第17位「ドレイクとトラヴィス・スコットの”SICKO MODE”という3段階ビートのラップ」。(今年2018年に出た最も偉大なるヒップホップ曲ランキング)

この曲の魅力は「曲の途中に突然,3段階でビートとフローが一変するところ」です。

2018年総まとめヒップホップ曲ランキング《トップ30》です。

本日は第17位の発表です。

第17位:Travis Scott feat. Drake “SICKO MODE”

この曲の凄いところは3つ。

1.冒頭でも申し上げた「曲の途中で突然,曲調(ビート)とフローが変化するところ」がまず1つ。

2.やり過ぎていない。ビートが変化する1回目に誰かがバックで「ウー!」と言います。これがぜんぜん邪魔でない。「ウー!」というのは,間違えると邪魔に聞こえたり,飽きたりしますが,何回聴いても飽きない。

3.ラップの調子(フロー)にちゃんと息継ぎがある。これはどういうことかと言うと,言葉を羅列するだけの,ぎちぎちのラップになっていない,ということです。ちゃんとスペースもあり,空白もあり,息継ぎもあるフローをしています。古さを感じさせない(実際に古くない),新鮮で,若者にもウケる,ということです。しかも,真似してラップすることもできる。メロディーに乗っている。たとえば・・・

It’s absolute, yeah (Yeah), I’m back, reboot (It’s lit!)
LaFerrari to Jamba Juice, yeah (Skrrt, skrrt)
We back on the road, they jumpin’ off, no parachute, yeah
Shawty in the back
She said she workin’ on her glutes, yeah (Oh my God)

これを歌う(ラップする)ときに・・・

It’s absolute
(息継ぎ)
I’m back, reboot
(息継ぎ)
LaFerrari
(息継ぎ)
to Jamba Juice
(息継ぎ)
We back on the road, they jumpin’ off, no parachute
(息継ぎ)
Shawty in the back
She said she workin’ on her glutes
(息継ぎ)

と歌える,ということです。
これはヒップホップビートを逸れない韻律(cadence)であります。

(文責:Jun Nishihara)

第18位「ローリン・ヒルの生まれ変わりか。H.E.R.の”Lost Souls”という曲」。(今年2018年に出た最も偉大なるヒップホップ曲ランキング)

フローがローリン・ヒルに似ている,と思われた方もいらっしゃるでしょう。

2018年総まとめヒップホップ曲ランキング《トップ30》です。

本日は第18位の発表です。

第18位:H.E.R. feat. DJスクラッチ「Lost Souls」です。

この曲のお手本となっているローリン・ヒル(Lauryn Hill)の名曲「Lost Ones」(1998年リリース)を聴いてみましょう。

まさにH.E.R.は,ローリン・ヒルの音楽をちゃんと勉強して育ったR&Bアーティストということです。こういう風にローリン・ヒルを学んで育っていった世代のアーティストを「ローリン・スクールの歌手」と言います。

ローリン・ヒルの存在はデカすぎますが,ローリン・スクールの歌手はゴマンといます。

しかしゴマンといる中で,ここまでローリン・ヒルのフローを巧みに受け継いでいる(受け継げている)アーティストは珍しいでしょう。H.E.R.は1997年生まれで,彼女が1歳とか2歳の赤ん坊の頃に,ちょうどローリン・ヒルが活躍しておりました。この曲で言及されているカニエ・ウェストも,2000年頃からじわじわ活躍し始めており,H.E.R.はまだ5歳児ほどの幼児でした。そんな幼児の頃におそらく両親が聴いていた音楽を,自身のこの曲「Lost Souls」で,言及しているという事実はまさに偉大なることです。まだ現在21歳のアーティストですが,フローも歌詞の内容も,21歳とは思えない「ベテランぶり」を見せつけております。

H.E.R.からはしばらく目が離せません。今後の活躍に期待大です。

(文責:Jun Nishihara)

第19位「リル・ウェインの”Uproar”という今ハヤりの超ダンサブルな曲」。(今年2018年に出た最も偉大なるヒップホップ曲ランキング)

2018年総まとめヒップホップ曲ランキング《トップ30》です。

本日は第19位の発表です。

第19位:リル・ウェイン feat. スウィズ・ビーツのシングル曲「Uproar」です。

この曲を語るには,いくつか切り口があります。

まず1つ目は,上記ミュージックビデオに出演して猿暴れしているシギー(Shiggy)です。彼はドレイクの”In My Feelings”(あの「キーキー,Do you love me?ってやつです)の曲がシングルカットされる以前からインスタ上に自分のダンスを載せていました。そして彼のそのダンスがきっかけとなって,それを真似してインスタに載せる若者たちが全国に増えていきました。そうして始まったのが,「シギー・チャレンジ(Shiggy Challenge)」でした。これは一種のインスタ現象として今年イチ話題になりました。米国はもちろんのこと,海外のあらゆるTV曲でも報じられました。リル・ウェインはドレイクの師匠として,そして”In My Feelings”と同じく超ダンサブルな曲として,この「Uproar」は《第2のShiggy曲》と呼ばれるに至りました。

そして2つ目。このビートをプロデュースしたスウィズ・ビーツ(Swizz Beatz)の存在です。彼は昨年2月にヒップホップ界超ベテランのビートメイカー=Just BlazeとYouTube上で「ビート対決」しました。それが発端となり,スウィズ・ビーツはあらゆる場面で他のビートメイカーと対決するという機会を設けてきました。

まずは,全ての発端となったおおもとのビート対決(Swizz Beatz vs. Just Blaze)を観てみましょう。2時間以上ある大作です。

そして,マドンナやジャスティン・ティンバーレイク,ミッシー・エリオットやジェイZのビートベイカーとして活躍しているヒップホップ界最も偉大なるビート・プロデューサーであるティンバランド(Timbaland)ともビート対決しました。その映像が以下のとおりです。

(Swizz Beatz vs. Timbaland)

そのスウィズ・ビーツがリル・ウェインの超ダンサブルな曲でビートを作っているという事実も,この曲が「売れる」理由の一つとなっています。昔からThe L.O.X.やRuff Ryders(ラフ・ライダーズ)を聴いてきたゴッテゴテのヒップホップ・ヘッズたちにはたまらん曲ですね。90年代や2000年代初期に大活躍したスウィズ・ビーツが今爆発的に流行るポテンシャルを秘めているこんな偉大なる曲をプロデュースしたというのは,偉大なる事実です。

ビートメイカーといえば,単に「ビートを作って,そのビートをラッパーに提供している人」というように聞こえますが,スウィズ・ビーツも,ジャスト・ブレイズも,ティンバランドも,楽曲全体をプロデュースしているビート・プロデューサーと呼べるでしょう。

さてこの楽曲「Uproar」を語る上でたいせつな3つ目の切り口は,元ネタの曲を知るということです。

この曲には元ネタとなっている曲があり,それが2001年リリースのG.Dep feat. P. Diddyのシングル曲「Special Delivery」です。これはパフ・ダディ改めパフィー改めP.ディディ改めディディのレーベルBad Boy Entertainment(バッド・ボーイ・エンターテインメント)全盛期2000年代初期に流行った曲です。

リル・ウェインのこの曲だけでこれだけ語られるのですが,それだけ今年第19位にはもってこいの曲と呼ぶことができるでしょう。

(文責:Jun Nishihara)