ラップでもなくR&Bでもなく(Kid Cudiが築いたポジショニング)

ちょうどカニエ・ウェスト(当サイトではYeの日本語名を「カニエ・ウェスト」に統一しております)が2018年にキッド・カディ(KiD CuDi)と組んで、Kids See Ghostsというスーパーグループを組んだ際、カディはラッパーとして売り込んでおらず、アルバム中、ほとんどラップしていませんでした。自分はもう「ラップはしないんだ」と。しかしながら、当時アメリカのメディアではカディのことをrapperと紹介していることが少なくありませんでした。

最近ではメインストリームのメディアに出ることは多くありませんが、カニエが創設したG.O.O.D. Musicのようなメジャーレーベルでデビューを果たしたカディのようなアーティストが当時、15年前に、真っ向からラップを否定する発言をしているのは珍しかった。カディは2010年のMTVインタビューでこう発言しています。

“I’m just over rapping. I don’t get any fulfillment out of it anymore… I really don’t get any fulfillment out of writing a 16 [bar verse]. […] I get more fulfillment now out of singing and learning to play the guitar.” – MTV News (2010)

「もうラップには飽きた。そこからは何の充実感も得られなくなってしまった・・・16小節のヴァースを書いても何の満足感を得られなくなったんだ。(中略)今は歌ったり、ギターを習ったりすることのほうが、よっぽど満たされるよ。」(キッド・カディ、2010年、MTV Newsのインタビューで)

Hip-Hop業界では、まだラップが売れる時代であった当時にこれを言っているHip-Hopアーティストは少なかった。しかしながら、この時期以降、ラップでもなくR&Bでもないポジションにいるアーティストが少なからず現れてきた。

Smino(スミノ)やNoname(ノーネイム)、それから今は亡きXXXTENTACION(エックスエックスエックス・テンタシオン)、Juice WRLD(ジュース・ワールド)。この2名(XXXTENTACIONとJuice WRLD)については、亡くなった後である現在も熱狂的なファンがい続ける物凄いカリスマ性を帯びたアーティストであるのは間違いない。さらに現在に近づいてくると、Saba(サバ)やLil Uzi Vert(リル・ウージー・ヴァート)、SiR(サー)やEarthGang(アースギャング)、Lil Durk(リル・ダーク)、そしてRoddy Ricch(ロディー・リッチ)と、カディの発言は受け継がれてきた。

こうして考えると、時代の趨勢がどうであろうと、世の中がどう思おうと、自分が感じている心の声に正直でいたほうがいいことがわかる。でないと、充実感を得られない、満足感を得られないことをやり続けることとなり、且つ、その後、それを受け継いでくれる人が現れない、もしくは、現れたとしても、自分の言葉がきっかけではなく、自分がそれに乗っかるほうになる、という”イノベーター”にはずっとなれないままとなる。そういった意味で、2010年に心の声に忠実にこのような発言をして、その後、それに続くフォロワーを確実にしたカディは、イノベーターであったといえる。

そのキッド・カディ(KiD CuDi)が16小節のヴァースで構成されたラップではなく、心の底から自分がやりたいと思っていた「歌」ができているミュージックビデオを3点、紹介します。

1. KiD CuDi – Mr. Solo Dolo III

2. KiD CuDi – Mojo So Dope

3. Kanye West feat. KiD CuDi – “Welcome To Heartbreak”

世の中には(いやYouTubeでも)キッド・カディを批判する内容のもので溢れているでしょう。メインストリームのHip-Hopカルチャーから外れたことをずーっとやってきた人間ですから。でもまさにカディにとっては「世の中に理解されない」ということが彼自身の個性であった。それに共感するアメリカ中の隠れ若者は多かった。公には公表していなくとも。そしてカディは生き続けた・・・

最後に、3週間前にリリースされた新曲「Neverland」のステージパフォーマンスを掲載して終わります。

(文責&キュレーター:Jun Nishihara)

あまりにも素敵なDJミックス動画(その②)

前回とは、対照的に、参加者不在のDJだけ(と、猫ちゃん)の動画を紹介します。今回も素敵な理由は3つあります。

①これは前回も同じでしたが、選曲とトランジションが素敵すぎる、です。

これはまさにself-evidentという形容詞が最も似合うくらい、自明の理です。選曲の良さ、移行(transition)のスムーズさ、は当然のことながら、僕が個人的に好きなのは、DJ Komoriのノリ方です。時にはリリックを口ずさんで、「Ella Mai!」って歌うところなんて最高ですね。プロのDJがスピンしているところの動画を自宅で見れるなんてなんて贅沢な世の中になったもんだ、ってこれを配信してくれているDJ Komoriに感謝です。(当時はクラブへ行くことでしかDJ Komoriのスピンが聴けなかったのに、いまでは毎晩(そして毎朝の通勤時に)聴けるって最高ですわ。)

②猫ちゃんがDJ Komoriのスピンを眺める瞬間

見ました?観ました?!これ奇跡なのか、いつもこの猫ちゃんはこうしてDJ Komoriがスピンしているところを観客席の一等地から眺めているのかはわかりませんが、これを初めて観る僕らからするともう「奇跡」としか言いあらわしようがない。その瞬間がこれです、@09:16 で身を乗り出してWhitney Houstonの「One of Those Days」の楽曲に移る移行の部分を見つめますよね。可愛いし、自分の親であるDJ Komoriへの敬意に満ち溢れたまなざしのようにさえ感じる。前回の動画は、NYの自然を相手にしたDJだとすると、こちらのDJ Komoriは動物さえもノらせるDJとして素敵すぎる瞬間です。

③サンセットと部屋の照明、そしてポスターのフレームに反射する都市の明かりと月明かり

これは前回もそうでしたが、僕が好きな動画は案外、暖かい色の照明に移行する(最初っからそうなんじゃなくて、これもグラデーションのように徐々に<移行(transition)>するところが味噌)DJミックス動画なのかもしれないと思えてきました。ポスターのガラスフレームに反射する外の街のトラフィックライトや車のヘッドライト、それから部屋の照明(lighting)、外の明るさの変化(これも移行(transition))、動画の冒頭はまだ外は明るさが残っている夕暮れ時、でも徐々に月明かりに移行して、後半は完全に外は暗い、でも都会のライトや明るさがほんのり暖かい。こんな素敵な動画を聴かせて/見せてくれているDJ Komoriに感謝です。

(文責&キュレーター:Jun Nishihara)

あまりにも素敵なDJミックス動画(その①)

この動画、素敵な理由が3つあります。

①選曲の良さ、移行のスムーズさ

DJ動画なので当然ながら、選曲が良いことと(新旧、古い曲も新しい曲も織り交ぜて)、そして移行(transition)がスムーズであることはさることながら、あえて移行をはずすということもしています。タイムライン @18:45 では、トランジションを敢えて外して、ドレイクの「エィ」が間(ま)を取り持つというワザを成し遂げています。

そしてハプニングが1つ。動画中でもテロップが出ますが、途中、スピーカーが接続不具合を起こし、音楽が途切れても、参加者が自ら歌い続けて、スピーカーが息を吹き返すまで、その熱を維持することに全員が一丸となって協力してくれるという奇跡が起きます。タイムライン @1:02:02 の箇所ですね。これって実は、次の②にも通じますが、こういうことですよね。

②参加者同士の関係、交わりが、素敵すぎる

上記①でも少し触れましたが、協力精神が半端ないですね。みんな全員が一丸となってこのパーティーを素敵なものにしている。そして参加者ひとりひとりが、心から楽しんでいるように見える。見ているほうも素敵な気持ちになってくる。リリックを口ずさんでいる人、踊りあかしている人、笑っている人、この動画、私もうすでに10回くらい観ましたが(っていうか通勤の時も流していますが(どんだけ好きなん笑))、その都度、注目する人を1人決めておいてその人を見てると、それぞれの人生が見えてくるような気がしておもしろい。たとえば、カニエの「All Falls Down」からDJの左手にいる白と黒のストライプジャケットの女性。この人がリリックを口ずさむのと、笑顔で人と話しているところを見ると、もしかして、別の動画でDJをやっている人なんじゃないか、というふうに、この人はどういう人生を送っているんだろう、R&Bかなり聴き込んでいるだけじゃなく自分でもLPをスピンしてる人なんじゃないか、とか想像を掻き立てれる、そういうところも楽しめる素敵な動画です。@08:20 には奥さん(パートナー)が飲み物を運んだりしてくれるところもあって、ロジロジ的な要素も垣間見れて、そういうところ、個人的には結構好きです(笑)。

③太陽が沈んだ後の外が暗くなっていく雰囲気が素敵すぎる

冒頭(@00:39)でDJが照明を落としますが、動画始終をとおして、外の明るさが段々と暗くなっていくという動画ならではの楽しみ方もできます。最初は外の背景が明るかったのが、途中、徐々に薄暗くなってきて、後半には真っ暗になっており、外のビルの照明が見えるくらい。これって夜寝る前に日記とかジャーナル書きながらこの動画を流すっていう使い方もできるから「思考の集中を邪魔しない適度な暗さ」っていう意味でも副交感神経にうったえる使える動画だなっていう風に思いました。ちなみにここNYのブルックリンでやってますが、DJ自身は西海岸出身で、いつもはNYとは天候も自然も気候も異なるカリフォルニアから配信しています。今回は初めてのNYからの配信動画らしいですね。動画の背景がブルックリンの道路に面していますが、NYらしいガラスと鉄の柵でできたドア(窓)で、この「冷たさ」と、照明(lighting)の「暖かさ」(途中からオレンジ色のライティングとキャンドルに移行)が対照的で、後半から外が真っ暗になり、オレンジ色の照明に包まれるっていう素敵すぎる現象(太陽の浮沈という自然を相手にしたDJ!)も起きています。

さて、その動画を以下のとおり紹介します。

(文責&キュレーター:Jun Nishihara)

現代の若者黒人文化をリードする人物(続編:レイアナ・ジェイ)

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以前,当サイトで「現代の若者黒人文化をリードする人物」として,レイアナ・ジェイを2回に分けて,取り上げました。 1回目はこちらで。 そして,2回目はこちらです。

今回で,彼女を取り上げるのは3回目になりますが,幾つかのライヴ映像等を本日はこのページにまとめて掲載しておきます。彼女の歌声を聴きたくなったら,ここへ戻ってきてください。

① Rayana Jay Presents: Love Me Like Sessions – “Know Names”

② Rayana Jay – “Sunkissed” (@ Sofar NYC)

③ For The Record: Rayana Jay performs “Sleepy Brown” and “Nothing To Talk About”(彼女の初期EPから楽曲「Sleep Brown」と「Nothing To Talk About」の生演奏です。)

④ Rayana Jay at Paramount 2018 Recap

⑤ 2017 Women to Watch: Rayana Jay(2017年注目の「若手女子」としてレイアナ・ジェイが取り上げられました。1993年生まれですので,まだ24歳の頃です。)

⑥ Rayana Jay – “Love Me Like” Trailer

⑦ Rayana Jay – “One More Time”

⑧ Rayana Jay – “Way Back”

⑨ Rayana Jay – “Sleepy Brown”(スリーピー・ブラウンっていうのは昔(いや,今も)米国南部(サウス)のヒップホップ発祥地であるジョージア州アトランタ市で生きた伝説であるアウトキャスト(OutKast)らと共に活躍したラッパーの名前ですね。彼へのオマージュである曲です。特に“What’s cooler than cool?! ICE COLD!”(クールよりクールなことってナニ?!「アイス・コールド!」)っていう超有名なアウトキャストの1行(ワンライン・シャウト)がサンプリング起用されています。)

⑩ Rayana Jay – “it’s you”(2020年5月にリリースされた彼女の新曲です。)

(文責及びキュレーション:Jun Nishihara)

ドレイクに影響を与え,そして影響を受けた,UKの黒人音楽シーン(その③)

まずは,こちらをお聴き頂いて,この英国ヒップホップの雰囲気を十分に堪能して下さい。

ドレイク(Drake)が2017年3月にリリースしたUKミュージックシーンの影響をモロに受けた(heavily influenced)アルバム『More Life』には,UK(英国)のR&Bシンガーソングライターであるジョルジャ・スミス(Jorja Smith)もフィーチャリングされていました。

ジョルジャ・スミスは英国中部に位置するウェスト・ミッドランド州ウォル・ソール市の生まれ。父親はジャマイカ人で母親はイギリス人。2018年にリリースされた公式デビューアルバム『Lost & Found』は「UK R&Bチャート」で第1位を記録。毎年イギリスで開催される音楽の祭典式=ブリット・アワード(The Brit Awards)では,2018年にクリティクス・チョイス・アワード(音楽評論家が選ぶアーティスト)を受賞。翌年2019年には,同ブリット・アワードのベスト・フィメール・ソロ・アーティスト(最優秀女子ソロアーティスト)部門で賞を受賞しました。

雨季が多い英国のしっとりした雰囲気を醸し出す音楽もあれば,冒頭のように現代英国のヒップホップシーンを映し出す楽曲も披露するという多才ぶり。彼女の幾つかのミュージックビデオを以下に紹介いたします。

Jorja Smith – “Goodbyes”

Jorja Smith – “Teenage Fantasy”

Jorja Smith – “Where Did I Go?”

Jorja Smith – “The One”

そして2018年に大ヒットしたマーベル・スタジオ製作の映画『ブラックパンサー』のサウンドトラックでもジョルジャはフィーチャリングされておりました。それがこちらです。

Jorja Smith – “I Am”

最後に英国ラッパーであるストームジー(Stormzy)と,生粋のナイジェリア生まれラッパー=バーナ・ボーイ(Burna Boy)と共演した楽曲をそれぞれ掲載いたします。ストームジーやバーナ・ボーイと共演してここまでぴったりウマが“合う”女性のR&Bアーティストというのは珍しく,ジョルジャ・スミスならではの味が出ていることが伺えます。

Jorja Smith feat. Stormzy – “Let Me Down”

Jorja Smith feat. Burna Boy – “Be Honest”

(文責&キュレーティング:Jun Nishihara)

ドレイクに影響を与え,そして影響を受けた,UKの黒人音楽シーン(その②)

UKの黒人音楽シーンに出現した若手シンガー女子2名=エラ・メイ(Ella Mai)とマハリア(Mahalia)が並んで映ると,まさに姉妹のように映る,そんな映像が流れるのが2019年9月にリリースされたミュージックビデオ「What You Did」です。二人ともUK出身。エラ・メイはジャマイカ人の母親と,アイルランド出身の父親の混血。マハリアは,英国ミッドランド東部に位置するレスターシャーの生まれ。同じくジャマイカ人の母親と,アイルランド出身の父親の混血。やっぱり二人とも,姉妹?!

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「What You Did」のミュージックビデオはこちらです。

Mahalia feat. Ella Mai – “What You Did”

キャムロン(Cam’ron)好きの私は,すぐにこの曲が好きになりました。
(キャムロンについては,コチラを読んでみてください。)

なぜこれがキャムロン好きにはタマらん曲なのか,と言えば,マハリアのこの楽曲「What You Did」のビートは,まさに以下のキャムロンの2002年4月リリースのシングル曲をサンプリングしているからです。

Cam’ron – “Oh Boy”(2002年4月リリース)ディップ・ディップ・セッセッ!!

なお,知ってました?この「オゥ・ボーイ・ビート」は以下の曲でマライア・キャリー(Mariah Carey)もサンプリングします。

Mariah Carey feat. Cam’Ron – “Boy (I Need You)”

さて,話を戻しますと,エラ・メイはシングル曲「Boo’d Up」で2018年に全世界を席巻し,売り上げは米国のみで500万枚セールス,カナダや英国での売り上げを合わせますと,合計600万枚以上。2018年のビルボードチャートを総ナメする勢いにまで発展しました。

他方,マハリアはその間,UKの音楽シーン,とりわけアンダーグラウンド・シーンでグツグツと人気を温存してきており,2019年9月にアルバム『Love and Compromise』をリリースし,同アルバムは英国R&Bアルバムランキングに於いて第3位を記録しました。

この生粋のUK生まれの二人は,冒頭のシングル曲「What You Did」でコラボレーションしたわけですけれども,楽曲に起用されている元ネタ・ビート「Oh Boy」を世に出した張本人であるキャムロン自身を迎えたというREMIXヴァージョンも今年リリースされました。2002年に出たキャムロンのビートをサンプリングとして使い,そして18年後の2020年に,キャムロン自身をREMIXに迎えた!という大胆な手法で,以下REMIXをリリースしたものです。

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ちなみに,マハリアが上記写真でまとっている緑色の毛皮は,2002年にキャムロンがピンクの毛皮をまとって撮った以下の写真をオマージュとしております。これは2002年当時,キャムロンがヒップホップ界随一のピンク色好きということで有名で,クルマもピンク,ダボダボのシャツもピンク,毛皮もピンクという出立(いでたち)で,ヒップホップ界では当時このピンク色を「Cam’ron Pink(キャムロン・ピンク)」と呼ぶようにまでなり,当時かなり話題になりました。ゴテゴテのヒップホップ野郎でもピンク色のシャツを着てもいいんだ,と,NYの若者はそのカラーを真似するようになり,ついにヒップホップ・ファッション界にまで影響を及ぼすこととなりました。

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さて,そのキャムロン張本人を迎えてリリースしたREMIXヴァージョンがこちらです。

Mahalia feat. Cam’ron & Ella Mai – “What You Did (REMIX)”

(文責:Jun Nishihara)

第5位:Hip-Hop界の女子代表=Missy ElliottのMTV授賞式及びライヴパフォーマンス模様(2019年Hip-Hop名曲名場面ベスト50)

ヒップホップが1970年に誕生して以来,これほどまでに女子ラッパーが活躍した年代は無かった。その2019年のMTV授賞式において,ミッシー・エリオット(Missy Elliott)がビデオ・ミュージック・アワード賞で称えられるという出来事は,2019年の象徴的なニュースといえるでしょう。

ミッシー・エリオット(Missy Elliott)は,diversity(多種多様性)という言葉が叫ばれる現代において,多種多様なセクシュアリティ,多種多様な体型,多種多様な人種を認める,という意味における先駆者です。今でこそ,あらゆる場面で「多種多様性」とかって叫ばれておりますが,ミッシーはそれを90年代後半において,すでに始めていた。

ミッシーの90年代後半のMV「The Rain (Supa Dupa Fly)」はその象徴的なビデオです。当時,ヒップホップ界で,ミッシーのような体型で踊ってラップし,カッコよくスワッグをキメていた,というのは非常に稀でした。それを観たアメリカ中の体型にコンプレックスを持つ黒人女子たちは,「私たちも,やっていいんだ」と思えた。じぶんたちを認めさせてくれた。しかし,実際にやろうと思うと,これがむつかしい。とは言え,希望を与えてくれたことは間違いなかった。

ミッシー・エリオットの偉大さについては,こちらをご参照下さい

2001年にリリースされたミッシーの「Get Ur Freak On」は,衝撃的なMVでした。当時こんなにフリーキーなビデオはどこにもなかった。超カッコ良かったし,ラップも真似たし,ダンスも真似ようとした。男も女も関係なく。まさにジェンダー・フリー。

そして出た「One Minute Man」のリュダクリスとのリミックス。ジェイZとのリミックスヴァージョンも登場し,めちゃめちゃ惚れた。

それからしばらく後の2004年,「I’m Really Hot」というシングル曲がリリースされ,ミュージックビデオも出ました。当時はNYでインターネットがまだ光回線になっていなかった頃,画質の悪い動画で観たのを憶えておりますが,同ビデオの途中,タイムライン2:50の箇所でビートが一変し,ラップ及びダンスのスタイルがスウィッチアップするところがめちゃカッコ良いと感じました。当時は同じ曲でのビートのスウィッチアップもとても珍しかった。

そして時は経て2005年,ミッシーの「Meltdown」をアルバム『The Cookbook』で聴いたときは,感動しましたねえ。なんて素敵な曲なんだと。いままでハードなラップで,ダンサブルなチューンでやってきたミッシーがこういったアンビアンスなビートでもラップするんだ〜ってね。さらにミッシーのことが好きになりました。

さてその好きな曲「Meltdown」を入れときます。この曲は,あたいにとってスペシャルな曲ですよ。

Missy Elliott – “Meltdown”

ミッシーについては,話し出すと話が終わらないですので,本日はここら辺で切り上げときます。ほな,また。

(文責:Jun Nishihara)

第7位:ティアナ・テイラー引き続き2019年もHip-Hop/R&Bナツメロをフリップし,楽曲「Morning」及び「HYWI」をリリース(2019年Hip-Hop名曲名場面ベスト50)

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(Teyana Taylor: source Wikipedia)

昨年2018年に第3位にランクインしたティアナ・テイラー,2019年はアルバムをリリースしていないにもかかわらず,トップ10入りを果たしました。

2019年もどうしてこうもティアナ・テイラー(Teyana Taylor)はヒップホップ及びR&Bのナツメロを新しき楽曲にするのがウマいのでしょうか。まさに当サイトが目標としている「古き良きヒップホップを現代に生き返らせる」ことを音楽という媒体をもちいて表現してくれています。

この「古き良きヒップホップ(またはR&B)を現代に生き返らせる」という大テーマを2019年も引き続き遂行してくれたことにより,ティアナ・テイラーに第7位を捧げることといたしたく,以下ティアナの2019年リリースMVを掲載いたします。

Teyana Taylor feat. Kehlani – “Morning”

Teyana Taylor feat. King Combs (ディディの息子!) – “How You Want It”

ちなみにこの曲,1997年10月にリリースされた当時ディディのチーム=Bad Boy Records所属であったラッパーMa$eとR&BアーティストTotalの名曲「What You Want」を下敷き(元ネタ)にしております。

その当時から12年の歳月を経て,Total役をティアナ・テイラーが,Ma$e役をディディの息子=King Combsがやってのける,しかもMVの映像の撮り方も90年代のR&Bを真似ている!という,凝りにこったミュージックビデオをリリースしてくれました。

90年代のR&Bを10年代(2010年代)によみがえらせるという,ティアナ・テイラーの味,2020年はますます楽しみです。

(文責:Jun Nishihara)

第8位:男と女,黒と白をグチャグチャに混合させた,ソランジュ(Solange)の傑作アルバム『When I Get Home』(2019年Hip-Hop名曲名場面ベスト50)

第9位のFrank Oceanに続き,第8位のSolangeも,2010年代(つまり10年代)に出た最も偉大なるアルバムとして必ずトップ10入りするアルバム『A Seat at the Table』を2016年にリリースしております。

そのソランジュ(Solange)が3年あとの2019年にニューアルバム『When I Get Home』をリリースしました。

収録楽曲を見ておりますと「Down With the Clique」や「Stay Flo」や「My Skin My Logo」や「Binz」と,黒人であることの特質性をセレブレート(讃える)するというテーマがアルバムに一貫して流れて(floして)おります。

このcontroversial(物議をかもす内容)で,難解なテーマである「黒人の特質性」というものを.ソランジュは音楽(アルバム)を媒介に伝えるべく,水のように(Sound of Rain),自然な「流れ」をもって,われわれに届けてくれるという,まさに芸術とも呼べる作品を制作してくれました。つまり,このアルバム『When I Get Home』は,ただのR&B音楽として聴くだけでなく,美術品を「見る」という別の五感でとらえてみますと,同作品が立体的に浮かび上がってくる節があります。そこを切り口にしてこの作品を探ってみるというのも,面白いスタンスです。目の前にあたらしいソランジュの世界が開き始めるかもしれません。

さて,ミュージックビデオとして,このデケイド(2010年代)の名曲と称される楽曲「Don’t Touch My Hair」および今作品から「Binz」の2曲を掲載いたします。

Solange – “Don’t Touch My Hair”(アルバム『A Seat at the Table』より)
この曲も黒人の特質性の一つである「ブレイドがかった髪質」を讃(たた)える曲として解釈することが可能です。それをミュージックビデオ,つまりヴィジュアル的に,表現したものが以下の作品です。つまりこれは「黒人の芸術表現方法」という文学的解釈が可能となります。

続きまして2019年の今作品から,Solange – “Almeda”です。
もうこのビデオは,性的な意味からも人種的な意味からも,衝撃的な表現方法です。男と女という通常区別されている二つの観念を混合させ,黒と白などという低次元の人種的区別(差別ではなく区別)さえもグチャグチャに混合させた,理解しようとすればするほど,論理的な解釈を加えようとすればするほど,それを突き放すかのように,理解・論理・解釈という概念をぶっ飛ばした映像です。ここにソランジュ(Solange)のアルバムがなぜこのデケイドの最高峰の傑作と呼ばれる由縁か,という真髄が垣間見られます。

最後にアルバム『When I Get Home』をヴィジュアル化したアートフィルムを掲載いたします。

Solange – “When I Get Home (Director’s Cut)”

(文責:Jun Nishihara)

第9位:Frank Oceanの新曲「DHL」(2019年Hip-Hop名曲名場面ベスト50)

われわれは1980年代のことを略語で「80年代」とか言ったり,1990年代のことは「90年代」と言ったりします。

先日2010年代が終わり,ついに「10年代」という言葉が出てくるようになりました。

その「10年代」にリリースされた最も偉大なるアルバムとしてあらゆる場面で必ずトップ5入りをしているのが,フランク・オーシャン(Frank Ocean)が2017年にリリースした名盤『Blonde(表記はblondもあり)』です。

ヒップホップとかR&Bとかソウルとかポップスとかカントリーとかジャズとかジャンルは関係なく,最も偉大なるアルバム(シンプルにアルバム!)としてトップ5入りを果たしております。

そのフランク・オーシャン(Frank Ocean)が2019年,シングル曲「DHL」を発表いたしました。

オリジナルのジャケです。

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Frank Ocean – DHL(タイムライン1:40あたりで,曲の雰囲気がガラッと変わるあたりは,2019年に出てきた音楽の方向性をよく象徴しており,また,リリックのスピードもガラッと変わる,歌モノからラップ調に入る,この微妙な転換,こんな繊細な微細なことはフランクにしかできない,これが第9位の理由でもあります。)

(文責:Jun Nishihara)