第5位:ケンドリック・ラマーの「The Heart Part 5」(2022年Hip-Hop名曲名盤ベスト20!)

2022年に生まれたHip-Hopのうち最高傑作を作り出した一人は,ケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)です。アルバム『Mr. Morale & The Big Steppers』をリリースする前,The Heartシリーズの第五作目「The Heart Part 5」を出しました。こちらです。

上記映像でケンドリック・ラマーは,ウィル・スミスやカニエ・ウェスト,そしてニプシー・ハッスルなどに化けて(憑依して)ラップします。これは「視点の移行」もしくは「なりきる」という一種の表現の極致です。その人物はどう思うだろうか,どういう思いで今を生きているか,ということをケンドリック1人で,6人の顔(カオ)に化け,ラップします。

Dehumanized, insensitive
Scrutinize the way we live for you and I
Enemies shook my hand, I can promise I’ll meet you
In the land where no equal is your equal
Never say I ain’t told ya, nah
In the land where hurt people hurt more people
Fuck callin’ it culture

訳:
非人間的で,無神経
俺たちの生き様をいちいち批判してくる
敵に握手を求められ,俺は約束する,向こう側で会おうぜ
不平等がおまえの正義であるような世の中
前から言ってきただろう,なぁ
傷ついた人々がさらに他人を傷つける世の中
そんなもんを文化(culture)などと呼ぶんじゃねえ

アメリカに対するケンドリックの思いでもあれば,黒人として生きることの辛さを描写したものでもある。それを6人の黒人に化けてラップする。ケンドリックの声から,一種の危機感(sense of urgency)を我々は感じ取る。そろそろ立ち上がる時である,と。じっと言いなりになってる場合じゃないと。その危機感がこの後リリースされる『Mr. Morale & The Big Steppers』へと昇華する。

ケンドリックはニプシー・ハッスル(Nipsey Hussle)に化けてこうラップする。

And to the killer that sped up my demise
I forgive you, just know your soul’s in question

訳:
俺の死を早めた犯罪者へ
俺はおまえを許す,しかし,おまえの魂(soul)が疑われていることは,知っておけ

(歌詞対訳:Jun Nishihara)

第11位:ニューヨークの新しいアンセムを生み出した楽曲=Fivio Foreign feat. Alicia Keys & Kanye Westの「City of Gods」(2022年Hip-Hop名曲名盤ベスト20!)

カニエ・ウェスト(Kanye West)改め、イェィ(Ye)が曲中叫びます。「Aye Fivi! Excuse me! But this is the feature of the year!」(エィ、ファイヴィオ!すまん!これ、今年イチのフィーチャーやわ!」

時間で言うと、2:42のところですね。

当初わたしはこれをカニエ自身をフィーチャーした曲なので、またカニエの自惚れか、と思っていたのですが、よく考えたら、カニエにアリシアという極めて贅沢なフィーチャリングです。この「今年イチ」のフィーチャーにはカニエだけでなく勿論アリシアも含まれていますね。

あと、ファイヴィオが曲中こうラップします。

「Welcome to the City of Gods! Pop was the king of New York, now I’m the nigga in charge.」(シティ・オヴ・ゴッズ(神々が宿る街=ニューヨークシティ)へようこそ。ポップ・スモークはNYのキングだった。そして今、俺がそれを継ぐ。)

そしてNY市ハーレム出身のアリシア・キーズ(Alicia Keys)がこう歌います。

New York City, please go easy on me tonight / New York City, please go easy on this heart of mine

ニューヨークシティよ、今夜は、やさしくいてちょうだい/ニューヨークシティよ、ハートにやさしくしてちょうだい

この曲がリリースされた1週間前、ファイヴィオ・フォーリンの仲間であるTドット・ウー(TDott Woo)は銃撃され亡くなりました。

冒頭ファイヴィオがラップするポップ・スモーク(Pop Smoke)についてはヒップホップ界を震撼させた大きなニュースとなりましたが、2020年2月にカリフォルニア州ハリウッド(上流階級の住宅が集まる通常は治安が良いとされている地域です)の自宅で5人の男により殺害されました。

ヒップホップ界で生きるということは、昔も今も、命がけであることがうかがえる事件です。あまりにも殺人や死者が出すぎている。そういった意味で、アリシアの祈りである「please go easy on me(やさしくいてちょうだい)」という言葉が胸に響きます。

‘Cause I’m losing my lover to the arms of another / New York City, please go easy on me

愛する人が胸の中で亡くなっていく/ニューヨークシティよ、やさしくいてちょうだい

❝ニューヨークのアンセム❞と呼ばれた楽曲は数々ありますが、この「City of Gods」もまさに今年2022年、ニューヨークの新たなアンセムとして誕生しました。

Fivio Foreign feat. Alicia Keys & Kanye West – “City of Gods”

カニエ・ウェスト(Kanye West)のライヴステージ(『Donda 2』のリスニング・パーティー)でもアリシア・キーズ(Alicia Keys)とファイヴィオ・フォーリン(Fivio Foreign)を迎え披露しました。

これには、パート2があります。

アリシア・キーズ(Alicia Keys)のみで歌ったヴァージョンです。

こちらです。

今年2022年最終回を迎えた全米長寿番組(”The Ellen DeGeneres Show”)でも披露しました。

ニューヨークシティよ、生かしてくれて、ありがとう。

(文責:Jun Nishihara)

DJキャレドのアルバム『GOD DID』から生まれたのは,収録楽曲「God Did」のみでなく,カニエとエミネムのコラボレーションも誕生させた。

前回,こちらで「GOD DID」のグラミー賞ノミネートについてお伝えしましたが,アルバム『GOD DID』から生まれたのはタイトルトラックの「God Did」のみではなく,カニエ(改めYe)及びエミネムのコラボも誕生させました。

カニエの鼻歌で冒頭始まる楽曲は,Hip-Hopビートメイカーの世界における天才(Ye)とラップ・ゴッドと呼ばれた鬼才(エミネム)のコラボレーションです。まぁ,この二人を組み合わせることを思いつき,そして実際にそれを成し遂げるのは,DJ Khaledくらいしかいない,と思います。それがこのDJ Khaledの良いところであると。彼のパーソナリティというかキャラクターというか,それがこの二人を組み合わせることになるし,もっと広い観点から見ると,その彼の独特のセンスがアルバム『GOD DID』全体を流れる畝りであるとも思います。

その楽曲がこちらです。

DJ Khaled feat. Kanye West & Eminem – “USE THIS GOSPEL”

(文責:Jun Nishihara)

元ネタの曲を知る(16) ファイヴィオ・フォーリン⇔ザ・チェインスモーカーズ

久しぶりにこのコーナーです。
ファイヴィオ・フォーリン(Fivio Foreign)がカニエ・ウェスト(Kanye West)とアリシア・キーズ(Alicia Keys)とともに名曲「City of Gods」でコラボレートを果たしたのは記憶に新しいですが、この曲には元ネタがあり、ザ・チェインスモーカーズ(The Chainsmokers)というEDMの救世主、グラミー賞ダンスミュージック部門でも受賞した3人組ユニットが出した「New York City」という楽曲が、そもそも大元の元ネタなのでした。それを新しい「City of Gods」とあわせて、以下に掲載しておきます。

まずはFivio Foreign feat. Kanye West & Alicia Keysバージョンから。

この曲には、アリシア・キーズ(Alicia Keys)のソロ楽曲もあります。そちらのバージョンはこちら。

Alicia Keys – “City of Gods (Part II)”

そして、いよいよ元ネタの発表ですが。
こちらです。

The Chainsmokers – “New York City”

こちらはAudio Onlyバージョンです。

この曲「公式」ミュージックビデオは発表されておりませんので、以上です。

(文責及びキュレーティング:Jun Nishihara)

久しぶりにカニエ・ウェストがのこした偉大なる“Sunday Service”の瞬間を。

 まずは1つ目の映像です。2020年3月フランスはパリで行われたカニエ・ウェスト・クワイアー聖歌隊の“Sunday Service”です。タイムライン3:20の箇所で打つ手拍子(clap)のタイミングは絶妙です。これだけの人数の聖歌隊であるにもかかわらず、全員で全く同じタイミングで手拍子するという抜群のリズム感。複数の人ではなく、まるで単体でクラップやっているかのように聞こえる。
 (1:29に皆一緒に「power」と合唱(コーラス)するところも素晴らしい。)
 兎にも角にも、日曜日の朝にふさわしい讃美歌、“Sunday Service Choir”です。

 そして2つ目の映像です。こちらはケニー・G(Kenny G)のサックス🎷が見どころ、聴きどころです。2019年10月にリリースされたアルバム『Jesus Is King』収録楽曲「Use This Gospel」です。

 3つ目の映像はHBCUであるハワード大学(Howard University)で実施した“Sunday Service”。曲目は「Never Would Have Made It」です。

 4つ目は、2019年、デトロイトで開催した“Sunday Service”からのワンクリップです。

 最後に、2019年1月(カニエが“Sunday Service”シリーズを開始して初期の頃)に実施したものです。名盤『Graduation』から収録楽曲「I Wonder」です。

(文責及びキュレーティング:Jun Nishihara)

【速報】ケンドリック・ラマーの「The Heart Pt. 5」出た。

標題のとおりです。こちらです。
2017年にHIP-HOPの歴史を塗り替えることとなった史上非常に重要なHIP-HOP名盤アルバム『DAMN.』をリリースした時と同じく、ケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)は今回もアルバムリリースの前触れ(前兆)として「The Heart Pt.5」をリリースしました。

再生回数、話題沸騰、巷ではエラいことになってます。
この衝撃、あれから5年ぶり。久しぶり。

(文責:Jun Nishihara)

ここへ来てフューチャー(Future)のアルバム『I NEVER LIKED YOU』がリリース!

5月にニューアルバムをリリース予定のケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)へ告ぐ。
フューチャー(Future)が出したこのアルバム『I NEVER LIKED YOU』を聴いて、慄くが良い。このアルバムを凌ぐことは相当難しいぜよ。

と、若干挑戦的な出だしで始めてみました。

プッシャ・T(Pusha T)のアルバムの次はケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)のアルバムだな、と思っていた諸君。

あいだにフューチャー(Future)がぶち込まれてきました。しかも、今回、クオリティ、かなり高めです。

2曲、掲載しておきます。
この2曲だけでは、アルバム全体の良さが伝わらないかもしれない。
というくらい、質は高いです。

まずは、カニエ・ウェスト(Kanye West)をfeat.したこの楽曲 - 「KEEP IT BURNIN」です。
カニエのヴァースが狂気の沙汰。
何回、set it offいうんやと。
フューチャーのふざけたbankのところとかね。
完全に真剣にラップやってるやつらをあざ笑うが如くの余裕さで恰好良い。

先週金曜日(4/29)にオフィシャルミュージックビデオが出ました。

2曲目は雰囲気がガラッと変わって、バラード系を。
ドレイク(Drake)及び最近ドレイクのアルバム『Certified Lover Boy』でもfeat.されたナイジェリア出身のソウル・シンガー=テムス(Tems)をfeat.した楽曲「WAIT FOR U」です。

Future feat. Drake & Tems – 「WAIT FOR U」

おまけに、調子に乗ってもう1曲。

Future – 「LOVE YOU BETTER」

先日リリースされたPusha Tの『It’s Almost Dry』アルバムとは景色/毛色は全く異なりますが、いずれも、2022年トップ10に余裕で入るというアルバムがはやくも登場してしまいました。

益々、ケンドリックのアルバムが愉しみでなりません。

(文責:Jun Nishihara)

出ました、プッシャ・Tのニューアルバム『It’s Almost Dry』!

1曲目からファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)の怪しげなビートでスピットするプッシャ・T(Pusha T)です。

1曲目:Pusha T (prod. by Pharrell Williams) – “Brambleton”

2曲目も引き続きファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)のイカレたビートでスピットする同じくプッシャ・T(Pusha T)。

2曲目:Pusha T (prod. by Pharrell Williams) – “Let the Smokers Shine the Coupes”

大ボスが出現したシーンでかかりそうな音楽です。なんじゃこれは。

アルバム全体的に、ファレルとカニエのビートで創作されているという、なんとも贅沢な仕上がり。

●ファレル(Pharrell)が手掛けたビートの楽曲番号:1、2、4、8、9、11
●カニエ(Kanye)が手掛けたビートの楽曲番号:3、5、6、7、10、12

全楽曲12曲で構成されているアルバム中、丁度ファレルとカニエで半々(6曲)ずつ手分けしてプロデュースしたアルバムという構成です。

ファレルとカニエの音の違いを聴いてみるだけでもおもしろいアルバムですが、プッシャ・T(Pusha T)が描き出すイメージを想像して聴いてみるのも良いでしょう。

飛んで、こんどはカニエ・ウェスト(Kanye West)制作のビート、12曲目の「I Pray For You」を掲載しておきます。

(文責:Jun Nishihara)

2022年のNYアンセム、Fivio Foreign x Alicia Keys x Kanye West出る。

2022年のNYアンセムは、まだ2月であるにもかかわらず、早くもこれに決まりです。
ファイヴィオ・フォーリン(Fivio Foreign)、アリシア・キーズ(Alicia Keys)そしてカニエ・ウェスト(Kanye West)でコラボ作として発表した「City of Gods」。ミュージックビデオは未発表ですので、現時点では音源のみです。

途中、カニエがこう言い放ちます。
おっと、その前に、ファイヴィオがこう言います。
ブルックリン・ドリル(Brooklyn Drill)の威力を世界に知らしめた今は亡きポップ・スモーク(Pop Smoke)へ曲の冒頭でシャウトアウトを捧げます。

Pop was the king of New York, now I’m the nigga in charge
(NYのキングはポップ(・スモーク)だった、俺が後を継ぐ)

そしてカニエは自身のヴァースでこう言います。

Ayy, Fivi, excuse me, but this is the feature of the year
(エィ、ファイヴィ、すまん、これ、今年イチのフィーチャーだわ)

そして、これがその今年イチのフィーチャーです。

Fivio Foreign x Alicia Keys x Kanye West – “City of Gods”

(文責:Jun Nishihara)