6月リリースされたストリートシングル曲。

ひとまずは6月9日にリリースされたケヴィン・ゲイツ(Kevin Gates)の「Super General (Freestyle)」です。これはコダック・ブラック(Kodak Black)の「Super Gremlin」をフリップしたものですね。

① Kevin Gates – “Super General (Freestyle)”

② Jack Harlow feat. Drake – “Churchill Downs”

③ Lakeyah feat. Latto – “Mind Yo Business”

④ Pharrell Williams feat. 21 Savage & Tyler, The Creator – “Cash In Cash Out”

⑤ Doja Cat – “VEGAS” (From the Original Motion Picture Soundtrack ELVIS)

⑥ Rae Sremmurd(久しぶり!) – “Denial”

⑦ Nia Sultana feat. Rick Ross – “Proven”

⑧ Chris Brown – “Wheels Fall Off” (From The Batcave Performance)

⑨ Post Malone feat. Doja Cat – “I Like You (A Happier Song)”

⑩ Polo G – “Distraction

おまけ:Kehlani – “melt”
(これは5月にリリースされたものですが、ケラーニ(Kehlani)は特別なので、おまけとして、ここへ掲載しておきます。

まだ6月15日ですが、6月リリースの楽曲/ミュージックビデオだけでこのようなバラエティに豊富な楽曲が溢れているというのは嬉しいことです。

久しぶりにRae Sremmurdの「Black Beatles」を聴きたくなった人もいるのではないでしょうか。ちなみにこのブラジルの「階段」はスヌープとファレルのミュージックビデオ「Beautiful」で起用されたロケーションと同じ場所ですね。ビデオがYouTubeにアップされたのは2009年と記載されていますが、この曲がリリースされたのは2009年なんて“最近”のものではなく、もっともっと前の2003年です。この曲をかけると、2003年に住んでいたNYを思い出しますが、その頃のNYと現在住んでいるNYの受けるイメージというのが全く違うのが衝撃的です。この19年間で様々なことが変わってしまった。たま~に、このNYの匂い変わらないな~とか地面のグリルの下からふわっと湧いてくる地下鉄の匂いを感じて想うのですが、それくらいで、当時といろいろなこと/イメージが変わったなぁと思います。

これは私が変わったからですね。マルクスは「自然を変えようとすると、一番変わるのはこちら側(じぶん)のほうである」と言ったそうですが、まさにそれを教えてくれた吉本隆明的な思想のとおりで、NYが変わったのではなく、こちら側(わたし)が変わったため、楽曲「Beautiful」を聴いて想起するイメージと、実際住むNYの雰囲気が異なるのは、そういうことでしょう。

先日、スタテンアイランド(Staten Island)のSt. Georgeエリアを歩いていて、Staten Island Yankeesの野球場が閉鎖し、周辺が閑散としていたのは、寂しく感じました。しかし隣にEmpire Outletsはできて、子どもたちが遊べる「広場」が少しできているのは、嬉しかったです。

(文責:Jun Nishihara)

ビギー生誕50周年記念を祝い幾つか懐メロを。

ビギーの生誕50周年記念を祝い、ここにビギー(The Notorious B.I.G.)の代表作5件を掲載しておきます。

① The Notorious B.I.G. – “Juicy” (1994)

② The Notorious B.I.G. – “Hypnotize” (1997)

③ The Notorious B.I.G. – “Who Shot Ya?” (1995)

④ The Notorious B.I.G. feat. Ma$e & Puff Daddy – “Mo Money, Mo Problems” (1997)

⑤ The Notorious B.I.G. feat. Bone Thugs-n-Harmony – “Notorious Thugs” (1997)

(キュレーティング:Jun Nishihara)

ロバート・グラスパーの“Black Radio”シリーズの第三弾『Black Radio III』リリース。

『Black Radio III』のリリース前に米NBC局の「The Tonight Show Starring Jimmy Fallon」でロバート・グラスパー(Robert Glasper)と仲間たちがシングル曲「Black Superhero」をお披露目しました。

Robert Glasper feat. Rapsody, BJ the Chicago Kid, Amir Sulaiman, DJ Jazzy Jeff

上記ライヴの冒頭で重要と思われるワンセンテンスのみ、訳しておきます。
アルバムの冒頭でもこのセンテンスが繰り返し出てきます。本アルバムを聴くにあたって理解しておくべき1文です。

We don’t play music / We pray music

音楽は遊びではなかった、音楽は祈りだった

過去形に訳すか、現在形で訳すかは、同文が語られるコンテキストに拠るのですが、つまり、この1文は「現代アメリカで黒人が差別的に殺されるという現実」に始まり、500年以上続いた奴隷制度まで遡り、トウモロコシ畑で過酷労働を強いられていた私たちの先祖が「歌ってきた」音楽は「決して遊びではなく、あれは私たちにとって「祈り」であった」、というコンテキストで語られているものです。「あの音楽は私たちにとって何であったのか」を事後的に得心した(もしくは奴隷として亡くなっていった先祖たちの魂が往生できるように納得させた)きわめて核心的なところに触れた1文であると思料いたします。これは、本アルバムを聴くにあたって重要な部分であるので、まずは訳しておこうと思った次第です。

さて、アルバムから収録楽曲を3曲、掲載しておきます。

“Better Than I Imaginged” by Robert Glasper feat. H.E.R., Meshell Ndegeocello

“Everybody Wants To Rule The World” by Robert Glasper feat. Lalah Hathaway, Common

“Forever” by Robert Glasper feat. PJ Morton, India.Arie

(文責及びキュレーティング:Jun Nishihara)

2022年のNYアンセム、Fivio Foreign x Alicia Keys x Kanye West出る。

2022年のNYアンセムは、まだ2月であるにもかかわらず、早くもこれに決まりです。
ファイヴィオ・フォーリン(Fivio Foreign)、アリシア・キーズ(Alicia Keys)そしてカニエ・ウェスト(Kanye West)でコラボ作として発表した「City of Gods」。ミュージックビデオは未発表ですので、現時点では音源のみです。

途中、カニエがこう言い放ちます。
おっと、その前に、ファイヴィオがこう言います。
ブルックリン・ドリル(Brooklyn Drill)の威力を世界に知らしめた今は亡きポップ・スモーク(Pop Smoke)へ曲の冒頭でシャウトアウトを捧げます。

Pop was the king of New York, now I’m the nigga in charge
(NYのキングはポップ(・スモーク)だった、俺が後を継ぐ)

そしてカニエは自身のヴァースでこう言います。

Ayy, Fivi, excuse me, but this is the feature of the year
(エィ、ファイヴィ、すまん、これ、今年イチのフィーチャーだわ)

そして、これがその今年イチのフィーチャーです。

Fivio Foreign x Alicia Keys x Kanye West – “City of Gods”

(文責:Jun Nishihara)

2021年のHIP-HOPに非常に重要な意味を持つアルバム『Khaled Khaled』がリリースされた。

DJ Khaled(DJキャレド)が通算12枚目となるアルバム『Khaled Khaled』をリリースした。表紙はこんな感じ。

このアルバムタイトルである「キャレド・キャレド」というのは,DJ Khaledがまだ無名であった時代(正確に言えばメジャーデビューはせず,マイアミエリアでしか名を馳せていなかった時代)の芸名であった。DJ Khaledはデビューして今年で15年。早いもんだぜ。2006年にリリースされたDJ Khaledのデビューアルバム『Listennn… the Album』が今もまだ「新たな世代のラップ」のように聞こえてならない。あれから15年たった今も,DJ Khaledは「新たな世代」を「ベテランの大御所ラッパー」とともに引き合わせる「接着剤」「橋渡し」「触媒」の役割として,絶妙なポジションにいるDJ兼プロデューサーの役を引き受けている。そしてそれに成功している。

DJ Khaledがムスリムの儀式である「ナマーズ(祈り)」を捧げている際に,末っ子のアラム君が祈るパパを指さして微笑んでいるのが素晴らしく,これはなかなか良いものを表紙にしましたね。

まずはこの曲を送ります。収録楽曲1曲目,「THANKFUL(感謝)」です。

(文責:Jun Nishihara)

ブラック・ロブの「ウォゥ!」なゲットー・ラップ。

今からおおよそ11年前,2000年2月15日に「Whoa!(ウォゥ!)」というゴテゴテのゲットー系ヒップホップ曲がリリースされた当時,この曲を耳にして,内側の五臓六腑を抉り出し,暴動にでも飛び出したくなるような相当キケンな匂いがする曲のように感じたのを憶えている。

この曲「Whoa!」はパフ・ダディ(改めP. Diddy改めDiddy)が指揮を執るバッド・ボーイ・レコーズ(Bad Boy Records)に所属するブラック・ロブ(Black Rob)の曲である。

これはいわゆる小ぎれいでナーディなヒップホップを生み出したカニエ・ウェストが登場する「カニエ以前」の時代のヒップホップである。まさに,汚らしく美しい“庶民の”ゲットー・ラップを反映し,しかもそこへパフ・ダディ節を根底に流したゴテゴテのヒップホップ曲であった。

当時,ゲットー出身の連中はこの曲に共鳴し,ストリートに於いて爆音で流した。

イルなもん見たらその時は叫べ「ウォゥ!」。アップタウンのイケイケ女見たとき叫んだぜ「ウォゥ!」。ダイヤとパールでまとった女「ウォゥ!」。腕にかざしたアイス(=ジュエリー)見ろよ「ウォゥ!」。カネは問題じゃねぇ,いくらでも積んだるぜ「ウォゥ!」。おまえらの動きにかけたるぜ急ブレーキ「ウォゥ!」。俺ら野郎たちはドウ(金)儲けて,ドロー(ハッパ)焚いて,ニトロ飛ばして,フロウかまして,かっこよくキメてヨゥ,ウォゥ!っていう内容の曲です。

そのブラック・ロブ(Black Rob)が先日,2021年4月17日にこの世を去りました。その前々週4月9日に伝説の男DMXが亡くなったばかりでした。二人であの世でヒップホップ曲を爆音で響かせ,同郷NY出身のビギーらとともに暴れてるに相違ないでしょう。

その「ウォゥ!」を以下に掲載しておきます。本物のヒップホップっちゅうもんはこういうもんだったというのを未来の世代の野郎どもへ,時々,思い出すようにしてくれや。

(文責:Jun Nishihara)

第9位:2020年米XXL誌フレッシュマン・サイファー(ラップ・フリースタイル)(2020年Hip-Hop名曲名場面ベスト30)

毎年恒例の米Hip-Hop雑誌“XXL”が開催する「Freshman Cypher」(1年生のサイファーフリースタイル)ショーが2020年も行われました。

2020年はコロナ禍ということもあり,三密を避けるため,距離を保つという観点から,3回に分けて,行われました。

まずは,この4名です。

NLEチョッパー(NLE Choppa)
ロッド・ウェイヴ(Rod Wave)
チカ(CHIKA)
リル・Tジェイ(Lil TJay)

続きまして,この4名です。

ムラート(Mulatto)
24kゴールデン(24kGoldn)
ファイヴィオ・フォーリン(Fivio Foreign)
キャルボーイ(Calboy)

最後にこの4名です。

ジャック・ハーロウ(Jack Harlow)
リル・キード(Lil Keed)
ポロ・G(Polo G)

2020年のフレッシュマンも充実しております。
毎年安定して,このように若手ラッパーがメインストリームに登場してきているわけですが,米Hip-Hop界は拡充していく傾向にあり,これからもたのしみです。

2020年も若手女子ラッパー(XXL FreshmanではMulattoとCHIKA)は強敵です。CHIKAに至っては,ここのサイファー(フリースタイル)では,まったく力まず,さらっと他の3人をやっつけてますね。ペットの犬であるヴィジョンを片腕で抱きながら,余裕でフリースタイルをカマシます。もっと強烈なフローをやってくれるだろうと期待していたのですが,良い意味で裏切ってくれました。メロディにさらっと乗っかって,チルな感じでフローを生み出す。どれだけCHIKAはversatile(多才)なのかが見てとれます。

(文責:Jun Nishihara)

第13位:道に迷った時に聴くべきNasのアルバム『King’s Disease』(2020年Hip-Hop名曲名場面ベスト30)

Nasの音楽は,道に迷った時に聴くべき原点である。
2020年8月にリリースされたアルバム『King’s Disease』は,新しくも旧い原点を示してくれている。

Nasはわれわれに,「あんたらが道に迷った時に聴ける音楽として,こんだけありますよ。こん中から,いまのあんたの境涯・苦境に合う曲を数曲セレクトして,それを聴けばいい。」という選択肢を大風呂敷を広げて,提供してくれている。

まさに,名曲の宝庫をわれわれの目の前に広げてくれていて,そこから今の自分に合った曲を選べばいいという,なんという贅沢。こんなことが出来るのは,Nasが1994年にデビューしてから,26年間という(もはや歴史上人物にさえもなりうるような)年月をかけてリリースしてきた数々の名曲があるからこそである。

そして2020年8月にリリースされた『King’s Disease』は,そのコレクションにまたもや選択肢を増やしてくれる(さらに目移りさせられてしまう要因となる)ディスクなのである。

そしてNasのカッコ良さについては,こちらのページを読んでいただければと思う。

2020年の第13位は文句無しのNasである。

そして,1月22日(金)に以下のミュージックビデオをリリースした。「27 Summers」とはその名のとおり「夏を27回経てきた」ということ,つまり,27年間,現役でやってきたということ(夏を制するとはその年のヒットを飛ばすということ)。

このビデオ,勢いだけは誰にも負けないDJ Khaledを迎えて,その勢いとは真逆に位置する安定感の塊のようなNasと組んで.ある意味,壮大なる楽曲である。

(文責:Jun Nishihara)

第17位:ジャンルを超越したマック・ミラーの遺作アルバム『Circles』(2020年Hip-Hop名曲名場面ベスト30)

マック・ミラー(Mac Miller)が亡くなる直前までレコーディングに取り掛かっていたという最後の遺作アルバムが2020年1月にリリースされました。アルバム『Circles』です。これは生前2018年にリリースされた『Swimming』とあわせて三部作(trilogy)の一枚として制作されました。三作目は叶わなかったですが,アルバム『Swimming』と『Circles』の二作(ふた咲く)をあわせて「Swimming in Circles(円状を泳ぐ)」というコンセプトが思索されていたようです。

『Circles』に似たコンセプトのアルバムには,ヒップホップ史上最も偉大なるヒップホッププロデューサーと云われているジェイ・ディラ(J Dilla)の『Donuts』というアルバムがあります。これもまたJ Dillaが亡くなる3日前にリリースされたアルバム(2006年2月6日)です。

“Circles”や“Donuts”のように,ぐるぐると回り続ける,永遠に終わることのない“トリップ”を表現するものには,The Notorious B.I.G.の“Life After Death”(死後の生き様)というのもひとつ,別の観点から永遠を象徴するものでしょう。上記3名はもうこの世にはいませんが,偉大なるアルバムをとおして「永遠」の音楽を我々に贈り届けてくれた,といえるでしょう。

もうひとつ,マック・ミラーの遺作アルバム『Circles』で特筆すべきことは,収録されている楽曲のジャンルの幅が非常に広いということです。“ジャンルレス”,つまり,特定のジャンルに縛られることなく音楽を作り上げることに成功した偉大なるアルバムとも呼べます。

(文責:Jun Nishihara)