カニエ・ウェストの“Sunday Service”まとめ(20週目と21週目)

本年2019年の最初の日曜日(Sunday)から始動したカニエ・ウェストの“Sunday Service”は,はやくも現在20週目を迎えることとなりました。

今年初めての日曜日は1月6日にあたりますが,その日から日曜日は1日たりとも休まず,カニエ・ウェストとその仲間たち(名付けてカニエ軍団)は“Sunday Service”を開催してまいりました。

本日はその20週目(5月19日)と21週目(5月26日)を以下にて記録しておきます。

20週目(5月19日開催):この回では奇抜なミュージックビデオとミステリアスな存在感で知られるシンガー=Sia(シーア)が登場します。彼女のヒット曲「Elastic Heart」をミサのゴスペル・クワイア(聖歌隊)と合唱します。

キム・カーダシアンのツイッターでも以下のとおり掲載されております。

21週目(5月26日開催):この回ではついに,こどもたちの合唱まで聴くことができます。こども達の合唱を聞いているのもいいのですが,この動画のほんとうに重要なポイントは,タイムライン01:02から始まります。(ビデオはもう少し下のほうに掲載しております。)タイムライン01:02から始まる曲では,次第に手拍子(clappings)が始まるのが分かります。黒人音楽の歴史において,リズム感抜群の「手拍子」はとても重要な意味をもっております。手拍子は黒人が奴隷として重労働を強いられていた1900年代初期,手拍子でリズムをとって,重労働のつらさを幾分か和らげておりました。以下は,ウェルズ恵子先生の『魂をゆさぶる歌に出会うーアメリカ黒人文化のルーツへ』より抜粋します。

歌は,身体を使うどんな仕事のときも,働き手に力をくれました。リズムをとってみなが力を合わせた方が大きい力が出ますし,単純作業のときは歌いながらの方が飽きずに仕事がはかどります。帆船の船乗りは帆を揚げるときや錨を巻き上げるときに歌いましたし,農民が固い地面を耕したり,鉄道工夫が岩山をうがってトンネルを掘ったり,鉱山の坑夫が鉱石にハンマーを当てて砕くときなども,黒人たちは「はっ!」というかけ声を入れた歌をうたって力を合わせました。
(中略)
人間の筋力で固い地面を耕したり,鉱脈や石炭をハンマーとたがねで切り崩したりしていた時代,男たちは集団で歌のリズムにあわせて働きました。鉄の道具を振り上げるまでに息を吸ってひと呼吸,振り下ろすときに息を吐いてひと呼吸。テンポの速い曲も遅い曲もありますが,歌詞は呼吸と動作の速度にあわせて選ばれています。
−ウェルズ恵子・著『魂をゆさぶる歌に出会う(アメリカ黒人文化のルーツへ)』より︎

このように黒人にとって「リズム」は奴隷制度の時代から,黒人の身体を血液のように脈打つたいせつな要素でありました。リズムの中でも「打つ」という要素が高いものは「ビート」とも呼ばれます。

このように,黒人の身体の奥底に脈打つとても大事な要素としてリズムやビートがあり,黒人歴史にとっては,それはメロディや音色というものよりもさらに古くからあるものでした。メロディや音色を奏でるだけでは,重労働ははかどらないですからね。黒人にとってはリズムやビートが先に来ていた。逆に,貴族の暮らしをして,舞踏会に出向き,メロディにあわせて舞うように踊っていた白人にとっては,音楽のメロディや音色が重要視されておりました。こうした歴史を鑑みますと,黒人はビートの文化,白人は音色の文化,と位置付けることが一つの見方となりますでしょう。

そこで上記のカニエ軍団聖歌隊の「手拍子」に話を戻します。

この手拍子はとても速いテンポで叩かれます。「Jesus died for you.(ジーザスは我々の犠牲となった)」という歌詞を手拍子の合間に挿入し,聖歌隊メンバーが同じリズムで歌います。とても短いクリップですが,黒人文化に息づく音楽のとても大事な部分がここに垣間見れます。さて,そのビデオを以下に掲載しておきます。(タイムラインは01:02〜の箇所です。)

(文責:Jun Nishihara)

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平成最後の米ミュージック・フェスは,カニエ・ウェストの“Sunday Service”で。

平成最後のミュージック・フェスは,米カリフォルニア州インディオ市で毎年恒例開催されているアメリカ最大のミュージック・フェス=コーチェラ(Coachella)でした。

去る4月21日(イースターの日曜日)に開かれたコーチェラ祭は,カニエ・ウェストの「Sunday Service(日曜のミサ)」には(いろいろな意味で)もってこいの吉日でした。

これを鑑賞するには2つ方法がありました。

1つは実際にカリフォルニアで開かれているコーチェラ祭へ足を運ぶこと。まずは,LAX(ロサンゼルス国際空港)まで飛び,そこからコーチェラ会場まで米ドル$75.00出せばシャトルバスで連れてってくれました。

もう一つの鑑賞方法は,生放送をYouTubeのコーチェラ特設ページでストリーミングで観るという方法でした。これは当サイトでも取り上げました。

ストリーミングで生放送をご覧になられた方々はもう気づかれておりますが,こういう映像がずっと流れました。

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これはfisheye lens(魚の目のレンズ)と言って,まるで望遠鏡で覗いているような錯覚を覚えます。どうせ生ストリーミングするのなら,他の人たちがやってるストリーミングとは違った方法でやりたい,というカニエのよくいえばアーティスティックな,別の方法でいえばひねくれた,一筋縄ではやらせない,もうこれはカニエの性(さが)と呼んでいいほどのものと思いますが,を見せてくれました。

しかしながら,さすが観客の数は相当なものでした。

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正規のコーチェラ会場とは別の(カニエ特別の)会場を使いました。もうこれは会場と呼んでよいのか,山の中の丘の上と呼ぶのがふさわしいのか,もう分からなくなりますが,今年頭から毎週日曜日にこじんまりと始めてきた「Sunday Service」を考えますと(それも山の中でやっておりました),とても適当(適切)なロケーションであったことは間違い無いでしょう。

そういったステージもなく,カニエを映すステージ上のモニターもないところで,これだけの観客数が集まった(しかも日曜日の午前9時!)のは,特筆すべき事項でしょう。

さて,4月21日,イエスが甦ったとされるイースターの日曜日,時間は午前9時。まだ始まりません。しばらく経って9時15分,聖歌隊(choir)の仲間たちがこぞって丘の上へ向けて歩き始めました。だんだんとオルガンの音色が聞こえてきました。これまでのサンデーサービス同様,パステルカラー(カニエのファッション色)の衣装に身を包んだ聖歌隊の方々です,皆おそろいです,が丘の上に集まり始めました。

オルガンの音が聞こえていましたが,時間が経つにつれ,少しずつジャジーな音色に変化してきました。音量もだんだんと大きくなってきました。まだ演奏は始まっておりません。まだカニエは登場しておりません。

一番最初に映ったのが,タイ・ダラー・サイン(Ty Dolla $ign)した。丘の近くではカニエの娘,ノースちゃんとセイント君が踊っている姿が見え始めました。

カニエのレーベル仲間であるキッド・カディ(Kid Cudi)そしてチャンス・ザ・ラッパー(Chance the Rapper)が二人でポーズを決めている姿も映し出されました。

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(チャンス・ザ・ラッパーが指を差しているのは,結婚指輪です。今年3月11日に結婚式を挙げたばかりでした。)

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The Bennetts

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そしていよいよ,このコンサートの大ガシラ=カニエが現れました。

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そうこうしているうちに時間は9時55分となり,いよいよ,コンサートが幕を開けました。

曲もくは「Father Stretch My Hands」やめずらしいところではジェイZとビヨンセの「Lift Off」(『Watch The Throne』収録)などを披露。

このコンサート中のトリビアとして,ずっと帽子(キャップ)をかぶっていたラッパーは誰でしょう。

こたえはチャンス・ザ・ラッパーでした。

この“Sunday Service(日曜のミサ)”という聖なる時間にキャップをかぶって許されるのはチャンスくらいですね。

カニエのレーベル仲間であるティアナ・テイラー(Teyana Taylor)ももちろん参加しておりました。楽曲「Never Would Have Made It」を披露した彼女の声は,天にさえも届くような美声でした。

それから聖歌隊のみなさんの迫力も見応え(聞き応え)がありました。

ティアナ・テイラーが歌っている間に,聖歌隊が連呼した「Stand up! Press forward! Move on!」という掛け声が(これはさすが黒人の聖歌隊です)圧倒的な迫力を醸し出しておりました。

そして吠えるあの男=DMXもちゃっかり参加。「This is a God dream…」の歌中にヤツが現れました。

ライヴ終わり近くに「Jesus Walks」をカニエ,聖歌隊,全員で歌い上げ,Happy Easterで幕がないところで幕を閉じました。

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Cc: @kentnish

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米全国紙のニューヨークタイムズ(The New York Times)が素晴らしい写真を撮っておりますので,以下掲載します。

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アメリカ全国ネットワークのBET (Black Entertainment TV)はさすが黒人に特化したTVネットワークと言わんばかりに,下記の迫力ある写真を撮影しました。

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さて,この一連の“Sunday Service”で,カニエはそれさえも「ブランド」化することに成功しております。それは「CHURCH CLOtHES」という名前で販促商品ならぬ洋服を作り上げました。

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パステルカラーのトレーナーやパンツです。

そして4月26日〜28日の3日間に亘って開催された,ファレル・ウィリアムスのミュージック・フェス=“Something In The Water”では,ファッション誌にも登場しまくりのあのファレル・ウィリアムスがカニエの“Sunday Service”のトレーナーを着ておりました。

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(4月27日(土)に開催された“Something In The Water”ミュージックフェスのステージで。左はジェイZ,右はカニエのトレーナーを着るファレル・ウィリアムス。)

平成最後のアメリカ最大のミュージック・フェスはコーチェラでしたが,もうひとつファレル・マニアにとっては,“Something In The Water”フェスも欠かせないものとなりましたので,次回はこの”Something In The Water”を取り上げます。

(文責:Jun Nishihara)

本日,カニエのコーチェラ・ライヴ生放送!(ここで視聴可能)

いよいよ本日,カニエ・ウェスト率いる「Sunday Service」ならぬ「Easter Sunday Service」がアメリカ最大のミュージック・フェス=Coachella Music Festival(コーチェラ・フェス)で開催されます。

詳細は以下のとおりです。

日時:本日(4月21日(日))アメリカ西海岸時間午前9:00開始(日本時間では22日(月)になったばかりの午前1:00時開始(つまり21日(日)の夜中1:00時開始))

生放送で観るならば,以下のYouTube Live(YouTubeの生放送チャンネル)で視聴できます。
(※これは翌日には消えますので,本日中のみ視聴可能です。生放送です。→予定どおり「生放送リンク」は消えましたので,クリップを掲載しておきます。)

再放送は,本日アメリカ西海岸時間午後3:00時開始(日本時間では22日(月)の午前7:00時再放送開始)です。

今年2019年に入ってからすぐ,1月から毎週カニエは「Sunday Service」を開催してきました。先週はいよいよ15週目を迎え,そして本日,その最高潮(culmination)を極めるがごとくコーチェラで開催されることになりました。毎週開かれていたジャムセッションですらかなりの完成度でしたから,世界中から観客が集まるコーチェラ・ライヴではさらなるパフォーマンスが期待できるでしょう。

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(文責:Jun Nishihara)

カニエ・ウェストの“Sunday Service”(14週目:Week 14) 

しかしロジ的な面から言っても,毎週日曜日にこれだけの準備をするのは容易いことではないでしょう。

まず,音楽の機材をここまで運搬するための車両の手配,そしてその費用。
そして人が移動するための交通機関,フライトの手配,そしてその費用。
観客(オーディエンス)もいますので,その人たちへの知らせ,誰に招待状を配るか,その費用はどうするか。誰を呼ぶかの選定。(前回の“Sunday Service”から1週間後ですから,時間は1週間しかない間での調整となります。)
観客が座るためのベンチもしくは椅子の用意。
そしてなんといっても,カニエ・ウェスト自身や聖歌隊(choir)の人々のフライトの手配,費用,空港から会場(本日はカリフォルニア州カラバサスの山奥)までの車両もしくは交通機関の手配。
そしてカニエ・ウェストとその仲間達(聖歌隊)は,本日の場合は,2種類の衣装を用意しています。クリーム色の上下と,グレー色の衣装です。この手配と費用。幸い,カニエ・ウェストはファッション業界にも関わっておりますから,そのツテもあるでしょう。パステルカラーのこの衣装は,まさにカニエ・ウェストの十八番と言えるでしょう。
本日はどの曲をセッションするかという,セットリスト(プレーリスト)。式次第からプログラムの準備。誰がセットリストを決めるか,どの曲の順番で進めるか,ということを予め全員で共有しておく必要があります。幸い,リーダーはカニエ・ウェストでしょうから,カニエ・ウェストが最終的な承認をするのでしょう。
毎週よく観てみますと,楽器は少しずつ入れ替わっております。どの楽器もしくはサウンドシステムを今回用意するか,ということも決めなければなりません。
場所の選定もあります。今週はどこでセッションを開催するか。果たして,その場所を勝手に使用することはできないと思いますので,市当局からの事前の許可申請は必要か。許可が下りるまでどのくらいの期間が必要か。費用はかかるのか。
おそらくまだまだ決めるべきことはあると思います。
ヌケ・モレがないように,いろいろな面で詰めるべきことは出てくると思います。

そして,いよいよ,コーチェラ音楽祭は明日,イースターの日曜日(4月21日)に迫ってきました。

カニエ・ウェストと聖歌隊仲間達の“Sunday Service”(Week 14)を以下に掲載しておきます。
以下ビデオ,Pt. 1の見所は,3:41からのスティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)の「Love’s In Need of Love Today」の曲です。
そして,8:20からの盛り上がりと,8:54からの奴隷時代を彷彿とさせる手拍子(clappings)です。

以下ビデオ,Pt. 2の見所は,0:30からのニプシー・ハッスル(Nipsey Hussle)への追悼の言葉です。

今週はカニエ・ウェストとキム・カーダシアン(Kim Kardashian West)との娘であるノース・ウェスト(North West)ちゃんの映像も少し観られます。

いよいよ明日はコーチェラ音楽祭(Coachella Music Festival)ですが,改めましてプログラムを以下のとおり掲載しておきます。

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(文責:Jun Nishihara)

カニエ・ウェストの“Sunday Service”(さらなる,さらなる,つづき:Week 13&コーチェラ発表)

ここまで律儀に続けるのは,異例のケースでしょう。やるとなったら,とことんやり続けるのがカニエ・ウェストというアーティスト,いや,芸術家,なのであろうと言えるでしょう。

しばらく前からカニエ・ウェストとキム・カーダシアンが開催する「日曜のミサ」と名付けられた“Sunday Service”についてここに掲載してきました

先々週も,そして先週も欠かさず,カニエ・ウェストは“Sunday Service”を開催してきました。

そして今13週目まで突入しております。カニエの快進撃はつづきます。

ついに発表されました。

今年のイースターサンデイ(Easter Sunday=復活祭の日曜日)は,4月21日(日)にあたります。この日に,カリフォルニアのインディオ市で毎年開かれるコーチェラ・ヴァレー音楽祭(Coachella Valley Music Arts and Festival)で,カニエ・ウェスト率いる“Sunday Serviceメンバー達”がフィーチャリング・アクトを務めることを発表しました。コーチェラ・ヴァレー音楽祭はアメリカ最大のミュージック・フェスとも呼ばれています。これは,2週間(週末)かけて開催されるフェスで,2017年のヘッドライナーは,金曜日はレディオヘッド,土曜日はレディ・ガガ,日曜日はケンドリック・ラマーが務めました。昨年のヘッドライナーは,金曜日はザ・ウィークエンド,土曜日はビヨンセ,日曜日はエミネム,でした。

そして今年は,キリストが蘇ったとされる復活祭の日曜日に,その名にふさわしい“Sunday Service”のメンバーを連れて,カニエ・ウェストとその仲間たちがパフォーマンスを披露してくれる,というのは,ありがたいニュースでございます。

今年のフルラインアップはこちらです。

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今年2019年のヘッドライナー・アクトは,4月12日(金)及び19日(金)は,チャイルディッシュ・ガンビーノ,4月13日(土)及び20日(土)はテーム・インパラ,4月14日(日)及び21日(日)のヘッドライナー・アクトはアリアナ・グランデですが,この21日(日)のみ,カニエ・ウェスト率いる仲間たちがフィーチャリング・アクトを務めることが決定いたしました。

これはけっこうなおおごとであります。

もともとは,内輪のみでやっていた小さなジャム・セッションが,アメリカ最大の音楽祭へたった13週間後に出演することが決定されたとは,おそるべしパワーであります。

(文責:Jun Nishihara)

第15位「ミッシー・エリオットの”I’m Better”」。(今年2018年に出た最も偉大なるヒップホップ曲ランキング)

女性ヒップホッパーの代名詞として2000年代を代表する偉大なるアーティストは,ミッシー・エリオット(Missy Elliott)です。彼女の音楽は,ヒップホップを愛する日本の女子にも昔から人気ですね。(昔というのは2000年以降のことです)。

さて,そのミッシー・エリオットが今年も出しました。シングル曲を出しました。「I’m Better」という曲ですが,ビートはミニマリスティックですので,好き嫌いが分かれるかもしれませんが,これを「未来のヒップホップ曲」と呼ぶファンもいるほど,まさに新しいジャンルの音楽と呼べるでしょう。

ミッシーはヒップホップに新しいサブ・ジャンルを生み出しました。「ヒップホップ・ダンサー用の音楽」という今ではしっかり定着している概念を,2000年代に入ってから生み出した張本人です。

ミッシーが遺してきた(継いできた)功績と貢献は素晴らしいものです。「ミッシーがいたから,ダンスを始めた」とか「ミッシーの音楽をバイブルにしている」というダンサーは多いでしょう。

本日ランクインしたこの曲も,「かけよう」によってはダンスせずにはいられない,超ダンサブルな曲でしょう。実際に,ミュージックビデオ内でもバランスボールを使って踊る振り付けや,フロアに寝転がって踊る振り付けが見られます。

こういうノリをヒップホップに生み出したアーティストとして,ミッシー・エリオットはヒップホップ史に残る偉大なアーティストと呼んでよいでしょう。

ちなみに,ミッシー・エリオットは女性ラッパーとして初めて,来年2019年に発表される「ソングライターの殿堂」入りにノミネートされています。ニッキー・ミナージュやカーディBを聴いているバワイじゃないのデス。

最後にこの曲のミュージックビデオを記載しておきます。

第15位:Missy Elliott feat. Lamb – “I’m Better”

(文責:Jun Nishihara)

第16位「チャイルディッシュ・ガンビーノの”This Is America”か,もしくはジョイナー・ルーカスの”I’m Not Racist”」。(今年2018年に出た最も偉大なるヒップホップ曲ランキング)

2018年総まとめヒップホップ曲ランキング《トップ30》の第16位をどの曲にするか検討するにあたり,今年全米に最も物議を醸し出した曲を2つ選びました。それが以下の2曲でした。

1.Childish Gambino – “This Is America”
もしくは,
2.Joyner Lucas – “I’m Not Racist”

1つは,現代全米に蔓延る銃問題。白人の警察官が黒人の若者を銃殺するという事件が増えているという事実にとどまらず,白人同士でも黒人同士でも,アメリカ中で銃問題が現在,大問題となっております。それを音楽や映像という媒体をとおして,ここまで過激なミュージックビデオに仕上げているチャイルディッシュ・ガンビーノの芸術性に脱帽しますが,それはさておき,近代のアメリカ史で,ここまで銃を使った犯罪が大きく問題になっている時期は無かったでしょう。

2つは,現代全米に蔓延る人種問題。ジョイナー・ルーカスは黒人アーティストですが,ミュージックビデオに白人を起用し,白人の目線からの「言い分」と,セカンド・ヴァースには黒人の目線からの「言い分」を両方載せています。白人の言い分は,黒人は自分らが差別されていることを大昔の奴隷時代のことをいまだに持ち出してきて,それを理由(言い訳)にして,だらしない生活を送っているだけ,そんな大昔のことを言い訳にせずに,ちゃんと真面目に働けば,貧困を抜け出すこともできるし,ちゃんとした生活を送ることもできるし,「白人のせいにする」こともないだろう,と言っております。逆に黒人の言い分としては,奴隷制度は大昔の歴史であるものの,現代に生きている自分たちにはその影響はあるんだ,と。おばあちゃんやおじいちゃんが経てきた苦しみは,現代の黒人の俺たちに受け継がれているんだ,と。とりわけ「Nigga」という言葉は,黒人の我々を抑制するために,「白人が作り出した単語」であるのだ,と。けっきょくいまだにこの国(アメリカ)は白人が支配しているもの。黒人が職を見つけようと面接とかやっても,面接やテストが通ることはない。けっきょくは肌の色で判断されているんだ,と。だからドラッグを売りさばいて,子供のために金を稼ぐしかないんだ,と。しかも,最近は黒人がクールだと勝手に解釈して,黒人の真似している白人の若者ども,おまえらには「黒人の生き様(カルチャー)」なんて分かってたまるか,と。この国(アメリカ)には「システム化された糞人種差別(systematic racism bullshit)」がある,と。

ちなみにこのジョイナー・ルーカスの「I’m Not Racist」は来年(2019年)のグラミー賞に先日ノミネートされたばかりです。

ということで,第16位は,Childish Gambinoの「This Is America」及びJoyner Lucasの「I’m Not Racist」の両方,ということで締めくくりたいと思います。

現代のアメリカにとって最も必要である会話は,この2つの楽曲から生まれる会話である,と言っても過言では無いでしょう。

最後に,この2つの楽曲のミュージックビデオを記載しておきます。

今年ヒップホップ第16位:Childish Gambino – “This Is America”

今年ヒップホップ第16位(タイ):Joyner Lucas – “I’m Not Racist”

追記:黒人のJoyner Lucasのセリフを口パクで完璧に真似た白人男性に拍手。

(文責:Jun Nishihara)