第16位「チャイルディッシュ・ガンビーノの”This Is America”か,もしくはジョイナー・ルーカスの”I’m Not Racist”」。(今年2018年に出た最も偉大なるヒップホップ曲ランキング)

2018年総まとめヒップホップ曲ランキング《トップ30》の第16位をどの曲にするか検討するにあたり,今年全米に最も物議を醸し出した曲を2つ選びました。それが以下の2曲でした。

1.Childish Gambino – “This Is America”
もしくは,
2.Joyner Lucas – “I’m Not Racist”

1つは,現代全米に蔓延る銃問題。白人の警察官が黒人の若者を銃殺するという事件が増えているという事実にとどまらず,白人同士でも黒人同士でも,アメリカ中で銃問題が現在,大問題となっております。それを音楽や映像という媒体をとおして,ここまで過激なミュージックビデオに仕上げているチャイルディッシュ・ガンビーノの芸術性に脱帽しますが,それはさておき,近代のアメリカ史で,ここまで銃を使った犯罪が大きく問題になっている時期は無かったでしょう。

2つは,現代全米に蔓延る人種問題。ジョイナー・ルーカスは黒人アーティストですが,ミュージックビデオに白人を起用し,白人の目線からの「言い分」と,セカンド・ヴァースには黒人の目線からの「言い分」を両方載せています。白人の言い分は,黒人は自分らが差別されていることを大昔の奴隷時代のことをいまだに持ち出してきて,それを理由(言い訳)にして,だらしない生活を送っているだけ,そんな大昔のことを言い訳にせずに,ちゃんと真面目に働けば,貧困を抜け出すこともできるし,ちゃんとした生活を送ることもできるし,「白人のせいにする」こともないだろう,と言っております。逆に黒人の言い分としては,奴隷制度は大昔の歴史であるものの,現代に生きている自分たちにはその影響はあるんだ,と。おばあちゃんやおじいちゃんが経てきた苦しみは,現代の黒人の俺たちに受け継がれているんだ,と。とりわけ「Nigga」という言葉は,黒人の我々を抑制するために,「白人が作り出した単語」であるのだ,と。けっきょくいまだにこの国(アメリカ)は白人が支配しているもの。黒人が職を見つけようと面接とかやっても,面接やテストが通ることはない。けっきょくは肌の色で判断されているんだ,と。だからドラッグを売りさばいて,子供のために金を稼ぐしかないんだ,と。しかも,最近は黒人がクールだと勝手に解釈して,黒人の真似している白人の若者ども,おまえらには「黒人の生き様(カルチャー)」なんて分かってたまるか,と。この国(アメリカ)には「システム化された糞人種差別(systematic racism bullshit)」がある,と。

ちなみにこのジョイナー・ルーカスの「I’m Not Racist」は来年(2019年)のグラミー賞に先日ノミネートされたばかりです。

ということで,第16位は,Childish Gambinoの「This Is America」及びJoyner Lucasの「I’m Not Racist」の両方,ということで締めくくりたいと思います。

現代のアメリカにとって最も必要である会話は,この2つの楽曲から生まれる会話である,と言っても過言では無いでしょう。

最後に,この2つの楽曲のミュージックビデオを記載しておきます。

今年ヒップホップ第16位:Childish Gambino – “This Is America”

今年ヒップホップ第16位(タイ):Joyner Lucas – “I’m Not Racist”

追記:黒人のJoyner Lucasのセリフを口パクで完璧に真似た白人男性に拍手。

(文責:Jun Nishihara)