ロバート・グラスパーの“Black Radio”シリーズの第三弾『Black Radio III』リリース。

『Black Radio III』のリリース前に米NBC局の「The Tonight Show Starring Jimmy Fallon」でロバート・グラスパー(Robert Glasper)と仲間たちがシングル曲「Black Superhero」をお披露目しました。

Robert Glasper feat. Rapsody, BJ the Chicago Kid, Amir Sulaiman, DJ Jazzy Jeff

上記ライヴの冒頭で重要と思われるワンセンテンスのみ、訳しておきます。
アルバムの冒頭でもこのセンテンスが繰り返し出てきます。本アルバムを聴くにあたって理解しておくべき1文です。

We don’t play music / We pray music

音楽は遊びではなかった、音楽は祈りだった

過去形に訳すか、現在形で訳すかは、同文が語られるコンテキストに拠るのですが、つまり、この1文は「現代アメリカで黒人が差別的に殺されるという現実」に始まり、500年以上続いた奴隷制度まで遡り、トウモロコシ畑で過酷労働を強いられていた私たちの先祖が「歌ってきた」音楽は「決して遊びではなく、あれは私たちにとって「祈り」であった」、というコンテキストで語られているものです。「あの音楽は私たちにとって何であったのか」を事後的に得心した(もしくは奴隷として亡くなっていった先祖たちの魂が往生できるように納得させた)きわめて核心的なところに触れた1文であると思料いたします。これは、本アルバムを聴くにあたって重要な部分であるので、まずは訳しておこうと思った次第です。

さて、アルバムから収録楽曲を3曲、掲載しておきます。

“Better Than I Imaginged” by Robert Glasper feat. H.E.R., Meshell Ndegeocello

“Everybody Wants To Rule The World” by Robert Glasper feat. Lalah Hathaway, Common

“Forever” by Robert Glasper feat. PJ Morton, India.Arie

(文責及びキュレーティング:Jun Nishihara)

オーラヴル・アルナルズ(Ólafur Arnalds)の2021年「冬至」の日に捧げるパフォーマンス。

本日は少し毛色を変えて、アイスランドの作曲家・演奏家であるオーラヴル・アルナルズ(Ólafur Arnalds)が2021年12月21日(冬至の日)に捧げた演奏を下記のとおり掲載しておきます。彼はこう云います。

To celebrate the winter solstice this year we decided to try something a little different. Sunrise Session II features my friend Josin on vocals and 13 wonderful musicians from the Reykjavík Recording Orchestra.

On this shortest day of the year, this is our tribute to brighter days ahead and I truly hope you enjoy it.

今年の冬至を祝福するため、少し変わったことをしようと考えました。私の友人であるジョシン(Josin)をヴォーカリストに、そしてレイキャビク・レコーディング・オーケストラより素晴らしき13名の演奏家を迎えて「Sunrise Session II」を開催します。

この1年で最も短いといわれる冬至の日に、この演奏を、さらに素敵な未来のために捧げます。たのしんでいただけることを祈ります。

(文責:Jun Nishihara)

第28位:A Boogie wit da Hoodieのアルバム『Artist 2.0』(2020年Hip-Hop名曲名場面ベスト30

2020年の第28位は,全米ビルボードで第2位を獲得し,1年以内に50万枚以上を既に売り上げているというヒット・アルバム『Artist 2.0』です。アルバムジャケがなかなか記憶に残る,ヒップホップではめずらしい,ファンタジー掛かった演出ですね。

もはやこのアルバムジャケを見るだけでは果たしてヒップホップのアルバムなのか,イギリスのファンタジー映画クエスト・オブ・キング的な映画のプロモなのか,分からないという風に,アルバムジャケからして,これまでのHIP-HOPではめずらしく,興味深い作品に仕上がっています。

たとえば収録楽曲には「Cinderella Story(シンデレラ・ストーリー)」なんていう曲もあります。

調子に乗って「Thug Love(サグ・ラヴ)」も掲載しておきます。

(文責:Jun Nishihara)

【グローバル・ゴール:Unite For Our Future】コンサート開催

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本年6月27日(日)に開催された「グローバル・ゴール:Unite For Our Future」の模様を以下に掲載しておきます。今般,グローバル・シチズンと欧州委員会により本件コンサートの開催は6月22日に正式発表され,27日に開催されたものです。番組進行役はザ・ロックとして知られるドウェイン・ジョンソン(Dwayne “The Rock” Johnson)です。タイムライン03:18でもザ・ロックが話すように,今回のテーマは5つあります。新型コロナウイルスと米国を中心に世界に波及する構造的な人種差別,それによって影響を受ける経済,そして全世界の人々(=global citizen)の健康,そして生活。これら5つのテーマを掲げ,今般「Global Goal: Unite For Our Future」が開催されました。

(文責:Jun Nishihara)

米公共ラジオ局(NPR)主宰“Tiny Desk Concert”で取り上げられた黒人女子シンガー抜粋(その①)

初回は米国黒人女性シンガーを代表するこの2人です。

一人目はレイラ・ハサウェイ(Lalah Hathaway)。シカゴ出身のソウル・シンガー。女声の「アルト」の音域で歌う歌手として知られます。下記映像を観ていただくとわかると思いますが,かなり低い音程です。1990年にデビューし,既に6枚の公式アルバムをリリース。下記“Tiny Desk Concert”では楽曲セットリスト「Change Ya Life」「Boston」「Honestly」の順で歌います。

二人目はエリカ・バドゥ(Erykah Badu)。黒人音楽史上,非常に重要な奇才(鬼才)でありますため,紹介は不要でしょう。まぁ,この世の人物とは呼べない出立(いでたち)ですね。エリカは昔っからその奇才ぶりを発揮しておりました。その奇才ぶりはデビューアルバム『Baduism』を聴いて頂ければ分かると思いますが,最初っからこれまでのR&B界を覆す程のエネルギーを保持しておりました。公式デビューは1997年。同アルバム『Baduism』は後に「1976年以降リリースされた最も重要な261枚のアルバム」の内の1枚として称されることとなります。

レイラ・ハサウェイとエリカ・バドゥという同じソウルをやっていても,毛色が全く異なる二名は両名とも,音楽の歴史上,外せない人物です。

本日はいきなりの高レベルでした。歴史的な二名を取り上げましたが,レイラもエリカも,メジャーどころの曲を今回まったく披露していないのは,それもNPR主宰のこのミニセッションの醍醐味であります。

さて,今回は超ベテランのおふたりを取り上げましたが,次回は,まだまだ若手の黒人女子シンガーふたりを取り上げます。

(文責及びキュレーション:Jun Nishihara)

ドレイクに影響を与え,そして影響を受けた,UKの黒人音楽シーン(その②)

UKの黒人音楽シーンに出現した若手シンガー女子2名=エラ・メイ(Ella Mai)とマハリア(Mahalia)が並んで映ると,まさに姉妹のように映る,そんな映像が流れるのが2019年9月にリリースされたミュージックビデオ「What You Did」です。二人ともUK出身。エラ・メイはジャマイカ人の母親と,アイルランド出身の父親の混血。マハリアは,英国ミッドランド東部に位置するレスターシャーの生まれ。同じくジャマイカ人の母親と,アイルランド出身の父親の混血。やっぱり二人とも,姉妹?!

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「What You Did」のミュージックビデオはこちらです。

Mahalia feat. Ella Mai – “What You Did”

キャムロン(Cam’ron)好きの私は,すぐにこの曲が好きになりました。
(キャムロンについては,コチラを読んでみてください。)

なぜこれがキャムロン好きにはタマらん曲なのか,と言えば,マハリアのこの楽曲「What You Did」のビートは,まさに以下のキャムロンの2002年4月リリースのシングル曲をサンプリングしているからです。

Cam’ron – “Oh Boy”(2002年4月リリース)ディップ・ディップ・セッセッ!!

なお,知ってました?この「オゥ・ボーイ・ビート」は以下の曲でマライア・キャリー(Mariah Carey)もサンプリングします。

Mariah Carey feat. Cam’Ron – “Boy (I Need You)”

さて,話を戻しますと,エラ・メイはシングル曲「Boo’d Up」で2018年に全世界を席巻し,売り上げは米国のみで500万枚セールス,カナダや英国での売り上げを合わせますと,合計600万枚以上。2018年のビルボードチャートを総ナメする勢いにまで発展しました。

他方,マハリアはその間,UKの音楽シーン,とりわけアンダーグラウンド・シーンでグツグツと人気を温存してきており,2019年9月にアルバム『Love and Compromise』をリリースし,同アルバムは英国R&Bアルバムランキングに於いて第3位を記録しました。

この生粋のUK生まれの二人は,冒頭のシングル曲「What You Did」でコラボレーションしたわけですけれども,楽曲に起用されている元ネタ・ビート「Oh Boy」を世に出した張本人であるキャムロン自身を迎えたというREMIXヴァージョンも今年リリースされました。2002年に出たキャムロンのビートをサンプリングとして使い,そして18年後の2020年に,キャムロン自身をREMIXに迎えた!という大胆な手法で,以下REMIXをリリースしたものです。

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ちなみに,マハリアが上記写真でまとっている緑色の毛皮は,2002年にキャムロンがピンクの毛皮をまとって撮った以下の写真をオマージュとしております。これは2002年当時,キャムロンがヒップホップ界随一のピンク色好きということで有名で,クルマもピンク,ダボダボのシャツもピンク,毛皮もピンクという出立(いでたち)で,ヒップホップ界では当時このピンク色を「Cam’ron Pink(キャムロン・ピンク)」と呼ぶようにまでなり,当時かなり話題になりました。ゴテゴテのヒップホップ野郎でもピンク色のシャツを着てもいいんだ,と,NYの若者はそのカラーを真似するようになり,ついにヒップホップ・ファッション界にまで影響を及ぼすこととなりました。

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さて,そのキャムロン張本人を迎えてリリースしたREMIXヴァージョンがこちらです。

Mahalia feat. Cam’ron & Ella Mai – “What You Did (REMIX)”

(文責:Jun Nishihara)

楽曲(17)対訳「Paradise」(カニエ・ウェスト率いるSunday Serviceのニューアルバム『Jesus Is Born』より)

楽曲(17)「Paradise」対訳
(カニエ・ウェスト率いるSunday Serviceのニューアルバム『Jesus Is Born』より。カニエ自身のアルバム『Jesus Is King』の対訳については,こちらをどうぞ。)

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[Refrain]
Woke up today feeling Godly
Glad to be part of God’s body
Lord, you’re welcome en mi casa
Heaven’s gon’ be one big ol’ party
Thankful for all we’ve been given
You always take care of Your children
Every single moment we lift Him up
All of God’s people stay winnin’

(リフレイン)
今朝目覚めて,神聖な気分がした
神の身の一部であることに喜びを感じる
神よ,あなたを私の家にお迎えします
天(ヘヴン)はアゲアゲの巨大なパーティー
与えられているものすべてにありがたみを感じ
神は,神の子である我々をよく可愛がってくれる
どんな時も,我々は神を空高く持ち上げる
神の子全員,どんな時も負けるわけがない

[Chorus]
Oh, we knew life would be alright
But who could have known it’d be this good?
Oh, Lord
It gets better, better, better, better
Give your life to Christ, he’ll give you paradise

(サビ)
オゥ,人生うまくいくって気がしてた
でも誰が想像した? ここまで良いものになるなんて
オゥ,神よ
これからまだまだ,良くなっていくからね
人生を神に捧げよ,さらば,パラダイスを与えられ賜う

[Refrain]
Woke up today feeling Godly
Glad to be part of God’s body
Lord, you’re welcome en mi casa
Heaven’s gon’ be one big ol’ party
Thankful for all we’ve been given
You always take care of Your children
Every single moment we lift Him up
All of God’s people stay winnin’

(リフレイン)
今朝目覚めて,神聖な気分がした
神の身の一部であることに喜びを感じる
神よ,あなたを私の家にお迎えします
天(ヘヴン)はアゲアゲの巨大なパーティー
与えられているものすべてにありがたみを感じ
神は,神の子である我々をよく可愛がってくれる
どんな時も,我々は神を空高く持ち上げる
神の子全員,どんな時も負けるわけがない

[Chorus]
Oh, we knew life would be alright
But who could have known it’d be this good?
Oh, Lord
It gets better, better, better, better
Give your life to Christ, he’ll give you paradise
Give your life to Christ, he’ll give you paradise
Give your life to Christ, he’ll give you paradise

(サビ)
オゥ,人生うまくいくって気がしてた
でも誰が想像した? ここまで良いものになるなんて
オゥ,神よ
これからまだまだ,良くなっていくからね
人生を神に捧げよ,さらば,パラダイスを与えられ賜う
人生を神に捧げよ,さらば,パラダイスを与えられ賜う
人生を神に捧げよ,さらば,パラダイスを与えられ賜う

[Refrain]
Woke up today feeling Godly
Glad to be part of God’s body
Lord, you’re welcome en mi casa
Heaven’s gon’ be one big ol’ party
Thankful for all we’ve been given
You always take care of Your children
Every single moment we lift Him up
All of God’s people stay winnin’

(リフレイン)
今朝目覚めて,神聖な気分がした
神の身の一部であることに喜びを感じる
神よ,あなたを私の家にお迎えします
天(ヘヴン)はアゲアゲの巨大なパーティー
与えられているものすべてにありがたみを感じ
神は,神の子である我々をよく可愛がってくれる
どんな時も,我々は神を空高く持ち上げる
神の子全員,どんな時も負けるわけがない

[Chorus]
Oh, we knew life would be alright
But who could have known it’d be this good?
Oh, Lord
It gets better, better, better, better
Give your life to Christ, he’ll give you paradise
Give your life to Christ, he’ll give you paradise
Give your life to Christ, he’ll give you paradise

(サビ)
オゥ,人生うまくいくって気がしてた
でも誰が想像した? ここまで良いものになるなんて
オゥ,神よ
これからまだまだ,良くなっていくからね
人生を神に捧げよ,さらば,パラダイスを与えられ賜う
人生を神に捧げよ,さらば,パラダイスを与えられ賜う
人生を神に捧げよ,さらば,パラダイスを与えられ賜う

(対訳:Jun Nishihara)

第13位:R&Bの王道=Bryson Tillerのシングル曲「Blame」(2019年Hip-Hop名曲名場面ベスト50)

2019年には,R&Bの王道を行くシングル曲が発表されました。それがブライソン・ティラー(Bryson Tiller)のシングル曲「Blame」です。ブライソン・ティラーは2015年頃からグツグツと人気を博してきており,根強いR&Bファンの間で不動の地位を確立してきております。デビューアルバム『Trapsoul』はこのご時世にもかかわらず,米国内だけでも200万枚のミリオンセラーを売り上げ,米ビルボードチャートでは最高8位を記録し,米ビルボードR&B/Hip-Hop部門では第2位を記録しました。おまけに,ビルボード・ミュージック・アワード賞にてノミネートされ,アメリカン・ミュージック・アワード賞においてもノミネートされ,ソウル・トレイン・ミュージック・アワード賞の「Album Of The Year」という最も重要な部門でもノミネートを受けた重要アルバムでした。

そして2019年はシングル曲「Blame」を発表しました。2分という短さ。しかしながらこの2分の間に,R&Bの王道ぶりである「リズム」=ドラムが聴いたビートと,「ブルース」=切なきリリックが詰まっているというものです。

You say “I didn’t love you”, you know a nigga loved you
Did you forget to mention?
All the things I did for you, times I made a trip
‘Cause I know you hate the distance
Baby, it’s alright (It’s alright)

君は俺のこと愛していないと言う,でも俺は(黒人は自分のことをよく“a nigga”と不定冠詞を付けて呼ぶますね)おまえのことを愛してた
もう忘れちまったかい
君のために尽くしてきた,遠距離はイヤだって言ったときも
俺は距離を縮めようと,幾たびも君のもとへ飛んできた
でもねベイビー,もう大丈夫だよ(もう大丈夫だよ)

2019年も「黒人音楽の研究室」に来てくれてありがとうございました。
2020年のお正月,今日も来てくれてありがとうございます。
今年はますます素敵なヒップホップに出合えますように。
明けまして,おめでとうございます。

(文責:Jun Nishihara)

カニエ・ウェスト✖️ Sunday Service Choirのニューアルバム『Jesus Is Born』クリスマスの日にリリース!

先日,ここ(カニエ・ウェスト,遂にオペラ開催予告!)で記載いたしましたとおり予定通りカニエ・ウェストとその仲間たち,いや,今回は「その仲間たち=Sunday Service クワイヤメンバーたち」が主役で,ニューアルバム『Jesus Is Born』がクリスマスにリリースされました。

リリース日は,クリスマス,つまり.イエス・キリスト(Jesus Christ)が誕生したとされる12月25日。アルバムタイトルは今年10月25日にリリースされた『Jesus Is King』ではなく,『Jesus Is Born』。その内容は,クワイヤ(=教会のゴスペルメンバー;聖歌隊)がカニエ・プロデュースによる「賛美歌」を歌うというもの。ソウルフルな楽曲を聴いて,気分を上げるにはもってこいのアルバム。ゴスペルだからって日曜日の朝にかぎらずとも,平日の朝でも気分は「BLESSED!」,恵まれた気分。

聴くだけで,御利益ありそうな,縁起の良いアルバムです。

以下はアルバムジャケです。

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後日,当サイトで対訳の掲載を始めていきます。

(文責:Jun Nishihara)

久しぶりに今週のカニエ・ウェスト“Sunday Service”模様をお届けします。おまけにカニエ論を。

カニエ・ウェストが10月25日(私の誕生日)に名作『Jesus Is King』をリリースしてから,しばらく“Sunday Service”の模様をアップしておりませんでした。以下のとおり,今年に入ってから,今年初旬から毎週日曜日にはぶっ続けで,休むことなくカニエ・ウェストはソウルフルなジャムセッション=“Sunday Service”を開催してきました。こんなことはラッパー,否,ヒップホップアーティストでは(ここでは何回も書いてきましたが)前代未聞なのであります。

これまでの“Sunday Service”の模様は,ここら辺(↓)でご覧ください。

カニエ・ウェストの“Sunday Service”まとめ(10月6日&10月12日開催分)

カニエ・ウェスト“Sunday Service”を金曜日に開催 (9月27日分) & アルバム『Jesus Is King』のリスニングパーティー

カニエ・ウェストの“Sunday Service” (前回,前々回,前々々回・・・からのつづき)

そして本日,先週末12月8日(日)に実施されたばかりの“Sunday Service”をお届けいたします。
(於:フロリダ州のVOUS Church)

そしてもうひとつ,11月10日(日)にヒューストン市の刑務所に於いて,囚人相手に開催した“Sunday Service”も以下のとおり掲載しておきます。

今年の冒頭でこのサイトで,カニエ・ウェストの与えるエナジーで2019年を一気に乗り越える,と書きましたが,そのエナジーはやむことなく,ここまで火はともされ続けてきました。もう12月も半分を超えたばかりですが,カニエ・ウェストのエナジーは,ほぼ1年経ったいまも,消える気配がしません・・・と,そんなことを今こうして書いておりますが,思い返せば2003年にカニエ・ウェストのmixtapeをニューヨーク市かクリーブランド市がどちらか忘れましたが買った時にも,同じようなエナジーを感じたことは確かです。2003年のあの頃から現在2019年の終盤を迎えようとしている今も,まだまだ健在です。

ニューヨークの大学に通っていた際,クラスメートが当時,「50セントはもう終わりね,ラッパーってのはだいたい10年が寿命よ」と言い放ちましたが,カニエ・ウェストは10年どころか,プロデューサー時代にジェイZにビートを提供していた時代から考えると20年経た今も,まさにこんな新しいことをやっているっていうのは,イカレているというか,まさにこれを人は「天才的」と呼んでいるのでしょうが,カニエ・ウェストほど「天才」という言葉が似合わないアーティストはいないでしょう。カニエは天才ではなく,芸術家なのです。

何が芸術家なのか,というと,それを象徴しているのは,カニエが2004年にデビューシングルを出したとき,当時,それまでのヒップホップのサグやゲットーやハスラーのイメージの「逆」からスタートした。それはカニエの意図的なものなのであったか否かは別として,それまでのヒップホップのイメージに逆らうように,対抗していった。みずから師(=big brother)と仰ぐジェイZの「真逆」を行った。

そこに彼の「芸術」は端を発するのではないかとずっとモヤモヤと感じてきたのですが,誰かがカニエは天才などということをどこかで書いていたので,それは違うだろう〜と違和感を感じ,初めて文字にしたまでなのです。カニエ論なんていうことばがあるのならば,そこを地点にスタートするのもおもしろいかもしれない,というひとつのアイデアです。

ひとまずは,ここで終わりにしますが,カニエのことを天才だと思ったことは,20年以上カニエの音楽を聴いてきて,感じたことはなかった。(Jay-Z feat. Scarface & Beanie Sigel “This Can’t Be Life”はジェイZの『The Dynasty』アルバムに収録。カニエ・ウェストがプロデュース。リリースは1999年。)ひとまずはそれをクリアーにしておきたいです。

カニエ論は,気が向いた時に,ひょっこりと,また続けます。

(文責:Jun Nishihara)