第17位:ジャンルを超越したマック・ミラーの遺作アルバム『Circles』(2020年Hip-Hop名曲名場面ベスト30)

マック・ミラー(Mac Miller)が亡くなる直前までレコーディングに取り掛かっていたという最後の遺作アルバムが2020年1月にリリースされました。アルバム『Circles』です。これは生前2018年にリリースされた『Swimming』とあわせて三部作(trilogy)の一枚として制作されました。三作目は叶わなかったですが,アルバム『Swimming』と『Circles』の二作(ふた咲く)をあわせて「Swimming in Circles(円状を泳ぐ)」というコンセプトが思索されていたようです。

『Circles』に似たコンセプトのアルバムには,ヒップホップ史上最も偉大なるヒップホッププロデューサーと云われているジェイ・ディラ(J Dilla)の『Donuts』というアルバムがあります。これもまたJ Dillaが亡くなる3日前にリリースされたアルバム(2006年2月6日)です。

“Circles”や“Donuts”のように,ぐるぐると回り続ける,永遠に終わることのない“トリップ”を表現するものには,The Notorious B.I.G.の“Life After Death”(死後の生き様)というのもひとつ,別の観点から永遠を象徴するものでしょう。上記3名はもうこの世にはいませんが,偉大なるアルバムをとおして「永遠」の音楽を我々に贈り届けてくれた,といえるでしょう。

もうひとつ,マック・ミラーの遺作アルバム『Circles』で特筆すべきことは,収録されている楽曲のジャンルの幅が非常に広いということです。“ジャンルレス”,つまり,特定のジャンルに縛られることなく音楽を作り上げることに成功した偉大なるアルバムとも呼べます。

(文責:Jun Nishihara)

第30位:DaBabyのアルバム『BLAME IT ON BABY』(2020年Hip-Hop名曲名場面ベスト30)

いよいよ今年もこの時期になりました。
2020年を振り返ってのトップ30を発表していきます。

まずは第30位は,今年もイケイケであったこの人!ダベイビー(DaBaby)の登場です。アルバム『BLAME IT ON BABY』をリリースし,コロナ禍にも負けることなく2020年もノリノリでやってきたダベイビーです。

アルバムジャケはある意味2020年を象徴する「マスク」をしながらのダベイビー。時代を表しています。

このアルバム,収録楽曲の中でも特筆すべきトラックとしてアシャンティ(Ashanti)やミーガン・ジー・スタリオン(Megan Thee Stallion)をfeat.した「Nasty」を掲載いたします。

そして2020年6月28日に開催されたBET AWARDS 2020では,本年歴史的に重要な運動となった“Black Lives Matter”のシーンを取り入れたパフォーマンスをダベイビーが見せてくれました。下記に掲載しておきます。

(文責:Jun Nishihara)

アメリカ『BET』の歴史と重なるメアリーJブライジの音楽史に贈られた特別功労賞。

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(デビュー当時のMary J. Blige)

黒人音楽を聴くという習慣がついているものにとって,アメリカのBETというTVチェンネルは欠かせないものです。アメリカ黒人のカルチャーやファッション,音楽やミュージックビデオ等に関するあらゆる番組を一日中放映しているTVです。(BET=Black Entertainment TV)2000年代初期の頃にはまだまだBETよりもMTVという時流はありましたが,最近ではMTVと双璧をなすほどのクオリティとトレンド力をBETはつけてきたと思います。

MTVと同じくBETでも毎年「BET Music Awards」が開催されます。2001年から開催するようになり,今年で19年目です。

そのBET Music Awardsで今年開かされたAwards授賞式では,メアリー・J.ブライジ(Mary J. Blige)が素晴らしきステージパフォーマンスを見せてくれました。メアリーが活動を始めたのは1989年,BETが創設されたのは1980年,アメリカの全国版TVチャンネルとして認められたのは1983年でした。つまり,BETがアメリカ全土に放映されるようになって僅か6年後にメアリーのミュージックビデオはBETチャンネルで放映されるようになったのでした。

こうして四半世紀以上の黒人音楽史を,Mary J. Bligeとともに歩んできた米国BETチャンネルは,今年(2019年)のBET授賞式で彼女を特別に讃えることとしました。まさにその名に等しい「Lifetime Achievement Award(特別功労賞)」です。この特別功労賞は,黒人音楽の歴史において名を馳せるとともに,黒人音楽に長年の間貢献した偉大なる人物に贈られる賞です。過去に同賞を受賞した人物にホイットニー・ヒューストン(Whitney Houston),ジェイムス・ブラウン(James Brown),チャカ・カーン(Chaka Khan),プリンス(Prince),ダイアナ・ロス(Diana Ross)等,まさに偉大なる人物が並びます。

その偉大なる人物の中に,ついにMary J. Bligeも並ぶこととなりました。現代の世代のヒップホップアーティストでこの受賞者の欄に並ぶのは初めてです。「ヒップホップ」が初めてなんです。信じられないようで,ずっとヒップホップを聞いてきたものにとっては感慨深いものがあります。繰り返しますが,「功労賞」にヒップホップという音楽も入るようになったんです。今まで「若者の音楽」だと勝手に思ってきたヒップホップも「歳をとったものだなぁ」とこれを見て思いましたよ。あのダボダボのシャツとダボダボのパンツとベースボールキャップを被って腰を屈めてストリートを闊歩したいたナインティーズのヒップホップスタイルも,今や,小ぎれいに着飾って,ジュエリーなんかしちゃって,パンツもタイト,シャツもタイト,キャップも高価,もうかつての「土臭さ」はなくなりつつありますけれど,以下のメアリーのパフォーマンス映像では,ミーゴスもカーディBもリスペクトの目でメアリーを見る映像が映し出されます。この姿はMTVでは観られないんじゃないかなぁなんて思います。

そしてその同授賞式でのメアリーのステージがまた素晴らしかった。これです。

そして以下がメアリーが特別功労賞を受賞する際の模様です。

ヒップホップ・ソウルの歴史がまた1ページ,刻まれました。

(文責:Jun Nishihara)

ヒップホップ音楽とイスラム教の関係 (アルバム『Ye』のリリースから今年6月1日で1年を経たいま振り返る(その①))

本年6月1日で,カニエ・ウェストのアルバム『Ye』リリースから1年が経ちました。昨年のちょうど今頃,暑い夏が始まろうとしていた頃でした,同アルバムを当サイトで翻訳・対訳を掲載させていただき,いろいろな方々に読んで頂きました。当サイトにお越しいただき,読んでいただき,ありがとうございました。そして今日もここに来ていただき,ありがとうございます。

リリースから1年後の今,アルバム『Ye』を振り返って,カニエがアルバム冒頭の楽曲「I Thought About Killing You」でラップしている歌詞の一部について,注目しておきたいと思います。

カニエはこういう歌詞で曲を始めております。

[Verse: Kanye West]
I called up my loved ones, I called up my cousins
I called up the Muslims, said I’m ’bout to go dumb
Get so bright, it’s no sun, get so loud, I hear none
Screamed so loud, got no lungs, hurt so bad, I go numb
Time to bring in the drums, that prrt-pu-pu-pum
Set the NewTone on ’em, set the nuke off on ’em
I need coke with no rum, I taste coke on her tongue
I don’t joke with no one, they’ll say he die so young
I done had a bad case of too many bad days
Got too many bad traits, used the floor for ashtrays
I don’t do shit halfway, I’ma clear the cache

(ヴァース:カニエ・ウェスト)
愛する人たちに,親戚兄弟に,ムスリムの仲間たちに
電話してこう伝えた,「ついに俺,暴れちゃいそう」
まぶしくなって,太陽は沈んだ,爆音で,音は消えた
悲鳴をあげた,声は出ない,傷ついた,感覚は麻痺した
叩いて響かせろ,太鼓の音を,ダ・ダ・ダ・ダン・ダン
オートチューンを効かせて,ピッチを爆発させろ
ラム無しのコーラ,彼女の舌にコカの味
ふざけてんじゃない,よく言われるよ,「早死にするよ」って
ツイてない日が連続で起こったケースが俺
悪い癖がありすぎて,床を灰皿代わりにしたりして
中途半端なことはしたくない,すべて真っさらにしてやりたい
(対訳:Jun Nishihara)

曲の冒頭でカニエは「I called up my loved ones / I called up my cousins / I called up the Muslims(俺は愛する人たち,親戚兄弟,そしてムスリムの仲間たちに電話してこう伝えた)」と言っております。

ムスリムとはイスラム教の教えを信仰する教徒の人々のことですが,カニエ・ウェストにとって,そしてヒップホップ,はたまた黒人の歴史にとって,イスラム教は切っても切れない一つの宗教といいますか思想でした。アメリカに住む黒人が信仰するイスラム教は一般的にブラック・イスラーム(Black Islam)と呼ばれているものですが,どういう宗派があって,ヒップホップ・アーティストでは誰がそのイスラム教徒で,どういう教えで,なぜ彼らはイスラム教徒に改宗したのか,というのを簡単にひもといていきたいと思います。

カニエ・ウェストの周辺では,カニエと同郷出身でむかしからともに活動してきたラッパーのモス・デフ(Mos Def)がカニエに一番近いムスリム(イスラム教徒)といえるでしょう。

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(上記写真はモス・デフです。)

モス・デフは2011年9月に自身の名前を法的に「Yasiin Bey(ヤシーン・ベイ)」に改名し,2016年1月19日,カニエ・ウェストのホームページでヒップホップ業界からの引退宣言をしました。モス・デフ改めヤシーン・ベイは,母親シェロン・スミスと父親アブドゥル・ラフマーンの子です。父親アブドゥル・ラフマーンはネーション・オヴ・イスラーム(Nation of Islam(略してNOI))の信者で,ワリス・ディーン・ムハンマドというスンニ派(イスラム教徒の宗派)に信徒として仕えました。モス・デフは20代の頃,ア・トライブ・コールド・クエスト(A Tribe Called Quest)という偉大なるヒップホップ・グループのメンバーでありイスラム教徒であるアリ・シャヒード・ムハンマドやQティップ(Q-Tip)とよくつるんでいました。

また,カニエと同郷シカゴ出身ですが,カニエよりも若い世代のルーペ・フィアスコ(Lupe Fiasco)もムスリムです。

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(上記写真はルーペ・フィアスコです。)

ジェイZのレーベル=ロック・ネーション(Roc Nation)に所属しているヒップホップ・アーティスト=ジェイ・エレクトロニカ(Jay Electronica)も熱心なイスラム教徒です。彼の歌詞には,「神の平和を」を意味するムスリム同士の挨拶言葉「As-salāmu ʿalaykum(السَّلَامُ عَلَيْكُمْ)」がよく使われております。以下は,ジェイ・エレクトロニカの名曲「Exhibit C」ですが,以下YouTubeのタイムライン3:11~3:17の箇所で,アラビア語らしきイスラームの祈りの言葉が発せられております。

上記曲「Exhibit C」のプロデューサーはかの有名なジャスト・ブレイズです。ジェイZの名盤『The Blueprint』(2011年9月11日(9.11の日)にリリース)でカニエ・ウェストと双璧をなしたベテラン・プロデューサーです。ビヨンセのアルバム『レモネード(Lemonade)』に収録されているケンドリック・ラマーをfeat.した楽曲「Freedom」も,ジャスト・ブレイズがプロデューサーを務めております。

さて,話を戻しますと,このようにヒップホップ界にはイスラム教徒はめずらしくなく,他にも以下のとおり結構な数でイスラム教徒と呼ばれるヒップホップアーティストはいます。一部を挙げますと,T-ペイン,DJキャレド,バスタ・ライムス,SZA(最近ポップ界でも人気の女性歌手),スウィズ・ビーツ,MCレン,ケヴィン・ゲイツ,アイス・キューブ,フレンチ・モンタナ,フリーウェイ,ビッグ・ダディ・ケイン,ビーニー・シーゲル,エイコン,スカーフェイス,シェック・ウェス,ニプシー・ハッスルです。彼らの多くは,モス・デフの父親と同じく,ネーション・オヴ・イスラーム(NOI)を中心に信仰しているようですが,各アーティストによっては,どれくらい信仰しているかについての程度の差はあると思います。

ブラック・イスラームにおけるネーション・オヴ・イスラームという宗派は,どういった教えなのでしょうか。大きくわけて3つのことがいえるそうです。

1.伝統的イスラームの教えと同じくイスラム教の五行は基本的に信じているが(例えば「ラマダンの月には断食を行う」(夕刻のイフタールまでご飯を食べないし,水も飲まない。しかし最近は,パキスタンやアフガニスタン,イラクなど,酷暑の夏には水分を取らないのは危険なため,水だけは許されている国もあるそうです。)など)しかし,解釈の面で伝統的イスラームと相違している部分もある。

2.堕落した人生を送っている黒人を救うとする。(街角や監獄で,未来への希望も夢もなく時を過ごしている黒人たちや,麻薬,白人女性に対するレイプ,家庭崩壊などといったような(黒人として)誇るべき生き方でない道を歩んでいる者を救うとする。)

3.イライジャ・ムハンマドを使徒とする。(2019年時点の指導者はルイス・ファラカーンであるが,指導者は時代によって変われど,使徒(Messenger)であるイライジャ・ムハンマドは変わらない(注:NOIが解体しない限り。))ちなみに,預言者(Prophet)は伝統的イスラームもNOIも,ムハンマドであると信じる。

さて,こうしたネーション・オヴ・イスラームという黒人を対象とした特有のイスラム教のひとつの思想に,ブラック・ムスリムであるモス・デフやルーペ・フィアスコ,ジェイ・エレクトロニカは,どういうところに魅了されたのでしょか。

この続きは,後日,ひもといて参ります。

(文責:Jun Nishihara)

番組『Hip-Hop Evolution』の紹介

いまNetflixでおもしろいのがやっています。ヒップホップの進化をたどっていく番組です。ヒップホップの誕生から,現在のヒップホップまで,どういう経緯をたどって進化してきたか。また,ヒップホップの「もと」となった音楽は何だったか。どういう影響を受けたか。そして,どういう影響を与えてきたか。誰が始めたか。そこへヒップホップ界の大御所のインタヴューを流し,かなり完成度の高いドキュメンタリー番組となっています。『Hip-Hop Evolution』という名前の番組です。これはエピソードもので,現在(2018年11月時点で)「エピソード8」まで進んでいます。

ヒップホップの生みの親は,DJ Kool Herc,Afrika Bambaataa, Grandmaster Flashの3名と言われています。彼らが1970年代,場所はニューヨークのサウス・ブロンクスという場所で,ヒップホップの基盤を築き上げました。

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しかし,70年代にヒップホップが生まれるよりもずっと前に,別のジャンルの音楽で,ヒップホップに種を植え付けた人間がいます。ヒップホップという名がまだ存在していなかった頃です。それがジェームス・ブラウン(James Brown)でした。

ジェームス・ブラウンの名盤に『The Payback』(ザ・ペイバック)というアルバムがあります。本日は,その中に収録されている楽曲「Time Is Running Out Fast」を紹介します。

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James Brown – “Time Is Running Out Fast”

Ba, ba, ba, da, da, ah
Ba, da, ba, ah, ba, ba
Ba, ba, ba, be, de, ba
Go on now!

バ バ バ バ ダ ダ アー
バ ダ バ アー バ バ
バ バ バ ビー ディー バ
そらいくぜ!

Ba, da, ba, da, be, de
Ba, da, ah, ah
Be, de, da, ba, ba
Yeah
Ba, ba, ba, da, da

バ ダ バ ダ ビー ディー
バ ダ アー アー
ビー ディー ダ バ バ
イヤー
バ バ バ ダ ダ

Here, here, here, here
Yeah, yeah, yeah, here
Here, here, here, here, here
Here, here, here, here, here
Here, here, here, here, here
Here, here, here, here, here
Here, here, here, here
Here, here, here, here, here
Here, here, here, here, here
Here, here, here, here, huh
Here, here, here, here, here
Here, here, here, agh, whoa

ほら ほら ほら ほら
イヤー イヤー イヤー ほら
ほら ほら ほら ほら ほら
ほら ほら ほら ほら ほら
ほら ほら ほら ほら ほら
ほら ほら ほら ほら ほら
ほら ほら ほら ほら
ほら ほら ほら ほら ほら
ほら ほら ほら ほら ほら
ほら ほら ほら ほら ほら
ほら ほら ほら ほら ほら

Yeah, yeah, yeah, yeah, yeah
Yeah, yeah, yeah, yeah, yeah
Yeah, yeah, yeah, yeah, yeah
Yeah, yeah, yeah, yeah, yeah
Yeah, wah, ho, yeah
Yeah, yeah, yeah, yeah, yeah

イヤー イヤー イヤー イヤー イヤー
イヤー イヤー イヤー イヤー イヤー
イヤー イヤー イヤー イヤー イヤー
イヤー イヤー イヤー イヤー イヤー
イヤー ワー ええか イヤー
イイェアー イヤー イヤー イヤー イヤー

Oh, oh, oh, oh, oh, oh
Oh, oh, oh, oh, oh, oh
Oh, oh, oh, oh, oh, whoa
Whoa, whoa
Oh, oh, oh, oh, oh, oh
Oh, oh, oh, oh, oh, oh
Oh, oh, oh, oh, oh, oh
Here man, here man, man

オゥ オゥ オゥ オゥ オゥ オゥ
オゥ オゥ オゥ オゥ オゥ オゥ
オゥ オゥ オゥ オゥ オゥ ウォゥ
ウォゥ ウォゥ
オゥ オゥ オゥ オゥ オゥ オゥ
オゥ オゥ オゥ オゥ オゥ オゥ
オゥ オゥ オゥ オゥ オゥ オゥ
ほらよメーン ほらよメーン メーン

La, la, la, la, la, la, la, la
La, la, la, la, la, la, la, la
La, la, la, la, la, la, la, la
I’m a leader and I can do it
I’m a believer

ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ
ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ
ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ
俺がリーダー やったるで
信じとるで

Ku, da, da, ku, da, da
Ku, da, da, ku, da, da
Ku, da, ba, da, ba, da, da
Ku, da, da, ba, ba
Ku, ba, da, da, da
La, la, la, la, la, la
Ku, ba, da, ku, ba, da, da
Da ba, da, de, da, da

ク ダ ダ ク ダ ダ
ク ダ ダ ク ダ ダ
ク ダ バ ダ バ ダ バ
ク ダ ダ バ バ
ラ ラ ラ ラ ラ ラ
ク バ ダ ク バ ダ ダ
ダ バ ダ ディー ダ ダ

Abo, jabba, jabba, abo
Ha, ha, abo, ha, ha
Jabba, ba, ha, jabbam ba, ha
Jabba, ba, ba, ba, ha, do
Do, do, do, do, do, do
Yo, go, go, go, go, go
Mi, bak, ya see you are
Ba, da, de, de, da
Ba, da, de, da
Ba, da, da, ba, da, da
Da, da, da, da
Da, da, da, da

アボ ジャバ ジャバ アボ
ハッ ハッ アボ ハッ ハッ
ジャバ バ ハッ ジャバム バ ハッ
ジャバ バ バ バ ハッ ドゥ
ドゥ ドゥ ドゥ ドゥ ドゥ ドゥ
ヨゥ ゴー ゴー ゴー ゴー ゴー
もどってきたぜ そや ほらそこや
バ ダ ディー ディー ダ
バ ダ ディー ダ
バ ダ ダ バ ダ ダ
ダ ダ ダ ダ
ダ ダ ダ ダ

Gee, la, la, la, la
(Come on, come on, come on)
Gee, la, la, la, la
(Come on, come on, come on)
Gee, la, la, la, la
(Come on, come on your right)
Your a leader
(That’s what I’m talking about)
La, la, la, la
(Opportunity there when you gonna fight)
Man blow your damn horn

ジー ラ ラ ラ ラ
(カモン,カモン,カモン)
ジー ラ ラ ラ ラ
(カモン,カモン,カモン)
ジー ラ ラ ラ ラ
(カモン,カモン そのとおりや)
リーダーはおまえ
(そういうことや)
ラ ラ ラ ラ
(チャンスはそこにある,掴みに行け)
メーン おまえのイイとこ見せてやれ

Blow your big fat horn
Blow your big fat horn
Blow your big fat horn
Blow your big fat horn
Blow your big fat horn
Blow your big fat horn
Blow your big fat horn
Blow your big fat horn
Blow your big fat horn
Blow your big fat horn

その図太いラッパ,吹いてやれ
おまえの図太いラッパ,吹いてやれ
その図太いラッパ,吹いてやれ
おまえの図太いラッパ,吹いてやれ
その図太いラッパ,吹いてやれ
おまえの図太いラッパ,吹いてやれ
その図太いラッパ,吹いてやれ
おまえの図太いラッパ,吹いてやれ
その図太いラッパ,吹いてやれ
おまえの図太いラッパ,吹いてやれ

(文責:Jun Nishihara)

ヒップホップ歌詞引用解説:2ライヴ・クルー「Me So Horny」の場合。

ヒップホップの風物詩といえば,「お尻」と「女性」ですね。とくに「お尻」をフリフリする「女性」が出ているミュージックビデオが新旧問わず,どこでも流れています。「お尻」と「女性」を前面に出しているミュージックビデオを思いつくかぎり以下10個挙げてみます。

1.ネリー      「Tip Drill」
2.リュダクリス   「Pussy Poppin’」
3.レイ・シュリマー 「Shake It fast」
4.ヤングM.A    「Petty Wap」
5.トリーナ     「Damn」
6.フレンチ・モンタナ「Pop That」
7.イギー・アゼリア 「Kream」
8.タイガ      「Taste」
9.イン・ヤン・ツインズ「Salt Shaker」
10.69ボーイズ  「Tootsee Roll」

さて,今回紹介しますのは,1989年にリリースされた2ライヴ・クルーの名盤『As Nasty As They Wanna Be』アルバムからシングル曲としてカットされた「Me So Horny」という曲です。当時このアルバムは卑猥すぎる,歌詞は過激すぎる,ということで,2ライヴ・クルーの出身地=フロリダ州の州政府が「わいせつ罪」で訴え,逮捕しました。裁判は1990年に行われ,2年後の1992年に上級審が下級審の判決を却下し,リリースから3年の時を経て,無事,2ライヴ・クルーの名は晴れて,アルバムは市場に出回ることになりました。このアルバムは音楽の歴史で,史上初「わいせつ罪」をふっかけられたアルバムとして,名を残す大切なアルバムです。

ジャケ写真は以下のとおりです。

MI0004358506

これは卑猥すぎるということで,「お尻」を隠したアルバムジャケも出回りました。
まさに「クリーン版」ということですが,それがこのジャケです。

As-Clean-As-They-Wanna-BenÇóCleannÇó-2-Live-Crew

「お尻」はうまく隠れていますが,余計に想像力が掻き立てられますね。

さて,この伝説のアルバムからシングルカットされた「Me So Horny」から,このヴァースを取り上げます。

Sitting at home with my dick on hard
So I got the black book for a freak to call
Picked up the telephone, then dialed the 7 digits
Said, “Yo, this Marquis, baby! Are you down with it?”
I arrived at her house, knocked on the door
Not having no idea of what the night had in store
I’m like a dog in heat, a freak without warning
I have an appetite for sex, cause me so horny

おうちでまったり,アソコは勃起
電話帳とってきて,エッチな女に電話した
受話器をあげて,カノジョの番号,ダイアルした
「もしもし,オレだオレ,マーキスだ,ベイビー,今夜エエか?」
カノジョの家着いて,玄関ノックした
期待はふくらみ,気分はウキウキ
まるで発情した狂犬,イカれた変態野郎
性欲止まんない,気分はムラムラ,たまんない
(訳:Jun Nishihara)

さて,マジメな話に戻しますと,2ライヴ・クルーはその後も名曲をずらずらと残しています。YouTubeやウィキペディアで検索してみると面白いかもしれません。

彼らがデビューしたのは1984年,「The Revelation」という曲をファーストシングルとしてリリースしました。創始メンバーの中には,世界で初めてのアジア系ラッパーと言われているフレッシュ・キッド・アイスもいました。残念ながら彼は昨年2017年7月に人間界を去りましたが,彼の遺した偉大なる遺産(レガシー)は後のマイアミ出身のラッパー達=Trick Daddy, DJ Khaled達に受け継がれていくこととなりました。

それを最もうまく表現しているのが,フロリダ出身で女性ラッパーのトリーナです。トリーナ自身もミュージックビデオでお尻をフリフリしておりますが,彼女こそが2ライヴ・クルーに認められたSlip-N-Slideレーベルの初女性アーティストです。Trina feat. Trick Daddy – “Pull Over”を検索してみてください。

話は少し逸れますが,女性ラッパーというと最近,特に増えてきました。そういう数多の女性ラッパーがいる中で,唯一昔っっっからヒップホップシーンを席巻し続け,いまだに現役というラッパーは,リル・キムではなく,トリーナですね。しかしながら,リル・キムがヒップホップの世界に与えた影響は計り知れないものですが,トリーナの「静か」な安定感については,そうそう右に出るものはいないと思います。

ニッキー・ミナージュ以降にデビューした女性ラッパーは除外して,それ以前にいた,リル・キム,ミッシー・エリオット,ローリン・ヒル,フォクシー・ブラウン,クイーン・ラティーファ,MCライト,イーヴ,レミー・マー,ダ・ブラット・・・といる中で,唯一今もアルバムやミックステープを出し続けているのはトリーナくらいだと思います。ウィキペディア情報では,トリーナは2010年以降はアルバムをリリースしていないことになっておりますが,2011年に『Diamonds Are Forever』,2012年に『Back 2 Business』,2014年に『Incredible』,2015年に『Trina EP』,2016年に『Dynasty 6』というEPを含むミックステープをリリースしています。そして今年2018年にはアルバム『The One』をリリースする予定です。

フロリダ州マイアミつながりで,2ライヴ・クルーからトリーナの話へと移行しましたが,「お尻」と「女性」というヒップホップ風物詩は,30年前の1988年でも,現代のミュージックビデオでも健在です。

こうして「今」のヒップホップに多大なる影響を与え続けているラッパー達=2ライヴ・クルーを是非,覚えておいてください,そしてご自身でもいろいろなところで探してみてください。LPレコード店等に行くと,掘り出し物のLP盤が見つかったりします。

(文責:Jun Nishihara)