ブラック・ロブの「ウォゥ!」なゲットー・ラップ。

今からおおよそ11年前,2000年2月15日に「Whoa!(ウォゥ!)」というゴテゴテのゲットー系ヒップホップ曲がリリースされた当時,この曲を耳にして,内側の五臓六腑を抉り出し,暴動にでも飛び出したくなるような相当キケンな匂いがする曲のように感じたのを憶えている。

この曲「Whoa!」はパフ・ダディ(改めP. Diddy改めDiddy)が指揮を執るバッド・ボーイ・レコーズ(Bad Boy Records)に所属するブラック・ロブ(Black Rob)の曲である。

これはいわゆる小ぎれいでナーディなヒップホップを生み出したカニエ・ウェストが登場する「カニエ以前」の時代のヒップホップである。まさに,汚らしく美しい“庶民の”ゲットー・ラップを反映し,しかもそこへパフ・ダディ節を根底に流したゴテゴテのヒップホップ曲であった。

当時,ゲットー出身の連中はこの曲に共鳴し,ストリートに於いて爆音で流した。

イルなもん見たらその時は叫べ「ウォゥ!」。アップタウンのイケイケ女見たとき叫んだぜ「ウォゥ!」。ダイヤとパールでまとった女「ウォゥ!」。腕にかざしたアイス(=ジュエリー)見ろよ「ウォゥ!」。カネは問題じゃねぇ,いくらでも積んだるぜ「ウォゥ!」。おまえらの動きにかけたるぜ急ブレーキ「ウォゥ!」。俺ら野郎たちはドウ(金)儲けて,ドロー(ハッパ)焚いて,ニトロ飛ばして,フロウかまして,かっこよくキメてヨゥ,ウォゥ!っていう内容の曲です。

そのブラック・ロブ(Black Rob)が先日,2021年4月17日にこの世を去りました。その前々週4月9日に伝説の男DMXが亡くなったばかりでした。二人であの世でヒップホップ曲を爆音で響かせ,同郷NY出身のビギーらとともに暴れてるに相違ないでしょう。

その「ウォゥ!」を以下に掲載しておきます。本物のヒップホップっちゅうもんはこういうもんだったというのを未来の世代の野郎どもへ,時々,思い出すようにしてくれや。

(文責:Jun Nishihara)