名につき,それぞれ2曲ずつ以下に紹介するとともに,彼らを本年の第24位といたします。全員2020年にアルバムをリリースしました。(ロディー・リッチについてはアルバム『Please Excuse Me For Being Antisocial』をリリースしたのは2019年12月でしたが,実際全米第1位を獲得したのは今年2020年で,且つ,ラップ・アーティストとして爆発的に売れたのも今年2020年でしたので,今年にランクインすることになりました。)

① ロディー・リッチ(Roddy Ricch)
② リル・ベイビー(Lil Baby)
③ リル・ダーク(Lil Durk)
④ NLE・チョッパー(NLE Choppa)
⑤ ヤングボーイ・ネヴァー・ブローク・アゲン(長!)(YoungBoy Never Broke Again)

昨年2019年に取り上げた大注目若手アーティストには,ダベイビーや大坂なおみの彼氏=YBNコーデーやMegan Thee Stallion(昨年第1位を獲得!)については,以下サイトをご参照願います。

2019年の第11位:イマドキラッパー最前線!若者黒人の間で今年超ハヤったDaBaby,おまけに今覚えておくべき4人のラッパー!(2019年Hip-Hop名曲名場面ベスト50)

2019年の第1位:2019年の夏を制し,遂に1年まるごとヒップホップ界を盛り上げてくれた大・大・大ブレイクアーティスト登場!Megan Thee Stallion! (2019年Hip-Hop名曲名場面ベスト50)

さて,本年2020年の若手アーティスト5名を以下に掲載いたします。

① ロディー・リッチ(Roddy Ricch)

Roddy Ricch -「High Fashion」

Roddy Ricch -「Trap Symphony with Live Orchestra on audiomack」(ライヴ映像)

② リル・ベイビー(Lil Baby)

Lil Baby -「We Paid」
(この曲にfeat.されている42 Duggという奇妙なラップ節を聴くと,Lil Babyのイマドキのラップでさえ「まとも」に聞こえてくるから不思議。)

Lil Baby -「The Bigger Picture」

③ リル・ダーク(Lil Durk)

リル・ダークに関しては,2020年クリスマス・イヴの12月24日にニューアルバム『The Voice』をリリースしました。

アルバムリリースと同時に12月24日にリル・ダークの公式YouTubeページに掲載された新曲「Still Trappin feat. King Von」は,同日(そしてクリスマスの12月25日)も引き続きYouTube上「#1 ON TRENDING(トレンディング第一位」を記録しております。

下記アルバムジャケにLil Durkと一緒に写っているのは今年11月に亡くなったキング・ヴォン(King Von)です。

Lil Durk -「Stay Down feat. 6lack & Young Thug」

Lil Durk -「3 Headed Goat feat. Lil Baby & Polo G」

④ NLE・チョッパー(NLE Choppa)

NLE Choppa -「Bryson」

NLE Choppa -「Shotta Flow」

⑤ ヤングボーイ・ネヴァー・ブローク・アゲン(YoungBoy Never Broke Again)

YoungBoy Never Broke Again -「All In」

YoungBoy Never Broke Again -「Callin feat. Snoop Dogg」

(文責:Jun Nishihara)

第25位:Thundercatの2020年アルバム『It Is What It Is』(2020年Hip-Hop名曲名場面ベスト30)

少々毛色は変わって,ジャズ及びヒップホップの融合をどこまでも突き詰めていくサンダーキャット(Thundercat)の2020年リリースのアルバム『It Is What It Is』を本年重要度第25位としてランクインです。

黒人音楽の歴史上重要なアルバム『Drunk』を2017年にリリースして以来3年の時を経て,今年4月にリリースされた『It Is What It Is』では,変態心丸出しのMVで天才ぶりがぷんぷん匂ったサンダーキャット(Thundercat)のリードシングル曲「Dragonball Durag」は私個人的に大好きな曲なのですが,この「臭さ」にはなんとも言い表しがたい,飽きないエロさが含有されています。

そのMVを以下に掲載し,これを第25位としたいと思います。

(文責:Jun Nishihara)

第26位:Rick Ross vs. 2 Chainz(ヴァーサス・バトル)(2020年Hip-Hop名曲名場面ベスト30)

2020年8月6日に開催されたVerzuzバトルはリック・ロス(Rick Ross)対2チェインズ(2 Chainz)の対決でした。圧倒的にリック・ロスの勝利でしたが,このVerzuzバトル全体をHip-Hopの歴史で捉えた際,非常に重要な意味をもってきます。

Verzuzバトルそのものは,本年2020年3月,まさに新型コロナウイルス感染拡大が広がり始めた初期の頃,パンデミック緊急事態宣言発表時に創始されました。

つまり今年3月にVerzuz初の放映でもあり,その創始者でもあるティンバランド(Timbaland)とスウィズ・ビーツ(Swizz Beatz)のVerzuzバトルが繰り広げられました。

その映像については,さらに上位で発表していきます。

ひとまずはコチラのページで第26位:リック・ロス vs. 2チェインズの映像をどうぞ

(文責:Jun Nishihara)

第27位:Jadakissのアルバム『Ignatius』(2020年Hip-Hop名曲名場面ベスト30)

第30位〜第28位までとはガラッと雰囲気が変わります。

第27位はジェイダキッス(Jadakiss)のアルバム『Ignatius』です。

まー,こちらを聴いてみてください。
この曲を聴くと,ここまで第30位〜第28位のアルバムをつまみ聴きしてきた曲とは,全く種が異なるということが分かると思います。同じHIP-HOPという所謂“ジャンル”にくくられた中にあるかもしれませんが,どれだけ幅が広いものか,わかっていただけると思います。

Jadakiss feat. Pusha T – 「Huntin Season」

90年代にHIP-HOPという言葉がカバーしていた幅の広さと,現在2020年にHIP-HOPという言葉がカバーする幅の広さ,というのは,「広さ」という意味でまず,異なってきています。そして次に異なるのはその言葉が表すものであったり意味するものであったり,定義も異なってきています。しかしながら,何よりも,90年代を生きた人々が「Hip-Hop」と聴いて想像するものと,2020年代に10代や20代を過ごしている現在の若者たちが「Hip-Hop」と聴いて想像するものが,異なってきている,というものは大きいでしょう。

Jadakissの「Hip-Hop」を聴くと,いつもこのように「Hip-Hop世代の変革」を感じます。

まずは聴いてみてください,Jadakissの「ME」を。

この曲からこのセリフ・・・

Never had a wack verse!

ダサいヴァースとは無縁で来たぜ!

直訳すると「イカシていないヴァースなんて1つも書いたことがない」,つまり,これまで俺がスピットしてきたラップに,ダサいヴァースなんて1つもねえよ!

これはJadakissにしか言えない称号。

第27位にするのがもったいないくらいデキの良いアルバム。

も1曲いっときまひょか。

Jadakiss – 「Catch & Release」です。

(文責:Jun Nishihara)

第28位:A Boogie wit da Hoodieのアルバム『Artist 2.0』(2020年Hip-Hop名曲名場面ベスト30

2020年の第28位は,全米ビルボードで第2位を獲得し,1年以内に50万枚以上を既に売り上げているというヒット・アルバム『Artist 2.0』です。アルバムジャケがなかなか記憶に残る,ヒップホップではめずらしい,ファンタジー掛かった演出ですね。

もはやこのアルバムジャケを見るだけでは果たしてヒップホップのアルバムなのか,イギリスのファンタジー映画クエスト・オブ・キング的な映画のプロモなのか,分からないという風に,アルバムジャケからして,これまでのHIP-HOPではめずらしく,興味深い作品に仕上がっています。

たとえば収録楽曲には「Cinderella Story(シンデレラ・ストーリー)」なんていう曲もあります。

調子に乗って「Thug Love(サグ・ラヴ)」も掲載しておきます。

(文責:Jun Nishihara)

第29位:Lil Uzi Vertのアルバム『Eternal Atake』(2020年Hip-Hop名曲名場面ベスト30)

第29位はリル・ウージー・ヴァート(Lil Uzi Vert)のアルバム『Eternal Atake』です。

収録楽曲「P2」を聴いていただくと感じていただけると思いますが,これはもうまさに現代の世代を象徴しているエモ・ラップ(emo rap)もしくはエモ・トラップ(emo trap)というジャンルの先頭に立ち,新世代の若者達をリードしていく存在であるべく邁進しているラッパーであることが伺えます。リル・ウージー・ヴァートは見かけによらず,けっこう頑張り屋なのです。

今年はフューチャー(Future)とのコラボレーション・アルバム(シングル曲でなくてアルバム!)『Pluto x Baby Pluto』もリリースしました。

同年に現代のニュー・ラップ世代に重要な意味を持つアルバムを2枚もリリースする,というのが彼の勤勉さを表しております。

『Eternal Atake』から収録楽曲「Lo Mein」をどうぞ。

(文責:Jun Nishihara)

第30位:DaBabyのアルバム『BLAME IT ON BABY』(2020年Hip-Hop名曲名場面ベスト30)

いよいよ今年もこの時期になりました。
2020年を振り返ってのトップ30を発表していきます。

まずは第30位は,今年もイケイケであったこの人!ダベイビー(DaBaby)の登場です。アルバム『BLAME IT ON BABY』をリリースし,コロナ禍にも負けることなく2020年もノリノリでやってきたダベイビーです。

アルバムジャケはある意味2020年を象徴する「マスク」をしながらのダベイビー。時代を表しています。

このアルバム,収録楽曲の中でも特筆すべきトラックとしてアシャンティ(Ashanti)やミーガン・ジー・スタリオン(Megan Thee Stallion)をfeat.した「Nasty」を掲載いたします。

そして2020年6月28日に開催されたBET AWARDS 2020では,本年歴史的に重要な運動となった“Black Lives Matter”のシーンを取り入れたパフォーマンスをダベイビーが見せてくれました。下記に掲載しておきます。

(文責:Jun Nishihara)

元ネタの曲を知る(14):ドレイク⇄ローリン・ヒル

ドレイクのシングル曲「Nice For What」がリリースされてから,もう2年半が経ちました。時間が経つのは早いですね。

その「Nice For What」はローリン・ヒル(Lauryn Hill)の名曲「Ex-Factor」を元ネタにした楽曲でした。

本日も両曲を聴き比べてみてください。

Drake – “Nice For What”

Lauryn Hill – “Ex-Factor”

そしてこの「Ex-Factor」が収録されているアルバム『The Miseducation of Lauryn Hill』(1998年リリース)は,HIP-HOP界だけでなく音楽界全体において歴史上重要なアルバムと称されており,1999年のグラミー賞では10部門でノミネートされ,5部門でグラミー賞を獲得し,歴史上ヒップホップというジャンル関係なく,「女性」として初の快挙(5部門も獲得というのは女性のアーティストでそれまで存在しなかった)を成し遂げた歴史的に重要なアルバムでもありました。

やがて同アルバム『The Miseducation of Lauryn Hill』は米国内で800万枚のセールスを記録し,全世界で1,200万枚の売り上げを記録。

本年(2020年)9月,米ローリングストーン誌において「500 Greatest Albums of All Time」(歴史最高のアルバム500選)の最新バージョンが発表され,本アルバム『The Miseducation of Lauryn Hill」が第10位に選ばれたこともここに追記しておきます。

(文責及びキュレーティング:Jun Nishihara)

「どんどん流していけ」というテーマのHIP-HOP曲。

ヤング・ジージー(Young Jeezy)改めジージー(Jeezy)が2008年にリリースした曲に「Circulate」という楽曲があります。

これは極めてリズム感に優れている曲です。まさに「Circulate」(循環させよ)というくらいですから,ラップ及びビートそのものが,動脈ならぬ血脈がどんどんドクドク流れてゆくテンポの良さを出しています。

当時この楽曲が収録されているJeezyのアルバム『Recession』を対訳させていただきましたが,その対訳作業の間にこの曲「Circulate」を流すと,カラダが乗ってくるものですから,翻訳作業もそれに伴いノってくる。流れるように対訳がどんどん進んでいく。そういう体験をしていたのを憶えております。

ラップ曲というのは翻訳作業をしている間に流していると,邪魔になる曲と,逆にむしろ翻訳作業を助けてくれる曲,という2種類に分かれるように思います。

この「Circulate」という楽曲は,まさに後者。翻訳脳を上手くノッけて,作業をどんどん前へ進めるのを手伝ってくれます。

リリックの意味を拾おうとさせない。リリックが邪魔にならない。ビートと一体となっている。心身一如ならぬビートリリック一如。歌詞鼓動一如。かなりの名曲だと思いますが,全く広く知られてはいない。

これをバックで流して仕事やタスクをこなすお供にどうぞ。

Jeezyはこうラップします。

Let it, let it, let it, let it, let it, let it circualte
(どんどん,どんどん,どんどん,どんどん,どんどん,どんどん,回していけ)

回す,もしくは流す,それはカネか,ことばか,詞か,それともビートか。

(キュレーティング:Jun Nishihara)